岡大徳のポッドキャスト
By: 岡大徳
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人を尊重して話を聞かせていただく「アクティブリスニング」エバンジェリスト『自己満足ではない「徹底的に聞く」技術』著者赤羽雄二氏公認|『アクションリーディング』読書会開催|仲間と一緒に成長できる「親子のクオリティタイム」「最速ロールプレイング」「A4メモ書き」などのグループ運営|株式会社miiboのmiibo Designer|一般社団法人 遠隔健康医療相談適正推進機構 正会員 【配信内容】 配信URL;https://www.daitoku0110.news 3つの内容を配信中 1. 岡大徳 アクティブリスニングなどについて配信しています。 ブログなどの内容はこちら ・https://daitoku0110.com ・https://daitoku0110.jp ・https://daitoku.site/ 2. miiboDesigner 株式会社miiboのmiiboDesignerの岡大徳がmiiboについての新しい情報や気になった情報、ノウハウなど話していきます。 miiboデザイナーとは、miiboの会話の精度があがるように設計をしていく人のことです。 ・プロフィールサイト:https://daitoku0110.net/ ・miiboガイド(初めての人はこちらから):https://daitoku0110.net/miibo/ ・miibo情報:https://daitoku0110.net/miibo-information/ ・スライド共有サービスドクセル:https://www.docswell.com/tag/miibo 3. ナレッジマネジメント 岡大徳のNotesをもとにナレッジマネジメントの一環として配信しています。 岡大徳のNotes:https://daitoku0110.wiki 【Clubhouse】 https://www.clubhouse.com/@daitoku0110 ・『アクションリーディング』行動が変わり人生が変わる読書会 https://bit.ly/38uMBJP ・親子のクオリティタイム https://bit.ly/3Rf8X6z 【Peatix】 https://peatix.com/user/1425712/ ・実践『アクションリーディング』自分を変える行動読書 https://action-reading.peatix.com/ 【Facebook】 https://ms-my.facebook.com/oka.hironori.1 グループ ・実践『アクションリーディング』自分を変える行動読書:https://www.facebook.com/groups/practiceactionreading ・実践 最速ロールプレイング:https://www.facebook.com/groups/551556716178832 ・実践『ゼロ秒思考』A4メモ書き:https://www.facebook.com/groups/notewriting 【Unstoppable Domains】 https://ud.me/daitoku0110.x 【ドクセル】 https://www.docswell.com/user/daitoku0110 www.daitoku0110.news
Episodes
【令和8年1月】選定療養の4つの見直しポイント|近視治療薬から長期収載品まで
Jan 11, 2026令和8年1月9日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会において、選定療養に導入すべき事例等に関する提案・意見募集の結果への対応方針が示されました。この対応方針は、令和7年9月に報告された343件の意見を踏まえたものです。本稿では、医療機関の実務に影響を与える見直し内容を解説します。
今回の見直しは4つの分野に及びます。第一に、近視進行抑制薬が新たに選定療養に追加されます。第二に、時間外の指導管理や調剤、リハビリテーションの回数制限に関して、既存の選定療養の対象範囲が拡大されます。第三に、予約システム利用料やキャンセル料など、療養の給付と直接関係ないサービス等が明確化されます。第四に、長期収載品の患者負担が価格差の4分の1から2分の1へ引き上げられます。
近視進行抑制薬が選定療養に新規追加
令和6年12月に薬事承認されたアトロピン硫酸塩水和物が、選定療養の対象として追加されます。この医薬品は近視の進行抑制を効能・効果としていますが、薬価収載はされていません。
背景には、小中学生の近視増加があります。裸眼視力1.0未満の小中学生の割合は年々増加しており、近視の進行抑制に対する患者ニーズは高まっています。
選定療養への追加により、保険診療との併用が可能になります。例えば、コンタクトレンズの処方目的で受診した患者が、アトロピン硫酸塩水和物の処方も希望した場合を考えます。従来は、コンタクトレンズ処方のための検査が保険診療である一方、近視進行抑制薬の処方は保険外診療であり、療養担当規則に抵触するおそれがありました。選定療養に追加されることで、この問題が解消され、患者は近視に係る治療を円滑に受けられるようになります。
既存の選定療養の対象範囲が拡大
既存の選定療養について、2つの類型で対象範囲が拡大されます。
時間外の指導管理・調剤が対象に追加
「保険医療機関が表示する診療時間以外の時間における診察」の対象が拡大されます。具体的には、医師の診察と別日に実施される時間外の指導管理が追加されます。対象となる指導管理は、外来栄養食事指導料、心理支援加算、がん患者指導管理料、乳腺炎重症化予防ケア・指導料などです。また、緊急性のない保険薬局の開店時間外における調剤も追加されます。
この見直しの背景には、国民の生活時間帯の多様化があります。緊急性のない患者都合による時間外の指導管理や調剤には一定のニーズがある一方で、診療時間内の受診・調剤を働きかけることで、医療関係職種の負担軽減と医療の質向上が期待されます。ただし、緊急やむを得ない事情による時間外の指導管理・調剤については、現行の時間外診察と同様に、特別の料金徴収は認められません。
リハビリテーションの回数超過が対象に追加
「医科点数表等に規定する回数を超えて受けた診療」の対象に、摂食機能療法とリンパ浮腫複合的治療料が追加されます。現行では、疾患別リハビリテーションについて、患者の治療意欲を高める必要がある場合に、規定回数を超えた診療への特別料金徴収が認められています。今回の見直しにより、疾患別リハビリテーション以外のリハビリテーションについても、一定の患者ニーズに応えることが可能となり、患者の治療意欲向上が期待されます。
療養の給付と直接関係ないサービス等が明確化
療養の給付と直接関係ないサービス等として、4つの項目が追加・明確化されます。なお、費用徴収に当たっては、患者への明確かつ懇切な説明と同意確認が必要であり、徴収費用は社会的に妥当適切なものとすることが求められています。
予約・オンライン診療のシステム利用料
予約やオンライン診療の受診に係るシステム利用料が明確化されます。システムの利用により、患者は医療機関の診療時間に関係なく診療予約が可能となり、通院負担の軽減など利便性が向上します。
予約キャンセル料
予約に基づく診察の患者都合によるキャンセル料が認められます。対象となるのは、診察日の直前にキャンセルした場合に限定されます。また、傷病が治癒したことによるキャンセルは対象外です。これは、疾病治癒時のキャンセル料徴収を可能とすると、不要な診療を惹起するおそれがあるためです。予約診察では患者ごとに適切な診療体制が確保されており、キャンセルに伴う医療機関の機会損失に対応する措置となります。
Wi-Fi利用料
Wi-Fi利用料について、既存の「インターネットの利用」と同様の取扱いであることが明確化されます。
在留外国人の多言語対応費用
在留外国人の診療に当たり必要となる多言語対応費用が追加されます。対象となる費用は、通訳の手配料や翻訳機の使用料などです。在留外国人が増加する中、言語の問題で診療に多くの人員・時間を要することがあります。在留外国人が診療内容を的確に理解し、納得した上で医療を受けられる環境整備を目的としています。
薬剤自己負担の在り方も見直し
今回の意見募集では、薬剤自己負担の在り方に関する意見も寄せられました。令和8年度予算編成過程を踏まえ、以下の対応方針が示されています。
長期収載品の患者負担が引き上げ
長期収載品の選定療養について、患者負担の水準が価格差の4分の1相当から2分の1相当へ引き上げられます。この見直しは、後発医薬品の供給状況や患者負担の変化にも配慮しつつ、創薬イノベーションの推進と後発医薬品の更なる使用促進を目的としています。
バイオ後続品は継続検討
バイオ後続品のある先行バイオ医薬品については、中医協においてバイオ医薬品に係る一般名処方のルール整備や、医療機関・薬局における備蓄等の体制評価について議論が進められています。社会保障審議会医療保険部会においても引き続き検討するとされており、必要に応じて中医協でも議論される予定です。
OTC類似薬は新たな仕組みを創設
OTC類似薬の薬剤自己負担については、選定療養への追加ではなく、別途の保険外負担(特別の料金)を求める新たな仕組みが創設されます。令和7年12月24日の大臣折衝事項において、令和8年度中(令和9年3月)に実施することが示されました。対象となるのは、OTC医薬品の対応する症状に適応がある処方箋医薬品以外の医療用医薬品のうち、他の被保険者の保険料負担により給付する必要性が低いと考えられるものです。まずは77成分(約1,100品目)を対象とし、薬剤費の4分の1に特別の料金が設定されます。引き続き議論の状況を注視しつつ、必要に応じて中医協でも議論される予定です。
まとめ
今回の中医協総会では、選定療養に関する4分野の見直し方針が示されました。近視進
Duration: 00:05:48令和8年度診療報酬改定における物価対応の全体像:外来・入院別の配分方法を解説
Jan 10, 2026令和8年1月9日に開催された中央社会保険医療協議会 総会(第640回)において、診療報酬改定における物価対応の具体的な配分方法が示されました。本稿では、大臣折衝で決定された物価対応分+0.76%の配分について、外来・入院それぞれの対応方法と、施設類型ごとの配分の考え方を解説します。
今回の改定では、物価対応分+0.76%と緊急対応分+0.44%の2つの枠組みで対応が行われます。物価対応分+0.76%の内訳は、令和8年度以降の物価上昇への対応(+0.62%)と高度医療機能を担う病院への特例的対応(+0.14%)です。これに加えて、令和6年度改定以降の経営環境悪化を踏まえた緊急対応分として+0.44%が別途措置されます。外来診療では初・再診料とは別に物価上昇に関する評価を新設し、入院診療では令和元年の消費税補填の手法を参考に入院料ごとの物件費率等をもとに配分額を算出する方針です。
大臣折衝で決定された物価対応の枠組み
令和7年12月24日の大臣折衝において、令和8年度診療報酬改定の物価対応に関する基本的な枠組みが決定されました。物価対応分として+0.76%(令和8年度+0.55%、令和9年度+0.97%の2年度平均)が設定され、診療報酬に特別な項目を設定することで対応する方針が示されています。
令和8年度以降の物価上昇への対応には+0.62%が充てられます。この財源は施設類型ごとの費用関係データに基づき、病院+0.49%、医科診療所+0.10%、歯科診療所+0.02%、保険薬局+0.01%と配分されます。病院の中でも、担う医療機能に応じた配分を行うこととされています。
高度医療機能を担う病院への特例的対応として+0.14%が措置されます。大学病院を含むこれらの病院は、医療技術の高度化等の進展の影響を先行的に受けやすい特性があります。汎用性が低く価格競争原理の働きにくい医療機器等を調達する必要性から、物価高の影響を受けやすいことが考慮されました。
令和6年度改定以降の経営環境悪化を踏まえた緊急対応分として+0.44%が配分されます。配分に当たっては、令和7年度補正予算の効果を減じることのないよう、施設類型ごとのメリハリを維持することとされています。具体的には、病院+0.40%、医科診療所+0.02%、歯科診療所+0.01%、保険薬局+0.01%の配分となります。
外来診療における物価上昇対応の方法
外来診療に関する物価上昇への対応について、中医協総会では大臣折衝における考え方を踏まえた具体的な方法が提案されました。対応方法は、物価上昇の時期によって2つに区分されています。
令和8年度以降の物価上昇への対応については、初・再診料等とは別に物価上昇に関する評価を新設する方針です。この評価は、初・再診時等に算定できる独立した項目として設定されます。段階的に対応する必要があることを踏まえ、令和8年度に設定された評価は令和9年度には2倍となることが想定されています。初・再診料に加え、訪問診療料や初・再診料の評価が包括される診療報酬項目も対象に含まれます。
令和6年度診療報酬改定以降の経営環境悪化への対応分については、令和8年度改定時に初・再診料等の評価に含める方式が採用されます。これは、令和7年度補正予算による物価上昇支援を診療報酬に置き換えるものです。評価の水準については、医科診療所・歯科診療所の改定率を踏まえて設定されます。
こうした2段階の対応方式により、物価上昇の性質に応じた適切な評価が可能となります。令和8年度以降の物価上昇は継続的な対応が必要であるため独立した評価項目を設定し、経営環境悪化への対応は基本診療料への組み込みで恒久的な措置とする考え方です。
入院診療における物価上昇対応の方法
入院診療に関する物価上昇への対応についても、外来と同様に2段階の対応方式が提案されています。入院料等(入院基本料、特定入院料及び短期滞在手術等基本料3)の算定時に算定可能な評価を設定する方針です。
令和8年度以降の物価上昇への対応については、入院料等とは別に物価上昇に関する評価を設定します。この評価は外来における物価上昇対応と同様に段階的な対応が行われ、令和8年度の評価は令和9年度には2倍となることが想定されています。評価の水準は、病院の改定率(入院・外来を含む)から外来診療における物価上昇対応の評価を差し引いた規模となるよう調整されます。
令和6年度改定以降の経営環境悪化への対応分については、令和8年度改定時に入院料等の評価に含める方式が採用されます。配分の算出に当たっては、令和元年の消費税補填における対応が参考にされます。グループ分けした入院料毎の物件費率等をもとに、入院料毎の1人1日の入院診療報酬に占める物件費を算出して上乗せする評価を設定することが検討されています。
高度医療機能を担う病院への特例的な対応分については、その趣旨に沿ってそうした機能を担う病院への評価に上乗せする方針です。今後の関係調査において実績等を検証し、所要の対応を図ることとされています。
病院における外来物価上昇対応の補正
病院・有床診療所の外来における物価上昇分への対応については、診療所とのコスト構造の違いを考慮した補正が行われます。外来における物価上昇分の評価は診療所と同一の初再診時の評価が適用されますが、病院における外来は診療所とコスト構造が異なるため、実際の物価上昇分と一致しないことが想定されます。
初再診時の評価での対応で不足する外来における物価上昇分については、入院時の評価に当たって補正する方式が提案されています。具体的には、病院における実際の物価上昇分から外来の物価上昇に関する評価を差し引き、その差額を入院時の評価に含める形となります。
逆に、初再診時の評価が外来で対応すべき物価上昇分より大きい場合には、入院時に対応すべき物価上昇分から差し引いて入院時の評価を算出することとなります。このような補正により、病院全体として適切な物価上昇対応が実現されます。
入院料への配分方法と令和7年度補正予算との整合性
令和6年度改定以降の経営状況悪化に対する対応については、令和7年度補正予算による支援の考え方を踏まえた配分方法が採用されます。大臣折衝において、補正予算の効果を減じることのないよう施設類型ごとのメリハリを維持することが明記されています。
回復期、精神、慢性期については、入院1日当たり定額を配分する方式が採用されます。これは補正予算における1床あたりでの支援の考え方を踏襲したものです。入院料の種類にかかわらず一律の配分となるため、簡潔な仕組みとなります。
急性期については、財源を一
Duration: 00:04:33令和8年度診療報酬改定|支払側・診療側の意見を徹底解説
Jan 09, 2026中央社会保険医療協議会(中医協)総会において、令和8年度診療報酬改定に向けた支払側(1号委員)と診療側(2号委員)の意見書が提出されました。本稿では、両者の意見を整理し、今回の改定における論点を解説します。物価高騰・賃上げへの対応、入院医療の機能分化、かかりつけ医機能の強化が共通の重要テーマとなっています。
両者は「物価・賃上げへの確実な対応」と「医療DXの推進」で方向性が一致しています。一方、支払側が「適正化・効率化」を重視するのに対し、診療側は「基本診療料の引上げ」を強く求めており、財源配分の優先順位に違いがみられます。以下、医科・歯科・調剤の各分野について、両者の主張を対比しながら解説します。
基本的考え方|両者の共通認識と相違点
支払側と診療側は、現下の経済状況への対応について共通の認識を持っています。両者とも物価高騰と賃上げへの対応を重点課題と位置づけ、医療従事者の処遇改善が不可欠であると主張しています。
支払側は「国民皆保険制度と医療提供体制の持続可能性の両立」を基本方針に掲げています。具体的には、外来受診の適正化、残薬対策、短時間・頻回な訪問看護の是正、門前薬局や敷地内薬局の合理化を通じた適正化の徹底が不可欠と主張しています。2040年頃を見据えた医療提供体制の再構築も意識し、メリハリのある診療報酬により政策課題の解決に取り組むべきとしています。
診療側は「国民皆保険という財産を守り抜き、次世代へつなぐ」ことを基本理念としています。急激な物価高騰の中、診療報酬改定が追いついておらず、医療機関の経営状況が著しくひっ迫していると訴えています。診療報酬は国民にとって安心・安全で質の高い医療を提供するための原資であり、賃金や物価の動向が適切かつ十分に反映されるべきと主張しています。
入院医療|機能分化と評価体系の見直し
入院医療については、機能分化・連携の推進という方向性で両者は一致しています。ただし、具体的な施策の優先順位や評価の考え方には違いがあります。
支払側は、病院機能を重視した評価体系への見直しを提案しています。全身麻酔手術と救急搬送受入れの実績を主な指標として、これまで以上に病院機能を重視した評価体系に見直すことで、病院の再編・統合につなげるべきとしています。急性期一般入院料1については、救急搬送受入れと全身麻酔手術の基準を導入し、実績に応じて評価を細分化すべきと主張しています。
診療側は、医療機関の運営継続を可能とする評価体系を求めています。重症度、医療・看護必要度については、改定のたびに評価項目を変更すること自体が医療現場にとって大きな負担となっており、今改定での大幅な見直しは避けるべきと主張しています。各医療機関が地域の医療提供体制も踏まえながら、時間をかけて対応できる仕組みを求めています。
地域包括医療病棟については、両者とも高齢者救急への対応強化を認めています。支払側は令和6年度改定で新設したコンセプトを損なう見直しは行うべきでないとしつつ、内科系疾患の評価見直しは合理的と述べています。診療側は施設基準が全般的に厳しく、要件緩和を求めています。
外来医療|かかりつけ医機能と管理料の評価
外来医療では、かかりつけ医機能の強化について両者の方向性は一致しています。ただし、既存の管理料の評価については見解が分かれています。
支払側は、かかりつけ医機能報告制度と整合的な評価体系への移行を提案しています。機能強化加算について、現行の地域包括診療料等と紐づいた仕組みから離れ、かかりつけ医機能報告制度と整合的な仕組みへと発展的に組み替えるべきとしています。生活習慣病管理料については、診療実績に基づく適正化や、継続受診率が低い場合の減算導入を求めています。外来管理加算については、再診料に含まれる当然の行為であり、加算としての評価を廃止すべきと主張しています。
診療側は、かかりつけ医機能の評価に係る点数の重要性を強調しています。外来管理加算や特定疾患療養管理料等は、質の高い生活習慣病の治療・管理に貢献してきた経緯があり、これまでの運用を軽視するような見直しはすべきでないと主張しています。かかりつけ医は患者が自由に選択できるものであり、フリーアクセスを阻害するような評価とならないよう注意が必要としています。
歯科医療|口腔機能管理とデジタル化
歯科医療については、口腔機能管理の充実と歯科治療のデジタル化推進で両者は共通しています。
支払側は、ライフステージに応じた口腔機能管理の評価を支持しています。高齢者の口腔機能低下症や小児の口腔機能発達不全症について、学会の診断基準に基づく対象範囲の拡大は合理的としています。歯科疾患管理料については、初診減算の廃止と合わせて再診時の評価を適正化すべきと主張しています。光学印象やCAD/CAM冠の活用拡大など、歯科治療のデジタル化推進も求めています。
診療側は、初診料・再診料の大幅引上げを最優先課題としています。昨今の急激な物価上昇により歯科医療機関の経営状況は悪化しており、ホスピタルフィーである初診料・再診料での評価拡充が不可欠と訴えています。歯科衛生士等の給与水準は一般病院の医療技術員よりも低く、処遇改善が急務としています。歯科用貴金属材料を用いないデジタル技術の適用拡大は喫緊の課題と認識しています。
調剤|薬局機能と医薬品供給体制
調剤については、かかりつけ薬剤師機能の強化という方向性で一致していますが、薬局の立地や経営効率に関する評価では見解が分かれています。
支払側は、門前薬局・敷地内薬局の適正化を強く求めています。敷地内薬局の定義を厳格化し、医療モールを含めて特別な関係にある場合には全て特別調剤基本料Aを適用することを原則とすべきとしています。後発医薬品調剤体制加算は廃止して減算の仕組みに移行し、後発医薬品の数量割合の維持は地域支援体制加算の基準として位置付けることも提案しています。かかりつけ薬剤師指導料・包括管理料は廃止し、実施した業務の内容を評価すべきとしています。
診療側は、薬局の経営基盤強化を優先課題としています。物価高騰・賃上げ等の影響により薬局の経営は年々厳しさを増しており、医薬品の仕入価高騰や「逆ザヤ」品目の急増により経営状況は極めて逼迫していると訴えています。調剤基本料とその加算による医薬品供給拠点としての機能評価の充実を求めています。かかりつけ機能を活用した薬学管理指導の評価充実も重要としています。
在宅医療|訪問看護と多職種連携
在宅医療については、ニーズ増加への対応と適切な評価の両立が課題となっています。
支払側は、短時間・頻回な訪問看護の適正化を重点課題として
Duration: 00:04:36令和8年度診療報酬改定|診療側委員が示す7つの基本方針と具体的要望を解説
Jan 08, 2026中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第639回)において、令和8年度診療報酬改定に対する二号(診療側)委員の意見が提出されました。この意見書は、医科・歯科・調剤の3分野にわたり、物価高騰・賃上げへの対応を最重点課題として位置づけています。診療側委員は、医療機関の経営がひっ迫する現状を踏まえ、診療報酬の適切な引上げと制度の簡素化を強く求めています。
本稿では、令和7年12月26日に提出された二号委員意見の内容を解説します。意見書は、医科において7つの基本方針と12の具体的検討事項を示しています。歯科は4つの基本方針と23の具体的検討事項、調剤は保険薬局と病院・診療所に分けて方針を提示しています。これらの意見は、今後の中医協における議論の土台となります。
医科分野|国民皆保険を守り抜くための7つの基本方針
診療側委員は、医科分野において7つの基本方針を掲げています。これらの方針は、急激な物価高騰と人件費上昇のなかで医療機関の経営を安定させ、国民に安心・安全で質の高い医療を提供するための原資として診療報酬を位置づけています。
第1の方針は「診療報酬体系の見直し」です。医療機関の創意工夫による運営を可能とする告示・通知等の見直し、施設基準等の簡素化や要件緩和、人件費・医療材料費・食材料費・光熱水費・委託費等の高騰を踏まえた適切な対応を求めています。
第2の方針は「あるべき医療提供体制コスト等の適切な反映」です。「もの」と「技術」の分離の促進、医学・医療の進歩への速やかな対応、無形の技術を含めた基本的な技術評価の重視を掲げています。医療DXやICT連携、業務効率化のためのAI・IoT等に必要な経費への確実な手当も求めています。
第3の方針は「大病院、中小病院、診療所の機能評価と地域医療の安定化」です。急性期から慢性期に至るまで良好に運営できる診療報酬体系の整備、救急医療等の不採算医療を引き受けてきた医療機関への評価、地域の診療所や中小病院のかかりつけ医機能への手厚い評価を要望しています。
第4の方針は「医師・医療従事者の働き方改革対応」です。医師等の働き方改革の推進、医療従事者の負担軽減策や勤務環境の改善への評価、タスク・シェア・タスク・シフトの推進を掲げています。第5の方針は「小児・周産期医療の充実」、第6の方針は「不合理な診療報酬項目の見直し」、第7の方針は「その他必要事項の手当」です。
医科分野|初・再診料から入院医療までの具体的検討事項
診療側委員は、12の領域にわたる具体的検討事項を示しています。これらの検討事項は、医療現場の実態を踏まえた切実な要望です。
初・再診料については、医師の技術料の最も基本となる部分として適切な評価の引上げを求めています。具体的には、同一医療機関における同一日複数科受診の評価見直し、医療DX推進のための評価、かかりつけ医機能のさらなる評価、外来感染対策向上加算の見直しなどを挙げています。かかりつけ医機能については、フリーアクセスを阻害しないよう注意が必要であり、過度な機能分化やかかりつけ医の制度化は導入しないことを求めています。
入院基本料については、急激な物価高騰・光熱費等の高騰に対応するとともに、多職種協働によるチーム医療の推進を踏まえた医療従事者の人件費の適切な評価を求めています。重症度、医療・看護必要度については、改定のたびに評価項目を変更すること自体が医療現場の大きな負担となっており、今改定での大幅な見直しは避けるべきとしています。入院中の患者の他医療機関受診時の減算については、懲罰的な規則であり、国民の受療する権利を阻害していると指摘しています。
入院基本料等加算・特定入院料については、医師事務作業補助体制加算の算定病棟拡大と外来診療所での算定、特定集中治療室管理料等の臨床現場の実態に合致した評価への見直し、地域包括医療病棟入院料の施設基準の要件緩和、精神科地域包括ケア病棟入院料の経過措置期間の再設定などを求めています。
医科分野|在宅医療から処置・手術までの具体的検討事項
在宅医療については、機能強化型在宅療養支援診療所における病床の有無による点数格差の是正を求めています。有床・無床にかかわらず医療行為は同等であり、無床診療所では連携後方支援病院への入院依頼などの対応が発生していることから、同等の点数とすることを要望しています。また、下り搬送を受け入れた側の医療機関への評価、在宅患者訪問診療料の要件緩和、小児在宅医療の充実、終末期に向けての意思決定支援管理料の新設なども求めています。
検査・画像診断については、DPC病院を退院した月と同月の外来における検査料の算定要件緩和、原材料費の高騰に伴う検査料の見直し、休日夜間の緊急遠隔読影における医師の要件見直しを求めています。投薬・注射については、7種類以上の内服薬処方時等の減算の撤廃を要望しています。多数の疾患を抱える患者、特に高齢者をかかりつけ医が担当するためには多剤投与が必要となるケースは避けられず、かかりつけ医機能を発揮する観点からも減算の廃止を求めています。
処置・手術・麻酔については、手術料の適正な評価として、9割以上の術式において外保連手術試案上の人件費のみで実際の診療報酬額を上回っていることから、一層の増点を求めています。同一手術野で実施する複数手術の評価については、主たる手術の所定点数のみならず、同時併施手術すべての所定点数を加えることを要望しています。また、第11部麻酔の通則における休日・時間外・深夜加算の新設も求めています。
ベースアップ評価料については、対象職種が限定されている等の課題があることから、基本診療料を中心として上乗せすることを求めています。春闘賃上げ2年連続5%超えに比べて、診療報酬改定によるベースアップ評価料は低い水準に留まっており、医療機関に従事するすべての職員を対象とした適切な評価の見直しを要望しています。
歯科分野|口腔の健康と健康寿命の延伸に向けた要望
歯科分野では、口腔の健康が全身の健康及び健康寿命の延伸に寄与するエビデンスが示されるなか、歯科医療の果たす役割は非常に大きいとの認識を示しています。ライフコースに応じたう蝕や歯周病を含めた口腔疾患の重症化予防及び口腔機能の獲得・維持・向上に資する歯科医療を「かかりつけ歯科医」が中心となって提供することが重要としています。
重点課題として、物価や賃金、人手不足等の医療機関を取り巻く環境の変化への対応を掲げています。医療経済実態調査の結果から、個人立歯科診療所においては収入の増加を費用の増加が上回り、設備投資やスタッフの処遇改善もままならない厳しい経営状況が続いていることが明らかになりました。歯科衛生士等の給与水準は一般
Duration: 00:04:29令和8年度診療報酬改定|支払側が求める「6つの重点事項」と適正化の方向性
Jan 07, 2026中央社会保険医療協議会(中医協)は、令和7年12月26日の総会(第639回)において、令和8年度診療報酬改定に向けた各号意見を取りまとめました。本稿では、健康保険組合や事業主の立場を代表する支払側(1号側)委員が提出した意見書の内容を解説します。支払側は、賃上げと物価高への確実な対応を求める一方、医療費適正化の徹底と病院機能の再編を強く主張しています。
支払側の意見は6つの重点事項で構成されています。医科については、入院医療における病院機能の分化・連携・集約化と、外来医療におけるかかりつけ医機能報告制度と整合した評価体系への移行を求めています。歯科については、口腔機能管理の対象範囲拡大とメリハリのある評価を主張しています。調剤については、敷地内薬局の定義厳格化と門前薬局の適正化を要求しています。在宅医療については、短時間・頻回な訪問看護の是正を求めています。賃上げと物価への対応については、検証可能な仕組みの創設を主張しています。なお、意見書には個別事項として医療DXや救急医療等の11項目も含まれています。
基本的考え方:適正化と持続可能性の両立
支払側は、診療報酬改定の基本姿勢として、賃上げと適正化の両立を求めています。
診療報酬本体の引上げ財源は、その大部分を賃上げと物価高への対応に充当することが大臣折衝で合意されました。支払側は、この合意を踏まえ、医療サービスの対価としての正当性を担保するため、確実な賃上げときめ細かい物価高への対応を行い、その結果を検証できる仕組みにすべきであると主張しています。
一方で、国民皆保険制度と医療提供体制の持続可能性を両立することも重要であると指摘しています。そのために必要な適正化策として、外来受診の抑制、残薬対策、短時間・頻回な訪問看護の是正、門前薬局や敷地内薬局の合理化を挙げています。これらの適正化を通じて、メリハリのある診療報酬により政策課題の解決に取り組むべきであるとしています。
医科・入院医療:病院機能の再編と集約化を促進
入院医療については、病院機能の分化・連携・集約化を強力に推進するよう求めています。
高度急性期については、選択と集中が必要であると主張しています。専門性の高い人材や高額な医療機器は基幹病院に集約化し、重篤な救急搬送の受入れや難易度の高い全身麻酔手術等を集中的に実施する拠点的な急性期機能を確立すべきであるとしています。この拠点的機能を担う病院は、物価・賃金上昇による影響を最も大きく受けるため、財源を重点配分すべきであると述べています。
急性期一般病棟については、評価体系の見直しを求めています。急性期一般入院料1について、救急搬送受入れと全身麻酔手術の基準を導入し、実績が一定以上の場合のみ看護配置7対1の拠点的な急性期一般病棟として認める等、評価を細分化すべきであるとしています。看護配置7対1と10対1の差分を多職種配置で補充する場合には、看護職による病棟マネジメントと業務負担のモニタリングの仕組みを実装すべきであるとしています。
DPC/PDPSについては、全ての急性期病棟への参加義務付けを求めています。急性期医療の標準化を徹底する観点から、現在は任意参加となっているDPC制度への参加を義務化すべきであるとしています。標準病院群については、救急搬送の受入れ件数が少ない病院で包括範囲出来高点数が特に低い傾向を踏まえ、細分化して基礎係数を設定すべきであるとしています。
地域包括医療病棟については、令和6年度改定で新設したコンセプトを維持すべきであると主張しています。平均在院日数の基準やADL低下患者5%未満の要件は一律に緩和せず、限定的な対応にとどめるべきであるとしています。ただし、内科系症例において医療資源投入量が十分に評価されていない実態を踏まえ、内科系疾患の高齢者救急の受入れを阻害しないよう、きめ細かな評価体系に見直すことは合理的であるとしています。
医科・外来医療:かかりつけ医機能と適正化の推進
外来医療については、かかりつけ医機能の評価体系の見直しと各種管理料の適正化を求めています。
かかりつけ医機能については、機能強化加算の抜本的な見直しを主張しています。現行の地域包括診療料や在宅療養支援診療所等と紐づいた仕組みから離れ、かかりつけ医機能報告制度と整合的な仕組みへと、名称を含めて発展的に組み替えるべきであるとしています。一次診療が可能な診療領域や疾患の範囲、研修受講、学生実習・研修医の受入れ、BCP等を指標とし、機能の充実度に応じた評価体系とすべきであるとしています。
生活習慣病管理料については、適正化と減算の導入を求めています。長期処方・リフィル処方をより積極的に活用して、状態が安定した患者の受診間隔を延長し、通院負担を軽減すべきであるとしています。療養計画書を定期的に交付していない場合やガイドラインに沿った検査を実施していない場合、継続受診率が低い場合には減算を導入すべきであるとしています。
外来管理加算については、廃止または包括化を求めています。地域包括診療加算や特定疾患療養管理料等との計画的な管理の重複評価は依然として解消されておらず、是正すべきであるとしています。算定要件である「丁寧な問診や詳細な診察、懇切丁寧な説明」等は再診料に含まれる当然の行為であり、加算としての評価を廃止すべきであるとしています。
歯科:口腔機能管理の拡大とメリハリある評価
歯科については、ライフステージや患者の特性に応じたメリハリのある評価を求めています。
口腔機能管理については、対象範囲の拡大を認めています。高齢者の口腔機能低下症や小児の口腔機能発達不全症について、機能的な特性だけでなく、通常と異なる特別な管理を行うのであれば、学会の診断基準に基づき口腔機能管理料や小児口腔機能管理料の対象範囲を拡大することは合理性があるとしています。
歯科疾患管理料については、初診減算の廃止と再診時評価の適正化を求めています。歯科医師の手間が初診と再診で変わらないのであれば、初診減算の廃止と合わせて再診時の評価を適正化すべきであるとしています。継続的な歯科疾患の管理という趣旨が徹底されるよう、算定対象となる患者像を明確化し、初診時に管理計画を患者に説明して理解を得ることも必要であるとしています。
歯周病治療については、財政中立での統合を求めています。患者に違いが分かりにくい歯周病安定期治療と歯周病重症化予防治療は財政中立で統合するとともに、実質的に3か月毎のメンテナンスとして運用されている状況を改め、病態に応じた治療を運用面で担保すべきであるとしています。
多職種連携については、医科との連携強化を求めています。周術期等口腔機能管理計画
Duration: 00:04:58令和8年度薬価制度改革の骨子を解説|革新的新薬薬価維持制度など5つの重要変更点
Jan 06, 2026中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第639回)において、令和8年度薬価制度改革の骨子(案)が示されました。この骨子案は、「経済財政運営と改革の基本方針2025」で掲げられた「国民負担の軽減と創薬イノベーションの両立」を実現するための具体策を定めています。本稿では、医療機関や製薬企業に影響を与える主要な変更点を解説します。
令和8年度薬価制度改革の骨子案では、5つの重要な変更が示されています。第一に、新薬創出・適応外薬解消等促進加算が「革新的新薬薬価維持制度(PMP)」へ名称変更されます。第二に、長期収載品の薬価は後発品上市後5年でG1が適用され、段階的に引き下げられます。第三に、AG(オーソライズド・ジェネリック)およびバイオAGの薬価は先発品・バイオ先行品と同額に設定されます。第四に、年間販売額が3,000億円を超え急拡大した高額医薬品には、引き下げ幅上限が66.7%に引き上げられます。第五に、後発品の安定供給確保のため、価格帯集約ルールが見直されます。
革新的新薬薬価維持制度(PMP)への名称変更と制度見直し
新薬創出・適応外薬解消等促進加算制度は、「革新的新薬薬価維持制度」へ名称変更されます。この変更は、特許期間中の革新的な新薬の薬価維持という制度趣旨を明確化するためです。英語名は「Patent-period price Maintenance Program for Innovative Drugs(PMP)」となります。
品目要件については、透明性向上の観点から見直しが行われます。具体的には、「新規作用機序医薬品又は新規作用機序医薬品に相当すると認められる効能若しくは効果が追加されたものであって、別表10の基準に該当する医薬品」などの要件が削除されます。この変更は、今後新たに薬価収載される品目に適用されます。一方、乖離率が平均乖離率を超える品目を対象外とする要件は維持されます。
累積額の控除と薬価の下支えに係るルールの適用順序も見直されます。従来どおり改定前薬価と市場実勢価格に基づく改定額との差額の累積額は控除されます。ただし、累積額控除により最低薬価未満となる事態を防ぐため、累積額控除を適用した後に薬価の下支えルールを適用する順序に変更されます。
長期収載品の薬価の更なる適正化
長期収載品の薬価については、後発品置換え期間が5年に設定されます。この変更は、長期収載品に依存するビジネスモデルからの脱却を促進する目的で実施されます。5年経過後は後発品置換率によらずG1が適用され、後発品の加重平均薬価を基準として段階的に引き下げられます。
従来のZ2およびG2は廃止されます。また、Cも廃止され、G1の補完的引下げは後発品置換率によらず一律2.0%となります。G1による引下げ後の額と2.0%の補完的引下げ後の額のうち、いずれか低い額が適用されます。後発品の加重平均薬価まで価格を引き下げた長期収載品については、G1の適用対象外となります。
バイオ先行品についても、バイオシミラーが収載されている場合はG1が適用されます。引下げの下限および円滑実施措置は原則廃止されますが、令和8年度は大きな制度変更であることから、経過措置として適用されます。
AG・バイオAGの新たな薬価ルール
バイオAGの新規収載時の薬価は、バイオ先行品と同額に設定されます。この変更は、バイオシミラーとの適切な競争環境を形成・維持する観点から導入されます。バイオAGとは、先行品と有効成分、原薬、添加物、製法等が同一のバイオ医薬品であって、後発品として薬事承認を受けたものを指します。
AG(オーソライズド・ジェネリック)についても同様の措置が講じられます。先発品と有効成分、原薬、添加物、製法等が同一の後発品(AG)の薬価は、先発品と同額となります。この変更も、後発品の適切な競争環境の形成・維持を目的としています。AGであるか否かの客観的判断が困難なため、薬価基準収載希望書にAGである旨の記載を製造販売業者に求める運用が導入されます。
薬価改定時には、AG・バイオAGと先発品・バイオ先行品の価格帯集約が行われます。先発品の薬価と同額で算定されたAG又はバイオAGについては、当該AGおよび先発品、当該バイオAGおよびバイオ先行品の薬価をそれぞれ加重平均し、価格帯を集約することになります。
高額な医薬品に対する対応強化
年間1,500億円の市場規模を超える高額な医薬品への対応が強化されます。市場拡大再算定の特例は「持続可能性特例価格調整」(英語名:Special Price Adjustment for Sustainable Health System and Sales Scale(SPA-SSS))に名称変更されます。この名称変更は、イノベーション評価と国民皆保険維持の両立という趣旨を明確化するためです。
持続可能性特例価格調整の引き下げ幅上限が引き上げられます。年間販売額が予測販売額から10倍以上かつ3,000億円超に急拡大した場合に限り、従来の上限50%から66.7%(2/3)に引き上げられます。この措置により、予想を大幅に超えて市場が拡大した高額医薬品に対して、より強い価格調整が可能となります。
市場拡大再算定の類似品への適用は廃止されます。企業の予見可能性を確保し、国民負担の軽減と創薬イノベーションを両立する観点から、この変更が行われます。一方、市場拡大再算定対象品目の薬理作用類似薬については、効能追加等の有無に関わらず、NDB(レセプト情報・特定健診等情報データベース)により使用量を把握し、薬価改定以外の機会も含めて再算定が実施されます。
後発品の安定供給確保のための対応
後発品の価格帯集約ルールが見直されます。注射薬およびバイオシミラーについては、同一規格・剤形内の品目数が少ない状況を踏まえ、最高価格の30%を下回る薬価のものを除き、価格帯集約の対象外となります。G1品目に係る後発品の1価格帯集約は廃止されます。
薬価の下支え制度も充実されます。最低薬価については、外用塗布剤に規格単位に応じた最低薬価が設定されます。点眼・点鼻・点耳液には点眼剤の最低薬価が適用されます。最低薬価の水準自体も引き上げられますが、前回調査における最低薬価品目の平均乖離率を超えた乖離率であった品目は引き上げ対象外となります。
不採算品再算定の要件も緩和されます。従来の「全ての類似薬について該当する場合に限る」という要件が削除され、該当する類似薬のシェアが5割以上であれば対象となります。対象品目は、基礎的医薬品と同一の品目、重要供給確保医薬品、極めて長い使用経験があり供給不足の影響が大きい品目などに限定されます。
まと
Duration: 00:04:53【令和8年度改定】保険医療材料制度改革の骨子案|7つの改革ポイントを徹底解説
Jan 05, 2026令和7年12月26日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第639回)において、令和8年度保険医療材料制度改革の骨子案が示されました。物価上昇による原材料費高騰が続く中、実勢価格が償還価格を上回る「逆ザヤ」の機能区分が全体の35%に達しています。このような状況を踏まえ、今回の改革ではイノベーション評価の厳格化、プログラム医療機器の評価基準整備、医療機器の安定供給確保など7つの柱で制度見直しが行われます。
今回の骨子案は、医療機器産業と医療現場の双方に大きな影響を与える内容です。チャレンジ申請におけるRCT(ランダム化比較試験)の原則化、体外診断用医薬品の評価基準の厳格化、逆ザヤ機能区分への市場シェアに応じた対応など、実務に直結する改定が多く含まれています。この記事では、医療機関の経営者や医療機器メーカーの担当者が押さえるべきポイントを解説します。
改革の背景:逆ザヤ機能区分が35%に増加
保険医療材料制度を取り巻く環境は大きく変化しています。物価上昇による原材料費の高騰を背景に、実勢価格が償還価格を上回る「逆ザヤ」状態の機能区分が急増しているためです。
逆ザヤとは、医療機関と卸業者との間の価格交渉で形成される実勢価格が、保険償還価格を上回る状態を指します。特定保険医療材料価格調査によると、逆ザヤの機能区分数は平成30年度の260(全体の22%)から令和7年度には460(同35%)へと増加しました。この5年間で割合は1.6倍に拡大しています。
今回の制度改革は、この逆ザヤ問題への対応を含め、イノベーションの適切な評価、医療機器等の安定供給、内外価格差の是正、保険適用手続の効率化という4つの観点から検討が行われました。その結果、7つの柱からなる具体的な改革内容が示されています。
1. イノベーション評価:チャレンジ申請と補正加算の厳格化
イノベーション評価では、チャレンジ申請の要件厳格化と補正加算の定量的評価の明確化が行われます。データの質と客観性を高めることで、真に革新的な医療機器を適切に評価する狙いがあります。
チャレンジ申請(使用成績を踏まえた再評価に係る申請)については、3つの点で要件が厳格化されます。第一に、製造販売業者が提出する研究計画には原則として比較試験を求めます。具体的にはRCT(ランダム化比較試験)が望ましいとされていますが、RCTが困難な場合は、バイアスのリスクを軽減する方法を十分に検討した研究計画の提示が必要です。第二に、データの客観性担保のため、査読付き論文として公表されたデータの提出を審議の前提とします。製造販売業者による独自の解析は評価対象外となります。第三に、RCTで実現可能性の高い研究計画については、事務局確認と保材専委員長の承認により、保材専への報告のみでチャレンジ権を付与できます。
補正加算(画期性加算、有用性加算、改良加算)については、定量的評価の試行案が明確化されます。評価項目ごとにポイント制が導入され、臨床上有用な新規の機序、類似材料に比した高い有効性・安全性、対象疾病の治療方法の改善などが点数化されます。平成28年から令和7年9月まで該当品目がなかった改良加算の「ロ」「ト」「チ」については、引き続き試行案として取り扱われます。
2. 体外診断用医薬品の評価基準明確化
体外診断用医薬品については、臨床上の有用性を重視した評価基準が明確化されます。療養担当規則の趣旨を踏まえ、区分E3(新項目、改良項目)の保険適用希望品目に対して、より厳格な審査が行われます。
F区分(保険適用しない)となる条件は、以下の3つのいずれかに該当する場合です。第一に、臨床上の位置づけ(対象患者、実施時期)が不明確な場合です。対象患者が明らかでなく、スクリーニングとして実施することが想定される場合がこれに該当します。第二に、臨床上の位置づけに応じた性能を有していない場合です。確定診断に用いるとした体外診断用医薬品の特異度が低く、確定診断が困難と認められる場合などが該当します。第三に、当該検査の結果により治療が変化する等の臨床上の有用性が示されていない場合です。検査結果に関わらず同じ診断・治療を行う場合がこれに該当します。
希少疾病等の検査に用いる体外診断用医薬品については、評価対象が拡大されます。想定される検査回数が少ない再生医療等製品の適応判定の補助に必要な検査にも適用が拡大されます。技術料の見直しにおいては、希少性が重複評価されることを避けるため、参照する準用技術料は保険収載時に準用した技術料であることが明確化されます。
3. プログラム医療機器の評価基準整備
プログラム医療機器(SaMD:Software as a Medical Device)の評価については、令和6年度改定で示された基準を踏まえ、引き続き整備が進められます。臨床アウトカムの向上と医療従事者の負担軽減という2つの観点から評価が行われます。
診療報酬上の評価は、患者の臨床アウトカムの向上が示された場合に限り、加算による評価を検討します。医療従事者の労働時間短縮や人員削減等を実現するプログラム医療機器については、施設基準の緩和等による評価を検討します。これにより、治療効果を高めるものと業務効率を改善するものとで、評価の方向性が明確に区別されます。
特定保険医療材料として評価されるプログラム医療機器の算定方法も明確化されます。初・再診料、プログラム医療機器指導管理料(導入期加算を含む)、その他の医学管理料等、特定保険医療材料料を組み合わせて算定できることが示されます。選定療養の活用については、保険適用期間終了後に患者希望で使用する場合の特別料金の説明を、アプリケーション内で行うことも可能となります。
4. 医療機器の安定供給確保:小児用医療機器と不採算品再算定
医療機器の安定供給確保では、小児用医療機器への配慮と不採算品再算定の対象拡大が行われます。対象患者数が少ない分野での供給継続を支援する施策です。
小児用医療機器については、その特殊性への配慮が明記されます。成長に伴い使用する医療機器のサイズが変化すること、対象患者数が少ないことなどを考慮し、新規機能区分の基準材料価格が外国平均価格の0.8倍以下となる場合は、原価計算方式による算定を製造販売業者が希望できるようになります。機能区分の細分化(「小児用」と「成人用」の区分分け)についても、業界要望を踏まえつつ検討が続けられます。
不採算品再算定の対象選定基準も見直されます。「代替するものがないこと」という要件について、市場シェア状況に応じた3つのパターンが設定されます。パターン1(1社でシェアの大半を占める場合)は既に令和6年度改定で対象となっています
Duration: 00:05:26令和8年度費用対効果評価制度改革の骨子案を解説|3つの改革ポイントと今後の展望
Jan 04, 2026中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第639回、令和7年12月26日開催)において、「令和8年度費用対効果評価制度改革の骨子(案)」が議論されました。2019年の制度導入から6年が経過し、72品目が評価対象となり53品目が評価を終了した実績を踏まえ、制度の透明性・公平性の向上と更なる活用に向けた見直しが示されています。
今回の改革は、制度検証の結果、分析方法の見直し、分析体制の充実の3つを柱としています。特に注目すべきは、追加的有用性が示されない品目に対する価格調整範囲の拡大です。本稿では、骨子案の内容を解説し、医療機関や製薬企業への影響を考察します。
費用対効果評価制度の検証結果
費用対効果評価専門部会において、これまでの運用状況が客観的に検証されました。
制度導入後の新規収載数は、医薬品が年間50品目前後、医療機器が25品目前後で推移しています。2025年9月1日までに費用対効果評価に指定された67品目の予測市場規模(ピーク時)は、中央値156億円/年でした。この数値は、25パーセンタイル117億円/年、75パーセンタイル249億円/年と分布しており、市場規模の大きい品目が対象となっていることがわかります。
評価終了した49品目のうち、実際に分析が実施されたのは39品目でした。このうち公的分析が実施されず企業分析が受け入れられたものが2品目あり、費用対効果評価専門組織の決定に対して製造販売業者から不服申立てがあったものは20品目に上りました。価格調整が行われた38品目では、価格全体に対する調整額の割合が中央値-4.29%となっています。
今後は令和8年9月に中医協での検証報告の議論を行い、関係業界からの意見も踏まえた技術的な議論を継続します。
分析方法に関する見直し
分析プロセスと価格調整方法について、複数の重要な見直しが示されました。
品目指定手続きの簡素化として、費用対効果評価終了後に新たな知見が得られた品目の再指定について、薬価算定組織等での手続きを不要とします。費用対効果評価専門組織からの提案を中医協総会で直接承認する方式に変更されます。
比較対照技術の設定方法も明確化されました。臨床的に幅広く用いられているもののうち治療効果がより高いものを1つ選定することが原則となります。一意的に決められない場合は、費用対効果の観点から相対的に安価なものを選択することもあり得ますが、他の考慮要素を踏まえて決定します。
用語の明確化として、「追加的有用性」を「比較技術に対する健康アウトカム指標での改善」と表現することになりました。これは薬価算定における「有用性」との混同を防ぐための措置です。
介護費用の取扱いについては、レケンビの事例で指摘された技術的・学術的な課題を踏まえ、諸外国の状況も参考にしながら引き続き研究を進めます。
価格調整の対象範囲の見直し
価格調整方法について、制度の更なる活用に向けた重要な変更が示されました。
価格引き上げの条件が変更されます。従来の「薬理作用等が比較対照技術と著しく異なること」という要件は、「比較対照技術と異なり、臨床上有用な新規の作用機序を有すること」に改められます。医療機器についても同様に、「基本構造や作用原理が著しく異なる」から「臨床上有用な新規の機序を有する」に変更されます。
追加的有用性が示されずICERの区分が「費用増加」となった品目の価格調整方法も見直されます。現行の有用性系加算部分に価格調整係数を乗じる方法ではなく、例えば比較対照技術の1日薬価を評価対象技術の1日薬価で除した比を価格に乗じる方法を含め、政策決定の透明性や説明責任を高める方向で見直しが図られます。価格調整後の下限は、価格全体の85%(調整額15%)を基本に引き続き議論されます。
なお、令和8年4月以降に評価結果が中医協に報告された品目については、令和8年9月の検証報告の議論終了後に具体的な方法を定めた上で価格調整を実施します。
分析体制の充実
公的分析を担う体制の強化が課題として挙げられました。
現在は立命館大学と慶應義塾大学の2大学が公的分析班として分析を担当しています。対象品目の増加が予想される中、体制の充実が必要です。
公的分析結果の学術的な取扱いとして、国立保健医療科学院がホームページで公開している分析結果を論文形式で公的刊行物に掲載する取組を継続します。厚生労働省は関係学会等への制度周知、人材育成、分析体制への支援を通じて、公的分析班の人材確保と組織充実を図ります。
国際的な知見の取り入れも推進されます。海外の評価実施機関における実務経験や研究機会を通じて、国際標準となっている知見をより早期に導入するための支援が検討されます。
評価結果の活用促進
費用対効果評価の結果を医療現場で活用するための取組も進められます。
厚生労働省と国立保健医療科学院は、関係学会や関係機関に対して必要な情報提供を行います。各学会における診療ガイドラインへの経済性評価の反映を促進し、診療現場での普及を目指します。
まとめ
令和8年度費用対効果評価制度改革の骨子案は、6年間の運用実績に基づく制度の最適化を目指しています。72品目の評価対象指定と53品目の評価終了という実績を踏まえ、制度の透明性・公平性の向上、分析プロセスの効率化、分析体制の充実が図られます。特に追加的有用性のない品目への価格調整範囲拡大は、費用対効果評価制度の更なる活用に向けた重要な一歩となります。令和8年9月の検証報告を経て、具体的な運用方法が確定する予定です。
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【生成AI×認知心理学】巨大LLM時代にこそRAGが必要な理由|記号接地問題とエピソード記憶の視点から
Jan 04, 2026本記事は、生成AIの活用を検討する企業のDX推進担当者やAIエンジニアに向けて執筆しています。「LLMのコンテキストウィンドウが広がれば、RAGは不要になるのではないか」という疑問に対し、認知心理学の視点から明確な答えを提示します。
生成AIの進化に伴い「RAG不要論」が聞こえる一方で、認知心理学の視点で見るとRAGは依然として不可欠です。本記事では、「短期記憶・長期記憶・メンタルモデル」のアナロジーを用いて、AIの動作原理を解説します。さらに「記号接地問題」と「エピソード記憶」という概念から、AIを実務に接地(グラウンディング)させるためのRAGの本質的な役割を明らかにします。
はじめに:AIは人の脳と同じ構造で働いている
生成AIの仕組みは、認知心理学における人間の記憶モデルと驚くほど類似しています。この類似性を理解することで、RAGがなぜ必要なのかが明確になります。本章では、認知心理学の3つの要素を用いて、生成AIの動作原理を解説します。
認知心理学で読み解く3つの要素
生成AIの構成要素は、認知心理学における「短期記憶」「長期記憶」「メンタルモデル」に対応しています。この対応関係を理解することが、RAGの本質を把握する第一歩です。
1つ目の要素は「プロンプト」です。プロンプトは、認知心理学における短期記憶(ワーキングメモリ)に相当します。人間が作業机の上に広げられる資料には限りがあるように、プロンプトに入力できる情報量にも制約があります。この作業机では、今まさに取り組んでいるタスクに必要な情報だけを扱います。
2つ目の要素は「RAG(Retrieval-Augmented Generation)」です。RAGは、認知心理学における長期記憶に相当します。人間が必要な時に書庫から資料を取り出すように、RAGは膨大なドキュメントの中から関連情報を検索して取得します。この書庫には、マニュアル、過去の議事録、成功・失敗事例など、組織の知識が蓄積されています。
3つ目の要素は「LLM本体」です。LLM本体は、認知心理学におけるメンタルモデルに相当します。メンタルモデルとは、人が頭の中に作る「世界の理解の仕方」のことです。LLMは大量のテキストから学習した「思考の枠組み」を持っており、入力された情報をこの枠組みで解釈して応答を生成します。優秀なコンサルタントが持つ「ものの見方」のようなものです。
この3つの要素の関係は、次のように整理できます。LLM(コンサルタント)は優れた思考の枠組みを持っています。しかし、そのコンサルタントが適切な判断を下すためには、作業机(プロンプト)に必要な情報が載っていなければなりません。そして、その情報は書庫(RAG)から適切に取り出される必要があります。
なぜ巨大LLMになってもRAG(書庫)が必要なのか?
LLMのコンテキストウィンドウ(入力可能な文字数)は急速に拡大しています。しかし、この拡大によってRAGが不要になるわけではありません。本章では、その理由を2つの観点から解説します。
プロンプト(作業机)の限界と「継続性」の問題
コンテキストウィンドウが拡大しても、プロンプトには本質的な限界があります。その限界とは、「継続性」と「効率性」の問題です。
継続性の問題は、会話が途切れるたびに作業机がリセットされることに起因します。人間が複数日にわたるプロジェクトを進める場合、毎朝すべての資料を最初から読み直すことはしません。必要な情報は書庫に整理しておき、必要な時に取り出します。同様に、AIとの対話においても、過去の会話履歴や業務文脈を毎回プロンプトに含めることは現実的ではありません。
効率性の問題は、情報量と処理速度のトレードオフに関係します。作業机が大きくなったからといって、すべての資料を常に広げておくのは非効率です。100万文字のコンテキストウィンドウがあっても、そのすべてを使うと処理時間が長くなり、コストも増大します。必要な情報だけを必要な時に取り出す仕組みが、実務では不可欠です。
メンタルモデルを「絞り込む」という役割
RAGには、情報を取り出すだけでなく、LLMの思考を「絞り込む」という重要な役割があります。この絞り込みがなければ、AIは一般論や幻覚を語り出してしまいます。
LLMは「何でも知っている」が故に、制約がないと広すぎる可能性の中を彷徨います。たとえば、「契約書のレビュー」を依頼した場合、一般的な法律知識に基づいた回答が返ってくるかもしれません。しかし、実際に必要なのは「自社の契約テンプレート」や「過去の修正履歴」に基づいた具体的なアドバイスです。
RAGとプロンプトは、この広すぎる可能性を「特定の業務・文脈」に強制的にフォーカスさせる装置です。書庫から取り出した具体的な資料が作業机に載ることで、コンサルタント(LLM)は「この文脈で」「この資料に基づいて」考えるようになります。この制約こそが、実務で使えるAIを実現するための鍵です。
AIの最大の弱点「記号接地問題」とグラウンディング
AIには、人間には当たり前に備わっている能力が欠けています。それは「言葉の意味を現実と結びつける能力」です。本章では、この「記号接地問題」とその解決策としての「グラウンディング」について解説します。
言葉の意味を知らないAI(記号接地問題とは)
記号接地問題とは、AIが言葉を「記号」として処理しているだけで、その意味を現実体験と結びつけていないという問題です。この問題があるからこそ、AIは平気で嘘をつきます。
この問題を理解するために、辞書のたとえを使いましょう。辞書で「りんご」を引くと、「バラ科の落葉高木、またはその果実」と書かれています。では「バラ科」とは何か。辞書を引くと別の言葉で説明されています。この連鎖は永遠に続き、言葉は言葉でしか説明されません。しかし私たちは、実際にりんごを見て、触って、食べた経験があるからこそ、「りんご」という言葉の意味を理解しています。
AIには、この「実際に経験する」という回路がありません。AIは大量のテキストから言葉同士の関係性を学習していますが、言葉が指し示す現実を体験したことはありません。そのため、言葉の統計的なパターンに基づいて「それらしい」文章を生成しますが、その内容が現実と一致している保証はないのです。これがハルシネーション(幻覚)の根本原因です。
RAGによる「グラウンディング(接地)」
RAGは、AIの思考を「現実」に繋ぎ止める装置として機能します。この繋ぎ止める行為を「グラウンディング(接地)」と呼びます。
グラウンディングとは、もともと電気工学の用語で「接地」を意味します。電気機器を地面(Ground)に接続することで、余分な電流を逃がし、機器を安定させます。同様に、
Duration: 00:05:54令和8年度診療報酬改定|改定率+3.09%の内訳と5つの重要ポイント
Jan 03, 2026令和7年12月24日の予算大臣折衝を経て、令和8年度診療報酬改定の改定率が決定しました。令和6年度改定以降の経営環境悪化を踏まえた緊急対応と、物価上昇への本格的な対応が盛り込まれています。本稿では、中央社会保険医療協議会総会(第639回)で示された改定率の内訳と制度変更のポイントを解説します。
今回の改定の要点は5つです。診療報酬本体は2年度平均で+3.09%の引き上げとなり、賃上げ分+1.70%と物価対応分+0.76%が主な内訳です。施設類型ごとにメリハリをつけた配分が行われ、特に病院への重点配分が図られました。薬価等は▲0.87%の引き下げとなります。制度面では、医師偏在対策や経営情報の見える化に向けた対応が盛り込まれました。
診療報酬本体の改定率
診療報酬本体の改定率は、2年度平均で+3.09%です。令和8年度は+2.41%(国費2,348億円程度)、令和9年度は+3.77%となります。施行日は令和8年6月です。
この改定率は、当初予算段階から所要の歳出歳入を織り込む運営への質的転換を図る観点で設計されました。「経済財政運営と改革の基本方針2025」および「強い経済を実現する総合経済対策」に基づき、施設類型ごとの費用構造や経営実態を踏まえた対応が行われています。各科改定率は、医科+0.28%、歯科+0.31%、調剤+0.08%です。
改定率の内訳
改定率+3.09%は、6つの要素で構成されています。賃上げ分が+1.70%、物価対応分が+0.76%、食費・光熱水費分が+0.09%、緊急対応分が+0.44%です。効率化による▲0.15%を差し引き、その他改定分+0.25%が加わります。
賃上げ分+1.70%は、医療関係職種の処遇改善を目的としています。令和8年度・令和9年度それぞれで+3.2%のベースアップ実現を支援し、看護補助者と事務職員については5.7%のベースアップを目指します。賃上げ分のうち+0.28%は、医療機関の賃上げ余力回復のための特例的な対応として措置されました。
物価対応分+0.76%は、施設類型ごとに配分されます。病院は+0.49%、医科診療所は+0.10%、歯科診療所は+0.02%、保険薬局は+0.01%です。高度機能医療を担う病院(大学病院を含む)については、物価高の影響を受けやすいことを踏まえ、+0.14%の特例的な対応が追加されました。
食費・光熱水費分+0.09%では、入院時の食費基準額を1食あたり40円引き上げます。光熱水費基準額は1日あたり60円の引き上げです。患者負担については、低所得者や指定難病患者等への配慮措置が設けられています。
緊急対応分+0.44%は、令和6年度改定以降の経営環境悪化に対応するものです。病院に+0.40%、医科診療所に+0.02%、歯科診療所に+0.01%、保険薬局に+0.01%が配分されます。
効率化▲0.15%は、後発医薬品への置換え進展を踏まえた処方・調剤評価の適正化によるものです。在宅医療・訪問看護関係の評価適正化や、長期処方・リフィル処方の取組強化も含まれています。
薬価等の改定
薬価等は合計で▲0.87%の引き下げです。内訳は、薬価が▲0.86%(国費▲1,052億円程度)、材料価格が▲0.01%(国費▲11億円程度)です。
薬価は令和8年4月施行、材料価格は令和8年6月施行となります。薬価制度改革では、市場拡大再算定の類似品の薬価引下げ(いわゆる共連れ)が廃止されます。この変更は、製薬企業の予見可能性を高める観点から行われました。
診療報酬制度の関連事項
制度面では、4つの重要な対応が示されました。令和9年度の調整、賃上げの実効性確保、医師偏在対策、経営情報の見える化です。
令和9年度の調整については、経済・物価動向が見通しから大きく変動した場合に対応します。令和9年度予算編成において加減算を含む調整を行うため、令和8年度の医療機関の経営状況調査を実施します。
賃上げの実効性確保では、より多くの職種を対象とした仕組みを構築します。令和6年度改定で入院基本料や初・再診料により賃上げ原資が配分された職種(40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師・薬局の勤務薬剤師、事務職員、歯科技工所等で従事する者)についても、ベースアップ評価料の対象職種と同様の実効性確保の仕組みが適用されます。
医師偏在対策では、診療報酬上の減算措置が導入されます。外来医師過多区域において無床診療所の新規開業者が都道府県知事からの要請に従わない場合が対象です。医師多数区域での更なるディスインセンティブ措置の在り方や、重点医師偏在対策支援区域における医師手当事業に関する診療報酬での財源確保の在り方については、令和10年度改定で結論を得ることとされました。
経営情報の見える化では、MCDB(医療法人の経営情報のデータベース)の活用が進みます。職種別の給与・人数の報告義務化を含め、令和8年中に必要な見直しについて結論を得る予定です。診療所の「その他の医業費用」の内容把握など、報告様式の精緻化も検討されます。
まとめ
令和8年度診療報酬改定は、2年度平均で+3.09%のプラス改定となりました。賃上げ分+1.70%と物価対応分+0.76%を中心に、施設類型ごとにメリハリをつけた配分が行われます。特に病院への重点配分と、看護補助者・事務職員への手厚い賃上げ支援が特徴です。制度面では、賃上げ実効性確保の仕組み構築、医師偏在対策の強化、経営情報の見える化が進められます。令和9年度には経済・物価動向を踏まえた調整が予定されており、継続的な対応が図られる見込みです。
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【2025年12月】医療保険制度改革の全体像|出産費用の無償化から高額療養費まで5つの改革ポイント
Jan 02, 2026令和7年12月25日、社会保障審議会医療保険部会は「議論の整理」を取りまとめました。この議論の整理は、骨太の方針2025や経済・財政新生計画改革実行プログラム2024に基づき、令和7年9月18日以降13回にわたる議論の成果です。2040年に高齢者数がピークを迎えることを見据え、全世代型社会保障の構築に向けた改革の方向性が示されました。
議論の整理では、4つの視点から5つの改革パッケージが提示されています。第一に、高額療養費制度の見直しによるセーフティネット機能の確保です。第二に、出産費用の現物給付化や国民健康保険における子育て世代支援など次世代支援の強化です。第三に、金融所得の勘案や高齢者窓口負担の在り方など世代間公平の確保です。第四に、OTC類似薬の自己負担見直しや長期収載品の選定療養拡充など効率的な給付の推進です。第五に、国民健康保険制度改革の推進です。
セーフティネット機能の確保:高額療養費制度の見直し
高額療養費制度の見直しは、専門委員会で8回にわたり多様な議論が行われました。この議論では、患者団体や保険者、医療関係者、学識経験者からのヒアリングが実施され、複数の事例に基づく経済的影響のイメージやデータを踏まえた検討が行われています。
専門委員会では、令和7年12月16日に「高額療養費制度の見直しを行っていく場合の基本的な考え方」がとりまとめられました。この基本的な考え方は、医療保険制度改革全体の中で全体感を持った見直しが行われることを前提としています。高齢者からのヒアリングでは、外来特例の維持を求める声や、制度の周知・説明の改善を求める意見が出されました。
現役世代及び次世代の支援強化:出産に対する新たな給付体系の創設
出産費用については、出産育児一時金が令和5年度に原則42万円から原則50万円に引き上げられた後も上昇が続き、妊産婦の経済的負担が増加しています。この状況を踏まえ、現行の出産育児一時金に代わる新たな給付体系の創設が提案されました。
新たな給付体系の骨格は、保険診療以外の分娩対応に要する費用について、全国一律の水準で保険者から分娩取扱施設に直接支給する現物給付化です。具体的には、療養の給付とは異なる出産独自の給付類型を設け、妊婦に負担を求めず費用の10割を保険給付とします。分娩1件当たりの基本単価を国が設定し、手厚い人員体制やハイリスク妊婦の受入体制などを評価する加算を設けることが適当とされています。
新たな給付体系への移行については、妊産婦の期待に応えて早期施行を求める意見がある一方、個々の施設が対応できる十分な時間的余裕を確保すべきとの意見もありました。当分の間は施設単位で現行の出産育児一時金の仕組みも併存させ、可能な施設から新制度に移行していく方針が示されています。
国民健康保険においては、子育て世帯の負担軽減のため、未就学児に係る均等割保険料の5割軽減措置の対象を高校生年代まで拡充する方向性が示されました。この拡充は地方団体からも要望が強く、法改正を含めた対応が求められています。
世代内、世代間の公平の確保:金融所得の勘案と高齢者窓口負担
高齢者の窓口負担割合について、議論の整理では高齢者の状態像の変化が確認されています。高齢者の受診率や受診日数は改善傾向にあり、医療費水準は5歳程度若返っています。また、高齢者の就業率・平均所得は上昇傾向にあり、所得は増加・多様化しています。
窓口負担割合の見直しについては、3割負担や2割負担の対象者拡大、負担割合の区切りとなる年齢の引き上げ、負担割合のきめ細かい設定といった複数の選択肢が議論されました。経済対策では「医療費窓口負担に関する年齢によらない真に公平な応能負担の実現」について、令和7年度中に具体的な骨子の合意、令和8年度中に具体的な制度設計を行い順次実施することとされています。
金融所得の勘案については、確定申告を行わない場合に保険料や窓口負担等の算定で勘案されない不公平を是正するため、法定調書を活用する方法が提案されました。まずは後期高齢者医療制度から金融所得を勘案する方針です。具体的な法制上の措置は令和7年度中に講じるとされています。
必要な医療の提供と効率的な給付の推進:薬剤自己負担と入院時費用
OTC類似薬の保険給付の見直しでは、医療機関における必要な受診を確保しつつ、薬剤を保険適用としたまま薬剤費の一部を保険給付の対象外とする新たな仕組みの創設が提案されました。この仕組みでは、OTC医薬品と成分が同一で代替性が高い医療用医薬品について、保険外併用療養費制度の中で患者に「特別の料金」を求めます。
特別の料金を徴収しない配慮対象として、こども、がん患者や難病患者など配慮が必要な慢性疾患を抱えている方、入院患者や処置等の一環でOTC類似薬の処方が必要な方、医師が対象医薬品の長期使用等が医療上必要と考える方が挙げられています。
長期収載品の選定療養については、令和6年度の制度導入後、後発医薬品の使用割合が約4ポイント上昇し90%以上となりました。この効果を踏まえ、患者負担の水準を価格差の1/2以上へと引き上げる方向で検討が進められています。後発医薬品の安定供給確保に取り組みながら、供給状況や患者負担の変化に配慮することが求められています。
入院時の食費については、食材料費の高騰を踏まえ、令和6年6月に1食当たり30円、令和7年4月にさらに1食当たり20円の引上げが行われました。令和7年4月以降も食材料費等の上昇が続いていることから、標準負担額のさらなる引上げの方向で見直しが検討されています。入院時の光熱水費についても、令和6年度介護報酬改定において多床室の居住費の基準費用額・負担限度額が60円引き上げられたことを踏まえ、同様に引上げの方向で見直しが検討されています。いずれも所得区分等に応じた一定の配慮が行われる方針です。
効果が乏しいというエビデンスがあることが指摘されている医療については、「腰痛症(神経障害性疼痛を除く)に対するプレガバリン処方」の適正化を新たに医療費適正化計画に位置付けることとされました。今後も厚生労働科学研究や医療技術評価分科会での学会等からの提案募集などから対象を探索し、医療費適正化計画への追加や診療報酬上の取り扱いなどについて引き続き検討が行われます。
国民健康保険制度改革の推進
国民健康保険制度については、被保険者の年齢構成が高く医療費水準が高いこと、被保険者の所得水準が低いこと、小規模保険者が多く財政運営が不安定になりやすいことなどの課題があります。これらの課題に対応するため、複数の見直しが提案されています。
具体的な見直し内容として、子どもに係る均等割保険料の軽減措
Duration: 00:05:15日本の高額療養費制度は皆保険の屋台骨:アメリカUSAプランが示す医療保険改革の本質
Jan 01, 2026日本では高額療養費制度の変更が議論されています。UCLA准教授の津川友介氏は、自身のnote記事「日本の高額療養費制度と、いまアメリカで議論されている最先端の医療保険制度の関係について」(2025年12月25日公開)で、アメリカの医療経済学者ダナ・ゴールドマン氏が提唱する「USAプラン」を紹介し、日本の高額療養費制度が皆保険制度における「ど真ん中」の問題であると指摘しています。本記事では、津川氏のnote記事で紹介された内容を基に、高額療養費制度の本質と日本への示唆を解説します。
高額療養費制度は、医療費の自己負担に上限額を設ける制度です。津川氏によれば、この制度は他国では「破滅的医療費保険制度(Catastrophic health insurance)」と呼ばれ、国民を破滅的医療費から保護するものです(出典:津川友介氏note記事、2025年12月25日)。世界保健機関(WHO)は、破滅的医療費を「家計の医療費自己負担額が家計の支払い能力の40%を超える状態」と定義しており、この状態では他の基本的な生活必需品が賄えなくなります。アメリカでは、医療に市場原理の効率性を維持しながら皆保険のような状態を達成する方法が議論されており、ダナ・ゴールドマン氏の「USAプラン」はその代表例です。この新しい医療保険プランは、すべての医療サービスをカバーするのではなく、セーフティネットとして機能するという考え方に基づいています。
USAプランの設計:所得に応じた自己負担構造
USAプランは、65歳未満の国民を対象に、所得ベースの自己負担額構造を採用しています(出典:津川友介氏note記事、2025年12月25日)。年収75,000ドル以下の家族には医療が無料で提供されます。年収75,000ドルを超える家族では、所得の10%までが免責金額となり、この金額までは保険は何もカバーしません。例えば、年収100,000ドルの4人家族の場合、1人あたりの自己負担額は2,500ドルです。
自己負担額には上限があります(出典:同上)。個人の自己負担額は1人あたり年間7,500ドル、または年収300,000ドルの4人家族の場合は年間3万ドルが上限です。平均すると、アメリカ人は約1,300ドルの個人自己負担額に直面することになります。予防医療や慢性疾患治療など、独立した第三者機関が「高価値医療」と認定した医療サービスは、自己負担から除外されます。この除外条項は、医療費の自己負担の障壁が必要な予防医療を妨げないようにしながら、日常的な医療サービスを受けるかどうかに関してより合理的な判断をすることを目的としています。
USAプランの経済哲学:モラルハザードの抑制とセーフティネットの両立
ゴールドマン氏の提案は、日常的な軽症医療に対するモラルハザードを引き起こす医療保険のデメリットを取り除くものです(出典:津川友介氏note記事、2025年12月25日)。津川氏は別のnote記事「モラルハザードとは、コンビニ受診のことである」(2024年10月16日公開)で、モラルハザードについて詳しく解説しています。モラルハザードとは、医療保険の影響で患者が支払う価格が市場価格よりも低くなっているため、本来必要としているサービスよりも多くの量のサービスを消費してしまう現象のことです。日本で言われている「コンビニ受診」のことを経済学ではモラルハザードと呼び、医療保険のようなシステムがあるときに起こるべくして起こる人間の行動パターンの変化を指します。
ランド医療保険実験により、医療サービスの価格弾力性は-0.2~-0.3であることが判明しました(出典:津川友介氏note記事「モラルハザードとは、コンビニ受診のことである」、2024年10月16日)。これは、自己負担の価格が10%上昇すると、患者が希望する医療サービスの量が2~3%下がることを意味します。USAプランは、この経済原理を活用し、日常的な医療サービスに関して国民がより合理的な判断をすることを促します。
一方で、USAプランはセーフティネットとして高額な医療費による経済的リスクから国民を守ります(出典:津川友介氏note記事、2025年12月25日)。高額な医療費負担によって不幸になってしまう人や、破産してしまう人を防ぐという、医療保険の本来の役割を果たします。ゴールドマン氏は、医療保険は「すべての人にすべての医療サービスを提供する必要はないが、すべての人に対するセーフティネットであるべき」という考え方を示しています。
高額療養費制度の国際的位置づけと日本の課題
高額療養費制度は日本特有のものではありません(出典:津川友介氏note記事、2025年12月25日)。津川氏によれば、ほぼすべての先進国で存在する制度です。ゴールドマン氏のUSAプランのように、これさえきちんと維持しておけば、あとは100%自己負担であっても「皆保険」の目的は達成できると考えられているような、皆保険の屋台骨とも言える制度です。
津川氏は、アメリカやシンガポールのように、健康リスクに関して自己責任の価値観の強い国であっても、そして医療保険への加入を義務としない国であっても、高額療養費制度だけは維持しておく必要があると考えられていると指摘しています(出典:同上)。この点は、高額療養費制度が単なる補助的な制度ではなく、医療保険制度の根幹をなすものであることを示しています。
USAプランの自己負担額の上限額と比べても、日本の高額療養費制度の上限額は現時点でも高く、さらに今後引き上げられることが検討されており、皆保険としての役割を果たさなくなってきていることを示唆しています(出典:同上)。ダナ・ゴールドマン氏とキップ・ハゴピアン氏は、論文「The Health-Insurance Solution」(National Affairs, 2012)において、破滅的医療費保険の設計原理を詳細に論じており、所得に応じた免責金額の設定や自己負担上限額の重要性を強調しています。
日本への示唆:窓口負担割合と上限額のトレードオフ
津川氏は、USAプランが示す重要な示唆として次の点を指摘しています(出典:津川友介氏note記事、2025年12月25日)。日本の医療費の窓口自己負担は現在1~3割ですが、USAプランが意味しているのは、窓口負担割合を5割などに上げても、高額療養費制度の自己負担上限額を低めに設定しておけば、国民が医療サービスによる経済的リスクを負うことはないということです。
この考え方は、医療保険制度の設計において重要な選択肢を提示しています。日常的な医療サービスでは患者がより多くを自己負担することで、医療サービスの価値を意識した受診行動を促す一方、高額な医療費が発生した場合には確実に保護されるという、メリハリのある制度設計が可能になります。
津川氏は、日本の高額療養費制度をどうするかは、日本の皆保険制度における枝葉の問題ではなく
Duration: 00:16:30AIの文章がわかりやすい理由|日本人が知らない「パラグラフ・ライティング」の正体
Jan 01, 2026生成AIが書く文章を読んで、「自分より上手い」と感じたことはありませんか。ChatGPTやClaudeの出力は、結論が早く、論理の流れが明確です。この「わかりやすさ」には理由があります。AIは英語圏で標準的に教えられる「パラグラフ・ライティング」という文章技法を学習しており、その構造を日本語でも再現しているのです。
本記事では、パラグラフ・ライティングの基本と、日本人がこの技法を学ぶべき理由を解説します。パラグラフ・ライティングとは「1つの段落に1つのトピック」を書く文章術です。この技法を身につければ、読み手に負担をかけない、伝わる文章が書けるようになります。さらに、AIへの指示精度も向上し、ビジネスコミュニケーション全体の質が上がります。
なぜAIの文章は結論が早いのか
生成AIの文章には共通する特徴があります。結論が冒頭にあり、理由や具体例がその後に続きます。この構造こそが、多くの人が感じる「AI文章の整理された感」の正体です。
AIが結論を先に書くのは、英語の文章構造を学習しているからです。英語圏では、ビジネス文書やアカデミック・ライティングにおいて「最初に結論を述べる」ことが基本ルールとなっています。AIは大量の英語テキストから、この論理構造を学習しました。その結果、日本語で文章を生成する際にも、結論先行型の構造を適用しているのです。
一方、日本語の伝統的な文章構造は異なります。「起承転結」に代表されるように、日本語では結論を最後に持ってくることが多いです。読み手は文章の最後まで読まなければ、書き手の主張がわかりません。この構造の違いが、AIの文章を「わかりやすい」と感じさせる原因です。
日本人が学校で教わらなかった「パラグラフ・ライティング」
パラグラフ・ライティングとは、「1つの段落に1つのトピック」を書く文章技法です。英語圏では「One Paragraph, One Idea」として、小学校から徹底的に教えられます。しかし、日本の国語教育ではこの概念をほとんど扱いません。
パラグラフ・ライティングの核心は「トピックセンテンス」にあります。トピックセンテンスとは、段落の冒頭に置く要約文のことです。読み手はトピックセンテンスだけを拾い読みすれば、文章全体の要点を把握できます。この構造があるからこそ、長い文章でも素早く内容を理解できるのです。
日本語の文章が「わかりにくい」と言われる原因は、この構造の欠如にあります。日本語話者は、文脈から意味を推測する「ハイコンテキスト」なコミュニケーションに慣れています。書き手は「察してもらえる」ことを前提に、結論を明示しないまま文章を終えることも少なくありません。しかし、この習慣はビジネス文書では致命的です。読み手に推測を強いる文章は、誤解を生み、時間を浪費させます。
AI時代だからこそ、人間が「構造」を学ぶべき理由
パラグラフ・ライティングを身につけることで、2つのメリットが得られます。1つ目は、読み手の負担を減らせることです。2つ目は、AIへの指示精度が向上することです。
読み手の負担が減る理由は、推測コストの削減にあります。論理構造が明確な文章では、読み手は書き手の意図を推測する必要がありません。トピックセンテンスを読めば段落の内容がわかり、接続詞を追えば論理の流れが見えます。この構造があれば、読み手は一読で内容を理解できます。
AIへの指示精度が向上する理由は、AIと人間の「共通言語」にあります。AIはパラグラフ・ライティングの構造を理解しています。したがって、人間が同じ構造で指示を出せば、AIは意図を正確に把握できます。曖昧な指示では曖昧な出力しか得られませんが、構造化された指示は構造化された出力を生みます。
パラグラフ・ライティングを実践するには、3つの基本ルールを守ってください。第1に、トピックセンテンスを段落の先頭に置きます。第2に、接続詞で論理をつなぎます。第3に、1つの段落に複数の話題を混ぜません。この3つを意識するだけで、文章のわかりやすさは劇的に向上します。
まとめ:AIを「論理の先生」にする
生成AIの文章がわかりやすい理由は、パラグラフ・ライティングという文章技法にあります。この技法は英語圏では常識ですが、日本の教育では教わりません。だからこそ、今から学ぶ価値があります。
AIを「ライバル」と見なす必要はありません。むしろ「論理の先生」として活用してください。AIの出力を分析し、トピックセンテンスの置き方や接続詞の使い方を観察するのです。その学びを自分の文章に取り入れれば、「何が言いたいの?」と言われることはなくなります。パラグラフ・ライティングは、AI時代のビジネスパーソンにとって必須のスキルです。
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医療に市場原理が通用しない7つの理由|UCLA津川友介准教授が解説する医療経済学
Dec 31, 2025日本では社会保障費の増加に伴い、医療制度への批判的な意見が増えています。「医療を規制緩和すれば効率化するのではないか」という主張がその代表例です。しかし、医療経済学の研究成果は、この考えに明確な反論を示しています。
UCLA准教授で医療政策学者の津川友介氏は、noteの記事「なぜ医療に市場原理は通用しないのか?」で、医療に市場原理が通用しない理由を体系的に解説しています。津川氏によれば、医療保険では「モラルハザード」と「逆選択」、医療サービスでは「情報の非対称性」「不完全競争」「緊急性と予測不能性」「医療保険による市場のゆがみ」「外部効果」の計7つの要因が市場原理の機能を阻害します。本稿では、この記事の内容を紹介しながら、医療における市場の失敗について解説します。
先進国はなぜ医療を規制するのか
津川氏は記事の冒頭で、先進国における医療規制の普遍性を指摘しています。規制が最も緩いとされるアメリカでさえ、医療は強い規制のもとで管理されています。医療が規制されていないのは、医療保険も医療機関も整備されていない発展途上国のみであり、先進国はすべて医療に規制を導入してきた歴史があります。
この背景には、医療では市場原理が機能しないという経済学的な事実があります。津川氏は「医療経済学は医療における市場の失敗(Market failure)を学ぶ学問だと言っても過言ではありません」と述べています(津川友介「なぜ医療に市場原理は通用しないのか?」note、2025年12月22日)。医療を規制緩和すると、患者の医療費は高騰し、医療へのアクセスは悪化するというのが経済学の示す結論です。
医療保険に市場原理が通用しない2つの理由
医療保険で市場原理が機能しない理由は、モラルハザードと逆選択の2つです。これらは医療経済学における最重要概念とされています。
モラルハザードとは、医療保険によって患者の自己負担額が本来の価格より低くなるため、需要が経済学的に最適な水準を超えてしまう現象です。津川氏の別記事「モラルハザードとは、コンビニ受診のことである」によれば、これは道徳的な問題ではなく、合理的な人間であれば当然起こる行動パターンの変化です。日本でいう「コンビニ受診」が、経済学でいうモラルハザードに該当します。
逆選択とは、不健康な人ほどカバーの手厚い医療保険を購入し、健康な人ほど安価なプランを選ぶ現象です。津川氏の記事「医療経済学の「逆選択」ってなに?」では、ハーバード大学の医療保険プランで実際に起きた「逆選択の死のスパイラル」の事例が紹介されています。1995年から1998年にかけて、高価で手厚いプランは高リスクの人ばかりになり保険料が高騰、最終的に市場から撤退に追い込まれました。
医療サービスに市場原理が通用しない5つの理由
医療サービスにおいても、市場原理は機能しません。津川氏は5つの理由を挙げています。
第一の理由は、情報の非対称性です。患者は病院に行く前に自分がどのような検査や治療を必要としているか分からず、医療費がいくらかかるかも把握できません。医師からMRIが必要と言われれば、その判断の妥当性を評価することは困難です。テレビを購入する際には価格や機能を比較検討できますが、医療サービスではそれが難しいのです。
第二の理由は、不完全な競争市場です。大都市圏を除けば、同じ機能を持つ病院が地域に1つしかないことは珍しくありません。選択肢が限られた状態では、競争原理は働きません。アメリカでは医療機関の統合が進んだ結果、医療の質は改善せず医療費だけが高騰するという現象が認められています。
第三の理由は、多くの病気の緊急性と予測不能性です。胸痛で病院を受診したところ急性心筋梗塞と診断された場合、その段階で隣町の評判の良い病院に移ることは難しいのが実情です。痛みや呼吸苦などの症状があれば、冷静な判断すら困難になります。このような状況では、病院側が価格を吊り上げても患者は「ノー」と言えません。
第四の理由は、医療保険による市場のゆがみです。自由市場では売り手の価格と買い手の支払意思額が均衡しますが、医療保険があると患者は3割負担で済むため、保険がない場合より多くの医療サービスを希望します。自由市場を導入しても、取引量は経済学的な最適水準を超えてしまいます。
第五の理由は、外部効果です。感染症の治療を例にとると、患者を治療すれば本人だけでなく周囲の人々も病気に感染するリスクが減ります。このような正の外部効果がある場合、自由市場に任せると取引量は社会的に最適な水準を下回ってしまいます。
アメリカのオバマケアに見る「規制された市場」
津川氏は、アメリカのオバマケアを「規制された市場」の例として紹介しています。アメリカでは民間保険会社と民間医療機関が強大な力を持っていたため、日本のような社会保険制度の導入は政治的に不可能でした。そこでオバマケアでは、市場の失敗を最小限にとどめるための規制を整備する方法が採られました。
この事例は、医療には市場原理が通用しないため、何らかの規制が必要であるという経済学の知見を裏付けています。医療は規制がないよりもあった方がうまく機能し、経済学的に最適な状態に近づくと考えられています。
まとめ
医療に市場原理が通用しない理由は、医療保険の2つの要因と医療サービスの5つの要因、計7つに整理できます。モラルハザード、逆選択、情報の非対称性、不完全競争、緊急性と予測不能性、医療保険による市場のゆがみ、外部効果です。これらの要因により、医療を規制緩和しても効率は改善せず、むしろ医療費の高騰とアクセスの悪化を招きます。津川氏の記事は、医療経済学の視点から医療制度を理解するための基礎を提供しています。
参考文献
* 津川友介「なぜ医療に市場原理は通用しないのか?」note、2025年12月22日
* 津川友介「モラルハザードとは、コンビニ受
Duration: 00:15:15OTC類似薬の保険給付見直しで薬剤費の自己負担が増加|2026年度から新制度スタート
Dec 30, 2025令和7年12月25日に開催された第209回社会保障審議会医療保険部会において、OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直しが議論されました。この見直しは、OTC医薬品で対応している患者との公平性確保と、現役世代の保険料負担軽減を目的としています。本記事では、令和8年度中に実施予定の新制度の内容を解説します。
新制度では、OTC医薬品と成分・投与経路が同一の医療用医薬品77成分(約1,100品目)に対し、薬剤費の4分の1を「特別の料金」として保険外負担とします。対象となる症状は、風邪・鼻炎・胃痛・便秘など日常的な軽症状が中心です。こどもやがん患者、難病患者、低所得者などには配慮措置が設けられ、特別の料金は徴収されません。
新制度創設の背景と目的
OTC類似薬の保険給付見直しは、2つの課題を解決するために創設されます。
第一の課題は、OTC医薬品利用者と医療用医薬品利用者の間に生じている不公平です。現役世代を中心に、平日の診療時間中に受診することが困難な患者は、OTC医薬品を自費で購入して対応しています。一方、同じ症状であっても医療機関を受診すれば、他の被保険者の保険料負担で医療用医薬品の給付を受けられます。この負担の不均衡が問題視されてきました。
第二の課題は、現役世代の保険料負担の増大です。高齢化の進展に伴い、医療費は増加を続けています。OTC医薬品で対応可能な軽症状にまで保険給付を行うことは、現役世代の保険料負担をさらに重くする要因となっています。
これらの課題を踏まえ、政府は保険外併用療養費制度の中に「特別の料金」を求める新たな仕組みを創設することを決定しました。この仕組みは長期収載品(後発医薬品のある先発医薬品)で既に導入されている方式を参考にしています。
対象となる医薬品と特別の料金
特別の料金の対象となる医薬品は、77成分・約1,100品目です。
対象医薬品の選定基準は、OTC医薬品との代替性の高さに基づいています。具体的には、OTC医薬品と成分が同一であること、投与経路が同一であること、一日最大用量が異ならないことの3条件を満たす医療用医薬品が機械的に選定されました。
主な対応症状は以下のとおりです。
* 鼻炎(内服・点鼻)
* 胃痛・胸やけ
* 便秘
* 解熱・痛み止め
* 風邪症状全般
* 腰痛・肩こり(外用)
* みずむし
* 殺菌・消毒
* 口内炎
* おでき・ふきでもの
* 皮膚のかゆみ・乾燥肌
特別の料金は、対象薬剤の薬剤費の4分の1と設定されました。患者は従来の定率負担(1〜3割)に加えて、薬剤費の4分の1を保険外負担として支払うことになります。
配慮措置の対象者
新制度では、特定の患者に対して特別の料金を徴収しない配慮措置が設けられます。
配慮措置の対象となるのは、以下の方々です。
* こども
* がん患者や難病患者など配慮が必要な慢性疾患を抱えている方
* 低所得者
* 入院患者
* 医師が対象医薬品の長期使用等が医療上必要と考える方
これらの配慮措置は、患者団体からのヒアリング結果を踏まえて設計されました。がん患者の疼痛治療や難病患者の長期治療には、OTC類似薬が不可欠なケースがあります。また、アトピー性皮膚炎などの慢性疾患では、症状コントロールのために継続的な投薬が必要です。こうした医療上の必要性がある場合には、追加負担を求めないこととしています。
今後のスケジュールと将来展望
新制度は令和8年度中に実施される予定であり、法改正を伴います。
実施に向けた技術的な検討として、対象医薬品の詳細な範囲や、長期使用等の医療上の必要性を判断する考え方などが専門家の意見を聞きながら進められます。
将来的には、制度の対象範囲を拡大する方針が示されています。令和9年度以降、OTC医薬品の対応する症状の適応がある処方箋医薬品以外の医療用医薬品の相当部分にまで対象を広げることが目指されています。また、特別の料金をいただく薬剤費の割合(現行4分の1)の引き上げも検討される予定です。
制度拡大に向けた環境整備として、政府は3つの取組を推進します。第一に、セルフメディケーションに関する国民の理解を深める取組です。第二に、OTC医薬品に関する医師・薬剤師の理解を深める取組です。第三に、医療用医薬品のスイッチOTC化に係る政府目標の達成に向けた取組です。
まとめ
OTC類似薬の保険給付見直しは、令和8年度中に実施予定の医療保険制度改革です。この改革は、OTC医薬品利用者との公平性確保と現役世代の保険料負担軽減を目的としています。対象は77成分・約1,100品目で、薬剤費の4分の1が特別の料金として保険外負担となります。こどもや慢性疾患患者、低所得者などには配慮措置が設けられており、医療上必要な場合には追加負担は求められません。
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【2025年12月決定】高額療養費制度の見直し内容を徹底解説|長期療養者・低所得者への配慮と負担変化
Dec 29, 2025高額療養費制度は、高齢化の進展や高額薬剤の開発・普及等を背景に、医療費全体の約2倍のスピードで伸びています。この状況を受け、厚生労働省は2025年5月に「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」を設置し、制度の見直しに向けた検討を進めてきました。本稿では、2025年12月25日に開催された第209回社会保障審議会医療保険部会・第9回専門委員会の合同会議で示された見直し内容について解説します。
今回の見直しは、長期療養者と低所得者への配慮を重視しながら、応能負担の考え方に基づいて所得区分を細分化する内容となっています。具体的には、多数回該当の金額を現行水準で据え置くとともに、新たに「年間上限」を導入して長期療養者の負担軽減を図ります。また、住民税非課税ラインを若干上回る年収200万円未満の方については、令和8年8月から多数回該当の金額を引き下げる措置を講じます。施行は令和8年8月(月額限度額見直し・年間上限導入)と令和9年8月(所得区分細分化)の2段階で行われ、国民や医療関係者への周知期間を確保したうえで順次実施されます。
見直しの背景と基本的な考え方
高額療養費制度の見直しは、医療保険制度全体の持続可能性を確保するために行われます。高齢化の進展や医療の高度化、とりわけ高額薬剤の開発・普及等を背景に医療費全体が増大するなか、現役世代の保険料負担に配慮しつつ、セーフティネット機能を将来にわたって堅持することが求められています。専門委員会では、患者団体や保険者、医療関係者、学識経験者など様々な立場の方からヒアリングを行い、計8回にわたる議論を経て基本的な考え方を取りまとめました。
見直しの基本方針は4つの柱で構成されています。第1に、長期療養者への配慮として多数回該当の金額据え置きと年間上限の導入を行います。第2に、低所得者への配慮として住民税非課税区分の限度額引上げ率を緩和するとともに、年収200万円未満の方の多数回該当金額を引き下げます。第3に、応能負担の強化として所得区分を細分化し、所得に応じたきめ細かい制度設計とします。第4に、70歳以上の外来特例について応能負担の考え方を踏まえた見直しを行います。
現行制度の課題として、所得区分があまりにも大括りになっている点が挙げられます。年収約370万円の方と年収約770万円の方が同じ区分に整理され、限度額も同じ取扱いとなっています。また、所得区分が1段階変更となるだけで限度額が2倍程度に増加するなど、応能負担の考え方からは改善の余地があります。そのため、住民税非課税区分を除く各所得区分を3区分に細分化し、所得区分の変更に応じて限度額が急増または急減しない制度設計とすることが適当とされました。
具体的な見直し内容
月額限度額の見直しは、令和8年8月から実施されます。70歳未満の自己負担限度額について、年収約1,160万円以上の区分では現行の252,600円+1%から270,300円+1%に引き上げられます。年収約770万円〜約1,160万円の区分では現行の167,400円+1%から179,100円+1%に、年収約370万円〜約770万円の区分では現行の80,100円+1%から85,800円+1%に、それぞれ見直されます。一方、多数回該当の金額は全ての所得区分で現行水準を維持し、長期療養者の負担増加を防ぎます。
所得区分の細分化は、令和9年8月から実施されます。年収約1,160万円以上の区分は、年収約1,650万円以上(342,000円+1%)、年収約1,410万円〜約1,650万円(303,000円+1%)、年収約1,160万円〜約1,410万円(270,300円+1%)の3区分に細分化されます。同様に、年収約770万円〜約1,160万円の区分と年収約370万円〜約770万円の区分もそれぞれ3区分に細分化されます。この細分化により、応能負担の考え方に基づいたよりきめ細かい制度設計が実現します。
年間上限の導入は、今回の見直しにおける重要な新制度です。現行制度では、直近12ヶ月の間に3回以上の高額療養費制度の利用がなければ多数回該当の対象とならず、長期療養者であっても大きな経済的負担が生じる場合があります。新たに導入される年間上限は、令和8年8月時点では年収約370万円〜約770万円の区分で53万円(月額平均約44,200円)に設定され、令和9年8月の所得区分細分化後は細分化後の各区分に適用されます。月単位の限度額に到達しない方であっても、年間上限に達した場合にはそれ以上の負担は不要となり、保険者から償還を受けられます。まずは患者本人からの申出を前提とした運用で開始されます。なお、年収約200万円未満の区分に該当することが確認できた方については、年間上限41万円が適用され、令和9年8月以降に償還払いとなります。
外来特例の見直しも実施されます。70歳以上の高齢者に設けられている外来特例について、応能負担の考え方を踏まえた限度額の見直しが行われます。住民税非課税区分では月額上限が現行の8,000円から11,000円(令和8年8月)、13,000円(令和9年8月)に引き上げられます。現行制度では住民税非課税区分に年間上限がありませんが、今回の見直しで新たに年間上限(9.6万円)が導入されるため、毎月上限額を利用される方の年間最大負担額は現在と変わりません。一方、年金年収約80万円以下の一定所得以下の区分では、月額上限8,000円が据え置かれ、低所得者への配慮がなされています。外来特例の対象年齢については、「強い経済」を実現する総合経済対策(令和7年11月21日閣議決定)において「医療費窓口負担に関する年齢によらない真に公平な応能負担の実現」が掲げられていることを踏まえ、高齢者の窓口負担の見直しと併せて具体案を検討し、一定の結論を得ることとされています。
患者負担への影響
長期療養者の負担は、今回の見直しにおいて手厚く配慮されています。多数回該当の対象者については、多数回該当の金額が据え置かれるため負担額は変わりません。例えば、慢性骨髄性白血病で前年から継続して多数回該当となっている40歳代・女性(年収約480万円)のケースでは、見直し後も年間の自己負担額は22.2万円のまま維持されます。
年間上限の導入により、これまで多数回該当に該当しなかった長期療養者の負担は軽減されます。年収約370万円〜約510万円で現在の自己負担が76.7万円のケースでは、年間上限53万円の適用により年間約23.7万円の負担減となります。また、限度額見直しにより多数回該当から外れてしまう方についても、年間上限に該当することで年間約2.2万円の負担減となる見込みです。高額薬剤を単月処方された方(例:遺伝性網膜ジストロフィーでルクスターナ注を使用、薬価約4,960万円)に
Duration: 00:05:462040年を見据えた医療保険制度改革の全体像|5つの柱と今後の方向性
Dec 28, 2025社会保障審議会医療保険部会は、2025年9月から12回の議論を重ね、医療保険制度改革の方向性を「議論の整理(案)」としてまとめました。この改革は、2040年頃に現役世代が急速に減少し高齢者数がピークを迎えることを見据え、全世代で支え合う持続可能な医療保険制度の構築を目指すものです。
今回の改革は、セーフティネット機能の確保、現役世代・次世代への支援強化、世代間の公平確保、効率的な給付の推進、国民健康保険制度改革の5つの柱で構成されています。出産費用の現物給付化による妊婦負担の軽減、高額療養費制度の見直し、後期高齢者医療制度への金融所得の勘案、OTC類似薬の薬剤自己負担の見直しなど、幅広い施策が総合的なパッケージとして提案されています。本記事では、各改革の背景と具体的な内容を解説します。
改革の背景と4つの視点
今回の医療保険制度改革は、人口構造の変化と経済情勢の変化という2つの大きな背景を踏まえて検討されました。
人口構造については、2025年までに団塊の世代全員が75歳以上となり、その後は生産年齢人口の減少が加速します。現役世代の保険料負担の上昇を放置することは、医療保険制度の持続可能性の観点から適切ではありません。経済情勢については、物価や賃金の上昇により、日本経済が新たなステージに移行しつつあることへの対応が求められています。
これらの背景を踏まえ、医療保険部会は4つの視点から議論を進めました。第1の視点は、高度な医療を取り入れつつセーフティネット機能を確保し、命を守る仕組みを持続可能とすることです。第2の視点は、現役世代からの予防・健康づくりや出産等の次世代支援を進めることです。第3の視点は、世代内・世代間の公平をより確保し、全世代型社会保障の構築を一層進めることです。第4の視点は、患者にとって必要な医療を提供しつつ、より効率的な給付とすることです。
セーフティネット機能の確保|高額療養費制度の見直し
高額療養費制度の在り方については、医療保険部会の下に設置された「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」において、計8回にわたり多様な議論が行われました。
専門委員会には、保険者や労使団体、学識経験者に加え、患者団体の方など当事者やその声を伝える立場の方が参画しました。検討に当たっては、患者団体、保険者、医療関係者、学識経験者からのヒアリングを実施しています。複数の事例に基づく経済的影響のイメージやデータを踏まえた多角的かつ定量的な視点での議論も行われました。
専門委員会では「高額療養費制度の見直しを行っていく場合の基本的な考え方」がとりまとめられました。高齢者からのヒアリングでは、外来特例を利用する当事者から「この制度は絶対に廃止しないでほしい」という声が届いていること、制度の周知や説明の改善が強く求められていること、高額療養費制度は高齢者の生活を支える大切な仕組みであり今後も継続してほしいことなどの意見がありました。
現役世代及び次世代の支援強化|出産支援と子育て世代支援
現役世代及び次世代の支援強化として、出産に対する支援の強化、国民健康保険制度における子育て世代への支援拡充、協会けんぽにおける予防・健康づくりの取組の3つの施策が提案されています。
出産に対する新たな給付体系
出産費用については、少子化の進行や物価・賃金の上昇等を背景に、令和5年度に出産育児一時金が原則42万円から原則50万円に引き上げられた後も上昇し、妊産婦の経済的負担が増加しています。現行の出産育児一時金という給付方式では、出産に伴う経済的負担軽減の目的が十分に達せられなくなりつつあると考えられます。
新たな給付体系では、現行の出産育児一時金に代えて、保険診療以外の分娩対応に要する費用について、全国一律の水準で保険者から分娩取扱施設に対して直接支給する現物給付化を図ります。分娩を取り扱う病院、診療所及び助産所における分娩を対象に、出産独自の給付類型を設けた上で、妊婦に負担を求めず、設定した費用の10割を保険給付とします。
分娩1件当たりの基本単価を国が設定し、手厚い人員体制を講じている場合やハイリスク妊婦を積極的に受け入れる体制を整備している場合など、施設の体制・役割等を評価して加算を設けることが適当とされました。また、全ての妊婦を対象とした現金給付を設けることで、保険診療が行われた際の一部負担金など、それ以外に生じる費用についても一定の負担軽減が図られます。
新たな給付体系への移行時期については、当分の間、施設単位で現行の出産育児一時金の仕組みも併存し、可能な施設から新制度に移行していくことが適当とされました。
国民健康保険制度における子育て世代への支援拡充
国民健康保険では、令和4年4月から、未就学児に係る均等割保険料について、その5割を公費により軽減する措置が講じられています。この軽減措置の対象を高校生年代まで拡充することについて、国と地方の間で調整が行われ、法改正を含め対応する方向性が示されました。
協会けんぽにおける予防・健康づくりの取組
協会けんぽでは、医療費の適正化及び加入者の健康の保持増進を一層推進するため、健診体系の見直しや重症化予防対策の充実に取り組んでいます。「加入者の年齢・性別・健康状態等の特性に応じたきめ細かい予防・健康づくり」を適切かつ有効に実施していくことを法令上明確化していくことが提案されました。
世代内、世代間の公平の確保|高齢者医療と金融所得の勘案
世代内・世代間の公平の確保として、高齢者医療における負担の在り方と、医療保険における金融所得の勘案について議論が行われました。
高齢者医療における負担の在り方
高齢者の受診の状況や所得の状況について確認したところ、高齢者の受診率や受診日数は改善傾向にあり、医療費水準は5歳程度若返っていることが分かりました。高齢者の就業率・平均所得は上昇傾向にあり、所得や年金収入の分布の推移を見ても「所得なし」の者や低年金の者の割合は減少傾向にあります。
年齢階級別の一人当たり医療費と一人当たり自己負担額をみると、高齢になるにつれ一人当たり医療費は高くなりますが、一人当たり自己負担額のピークは60代後半です。70代前半は60代後半より、70代後半は70代前半より自己負担額が低くなり、一人当たり医療費と自己負担額の逆転が生じています。
高齢者の窓口負担割合の在り方については、経済対策において「医療費窓口負担に関する年齢によらない真に公平な応能負担の実現」について「令和7年度中に具体的な骨子について合意し、令和8年度中に具体的な制度設計を行い、順次実施する」項目とされており、引き続き
Duration: 00:04:52【2025年医療法改正】中医協が示す外来医師過多区域とオンライン診療の診療報酬対応
Dec 27, 2025令和7年12月12日に公布された医療法等の一部を改正する法律(令和7年法律第87号)に基づき、中央社会保険医療協議会では診療報酬上の対応について議論を開始しました。この改正は、高齢化に伴う医療ニーズの変化や人口減少を見据え、地域での良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制を構築することを目的としています。
中医協における議論の焦点は、外来医師過多区域における診療報酬上の対応とオンライン診療受診施設の保険診療上の位置付けの2点です。外来医師過多区域では、地域医療への要請に応じない医療機関に対して保険医療機関の指定期間を短縮できる仕組みが導入されます。オンライン診療では、新たに設けられる「オンライン診療受診施設」の保険薬局内への開設について、医薬分業の観点から検討が必要となります。本稿では、これらの課題と論点を解説します。
外来医師過多区域における診療報酬上の対応
外来医師過多区域における診療報酬上の対応は、医師偏在是正に向けた総合的な対策の一環として位置付けられています。この対応では、地域で不足している医療機能等の提供要請に応じない医療機関に対し、保険医療機関の指定期間を6年から3年以内に短縮できる仕組みが導入されます。
都道府県は、外来医師過多区域の新規開業者に対し、開業6か月前に提供予定の医療機能等の届出を求めることができます。届出後、都道府県は協議の場への参加を求め、地域で不足する医療や医師不足地域での医療の提供を要請します。要請に応じない場合は、都道府県医療審議会への出席と理由説明を求め、それでも応じなければ勧告・公表を行います。
保険医療機関の指定期間短縮は、これらの手続きを経ても要請に応じない医療機関に対して適用されます。具体的には、要請に応じなかった場合、勧告を受けた場合、または勧告に従わなかった場合に、厚生労働大臣が保険医療機関の指定を3年以内の期限付きとすることができます。指定期間が3年の間は、医療機関名等の公表、保健所等による確認、診療報酬上の対応、補助金の不交付といった措置が講じられます。
中医協では、指定期間が3年以内となった医療機関の診療報酬上の対応が論点となっています。この医療機関は「地域医療への寄与が不十分」との位置づけであることから、機能強化加算や地域包括診療加算等のかかりつけ医機能や地域医療提供体制への貢献に関する評価が含まれる診療報酬項目について、どのように取り扱うかが検討されます。
オンライン診療に関する総体的な規定の創設に伴う対応
オンライン診療に関しては、医療法改正により総体的な規定が設けられ、新たに「オンライン診療受診施設」という施設類型が創設されます。この改正は、これまで解釈運用によって機動的・柔軟に実施されてきたオンライン診療について、法制上の位置づけを明確化することを目的としています。
改正法では、オンライン診療を医療法に定義し、オンライン診療を行う医療機関はその旨を都道府県に届け出ることとなります。厚生労働大臣はオンライン診療の適切な実施に関する基準(オンライン診療基準)を定め、医療機関の管理者はこの基準を遵守するための措置を講じる義務を負います。オンライン診療基準には、診療計画、本人確認、薬剤処方・管理、診察方法、医師・患者の所在、通信環境などに関する事項が含まれます。
オンライン診療受診施設は、患者がオンライン診療を受ける専用の施設として新たに創設されます。設置者は、業として、オンライン診療を行う医師または歯科医師の勤務する医療機関に対して、オンライン診療を患者が受ける場所を提供します。設置者は設置後10日以内に都道府県知事に届け出る義務があり、オンライン診療を行う医療機関の管理者は受診施設の設置者に対してオンライン診療基準への適合性を確認することとされています。
保険薬局内のオンライン診療受診施設の開設に関する課題
保険薬局内にオンライン診療受診施設を開設することについては、医薬分業に関する療担規則および薬担規則の規定やその趣旨を踏まえた検討が必要です。医療法上はオンライン診療受診施設の設置場所に制限がなく、保険薬局内への設置も可能ですが、保険診療の観点からは3つの課題が指摘されています。
第一の課題は、保険薬局と保険医療機関の独立性です。薬担規則では、健康保険事業の健全な運営の確保の観点から、保険薬局は保険医療機関と一体的な構造・経営が禁止されています。保険薬局内で患者が保険医療機関によるオンライン診療を受ける状況となることについて、独立性の観点からあり方を整理する必要があります。
第二の課題は、特定の保険薬局への誘導です。療担規則では保険医療機関が特定の保険薬局へ誘導することが禁止されており、薬担規則では保険薬局が当該薬局への誘導の対償として保険医療機関等に金品その他の財産上の利益を供与することが禁止されています。薬局内で患者が受けたオンライン診療で発行された処方箋は、概ね当該薬局で調剤されると想定されることから、保険薬局でのオンライン診療受診施設は当該薬局で調剤を受けるよう誘導する効果を生むことが懸念されます。
第三の課題は、経済上の利益の提供による誘引です。薬担規則では、事業者またはその従業員に対し、患者を紹介する対価として金品その他経済上の利益を提供することにより、当該患者が自己の保険薬局において調剤を受けるように誘引することが禁止されています。保険薬局が自らオンライン診療受診施設を開設しない場合でも、オンライン診療受診施設を運営する事業者に場所を提供する場合、事業者に経済上の利益を提供し患者が自己の保険薬局にて調剤を受けるよう誘引する効果を生じることが懸念されます。
まとめ
医療法等改正を踏まえた診療報酬上の対応について、中医協では2つの論点が示されています。第一に、外来医師過多区域において地域医療への要請に応じず保険医療機関の指定が3年以内となった医療機関について、機能強化加算や地域包括診療加算等の診療報酬項目の評価をどのように考えるかという点です。第二に、オンライン診療受診施設の保険薬局内への開設について、医薬分業の観点からその是非や取り扱いをどうするか、また医療資源が少ない地域の医療提供体制確保を踏まえた配慮をどうするかという点です。外来医師過多区域対応やオンライン診療関連は令和8年4月、その他の規定は令和9年4月を中心に段階的に施行されます。今後の中医協での議論が注目されます。
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令和8年度診療報酬改定へ向けた3つの技術的論点|骨密度検査・遠隔心臓リハビリ・コロナ治療薬の扱いを解説
Dec 26, 2025令和7年12月24日に開催された中央社会保険医療協議会総会(第638回)において、令和8年度診療報酬改定に向けた技術的事項が審議されました。本稿では、骨密度検査の算定要件見直し、情報通信機器を用いた心大血管疾患リハビリテーション、新型コロナウイルス感染症治療薬の扱いという3つの論点について解説します。
今回の審議では、骨塩定量検査の算定間隔について学会ガイドラインとの整合性を図る方向性が示されました。遠隔心臓リハビリテーションについては、薬事承認されたプログラム医療機器に対応した評価のあり方が検討されています。新型コロナウイルス感染症については、5類移行後の状況を踏まえ、DPCにおける診断群分類の設定検討と抗ウイルス剤の特例措置終了が論点となっています。
骨密度検査の算定要件見直し
骨塩定量検査の現行算定要件は、患者1人につき4月に1回に限り算定可能とされています。この要件は、関連学会のガイドライン推奨と乖離している状況です。
骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年版では、測定間隔について一般的に開始1年後、治療法が確立された後は1年間以上の間隔でよいとされています。このガイドラインでは、年に1回以上の測定を要する場合として、新規骨折発生時やビスホスホネート薬治療の一時中止を検討する場合等が挙げられています。
測定間隔を短縮する必要がある場合も明示されています。急激な骨減少・増加をきたす薬剤(グルココルチコイド、アロマターゼ阻害薬、抗アンドロゲン療法、骨形成促進薬)の投与時や、急激な骨減少・増加をきたす病態(吸収不良、全身性炎症疾患、長期不動、人工閉経)がある場合には、観察期間の短縮が推奨されています。
今回の論点は、このガイドライン推奨を踏まえた算定要件の見直しです。現行の「4月に1回」という要件を、ガイドラインに沿った形で調整することが検討されています。
情報通信機器を用いた心大血管疾患リハビリテーション
遠隔で心臓リハビリテーションを実施するプログラム医療機器「リモハブ CR U」が薬事承認されました。この機器は、専用のエルゴメータとウェアラブル心電計を併用し、遠隔で在宅の患者を最大8名同時にモニタリングしながら心臓リハビリテーションを実施できます。
このプログラム医療機器の有効性は、医師主導治験で確認されています。治験では、入院中の集団心大血管疾患リハビリテーション及び退院後3~4週間の通院による心大血管リハビリテーション後に患者を無作為に割り付け、当該製品を用いた遠隔心リハを実施した群と通院群を比較しました。12週間の介入終了時の6分間歩行距離の変化量について、非劣性が示されています。
安全性についても検証されています。有害事象の発生率は遠隔心リハ群49.1%、通院心リハ群35.7%でした。発生した有害事象はいずれも本品使用との因果関係は否定されています。
現行制度との整合性が課題となっています。心大血管リハビリテーション料の算定要件には、医師が直接監視を行うか、同一建物内において直接監視をしている他の従事者と常時連絡が取れる状態かつ緊急事態に即時的に対応できる態勢であることが求められています。施設基準には、専用の機能訓練室や酸素供給装置、除細動器、心電図モニター装置等の設置が規定されています。現時点では、情報通信機器を用いた場合の規定は示されていません。
日本心臓リハビリテーション学会のステートメント(2023年10月)では、緊急時対応の観点からケアギバーが状況把握できることが望ましいとされています。独居で近傍にもサポートできるケアギバーがいない場合には、遠隔心リハの適応には慎重を期するとの指針が示されています。
今回の論点は、これらの算定要件・施設基準と学会指針を踏まえた、遠隔心臓リハビリテーションの評価のあり方です。
新型コロナウイルス感染症治療薬の扱い
DPC/PDPSにおける新型コロナウイルス感染症の扱いについて、2つの論点が示されています。1つ目は診断群分類の設定検討、2つ目は抗ウイルス剤に係る特例措置の終了です。
診断群分類については、これまで出来高算定とされてきました。令和6年度診療報酬改定時は、改定に用いるデータの対象期間中(令和4年10月~令和5年9月)に感染症法上の位置づけの変更等が行われ、入院診療の実態が大きく変化していたため、引き続き出来高算定とされました。令和8年度改定では、データの対象期間中(令和6年10月~令和7年9月)に感染症法上の位置づけの変更等は行われていません。このため、「MDC毎の診断群分類見直し技術班」において、診断群分類の検討を行うことが論点となっています。
抗ウイルス剤の特例措置については、終了が検討されています。令和6年4月以降も当面の間、地域包括ケア病棟入院料や療養病棟入院基本料等を算定する患者、及び介護保険施設入所中の患者について、新型コロナウイルス感染症に係る抗ウイルス剤を包括範囲からの除外薬剤として薬剤料を算定できるとされてきました。令和5年度の千床あたり1月あたりの患者数は、最も多い地域包括ケア病棟で23.4人、療養病棟入院料1で15.3人、療養病棟入院料2で6.7人でした。介護保険施設では、介護老人保健施設で定員千人あたり2.8人、介護医療院で定員千人あたり19.6人でした。
今回の論点は、通常の医療提供体制へ移行していることを踏まえ、これらの特例的な取扱いを終了することについてです。
まとめ
令和8年度診療報酬改定に向けて、3つの技術的事項が審議されています。骨塩定量検査の算定要件は、ガイドラインとの整合性を図る方向で見直しが検討されています。情報通信機器を用いた心大血管疾患リハビリテーションは、薬事承認されたプログラム医療機器に対応した評価のあり方が論点となっています。新型コロナウイルス感染症については、5類移行後の状況を踏まえ、DPCにおける診断群分類の設定検討と抗ウイルス剤の特例措置終了が検討されています。
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【2026年度改定】残薬対策の3つの論点|処方箋様式・訪問看護・薬局連携を徹底解説
Dec 25, 2025令和7年12月19日に開催された第637回中央社会保険医療協議会総会において、残薬対策が議題として取り上げられました。医療費適正化基本方針では、残薬、重複投薬、不適切な多剤投与を減らす取組が重要施策として位置づけられています。本稿では、2026年度診療報酬改定に向けて中医協で示された残薬対策の現状と課題、今後の論点について解説します。
中医協は残薬対策について3つの観点から検討を行いました。第一に、地域包括診療料等の算定患者への処方のあり方と電子処方箋の活用による「残薬の発生抑制」です。第二に、薬局薬剤師による残薬確認の実効性向上と訪問看護での情報提供に関する「残薬の確認」です。第三に、処方箋様式の見直しによる医師と薬局の連携強化を通じた「残薬の解消」です。
残薬対策の基本的枠組みと診療報酬上の評価
残薬への対応は「発生の抑制」「残薬の確認」「残薬の解消」という3つの観点から、それぞれ報酬上の対応が図られています。基盤となる仕組みとして、かかりつけ医機能、かかりつけ薬剤師制度、電子処方箋・オンライン資格確認、お薬手帳の活用などが整備されています。
発生抑制に関する評価として、医科では薬剤総合評価調整管理料、地域包括診療料、薬剤適正使用連携加算などがあります。調剤では、かかりつけ薬剤師指導料、外来服薬支援料1、服用薬剤調整支援料などが設けられています。これらの評価は、ポリファーマシー対策や医療DX推進体制整備加算と連動しています。
残薬確認に関する評価として、調剤では重複投薬・相互作用等防止加算(残薬調整以外40点、残薬調整20点)があります。在宅では在宅患者訪問薬剤指導料、在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料、在宅移行初期管理料などが算定可能です。外来服薬支援料1は、ブラウンバッグ運動による節薬バッグの取組を評価しています。
残薬対策の現状と課題
かかりつけ薬剤師が患者から受ける相談の約6割は残薬に関するものです。薬剤師が残薬調整に対応するきっかけとして最も多いのは「患者とのやりとり」であり、患者との継続的な関わりや服薬の一元的管理が重要な役割を果たしています。医療機関においても、薬局から情報提供される情報のうち「残薬状況」は「服用状況」に次いでニーズが高い情報です。
残薬調整を薬局で実施する際の問題点として、「患者が全ての薬剤を持参しない」ことを挙げる薬剤師が半数を超えています。このため、在宅患者訪問薬剤管理指導料等が算定できない患者に対して、薬剤師が患家を訪問して残薬整理を行っている事例もあります。残薬確認の時間や一包化の手間、複数薬局利用時の情報共有など、現場では多くの課題を抱えています。
地域包括診療加算の算定患者は処方薬剤種類数が多い傾向があります。また、薬剤適正使用連携加算は現在、入院・入所患者のみが対象であり、他院にも通院する外来患者への情報提供は対象外となっています。訪問看護の事業の人員及び運営基準においては、服薬状況(残薬状況)の情報提供について明記されていない点も課題として挙げられています。
中医協で示された3つの論点
中医協では残薬対策について、3つの観点から論点が示されました。
残薬の発生抑制に関する論点として、地域包括診療料・加算や在宅時医学総合管理料等について、診療の際に患家における残薬を確認した上で適切な服薬指導を行うことの評価が検討されています。また、地域包括診療料・加算の算定患者に対する処方のあり方について、電子処方箋管理サービスの活用や、外来患者への薬剤適正使用連携加算の拡大が議論されています。
残薬の確認に関する論点として、薬局薬剤師による外来患者に対する残薬確認の実効性を高める観点から、残薬状況を薬剤服用歴に明記して継続的に管理すること、患者や家族の求めに応じて患家訪問し残薬確認を行うことの評価が検討されています。また、指定訪問看護の実施時等に、居宅において残薬を発見した際の医師や薬剤師への情報提供のあり方も論点となっています。
残薬解消に関する論点として、処方箋様式の見直しが検討されています。現在、一部の医療機関では処方箋の備考欄に「残薬調整後報告可」と記載し、薬局との連携により残薬調整に取り組んでいる事例があります。こうした取組を踏まえ、医師が事前に薬局で残薬を確認した際の取扱いについて円滑に指示を行うことができるよう、処方箋様式を見直すことが議論されています。
まとめ
中医協第637回総会では、残薬対策について「発生抑制」「確認」「解消」の3つの観点から包括的な検討が行われました。地域包括診療料等の算定患者への残薬確認と服薬指導、薬局薬剤師による継続的な残薬管理と患家訪問の評価、訪問看護における情報提供の明確化、処方箋様式の見直しによる医師・薬局連携の強化が、2026年度診療報酬改定における主要な論点となります。医療機関、薬局、訪問看護ステーションなど、各医療従事者は今後の議論の動向を注視し、残薬対策への取組を強化していくことが求められます。
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【2026年運用開始へ】電子カルテ情報共有サービスと救急医療DXの最新動向
Dec 24, 2025中央社会保険医療協議会 総会(第637回)において、医療DXの個別事項が議論されました。本稿では、電子カルテ・電子カルテ情報共有サービス、救急時医療情報閲覧機能、サイバーセキュリティの3分野について解説します。これらは医療DXの基盤となる重要な取り組みであり、令和8年度診療報酬改定に向けた議論の焦点となっています。
電子カルテ情報共有サービスは2026年(令和8年)冬頃の全国運用開始を目指しており、救急時医療情報閲覧機能は既に令和6年12月からサービスを開始しています。サイバーセキュリティ対策については、令和6年度改定の見直しによりBCPやオフラインバックアップに取り組む医療機関が増加しました。以下、各分野の現状と今後の方針について詳しく説明します。
電子カルテ・電子カルテ情報共有サービスの現状と普及計画
電子カルテの普及は着実に進んでおり、2030年までに概ねすべての医療機関への導入を目指しています。現在、標準型電子カルテの開発とモデル事業を並行して進めており、2026年夏までに具体的な普及計画を策定する予定です。
電子カルテシステムの普及率は、令和5年時点で一般病院が65.6%、一般診療所が55.0%に達しています。病床規模別にみると、400床以上の病院では93.7%と高い普及率を示す一方、200床未満の病院では59.0%にとどまっています。この普及率の格差を解消するため、国は標準型電子カルテの開発を進めています。
標準型電子カルテ(導入版)は、医科無床診療所向けにクラウドネイティブで開発中です。この導入版は、医療DX対応を中心としたシンプルな画面設計を採用しており、2026年度中の完成を目指しています。導入版では、電子カルテ情報共有サービスを利用する医療機関からの診療情報提供書や検査データの閲覧、電子処方箋の発行が可能になります。
標準仕様(基本要件)については、5つの項目で検討が進められています。第1に、電子カルテ情報共有サービスと電子処方箋サービスへの接続インターフェイスの対応があります。第2に、ガバメントクラウドへの対応が可能となるモダンな技術を採用したクラウド・ネイティブ型の電子カルテの要件があります。第3に、外注検査システムや生成AI等との標準APIの搭載が求められます。第4に、データ引き継ぎが可能な互換性の確保として、json、xml、csv等のフォーマットが規定されます。第5に、医薬品・検査等の標準マスタ・コードの規定や医療情報システムの安全管理ガイドラインへの準拠が含まれます。
電子カルテ情報共有サービスは、全国の医療機関等において電子カルテ情報を共有・閲覧できるようにするサービスです。このサービスでは、3文書(診療情報提供書、退院時サマリー、健診結果報告書)と6情報(検査、感染症、処方、傷病名、薬剤アレルギー等、その他アレルギー等)を共有します。現在、全国10地域でモデル事業を実施中であり、臨床情報の登録から検証を開始しています。
モデル事業では、医療機関や電子カルテによって複数の課題が発生しており、その原因特定と解決が必要な状況です。令和7年夏頃をピークに登録に関する課題は減少傾向にありますが、閲覧の検証も今後開始予定です。この検証を経て、致命的な課題がないことを確認した上で、2026年(令和8年)冬頃を目処に全国で利用可能な状態にすることを目指しています。
救急時医療情報閲覧機能の概要と医療現場での活用
救急時医療情報閲覧機能は、救急現場における迅速な治療判断を支援するサービスです。令和6年12月からサービスを開始しており、多くの三次救急病院等で導入が進んでいます。
この機能により、病院においては患者の生命・身体の保護のために必要な場合、マイナ保険証により本人確認を行うことで、患者の同意取得が困難な場合でもレセプト情報に基づく医療情報等が閲覧可能となります。救急時医療情報閲覧機能は、主に救急患者を受け入れる一次救急から三次救急病院を念頭においた機能であり、病院であれば導入可能です。診療所や薬局への開放は想定されていません。
閲覧できる情報は、通常のオンライン資格確認等システムで表示可能な診療・薬剤情報に加え、救急用サマリーが含まれます。救急用サマリーには、受診歴(3か月分)、電子処方箋情報(45日分)、薬剤情報(3か月分)、手術情報(5年分)、診療情報(3か月分)、透析情報(3か月分)、健診実施日が集約されています。通常表示の期間よりも短い期間に限定することで、救急現場で必要な情報を迅速に把握できるよう設計されています。
救急科の医師からは、この機能の有効性について複数の声が寄せられています。第1の声として、意識不明の患者に対して薬剤情報を即座に確認でき、抗凝固薬の服用の有無がわかることで、脳出血のケースにおける拮抗薬投与の判断が迅速に行えるようになったという報告があります。第2の声として、初診の患者でも受診歴を頼りにかかりつけ医療機関を特定して問い合わせることで、過去の手術歴など詳細な情報を把握できるようになったという報告があります。第3の声として、救急用サマリーにより必要な情報が一元的に把握でき、治療リスクの評価や処置の判断が迅速に行えるようになったという報告があります。
これらの医師の声からも明らかなように、救急時医療情報閲覧機能は、意識不明等により同意の取得が困難な患者においても、薬剤情報・受診歴・手術歴等を迅速かつ正確に把握でき、救急現場での治療判断の質とスピードの向上につながっています。
サイバーセキュリティ対策の現状と診療録管理体制加算
サイバーセキュリティ対策は、医療DXの推進において不可欠な基盤です。令和6年度診療報酬改定における見直しにより、BCPやオフラインバックアップに取り組む医療機関が増加しました。一方で、情報セキュリティの統括責任者について、情報処理技術にかかる資格の取得者が少ない状況が課題として挙げられています。
診療録管理体制加算は、入院初日に算定される加算であり、3つの区分が設けられています。加算1は140点、加算2は100点、加算3は30点です。加算1の施設基準には、サイバーセキュリティ対策に関する複数の要件が含まれています。
加算1の主な施設基準として、3つの要件があります。第1に、許可病床数が200床以上の保険医療機関については、安全管理ガイドラインに基づき、専任の医療情報システム安全管理責任者を配置することが求められます。当該責任者は、職員を対象として、少なくとも年1回程度、定期的に必要な情報セキュリティに関する研修を行う必要があります。第2に、非常時に備えた医療情報システムのバックアップを複数の方式で確保し、その一部はネットワークから切り離したオフラ
Duration: 00:05:48【2025年最新】医療DX推進体制整備加算の見直しとマイナ保険証利用率47%突破の全容
Dec 23, 2025中央社会保険医療協議会総会(第637回)において、医療DXに関する議論が行われました。本稿では、医療DXの診療報酬上の評価、マイナ保険証とオンライン資格確認等システム、電子処方箋の3つのテーマについて解説します。
医療DXは着実に進展しています。マイナ保険証利用率は令和7年10月時点で47.26%に達し、電子処方箋の調剤結果登録割合は82.8%となりました。令和7年4月からは医療DX推進体制整備加算の要件が見直され、マイナ保険証利用率の実績要件が段階的に引き上げられています。
医療DXの診療報酬上の評価について
令和6年度診療報酬改定では、医療DXを推進するための複数の加算が新設・見直しされました。主な加算として、医療情報取得加算、医療DX推進体制整備加算、在宅医療DX情報活用加算、訪問看護医療DX情報活用加算があります。これらの加算は、マイナ保険証の利用促進と医療情報の活用を診療報酬で評価する仕組みです。
医療情報取得加算は、オンライン資格確認により患者の診療情報を取得・活用する体制を評価します。令和6年12月以降、この加算は初診時1点、再診時1点(3月に1回)、調剤時1点(12月に1回)に統一されました。令和6年6月から11月までは、マイナ保険証利用の有無により点数が異なっていましたが、現行の健康保険証の発行終了を踏まえて見直されました。
医療DX推進体制整備加算は、オンライン資格確認により取得した診療情報を診療に活用できる体制を評価します。この加算の施設基準には、電子処方箋の発行体制、電子カルテ情報共有サービスの活用体制、マイナ保険証利用率の実績要件が含まれます。令和7年4月からは、マイナ保険証利用率に応じて加算1から加算6までの6段階に細分化されました。
令和7年4月からの医療DX推進体制整備加算の点数は、医科で加算1が12点、加算2が11点、加算3が10点、加算4が10点、加算5が9点、加算6が8点となっています。歯科と調剤についても同様に6段階の加算が設定されました。マイナ保険証利用率の実績要件は、加算1・4で45%、加算2・5で30%、加算3・6で15%です。
令和7年10月以降は、マイナ保険証利用率の実績要件がさらに引き上げられます。加算1・4は60%、加算2・5は40%、加算3・6は25%となり、令和8年3月以降はそれぞれ70%、50%、30%に引き上げられます。電子カルテ情報共有サービスの経過措置は令和8年5月31日まで延長されました。
在宅医療DX情報活用加算は、居宅同意取得型のオンライン資格確認等システムを活用し、在宅医療において質の高い診療を提供した場合に算定できます。令和7年4月からは、電子処方箋の発行体制の有無により加算1(医科11点)と加算2(医科9点)の2段階となりました。訪問看護医療DX情報活用加算は50円で、訪問看護ステーションにおける診療情報の活用を評価します。
マイナ保険証とオンライン資格確認等システム
マイナ保険証の利用は着実に拡大しています。令和7年10月のレセプト件数ベース利用率は47.26%となり、令和6年1月の3.99%から大幅に上昇しました。オンライン資格確認等システムを通じて、特定健診等情報、薬剤情報、診療情報の閲覧が可能となり、質の高い医療の提供に貢献しています。
オンライン資格確認の利用件数は、令和6年11月時点で月間約2億6,665万件に達しています。施設別の内訳は、医科診療所が約1億1,521万件、薬局が約1億713万件、病院が約2,156万件、歯科診療所が約2,275万件です。マイナンバーカードによる利用は約1億464万件で、利用率は39.24%となっています。
診療情報の閲覧件数も増加傾向にあります。令和6年11月の診療情報閲覧件数は約6,094万件、特定健診等情報閲覧件数は約3,062万件、薬剤情報閲覧件数は約2,296万件でした。これらの情報は、医師や薬剤師が患者の状態を把握し、適切な診療を行うために活用されています。
マイナ保険証の課題も明らかになっています。令和6年度診療報酬改定の結果検証調査によると、最も多く挙げられた課題は「ITに不慣れな患者への対応による負担が増加していること」で、病院70.8%、医科診療所65.4%、歯科診療所71.8%、薬局78.6%が該当すると回答しました。「システム障害時、診療に影響が出ること」も病院56.3%、医科診療所71.9%、歯科診療所68.8%、薬局48.6%と高い割合を示しています。
「システムの導入や運用に費用負担がかかること」については、病院61.1%、医科診療所57.8%、歯科診療所58.4%、薬局44.4%が課題として挙げています。「マイナンバーカード及び電子証明書に有効期限があること」も病院53.5%、医科診療所52.1%、歯科診療所54.8%、薬局52.4%と、約半数の施設が課題と認識しています。
電子処方箋
電子処方箋は、医師・歯科医師が処方箋を電子処方箋管理サービスに送信し、薬剤師がそのサービスから処方箋を取り込んで調剤する仕組みです。この仕組みにより、薬局での処方内容の入力作業が不要になり、医療機関と薬局の間で速やかな情報共有が可能となります。重複投薬や併用禁忌のチェックも自動で行われます。
電子処方箋の導入状況は施設種別により大きく異なります。令和7年10月時点で、薬局の導入率は86.5%と高い水準に達しています。一方、医科診療所は23.3%、病院は17.3%、歯科診療所は7.0%にとどまっています。調剤結果登録割合は月間82.8%となり、処方箋の約8割について調剤結果が電子処方箋管理サービスに登録されています。
電子処方箋システムを導入した薬局では、いずれの処方箋種別を受け付けた場合でも調剤結果登録を行います。紙の処方箋、引換番号付き紙処方箋、電子処方箋のいずれを受け付けた場合でも、調剤結果を登録することで、即時性の高い薬剤情報の共有が実現します。この情報は、重複投薬等チェックの参照データとしても活用されます。
電子処方箋は災害時にも有効です。令和6年能登半島地震では、被災地にいる患者にオンライン診療を実施し、電子処方箋を発行することで、患者が現地の電子処方箋対応薬局で調剤を受けられた事例がありました。道路の寸断により通院や処方箋の郵送が困難な状況でも、通信インフラが回復していれば電子処方箋を活用できます。
電子処方箋による重複投薬防止の効果も期待されています。令和6年7月のNDBデータによると、複数医療機関を受診し、用法及び用量から通常想定される処方の量を大きく超えてゾルピデム製剤の処方を受けている患者が存在します。電子処方箋サービスの重複投薬等チェック機能
Duration: 00:04:54【令和8年度改定】短期滞在手術・回リハ・ICU・オンライン精神療法の4論点を解説
Dec 22, 2025中央社会保険医療協議会(中医協)総会では、令和8年度診療報酬改定に向けた議論が進んでいます。第637回総会では、これまでの審議で委員から出された指摘事項への回答として、短期滞在手術の地域差、回復期リハビリテーション病棟の重症患者割合、ICU・HCUの重症度基準、オンライン精神療法の4項目について新たなデータが示されました。
今回示されたデータの要点は次のとおりです。短期滞在手術については、二次医療圏の類型別に外来実施率の差が明らかになりました。回復期リハビリテーション病棟では、FIM20点以下の患者を重症患者から除外した場合のシミュレーション結果が提示されました。ICU・HCUでは、動脈圧測定の位置づけを変更した複数パターンのシミュレーションが行われました。オンライン精神療法では、初診での実施を可能とする新たな指針案と、その背景となる行政のアウトリーチ支援の実態が示されました。
短期滞在手術の地域類型別外来実施率
短期滞在手術については、11月7日の総会で「入院及び外来での手術状況を大都市型、地方都市型、過疎地域型等の類型に応じて精査すべき」との指摘がありました。この指摘を受けて、二次医療圏の類型別に外来実施率のデータが示されました。
二次医療圏は3つの類型に分類されています。大都市型は人口100万人以上または人口密度2,000人/km²以上の医療圏です。地方都市型は人口20万人以上または人口密度200人/km²以上の医療圏です。人口少数地域型はこれら以外の医療圏を指します。
水晶体再建術(眼内レンズ挿入・その他)の外来実施率は、地域類型による大きな差がみられませんでした。大都市型では外来が約63%、地方都市型では約64%、人口少数地域型では約61%でした。いずれの類型でも入院と外来がほぼ半々から6割程度が外来という状況です。
内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術(2cm未満)では、人口少数地域型で外来実施率が低い傾向がみられました。大都市型では外来が約83%、地方都市型では約76%と高い外来実施率を示しています。一方、人口少数地域型では外来が約63%にとどまり、入院での実施割合が他の類型より高くなっています。
回復期リハビリテーション病棟の重症患者割合シミュレーション
回復期リハビリテーション病棟入院料については、11月14日の総会で2つの指摘がありました。ひとつは「重症患者の範囲を見直す場合、入院料ごとに見直し後の重症患者割合のシミュレーションを示すべき」という指摘です。もうひとつは「日常生活機能評価表とFIMでは各項目の比重が異なるため、施設への影響を精査する必要がある」という指摘です。
現行の重症患者の定義は、FIM55点以下または日常生活機能評価票10点以上の患者です。今回のシミュレーションでは、この定義からFIM20点未満の患者を除外した場合の影響が分析されました。FIM20点未満の患者を除外する理由は、医療機関が自らの裁量で適応を判断できる割合を増やすことにあります。
回復期リハビリテーション病棟入院料1・2では、現行基準での重症患者割合40%以上の施設が92.1%でした。FIM20点以下を除外した場合、この割合は85.8%に低下します。分布をみると、重症患者割合40~50%の施設が最も多く、除外後も多くの施設が現行基準を維持できる見込みです。
回復期リハビリテーション病棟入院料3・4でも同様の傾向がみられました。現行基準を満たす施設は92.1%でした。FIM20点以下を除外した場合、この割合は81.6%となります。入院料1・2と比較すると、基準を下回る施設がやや増加する傾向にあります。
ICU・HCU用重症度、医療・看護必要度の見直しシミュレーション
ICU・HCU用の重症度、医療・看護必要度については、11月26日の総会で重要な指摘がありました。「動脈圧測定のみで現行の該当患者割合基準を満たしている」「動脈圧測定の位置づけを変更した場合の影響についてシミュレーションを行うべき」という指摘です。一方で「集中治療の現場では必要な患者のみを入室させており、患者の安全に影響を及ぼさないよう慎重に検討すべき」との意見も出されました。
現行基準では、動脈圧測定の該当患者割合が平均約84%と非常に高く、この項目だけで基準を満たせる状況にあります。そのため、他の評価項目の意義が乏しいとの問題提起がなされています。
シミュレーションでは3つのパターンが検討されました。パターン1は、現行の評価項目に蘇生術の施行、抗不整脈剤の使用(注射剤)、一時的ペーシングの3項目を追加する案です。この場合、特定集中治療室管理料1・2で8割基準を満たす治療室は99.5%、管理料3~6および救命救急入院料2・4で7割基準を満たす治療室は98.7%となり、現行とほぼ同等の該当率が維持されます。
パターン2は、動脈圧測定とシリンジポンプの管理を2点から1点に変更し、新たに3項目を導入する案です。この場合、基準を8割とすると該当治療室は57.1%に大幅低下します。基準を5.5~6割に引き下げれば90%以上の治療室が該当する見込みです。
パターン3は、動脈圧測定のみを1点に変更し、新たに3項目を導入する案です。パターン2と同様、基準を8割とすると該当治療室は約57%に低下します。基準を5.5~6割程度に調整すれば、90%以上の治療室が該当可能です。
HCU用の必要度についても同様のシミュレーションが行われました。パターン1(新たに2項目を導入)では、現行基準でほぼすべての治療室が該当を維持できます。パターン2(中心静脈圧測定を基準①から除外し、新たに2項目を導入)では、基準①の該当治療室割合がやや低下しますが、基準②はほぼ維持されます。
情報通信機器を用いた精神療法の指針改訂
情報通信機器を用いた精神療法については、12月5日の総会で「オンライン初診精神療法を認めた理由や前回改定の検証結果など、実態の分かるデータを示してほしい」との指摘がありました。この指摘に対し、新たな指針案と議論の経緯が示されました。
令和6年度改定では、情報通信機器を用いた通院精神療法は精神保健指定医による再診に限定されていました。今回、規制改革実施計画(令和6年6月閣議決定)を踏まえ、初診でのオンライン精神療法を可能とする方向で指針の改訂が検討されています。
初診でのオンライン精神療法が検討される背景には、行政によるアウトリーチ支援の増加があります。精神保健福祉センター、保健所、市区町村が実施するひきこもり等への訪問指導件数は増加傾向にあります。これらの支援対象者は医療機関への受診が困難な場合も多く、行政の支援から医療につなげる仕組
Duration: 00:06:02【中医協解説】令和8年度改定に向けた4つの重要論点|訪問看護・特定疾患療養管理料・身体的拘束・廃用症候群
Dec 21, 2025令和7年12月19日に開催された中央社会保険医療協議会 総会(第637回)では、これまでの審議で委員から出された指摘事項に対する回答として、追加データが提示されました。本メールマガジンでは、訪問看護、特定疾患療養管理料、身体的拘束、廃用症候群の4つの論点について解説します。
今回の議論では、訪問看護における同一建物利用者への評価見直し、特定疾患療養管理料の算定実態、療養病棟等における身体的拘束の最小化、障害者施設等入院基本料における廃用症候群患者の評価について、NDBデータや実態調査に基づく詳細な分析結果が示されました。これらのデータを踏まえ、令和8年度診療報酬改定に向けた具体的な検討が進められています。
訪問看護に係る指摘事項への回答
中央社会保険医療協議会では、高齢者住まい等に居住する利用者への訪問看護について、同一建物・単一建物利用者の人数や訪問回数に応じた評価のあり方が論点となっています。この論点に関して、追加データが提示され、具体的な検討の方向性が示されました。
10月1日の総会では、委員から3つの指摘がありました。第一に、評価の見直しについては、コストだけでなく個々の患者の医療の必要度や提供サービスの内容も加味したきめ細かい評価が必要という意見です。第二に、頻回訪問の利用者の9割は末期の悪性腫瘍や別表第7該当者であることを踏まえるべきという指摘です。第三に、高齢者住宅等への頻回訪問については、一連の訪問看護について包括的な評価の検討が必要という意見が出されました。
これらの指摘を受け、今回の総会では追加データが示されました。訪問看護基本療養費Ⅱを算定する利用者は、別表第7該当の有無や疾病によらず、1月あたりの訪問日数、訪問回数、難病等複数回訪問加算の算定日数が多い傾向にあります。別表第7に該当する利用者の1月あたり医療費の平均は172,003円で、それ以外の利用者(79,536円)のほぼ2倍となっています。さらに、訪問看護ステーションごとに別表第7該当利用者の割合が8割以上のステーションでは、利用者1人あたりの1月あたり医療費が277,188円と、2割未満のステーション(87,010円)より高額です。
訪問看護管理療養費の算定種別による違いも明らかになりました。月の2日目以降の訪問看護管理療養費をみると、訪問看護管理療養費1のみの利用者の医療費中央値は90,849円であるのに対し、訪問看護管理療養費2のみの利用者は192,162円と高い傾向です。ただし、訪問看護管理療養費1と2の利用者における別表第7該当者の割合には大きな差異はありませんでした。
今回の論点として、高齢者住まい等に併設・隣接する訪問看護ステーション等による同一建物・単一建物利用者への訪問看護について、頻回または画一的に加算等が算定される場合の評価水準や、複数回の訪問の時間を合算する考え方等を含め、具体的な評価のあり方が検討されています。
特定疾患療養管理料に係る指摘事項への回答
特定疾患療養管理料については、主傷病名の分析に加えて副傷病名や処方状況を含めた調査・分析が求められていました。今回の総会では、NDBデータに基づく詳細な分析結果が提示されました。
10月17日の総会での指摘は2点でした。一つは、主傷病名の分析に加え、副傷病名や処方状況も含めたさらなる調査・分析が必要であり、適切な運用が行われていない場合には制度の是正を図るべきという意見です。もう一つは、特定疾患療養管理料についてはこれまでの議論の積み重ねを踏まえた制度であり、その意義を十分に理解すべきという意見でした。
これらの指摘に対し、今回は主傷病名、全傷病名、処方状況に関するデータが示されました。主傷病名の上位は、気管支喘息(12.8%)、慢性胃炎(9.2%)、狭心症(6.0%)となっています。全傷病名(主傷病名と副傷病名を含む)でみると、高血圧症(49.7%)、慢性胃炎(27.5%)、アレルギー性鼻炎(26.2%)の順となっており、令和6年度改定で対象から除外された高血圧症や糖尿病(19.9%)が副傷病名として多く記載されている実態が明らかになりました。
処方状況については、特定疾患療養管理料算定患者のうち、処方料・処方箋料のいずれも算定がない患者は3.8%でした。特定疾患処方管理加算の算定がある患者は65.8%となっています。また、主傷病名が「胃潰瘍」に関連する患者のうち、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の内服薬を調剤されている患者が約6.5%存在することも示されました。NSAIDsは胃潰瘍のリスク因子であることから、療養管理の実態について検討が求められています。
身体的拘束の最小化に向けた取組に係る指摘事項への回答
身体的拘束の最小化については、回復期リハビリテーション病棟と療養病棟における実施状況の詳細分析が求められていました。今回の総会では、拘束の種類やデバイスの有無、認知症の有無による違いを含めた詳細データが提示されました。
10月29日の総会では、2つの指摘がありました。回復期リハビリテーション病棟については、身体的拘束の中にはクリップセンサーや離床センサーといった見守り目的のものが含まれており、物理的に四肢を固定する拘束とは異なることから、拘束の種類を考慮すべきという意見です。療養病棟については、身体的拘束の実施状況に施設間で差があることについて、患者の状態、認知症の程度、使用しているデバイス等の詳細な分析が先決という指摘でした。
追加データとして、常時の手指・四肢・体幹抑制とそれ以外の身体的拘束(クリップセンサー等を含む)を区分した分析結果が示されました。回復期リハビリテーション病棟では、身体的拘束全体では20%以上の患者に実施している病棟が25.0%あるのに対し、常時の手指・四肢・体幹抑制に限ると12.7%にとどまります。このことから、クリップセンサー等による行動把握が多く行われていると考えられます。ただし、1割以上の病棟では常時の拘束を20%以上の患者に実施していました。
療養病棟では、デバイスの有無と認知症の有無による違いが明確になりました。デバイスあり・認知症ありの患者では、身体的拘束の実施率について医療機関間の差が大きいことがわかりました。デバイスも認知症もない患者では、常時の拘束実施がゼロの病棟が95.6%と多い一方、デバイスがなくても認知症がある場合は一定数の病棟で常時の拘束が実施されており、そのほとんどは認知症高齢者の日常生活自立度Ⅳ・Mの患者でした。
デバイスの種類別では、胃ろうの場合は身体的拘束実施率0%の病棟が54.8%と比較的多いのに対し、経鼻胃管やIVH(中心静脈栄養)の場合は拘束実施率の高い病棟が多いという結果でした。この背景
Duration: 00:06:21マイナ保険証利用率47%突破|次期カードリーダーと医療費助成の最新動向
Dec 20, 2025令和7年12月18日に開催された第208回社会保障審議会医療保険部会において、マイナ保険証の利用促進等に関する資料が公表されました。従来の保険証からマイナ保険証への移行が進む中、利用率の算出方法の見直しや利便性向上に向けた施策が示されています。本稿では、この資料の内容を解説します。
マイナ保険証の利用状況については、令和7年10月時点のレセプト件数ベース利用率が47.26%に到達しました。今後の利用促進に向けては、次期顔認証付きカードリーダーの導入支援に224億円の補正予算が措置され、こども医療費等の受給者証とマイナンバーカードの一体化も進められます。後期高齢者医療制度における資格確認書の職権交付についても、令和8年8月以降の見直しが検討されています。
マイナ保険証の利用率と普及状況
マイナ保険証の利用状況を示す指標として、令和7年12月から利用率の算出方法が変更されます。従来のオンライン資格確認件数ベースからレセプト件数ベースへと移行し、患者の利用実態をより正確に反映できるようになります。
令和7年10月時点のマイナ保険証の普及状況は着実に進展しています。マイナンバーカードの保有者は9,948万人で全人口の79.9%に達し、そのうちマイナ保険証の登録者は8,730万人でカード保有者の87.8%を占めています。レセプト件数ベース利用率は47.26%となり、令和6年1月の3.99%から大幅に上昇しました。
都道府県別の利用率には地域差が見られます。最も高いのは富山県の59.37%で、宮崎県57.48%、静岡県56.42%が続きます。一方、最も低いのは沖縄県の27.63%で、和歌山県36.69%、大阪府37.36%となっています。全国平均は47.26%で、前月から2.86ポイント上昇しました。
年齢層別に見ると、65歳〜74歳の利用率が最も高く、令和7年11月時点で48.55%〜49.39%に達しています。0歳〜4歳の伸びも著しく、令和6年6月の3.13%から令和7年11月には40.97%へと急増しました。一方で、5歳〜19歳の若年層は30%前後にとどまり、利用率の伸び悩みが課題となっています。
次期顔認証付きカードリーダーの仕様と導入支援
現行の顔認証付きカードリーダーは令和8年3月末から順次保守期限を迎えるため、次期規格の開発が進められています。令和7年2月に仕様を公表してメーカーを公募した結果、キヤノンマーケティングジャパン、パナソニックコネクト、リコージャパンの3社が参入し、令和8年度から順次発売を開始する予定です。
次期顔認証付きカードリーダーでは、現行機の運用上の課題を解決する改善が図られます。スマートフォン用電子証明書の読み取りに本体のみで対応し、外付けの汎用カードリーダーが不要になります。視覚障害者向けには認証状況やエラーの発生に関する音声案内機能が搭載され、操作手順の音声案内やテンキー搭載も推奨されています。さらに、画面レイアウトの統一や視認性・操作性の改善により、高齢者にとっても使いやすい設計となります。
各メーカーの製品には独自の特徴があります。キヤノンマーケティングジャパンの製品は軽量でコンパクトなサイズと取り外し可能な構造が特徴で、テンキー一体化構造により外付けテンキーが不要です。パナソニックコネクトの製品は資格確認端末(Windows PC)を内蔵し、LAN接続による設置自由度の向上を実現しています。両社ともスピーカー内蔵による音声案内機能を備えています。
導入支援として、令和7年度補正予算により224億円が措置されました。次期顔認証付きカードリーダーを導入する医療機関・薬局に対しては費用の1/2が補助され、資格確認端末の買い替えについても1/3の補助が実施されます。
医療費助成のオンライン資格確認と利便性向上
マイナンバーカードを活用した医療費助成の効率化が進められています。公費負担医療・地方単独医療費助成のオンライン資格確認に必要なシステムはデジタル庁において設計・開発・運用されており、令和5・6年度に183自治体(22都道府県、161市町村)が先行実施事業に参加しました。令和8年度中には全国規模での導入を目指しています。
先行実施の参加自治体は着実に拡大しています。令和7年度には625自治体(41都道府県、584市区町村)が参加・参加予定となり、こども医療費助成は523市区町村、障害者医療費助成は485市区町村、ひとり親家庭医療費助成は506市区町村で実施予定です。令和9年度からは支払基金又は国保連においてシステムの管理・運用等の業務を実施する体制が整備されます。
この取り組みにより、患者、医療機関・薬局、自治体のそれぞれにメリットが生まれます。患者にとっては紙の受給者証を持参する手間が軽減され、紛失リスクや持参忘れによる再来院も防止できます。医療機関・薬局では資格情報及び受給者証情報の手動入力の負荷が削減され、正確な資格情報に基づく請求により資格過誤請求が減少します。自治体においても医療費助成の資格確認に関する事務負担が軽減されます。
後期高齢者医療制度における対応
後期高齢者医療制度では、令和8年7月末まで全員一律に資格確認書を職権交付する運用を行っています。これは高齢者が新たな機器の取扱いに不慣れであることなどに配慮した措置ですが、令和8年8月以降は見直しが検討されています。
後期高齢者のマイナ保険証利用状況には年齢層によって差があります。令和6年9月から令和7年8月までの利用実績を見ると、75歳〜79歳では43%が6回以上利用している一方、90歳以上では22%にとどまります。マイナ保険証を利用していない割合は、85歳〜89歳で45%、90歳以上で62%となっており、年齢が上がるほど利用率は低下する傾向にあります。
令和8年8月以降の対応方針案では、年齢及び過去の利用実績に基づく区分が示されています。84歳以下の被保険者には引き続き資格確認書が職権交付されます。85歳以上の被保険者については、直近1年間に6回以上利用しかつ直近3か月における利用実績がある場合は、マイナ保険証を基本とし申請により資格確認書の交付も可能となります。85歳以上でこの条件を満たさない被保険者には引き続き資格確認書が職権交付されます。
まとめ
第208回社会保障審議会医療保険部会で示されたマイナ保険証の利用促進等に関する施策は、利用環境の整備と利便性向上の両面から推進されています。令和7年10月のレセプト件数ベース利用率は47.26%に達し、着実な普及が進んでいます。次期顔認証付きカードリーダーの導入支援には224億円の補正予算が措置され、スマートフォン対応や音声案内機能など利
Duration: 00:04:51長期収載品の選定療養が見直しへ|特別の料金が2倍になる可能性
Dec 19, 2025中央社会保険医療協議会(中医協)は2025年12月17日の総会で、長期収載品の選定療養について見直し案を提示しました。この見直しにより、長期収載品を希望する患者が支払う「特別の料金」が現行の2倍以上に引き上げられる可能性があります。本稿では、中医協総会資料に基づき、見直し案の内容と背景を解説します。
見直し案の要点は3つあります。第一に、患者の負担水準を長期収載品と後発医薬品の価格差の2分の1以上とする方向で検討が進んでいます。第二に、医療上の必要がある場合や後発医薬品の提供が困難な場合は、引き続き選定療養の対象外となります。第三に、この見直しは医療保険制度の持続可能性確保と保険給付の公平性を目的としています。
長期収載品の選定療養制度とは
長期収載品の選定療養制度は、後発医薬品の使用促進を目的として令和6年10月に開始されました。この制度では、後発医薬品が存在する長期収載品(先発医薬品)を患者が希望する場合、長期収載品と後発医薬品の価格差の4分の1を「特別の料金」として患者が負担します。
特別の料金は保険適用外であり、患者の全額自己負担となります。ただし、医師が医療上の必要性を認めた場合や、後発医薬品の在庫がない場合などは、選定療養の対象外となり特別の料金は発生しません。
制度開始後の状況
後発医薬品の使用割合は、制度開始により大幅に上昇しました。令和6年10月の制度開始を境に、後発医薬品割合(数量ベース)は86.6%から90.1%へ約4ポイント上昇しました。その後、令和7年3月時点では90.6%に達しています。
選定療養の対象となったレセプト件数は約368万件で、全体の4.9%でした。特別の料金の分布をみると、1,000円未満が90.0%、2,000円未満が98.3%を占めています。多くの患者の負担額は比較的少額にとどまっている状況です。
対象医薬品の価格差についても分析が行われました。選定療養の対象となっている1,006品目について、1剤当たりの価格差4分の1の分布をみると、100円未満が908品目(90.3%)を占めています。200円未満では942品目(93.6%)となり、大半の医薬品で価格差は小さいことがわかります。
患者が長期収載品を希望する理由
患者調査では、長期収載品の処方を希望した理由が明らかになりました。郵送調査では「使い慣れた薬を使いたいから」が最も多く39.1%でした。一方、インターネット調査では「ジェネリック医薬品の使用に不安があるから」が最も多く30.0%でした。
この調査結果は、長期収載品を希望する患者の動機が、習慣や心理的な不安に基づくケースが多いことを示しています。医療上の必要性以外の理由で長期収載品を選択する患者に対し、より強いインセンティブを設けることで後発医薬品への切り替えを促す余地があると考えられています。
見直し案の内容
見直し案では、患者の負担水準を価格差の2分の1以上とする方向で検討されています。現行制度では価格差の4分の1が特別の料金となっていますが、これを引き上げることで後発医薬品の使用をさらに促進する狙いがあります。
具体的な負担額の変化を試算すると、以下のようになります。長期収載品の薬価を1錠20円、後発医薬品の薬価を1錠10円とし、1日4錠・25日分を投薬した場合(自己負担割合3割)で計算すると、現行の価格差4分の1では特別の料金は250円です。これが価格差2分の1になると500円、価格差4分の3では750円、価格差全額(1分の1)では1,000円となります。
見直し案の検討にあたっては、医療上の必要がある場合の除外が前提となっています。長期収載品を使用する医療上の必要がある場合や、後発医薬品の在庫状況等を踏まえて後発医薬品を提供することが困難な場合については、引き続き選定療養の対象外とされます。
見直しの背景と考え方
見直しの背景には、複数の政策課題があります。第一に、医薬品のライフサイクルの観点があります。先発品企業は後発品上市後には市場から撤退し、後発品企業に安定供給等の役割を譲るという姿が目指すべき方向とされています。
第二に、医療保険制度の持続可能性の確保があります。現役世代の保険料負担を含む国民負担の軽減を図るため、長期収載品から後発医薬品への切り替えを促進する必要があります。
第三に、保険給付の公平性の問題があります。長期収載品と後発医薬品は同一の有効成分を同一量含み、効能・効果、用法・用量が原則的に同一です。しかし、医療上の必要がなくとも長期収載品を使用する被保険者に対しては、より多くの保険給付がされています。後発医薬品を使用する被保険者との間での保険給付の公平性を考慮する必要があるとされています。
中医協での主な意見
前回の中医協総会(令和7年11月14日)では、委員から様々な意見が出されました。患者負担の引き上げに慎重な意見として、患者が長期収載品を希望する理由や治療上やむを得ない理由の有無など、実態把握を求める声がありました。また、小児や慢性疾患を抱えている方、低所得者等への配慮を求める意見もありました。
一方、引き上げに積極的な意見も出されました。患者調査で特別の料金が2倍〜4倍になれば後発品に切り替えるとの回答が一定程度あったことから、価格差の全額負担が妥当との意見がありました。また、医療保険制度の持続可能性確保の観点から、長期収載品の保険給付の在り方を見直すべきとの意見もありました。
安定供給への懸念も示されました。後発医薬品の需要増に伴う供給停止により、医療現場に負担がかかっているとの指摘があります。見直しの結果として後発医薬品の需要が高まり、安定供給に影響を及ぼさないかについても考慮が必要とされています。
まとめ
長期収載品の選定療養の見直し案は、特別の料金を価格差の2分の1以上に引き上げる方向で検討が進んでいます。この見直しは、後発医薬品の使用促進、医療保険制度の持続可能性確保、保険給付の公平性確保を目的としています。ただし、医療上の必要がある場合や後発医薬品の提供が困難な場合は引き続き対象外となり、安定供給への配慮も求められています。具体的な割合については、予算編成過程を経た上で取りまとめられる予定です。
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【2040年問題対策】医療機関の業務DX化に200億円―厚労省が示す2つの方向性
Dec 18, 20252040年に向けて生産年齢人口が減少し、医療従事者の確保がますます困難になることが見込まれています。この課題に対応するため、厚生労働省は第207回社会保障審議会医療保険部会(令和7年12月12日開催)において、「医療機関の業務効率化・職場環境改善の推進に関する方向性について(案)」を提示しました。本稿では、この方向性案の概要を解説します。
厚労省が示した方向性は、「医療機関の業務のDX化の推進」と「タスク・シフト/シェアの推進等、医療従事者の養成体制の確保、医療従事者確保に資する環境整備等」の2つの柱で構成されています。DX化の推進では、令和7年度補正予算案で200億円を計上し、業務効率化に取り組む医療機関への支援を拡大するとともに、医療法および健康保険法上の責務として業務効率化への取組を明確化します。タスク・シフト/シェアの推進等では、業務分担の見直しや医療関係職種の養成体制確保に向けた施策を展開します。
背景:2040年に向けた医療従事者確保の課題
医療機関の業務効率化が急務となっている背景には、深刻な人口構造の変化があります。2040年に向けて高齢者人口がピークを迎える一方、生産年齢人口(15歳~64歳)はさらに減少していきます。この人口減少のスピードは地域によって大きく異なるため、従来と同じ医療提供が難しくなる地域が早晩出てくると予測されています。
政府はこの課題に対応するため、本年6月に「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025改訂版」を策定しました。同計画では、医療分野を含む12業種について生産性向上の必要性が高いとされ、「省力化投資促進プラン(医療分野)」が策定されました。今回の方向性案は、この省力化投資促進プランを具体化するものです。
方向性1:医療機関の業務のDX化の推進
DX化の推進は、国・自治体による支援等と、医療機関の責務の明確化の2つの観点から構成されています。なお、全ての医療機関が直ちにDX化に対応できるわけではないことを考慮し、拙速な進め方とならないよう、現場の理解を得ながら丁寧に進めることが明記されています。
国・自治体による支援等
補助金支援の拡充が、DX化推進の中核となる施策です。業務のDX化に取り組む医療機関を幅広く支援するため、令和7年度補正予算案において200億円を計上しました。この予算は、従来の試行的・先進的な取組への支援を超え、多くの医療機関がDX化に取り組めるよう支援の裾野を広げることを目的としています。業務のDX化による効果の発現には一定の期間を要するため、継続的な支援の在り方についても検討を進めます。
エビデンスの蓄積と診療報酬の見直しも重要な施策として位置づけられています。DX化を推進するにあたり、統一的な基準により労働時間の変化、医療の質や安全の確保、経営状況に与える影響等に関するデータを医療機関から収集・分析します。このデータ収集においては、医療機関の負担が過度にならないよう簡便な方法を検討するとともに、医療情報の標準化に留意しながら進めます。こうしたエビデンスの蓄積を行いながら、医療の質や安全の確保と同時に持続可能な医療提供体制を維持していく観点から、業務の効率化を図る場合における診療報酬上求める基準の柔軟化を検討します。
機器・サービスの透明性確保と技術開発の推進も図られます。医療機関が業務効率化に資する機器やサービスの価格や機能、効果を透明性をもって把握できる仕組みを構築します。また、業務効率化に資する新たな技術開発等を推進します。
医療機関への伴走支援体制も強化されます。都道府県の医療勤務環境改善支援センターの体制拡充・機能強化を図り、従来の労務管理等の支援に加え、業務効率化の助言・指導等も行うことを明確化します。地域医療介護総合確保基金を活用した支援をさらに促進するとともに、国から都道府県への技術的助言も行います。
公的認定制度の創設も注目すべき施策です。業務効率化・職場環境改善に積極的に取り組む病院を公的に認定し、対外的に発信できる仕組みを地域医療介護総合確保法に創設します。この認定を受けることで、医療従事者の職場定着にプラスとなり、労働市場における人材確保面で有利になることが期待されています。認定の仕組みは透明性があり分かりやすいものとし、医療従事者の視点を入れることも検討されます。
医療機関の責務の明確化
法的な責務の明確化も、DX化推進における重要な施策です。
医療法上の責務として、業務効率化への取組が新たに位置づけられます。現行の医療法では、病院又は診療所の管理者は医療従事者の勤務環境の改善その他の医療従事者の確保に取り組む措置を講ずるよう努めることとなっています。今後は、これらに加え、業務効率化にも取り組むよう努める旨を明確化します。
健康保険法上の責務も併せて明確化されます。保険医療機関の責務として、業務効率化・勤務環境改善に取り組むよう努める旨を規定します。この法改正により、医療機関における業務効率化の取組が制度的に担保されることになります。
方向性2:タスク・シフト/シェアの推進等と養成体制の確保
DX化の推進と併せて、医療従事者の業務分担の見直しと養成体制の確保も進められます。
タスク・シフト/シェアの取組については、医療機関がDX化に取り組む際に、併せて実施することが求められます。単にシステムを導入するだけでなく、業務プロセス自体の見直しを進めることで、DX化の効果を最大化することが期待されています。
医療関係職種の養成体制の確保も重要な課題です。養成校の定員充足率は近年低下傾向にあり、地域差も大きい状況にあります。地域において医療関係職種を安定的に確保できるよう、各地域の人口減少の推移や今後の地域医療構想等を踏まえた各医療関係職種の需給状況を見通しつつ、遠隔授業の実施やサテライト化の活用など、地域の実情に応じた養成体制の確保に向けた検討を進めます。
養成課程の柔軟化も検討されています。医療関係職種の各資格間で可能となっている既修単位の履修免除の活用や、修業年限の柔軟化など、若者・社会人にとって参入しやすい養成課程への見直しを進めます。キャリア・スキルの向上を目指す者や、育児・介護等の事情を抱えて働く者への支援、セカンドキャリアとして働く上でのマネジメントに関するリカレント教育の在り方についても具体的な検討を進めます。
歯科分野における検討も進められています。歯科衛生士・歯科技工士の業務範囲や、歯科技工の場所の在り方については、現在進めているそれぞれの業務のあり方等に関する検討会において具体的に検討を進めることとしています。
まとめ
厚労省が示した「
Duration: 00:05:07【2026年度】後期高齢者医療の保険料賦課限度額が85万円に引き上げへ
Dec 17, 2025令和7年12月12日に開催された第207回社会保障審議会医療保険部会において、後期高齢者医療の保険料賦課限度額を引き上げる案が議論されました。令和8年度の賦課限度額を現行の80万円から85万円に引き上げる方針です。この引き上げは、物価・賃金の上昇傾向と医療給付費の増加を背景としています。
令和8年度の賦課限度額引き上げ案の概要は、医療分の賦課限度額を5万円増額することです。年金収入のみの場合で1,021万円以上の高所得者が対象となります。保険料への影響は、年金収入400万円の場合で前年度比4.2%増、賦課限度額超過被保険者では6.3%増と推計されています。賦課限度額超過被保険者の割合は、引き上げ後も1.21%程度に抑制される見込みです。
賦課限度額引き上げの背景と理由
令和8年度における賦課限度額の引き上げは、複数の社会経済的要因を背景としています。
近年の物価・賃金の上昇傾向により、後期高齢者の所得が増加しています。この所得増加に伴い、医療給付費も増加する見込みです。所得と給付費の双方が増加する環境下では、保険料負担の増加が避けられません。
令和8年度には制度面での変更も影響します。出産育児支援金の激変緩和措置が終了します。この終了により、保険料負担への影響が生じます。加えて、令和8年度から子ども・子育て支援納付金が新設されます。
保険料賦課限度額の設定には重要な考慮事項があります。給付と保険料負担のバランスを失すれば、被保険者の納付意識に悪影響を及ぼします。中間所得層の負担とのバランスも考慮する必要があります。賦課限度額超過被保険者の割合を適切な水準に保つことも求められます。
令和8年度の具体的な変更内容
令和8年度の賦課限度額は85万円に設定される案です。
現行の80万円から5万円の引き上げとなります。この引き上げにより、賦課限度額に達する所得水準が変わります。賦課限度額80万円の場合、年金収入のみで971万円が基準でした。賦課限度額85万円では、年金収入のみで1,021万円が基準となります。
年金と給与の両方がある場合も基準が変わります。賦課限度額80万円では、年金・給与収入が同程度で合計1,090万円でした。賦課限度額85万円では、年金・給与収入が同程度で合計1,150万円となります。
賦課限度額超過被保険者の割合も変化します。令和7年度の実績では1.27%でした。令和8年度に80万円で据え置いた場合、1.33%に上昇する推計です。85万円に引き上げた場合は1.21%に抑制される見込みです。
子ども・子育て支援納付金については別途対応します。令和8年度予算編成過程で決定される支援金総額を踏まえます。医療分の賦課限度額超過被保険者割合と同程度となるよう、賦課限度額を設定する方針です。
保険料への影響
賦課限度額の引き上げは、所得階層により異なる影響を及ぼします。
年金収入400万円の場合、保険料は28.5万円から29.7万円に増加します。前年度比で4.2%の増加率です。一方、80万円で据え置いた場合は30万円となり、5.3%の増加率でした。
賦課限度額超過被保険者の場合、保険料は80万円から85万円に増加します。前年度比で6.3%の増加率です。80万円で据え置いた場合は増加がありません。
後期高齢者医療の保険料は均等割と所得割で構成されています。均等割が48%、所得割が52%の割合です。賦課限度額の引き上げは、主に所得割部分に影響します。
制度施行時からの経緯を振り返ります。平成20年度の制度開始時、賦課限度額は50万円でした。その後、2年ごとの保険料率改定時に段階的に引き上げられてきました。令和5年度の制度改正により、令和6・7年度は80万円に設定されました。令和6年度は激変緩和措置として73万円でしたが、新規加入者は除外されました。
まとめ
令和8年度の後期高齢者医療の保険料賦課限度額は85万円に引き上げられる案です。物価・賃金上昇と医療給付費増加を背景としています。年金収入1,021万円以上の高所得者が主な対象となります。保険料への影響は所得階層により異なり、中間所得層への配慮も含まれています。
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協会けんぽが健診制度を大幅拡充|20代からの予防・健康づくり強化へ
Dec 16, 2025令和7年12月12日、第207回社会保障審議会医療保険部会において、協会けんぽにおける予防・健康づくりの取組等について議論が行われました。協会けんぽは約3,954万人が加入する日本最大の保険者であり、中小企業で働く方々の健康を支える重要な役割を担っています。今回の部会では、現役世代への取組強化を目的とした健診制度の見直しが提案されました。
協会けんぽは、令和7年度から順次、予防・健康づくりの取組を大幅に強化します。主な施策は3つあります。第一に、35歳以上の被保険者を対象とした人間ドックへの定額補助(25,000円)を新設します。第二に、20歳・25歳・30歳の若年層を対象とした健診を新たに実施します。第三に、40歳以上の偶数年齢の女性を対象とした骨粗鬆症検診を追加します。これらの施策により、令和8年度には約280億円の費用増加が見込まれています。
協会けんぽの概要と現状
協会けんぽ(全国健康保険協会)は、主に中小企業で働く労働者とその家族が加入する医療保険です。平成20年10月に設立され、政府管掌健康保険を国から引き継いで運営しています。健康保険組合を自ら設立することが困難な中小・零細企業の従業員を対象としており、被用者保険のセーフティネットとしての役割を果たしています。
協会けんぽの加入者数は、令和5年度末時点で約3,954万人に達しています。内訳は被保険者が約2,521万人、被扶養者が約1,433万人です。加入者の平均年齢は38.7歳であり、1人当たりの年間医療費は21.0万円となっています。
加入事業所の規模は、中小企業が中心となっています。約267万事業所のうち、従業員9人以下の事業所が全体の約84%を占めています。具体的には、従業員2人以下が約56%、従業員3~4人が約14%、従業員5~9人が約14%という構成です。
協会けんぽの財政状況は、近年安定的に推移しています。令和5年度の平均保険料率は10.0%であり、平成24年度(2012年度)以降維持されています。準備金残高は令和6年度時点で約5.9兆円に達しており、保険給付費等の約6.6ヵ月分に相当します。
予防・健康づくりの取組の一層の強化
協会けんぽは、医療費の適正化と加入者の健康保持増進を目的として、健診体系の見直しを進めています。これまでは35歳以上の被保険者を対象とした生活習慣病予防健診、40歳以上の被扶養者を対象とした特定健診を中心に保健事業を展開してきました。今回の見直しでは、20代からの健康意識の醸成と、加入者の特性に応じたきめ細かい予防・健康づくりを実現することを目指しています。
見直しの背景には、若年層への早期介入の必要性があります。就労等により生活習慣が大きく変化する20代から健康意識を醸成し、加入者の自主的な健康増進と疾病予防の取組を推進することが求められています。また、医療DXのインフラを活用して健診結果を若年から経年的に保有し、ビッグデータを活用した保健事業の推進も視野に入れています。
人間ドックに対する補助の実施
令和8年度から、35歳以上の被保険者を対象に人間ドックへの定額補助(25,000円)を実施します。この施策は、年齢や性別による健康課題に対する健診の選択肢を拡大し、健康意識の醸成と健診実施率の向上を図ることを目的としています。
人間ドック補助を実施する健診機関には、一定の要件が設けられています。全日本病院協会、日本総合健診医学会、日本人間ドック・予防医療学会/日本病院会等が実施する第三者認証を取得していることが条件となります。また、特定保健指導の実施体制を有することも求められています。
若年層を対象とした健診の実施
令和8年度から、20歳・25歳・30歳の被保険者を対象とした健診を新たに実施します。この健診は、就業等により生活習慣が大きく変化する若年層に対して、早期に生活習慣病対策を行うことを目的としています。
検査項目は、生活習慣病予防健診の項目から胃・大腸がん検診を除いた内容となります。国の指針等を踏まえて設定されており、若年層の健康リスクに対応した検査が行われます。
生活習慣病予防健診の項目等の見直し
令和8年度から、生活習慣病予防健診の項目等を見直します。健康日本21(第三次)の内容を踏まえ、40歳以上の偶数年齢の女性を対象に骨粗鬆症検診を新たに実施します。
検査項目や健診単価についても、見直しが行われます。協会発足以来、検査項目や健診単価の見直しは行われていませんでした。今回、国の指針やマニュアル、人件費の高騰や診療報酬改定等を踏まえ、健診の内容と費用について検証・見直しを実施します。
被扶養者に対する健診の拡充
令和9年度から、被扶養者に対する健診を拡充します。被保険者に対する見直し後の人間ドックや生活習慣病予防健診と同等の内容に拡充することで、被扶養者の健康管理体制を強化します。なお、現行の特定健診の枠組みは維持されます。
重症化予防対策の充実
令和7年度から、重症化予防対策を強化します。胸部X線検査において要精密検査・要治療と判断されながら医療機関への受診が確認できない者に対して、受診勧奨を実施します。この取組は、令和6年度に北海道・徳島・佐賀の3支部で先行的に実施されており、外部有識者の助言を得ながら進められています。
メンタルヘルス対策も強化されます。事業所に対するメンタルヘルスに関するセミナーと出前講座の実施体制を整備し、働く人のこころの健康を支援します。
施策実施に伴う費用見込み
予防・健康づくりの取組強化に伴い、段階的に費用が増加します。令和7年度は約0.1億円程度、令和8年度は約280億円程度、令和9年度は約160億円程度の増加が見込まれています。
毎年度の収支見通しの作成
協会けんぽの財政運営に関して、毎年度の収支見通しの作成を明確化することが検討されています。現行制度では、2年ごとに今後5年間の被保険者数・総報酬額の見通し、給付費・保険料額等の収支見通しを作成し公表することとされています。
実態として、協会けんぽは毎年収支見通しを作成しています。この収支見通しを踏まえて保険料水準の設定等を行っており、実務上は毎年度の収支見通し作成が定着しています。今回の検討では、この実行上の措置を制度として明確化することが提案されています。
まとめ
協会けんぽは、令和7年度から令和9年度にかけて、予防・健康づくりの取組を段階的に強化します。人間ドックへの25,000円補助、20歳・25歳・30歳を対象とした若年層健診、40歳以上の偶数年齢の女性への骨粗鬆症検診など
Duration: 00:05:30出産育児一時金が「現物給付」へ|第207回医療保険部会で議論された新制度の全容
Dec 15, 2025令和7年12月12日、第207回社会保障審議会医療保険部会が開催され、医療保険制度における出産に対する支援の強化について議論が行われました。正常分娩の出産費用は年々上昇を続けており、現行の出産育児一時金(原則50万円、産科医療補償制度掛金1.2万円を含む)では妊婦の経済的負担をカバーしきれない状況が生じています。本稿では、この会議で議論された新制度の方向性と今後の課題について解説します。
新制度の方向性については概ね一致しつつあります。現行の出産育児一時金に代えて現物給付化を行い、給付水準は全国一律とすることが基本方針です。手厚い人員体制を整備している施設やハイリスク妊婦を積極的に受け入れる施設には加算で評価します。アメニティ等のサービス費用は無償化の対象から除外し、費用の見える化を徹底することで妊婦が納得感を持ってサービスを選択できる環境を整備します。一方で、妊婦本人への現金給付の在り方や新制度への移行時期については、引き続き議論が必要とされています。
出産費用の現状と課題
正常分娩の出産費用は過去10年以上にわたり上昇を続けています。令和6年度の全国平均出産費用は約52万円に達しており、現行の出産育児一時金50万円を上回っています。平成24年度の約42万円から約10万円の増加となっており、妊婦の経済的負担は確実に増大しています。
出産費用には大きな地域間格差が存在します。令和6年度のデータによると、最も高いのは東京都で648,309円、最も低いのは熊本県で404,411円でした。その差は約24万円に及びます。妊婦合計負担額で見ると、東京都は754,243円、熊本県は460,634円であり、約29万円の差があります。
施設類型別にも費用の差が見られます。私的病院の平均出産費用は約53.7万円、公的病院は約48.4万円、診療所(助産所含む)は約52.6万円となっています。分娩時に診療報酬を算定している割合は全体の約8割に達しており、多くの出産で何らかの医療行為が行われている実態があります。
新制度の基本的な方向性
新制度では、保険診療以外の分娩対応を現物給付化し、全国一律の給付水準を設定します。分娩の経過は多様であることを踏まえ、特定のケースを「標準」とするのではなく、基本単価を設定して支給する方式が検討されています。軽微な医療行為などは引き続き保険診療として対応します。
手厚い体制を整備している施設への加算評価が設けられます。安全な分娩のために人員体制や設備を充実させている施設、ハイリスク妊婦を積極的に受け入れる体制を整備している施設が対象となります。身体的リスクだけでなく、精神的・社会的リスクを持つ妊産婦への支援体制も評価の対象として検討されています。
アメニティ等のサービス費用は無償化の対象から除外されます。お祝い膳、写真撮影、エステなどのサービスは、妊婦自身が選択できる形とし、費用の見える化を義務付けます。現状では多くの施設でこれらのサービス費用が入院料等に含まれており、妊婦が選択しにくい状況にあるため、この点の改善が図られます。
今後の議論のポイント
妊婦本人に対する現金給付については意見が分かれています。現行の出産育児一時金は出産に伴う一時的な経済的負担全体の軽減を目的としており、その性格を引き継ぐべきという意見がある一方、法改正により給付の性格が変更される以上、引き継ぐ必要はないとの意見もあります。出産費用が50万円を下回る場合に発生していた差額の取り扱いも論点となっています。
新制度への移行時期についても議論が続いています。妊婦の自己負担が年々上昇する中、できる限り早い段階での施行を求める声がある一方、拙速な制度変更により周産期医療供給体制が崩壊することを懸念する意見もあります。妊婦が希望に応じて施設を選択できるようにした上で、可能な施設から段階的に新制度へ移行する方策が検討されています。
地域の周産期医療提供体制への配慮も重要な課題です。過疎地域の小規模施設が赤字により撤退すれば、妊婦に長距離移動という身体的リスクを強いることになります。分娩件数が減少している地域であっても、施設の体制維持に係るコストが確実に賄えるような制度設計が求められています。
まとめ
第207回医療保険部会では、出産育児一時金の現物給付化を軸とした新制度の方向性について議論が行われました。全国一律の給付水準の設定、手厚い体制を整備した施設への加算評価、アメニティ費用の見える化という3つの柱については方向性が概ね一致しつつあります。今後は、妊婦本人への現金給付の在り方、新制度への移行時期、地域の周産期医療提供体制への配慮について、さらに議論を深めていくことが予定されています。出産を控えた妊婦にとって経済的負担の軽減は切実な課題であり、関係者の合意形成と速やかな制度構築が期待されます。
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令和8年度診療報酬改定の基本方針を解説|4つの視点と重点課題
Dec 14, 2025令和7年12月9日、社会保障審議会医療保険部会および医療部会において、令和8年度診療報酬改定の基本方針が決定されました。物価高騰や賃金上昇が続く中、医療機関の経営安定と人材確保が喫緊の課題となっています。本稿では、この基本方針の全体像と具体的方向性を解説します。
今回の改定は、物価や賃金、人手不足等への対応を重点課題として位置づけています。基本方針では4つの基本的視点が示されました。第一に、医療従事者の処遇改善と人材確保への取組が重点課題となります。第二に、2040年頃を見据えた医療機関の機能分化・連携が推進されます。第三に、医療DXの活用による安心・安全で質の高い医療が推進されます。第四に、効率化・適正化を通じた医療保険制度の持続可能性向上が図られます。
改定に当たっての基本認識
基本方針では、令和8年度診療報酬改定に当たって4つの基本認識が示されました。これらの認識は、今回の改定全体を貫く基盤となっています。
第一の認識は、日本経済が新たなステージに移行しつつある中での物価・賃金の上昇と人材確保の必要性です。日本経済は30年続いたコストカット型経済から脱却しつつあります。一方で医療分野は公定価格によるサービス提供が中心であるため、経済社会情勢の変化に機動的な対応が難しく、サービス提供や人材確保に大きな影響を受けています。
第二の認識は、2040年頃を見据えた医療提供体制の構築です。2040年頃に向けては、生産年齢人口が減少する一方、85歳以上人口が増加していきます。こうした変化に対応するため、「治す医療」と「治し、支える医療」を担う医療機関の役割分担を明確化し、地域完結型の医療提供体制を構築する必要があります。
第三の認識は、医療の高度化や医療DX、イノベーションの推進による安心・安全で質の高い医療の実現です。医療技術の進歩を国民に還元するとともに、ドラッグ・ラグやデバイス・ラグへの対応が求められています。
第四の認識は、社会保障制度の安定性・持続可能性の確保と経済・財政との調和です。国民皆保険を堅持し次世代に継承するため、現役世代の保険料負担の抑制努力を踏まえながら、効率的・効果的な医療政策を実現することが不可欠です。
重点課題:物価や賃金、人手不足等への対応
今回の改定では、物価や賃金、人手不足等の医療機関等を取りまく環境の変化への対応が重点課題に位置づけられました。医療機関等は厳しい経営環境に直面しており、的確な対応が急務となっています。
医療機関等は現下の持続的な物価高騰により、事業収益の悪化が続いています。人件費、医療材料費、食材料費、光熱水費、委託費等の物件費が増加しているためです。また、全産業で賃上げ率が高水準となる中、医療分野では賃上げ水準から乖離し、人材確保が困難な状況にあります。
この重点課題に対する具体的方向性は、2つの柱で構成されています。第一の柱は、医療機関等が直面する人件費や物件費の高騰を踏まえた対応です。第二の柱は、賃上げや業務効率化・負担軽減等の業務改善による医療従事者の人材確保に向けた取組です。
第二の柱である人材確保に向けた取組には、5つの具体的施策が含まれています。まず、医療従事者の処遇改善です。次に、ICT・AI・IoT等の利活用による業務効率化の推進です。さらに、タスク・シェアリング/タスク・シフティングとチーム医療の推進です。加えて、医師の働き方改革の推進と診療科偏在対策です。最後に、診療報酬上求める基準の柔軟化です。
2040年頃を見据えた医療機関の機能分化・連携
第二の基本的視点として、2040年頃を見据えた医療機関の機能分化・連携と地域包括ケアシステムの推進が掲げられました。中長期的な人口構造や医療ニーズの変化を見据えた医療提供体制の構築が求められています。
この視点における具体的方向性は、8つの分野に整理されています。第一に、患者の状態及び必要と考えられる医療機能に応じた入院医療の評価です。地域医療構想を踏まえた医療提供体制の整備や、人口の少ない地域の実情を踏まえた評価が含まれます。
第二に、「治し、支える医療」の実現です。在宅療養患者や介護保険施設等入所者の後方支援機能を担う医療機関の評価、円滑な入退院の実現、リハビリテーション・栄養管理・口腔管理等の高齢者の生活を支えるケアの推進が進められます。
第三に、かかりつけ医機能、かかりつけ歯科医機能、かかりつけ薬剤師機能の評価です。第四に、外来医療の機能分化と連携として、大病院と地域のかかりつけ医機能を担う医療機関との連携が推進されます。第五に、質の高い在宅医療・訪問看護の確保です。
第六に、人口・医療資源の少ない地域への支援です。第七に、医療従事者確保の制約が増す中で必要な医療機能を確保するための取組です。第八に、医師の地域偏在対策の推進です。
安心・安全で質の高い医療の推進
第三の基本的視点は、安心・安全で質の高い医療の推進です。患者の安心・安全を確保しつつ、医療技術の進展や疾病構造の変化等を踏まえた取組の評価が進められます。
この視点における具体的方向性は、9つの分野にわたります。第一に、患者にとって安心・安全に医療を受けられるための体制の評価として、身体的拘束の最小化や医療安全対策の推進が含まれます。第二に、アウトカムにも着目した評価の推進です。
第三に、医療DXやICT連携を活用する医療機関・薬局の体制の評価です。電子処方箋システムの利活用やオンライン診療の推進が進められます。第四に、質の高いリハビリテーションの推進として、発症早期からの介入や土日祝日の実施体制充実が図られます。
第五に、重点的な対応が求められる分野への適切な評価です。救急医療、小児・周産期医療、がん医療、精神医療、難病患者への医療が対象となります。第六から第九として、感染症対策・薬剤耐性対策の推進、歯科医療の推進、薬局機能の評価、イノベーションの適切な評価等が挙げられています。
効率化・適正化を通じた制度の持続可能性向上
第四の基本的視点は、効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上です。医療費増大が見込まれる中、国民皆保険を維持するための不断の取組が必要とされています。
この視点における具体的方向性として、7つの取組が示されました。第一に、後発医薬品・バイオ後続品の使用促進です。第二に、OTC類似薬を含む薬剤自己負担の在り方の見直しです。第三に、費用対効果評価制度の活用です。
Duration: 00:05:40【2025年成立】医療法等改正法の3つの柱|地域医療構想・医師偏在・医療DX
Dec 13, 2025令和7年12月8日、第122回社会保障審議会医療部会において、医療法等の一部を改正する法律の成立が報告されました。この改正法は、高齢化に伴う医療ニーズの変化と人口減少を見据え、地域での良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制を構築することを目的としています。
改正法は3つの柱で構成されています。第1の柱は、2040年頃を見据えた地域医療構想の見直しです。第2の柱は、医師偏在是正に向けた総合的な対策です。第3の柱は、医療DXの推進であり、令和12年までに電子カルテ普及率約100%の達成を目指します。施行期日は令和9年4月1日を基本とし、一部規定は段階的に施行されます。
地域医療構想の見直し等
地域医療構想は、病床機能に限定せず、医療提供体制全体を対象とする構想へと拡大されます。改正法では、入院・外来・在宅医療、さらに介護との連携を含む将来の医療提供体制全体の構想として位置づけられました。この見直しにより、2040年頃の医療ニーズに対応できる体制の構築が可能となります。
地域医療構想調整会議の構成員として市町村が明確化されました。在宅医療や介護との連携等を議題とする場合には、市町村の参画が求められます。この変更により、地域の実情に即した議論が促進されます。
医療機関機能報告制度が新設されます。報告の対象となる機能は、高齢者救急・地域急性期機能、在宅医療等連携機能、急性期拠点機能等です。この制度により、各医療機関の役割が明確化され、地域全体での機能分化が進みます。
オンライン診療が医療法に定義されました。具体的には、手続規定やオンライン診療を受ける場所を提供する施設に係る規定が整備されます。衆議院の附帯決議では、過剰な規制を設けないことが求められています。
美容医療を行う医療機関における定期報告義務等も新設されます。この規定は公布後2年以内に政令で定める日から施行されます。
病床数削減に関する支援事業も創設されました。都道府県は、地域の実情を踏まえ、医療機関の経営安定のために緊急に病床数を削減する事業を行うことができます。参議院の附帯決議では、医療費削減ありきではなく、各地域の医療の質の確保を前提とすることが求められています。
医師偏在是正に向けた総合的な対策
医師偏在の是正に向けて、経済的インセンティブと規制的措置の両面から対策が講じられます。具体的には、重点区域の設定、医師手当事業の創設、外来医師過多区域への対応強化、保険医療機関管理者の要件設定の4つの措置が盛り込まれました。
「重点的に医師を確保すべき区域」を都道府県知事が医療計画において定めることができるようになりました。この区域では、保険者からの拠出による医師の手当支給に関する事業が実施されます。附帯決議では、手当増額に使途を限定し、保険者が実施状況を確認・検証できる体制の確保が求められています。
外来医師過多区域の無床診療所への対応が強化されます。新規開設の事前届出制が導入されるほか、要請勧告の公表や保険医療機関の指定期間の短縮等の措置が設けられます。施行後3年を目途として、効果検証を行い、必要に応じて所要の措置を講ずることとされています。
保険医療機関の管理者に新たな要件が設けられます。保険医として一定年数の従事経験を持つ者であること等が要件となり、管理者としての責務も課されます。この規定は令和8年4月1日から施行されます。
医療DXの推進
医療DXの推進は、電子カルテ情報の共有、医療情報の二次利用、推進体制の整備の3つの施策で構成されます。政府は、令和12年12月31日までに電子カルテの普及率が約100%となることを達成するよう、先端技術の活用を含めた情報の電子化を実現しなければならないとされました。
電子カルテ情報共有サービスが整備されます。必要な電子診療録等情報の医療機関での共有が可能となるほか、感染症発生届の電子カルテ情報共有サービス経由の提出も可能となります。附帯決議では、普及率が最低でも5割程度に達するまでの基盤整備期間中は、国による必要な財政支援を行うことが求められています。
医療情報の二次利用が推進されます。厚生労働大臣が保有する医療・介護関係のデータベースについて、仮名化情報の利用・提供が可能となります。この規定は公布後3年以内に政令で定める日から施行されます。
社会保険診療報酬支払基金が医療DXの運営母体として改組されます。名称、法人の目的、組織体制等の見直しが行われます。また、厚生労働大臣は医療DXを推進するための「医療情報化推進方針」を策定します。附帯決議では、審査支払機能を十分に果たせる人員配置と運営体制の確保が求められています。
施行期日と今後の展望
施行期日は規定ごとに異なります。基本となる施行日は令和9年4月1日です。オンライン診療の定義、外来医師過多区域への対応、保険医療機関管理者の要件等は令和8年4月1日から施行されます。地域医療構想の見直しに関する一部規定は令和8年10月1日から施行されます。
衆参両院の附帯決議には重要な指摘が含まれています。オンライン診療については過剰な規制を設けないこと、医師手当事業については保険料負担の抑制を図ること、電子カルテ情報共有サービスについては国による財政支援を行うこと等が求められています。介護・障害福祉従事者の処遇改善についても、早急な措置を講ずることが決議されました。
まとめ
医療法等の一部を改正する法律は、2040年頃を見据えた医療提供体制の構築を目指す包括的な制度改革です。地域医療構想の見直しにより病床から医療提供体制全体への視野拡大が図られ、医師偏在是正により地域間の医療格差の解消が進められ、医療DXの推進により電子カルテ普及率100%を目指す基盤整備が行われます。医療機関の経営者や医療従事者は、段階的な施行スケジュールを踏まえ、計画的な対応準備を進めることが求められます。
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【総額1兆368億円】令和7年度補正予算案「医療・介護等支援パッケージ」の全容を解説
Dec 12, 2025令和7年12月8日に開催された第122回社会保障審議会医療部会において、令和7年度補正予算案が報告されました。本予算案は、物価上昇や人手不足といった医療機関の経営課題に対応し、地域に必要な医療提供体制を確保することを目的としています。
本稿では、医療分野に総額1兆368億円を投じる「医療・介護等支援パッケージ」の概要を解説します。主要な支援策は6つあります。賃上げ・物価上昇対策に5,341億円、病床数適正化に3,490億円、福祉医療機構による優遇融資に804億円、施設整備促進に462億円、生産性向上に200億円、産科・小児科支援に72億円がそれぞれ計上されています。
賃上げ・物価上昇に対する支援(5,341億円)
最大の予算枠である5,341億円は、医療機関・薬局における処遇改善と物価上昇対策に充てられます。この支援は、救急医療を担う医療機能の特性を踏まえつつ、物価を上回る賃上げの実現を目指すものです。
病院に対する基礎的支援は、1床あたり賃金分7.2万円、物価分1.3万円の計8.5万円です。有床診療所は1床あたり賃金分8.4万円、物価分11.1万円が交付されます。医科無床診療所・歯科診療所には1施設あたり賃金分15.0万円、物価分17.0万円の計32.0万円が支給されます。
保険薬局への支援は、1法人あたりの店舗数に応じて傾斜配分されます。5店舗以下は1施設あたり計23.0万円、6〜19店舗は18.0万円、20店舗以上は12.0万円となっています。訪問看護ステーションには1施設あたり22.8万円が交付されます。
救急医療を担う病院には、受入件数に応じた加算があります。救急車受入件数1件以上1,000件未満で500万円、1,000件以上で1,500万円、2,000件以上で3,000万円、3,000件以上で9,000万円、5,000件以上で1.5億円、7,000件以上で2億円の加算です。三次救急病院については、受入件数5,000件未満の場合は一律1億円が加算されます。
手術・分娩実績に基づく加算も設けられています。全身麻酔手術件数または分娩取扱数(分娩取扱数は3を乗じた数で算定)が800件以上の病院には1施設あたり2,000万円、2,000件以上の病院には8,000万円が加算されます。ただし、この加算は救急車受入件数3,000件未満の病院が対象であり、救急加算との併給はできません。
病床数の適正化に対する支援(3,490億円)
二番目に大きな予算枠である3,490億円は、病床数の適正化を進める医療機関への支援に充てられます。この支援は、「病床数適正化緊急支援基金」を新たに創設して実施されます。
支援対象は、医療需要の変化を踏まえた病床数の適正化を進める医療機関です。交付額は、病院(一般・療養・精神)および有床診療所の病床削減に対して1床あたり約410万円です。休床の場合は1床あたり約205万円となります。
削減目標として約11万床が設定されています。この内訳は、一般病床・療養病床の必要病床数を超える約5.6万床と、精神病床の基準病床数を超える約5.3万床です。令和6年度補正予算では約1.1万床分が措置済みであり、今回の予算で残りの削減を加速します。
福祉医療機構による優遇融資等(804億円)
804億円は、物価高騰の影響を受けた医療機関の資金繰り支援に充てられます。独立行政法人福祉医療機構による無利子・無担保等の優遇融資を実施するための体制整備費用です。
この支援は、福祉医療機構に対する出資金および運営費交付金として措置されます。融資財源は別途財政融資資金から措置されます。地域の基幹的な民間病院に対しては、資本性劣後ローンを提供し、民間金融機関と連携しながら経営改善を図ることも可能です。
施設整備の促進に対する支援(462億円)
462億円は、物価高騰により施設整備が困難となっている医療機関への支援に充てられます。この支援により、地域医療構想の推進と救急・周産期医療体制の確保を図ります。
支援対象は、医療提供体制施設整備交付金、医療施設等施設整備費、地域医療介護総合確保基金の交付対象となる新築・増改築等を行う医療機関です。交付額は「(市場価格-補助事業単価)×国負担分相当」として算出され、㎡数に応じた建築資材高騰分等が補助されます。
生産性向上に対する支援(200億円)
200億円は、業務効率化・職場環境改善に取り組む医療機関への支援に充てられます。医療分野の生産性向上を図り、人材確保・定着につなげることが目的です。
支援対象は、「業務効率化推進委員会(仮称)」を設置し、ICT機器等の導入など業務効率化・職場環境改善に取り組む病院です。総事業費は1病院あたり1億円であり、このうち交付額の上限は8,000万円です。負担割合は国が3分の2、都道府県が3分の1となっています。
生産性向上に資する取組の具体例として、スマートフォンによるカルテ閲覧・情報共有、インカム、インタラクティブ・ホワイト・ボード等の導入が挙げられています。これらにより、DX化による情報伝達の効率化を実現します。
産科・小児科への支援(72億円)
72億円は、出生数・患者数の減少等を踏まえた産科・小児科への支援に充てられます。地域でこどもを安心して生み育てることができる周産期医療・小児医療体制の確保が目的です。
支援は4つの事業で構成されています。分娩取扱施設支援事業は、分娩数が減少している施設に対して1施設あたり580万円〜1,740万円を補助します。地域連携周産期支援事業(分娩取扱施設)は、集約化が困難な地域の施設に最大約1,125万円を補助します。地域連携周産期支援事業(産科施設)は、妊婦健診等を行い近隣施設と連携する施設の整備・設備費用を補助します。小児医療施設支援事業は、地域の小児医療拠点病院に対して小児科部門の病床1床あたり約21万円〜約105万円を補助します。
まとめ
令和7年度補正予算案における医療・介護等支援パッケージは、物価上昇と人材確保という医療機関が直面する二大課題に対応するものです。総額1兆368億円の予算は、賃上げ・物価対策、病床適正化、資金繰り支援、施設整備、生産性向上、産科・小児科支援の6分野に配分されます。予算成立後は速やかに実施される予定であり、各医療機関は自院の状況に応じた支援策の活用を検討することが求められます。
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【200億円支援決定】医療機関のDX化推進|厚労省が示す業務効率化の新方針
Dec 11, 20252040年に向けて生産年齢人口が減少し、医療従事者の確保がますます困難になることが見込まれています。政府は令和7年6月に「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025改訂版」において、人手不足が深刻な12業種の生産性向上が必要として「省力化投資促進プラン(医療分野)」を策定しました。この流れを受け、第122回社会保障審議会医療部会(令和7年12月8日開催)では、医療機関の業務効率化・職場環境改善の推進に関する方向性が示されました。本稿では、この方向性の内容を解説します。
厚生労働省が示した方向性は、大きく2つの柱で構成されています。第1の柱は、医療機関の業務のDX化推進です。この柱には、令和7年度補正予算案200億円の計上、効果測定のためのエビデンス蓄積、診療報酬基準の柔軟化検討、機器・サービスの透明性確保と技術開発推進、支援体制の強化、病院の公的認定制度創設、医療法・健保法における責務の明確化が含まれます。第2の柱は、タスク・シフト/シェアの推進と医療従事者の養成体制確保です。この柱には、DX化と連動したタスク・シフト/シェアの推進、養成校の遠隔授業やサテライト化の活用、養成課程の柔軟化が含まれます。
医療機関の業務のDX化推進
厚生労働省は、業務効率化に取り組む医療機関の裾野を広げるため、国・自治体による支援と医療機関の責務明確化の両面から対応を進めます。その際、全ての医療機関が直ちにDX化に対応できるわけではないことを考慮し、現場の理解を得ながら丁寧に進めるとしています。
国・自治体による支援等
国・自治体による支援は、財政支援、エビデンス蓄積、診療報酬基準の柔軟化検討、機器・サービスの透明性確保と技術開発推進、支援体制の強化、認定制度の創設の6つの施策で構成されます。
財政支援については、令和7年度補正予算案において200億円が計上されました。この予算は、これまでの試行的・先進的な取組への支援だけでなく、業務のDX化に取り組む多くの医療機関を支援することを目的としています。さらに、業務のDX化による効果の発現には一定の期間を要することを踏まえ、継続的な支援の在り方も検討されます。
エビデンス蓄積については、統一的な基準によるデータ収集・分析が行われます。収集対象は、労働時間の変化、医療の質や安全の確保、経営状況に与える影響等です。データ収集の際には、医療機関の負担が過度なものにならないよう留意し、できるだけ簡便な形で収集できる方法が検討されます。また、医療機関の情報システムと連携できるよう、医療情報の標準化にも留意しながら進められます。
診療報酬基準の柔軟化検討については、エビデンスの蓄積を行いながら進められます。医療の質や安全の確保と同時に、持続可能な医療提供体制を維持していくことが重要という視点から、業務の効率化を図る場合における診療報酬上求める基準の柔軟化が検討されます。ただし、第121回医療部会では、業務効率化を診療報酬の人員配置基準の緩和へつなげるには時期尚早との意見も出されています。
機器・サービスの透明性確保と技術開発推進については、2つの取組が進められます。1つ目は、医療機関が業務効率化に資する機器やサービスの価格や機能、効果を透明性をもって把握できる仕組みの構築です。2つ目は、業務効率化に資する新たな技術開発等の推進です。
支援体制の強化については、都道府県の医療勤務環境改善支援センターの体制拡充・機能強化が図られます。同センターは従来、労務管理等の支援を行ってきましたが、今後は業務効率化の助言・指導等も行うことが明確化されます。地域医療介護総合確保基金を活用した同センターへの支援もさらに促進されるとともに、国から都道府県への技術的助言が行われます。
認定制度の創設については、業務効率化・職場環境改善に計画的に取り組む病院を公的に認定する仕組みが、地域医療介護総合確保法に創設されます。この認定を受けることで、医療従事者の職場定着にプラスとなり、労働市場における医療従事者の確保面でより有利になることが期待されています。認定の仕組みは透明性がある分かりやすいものとし、医療従事者の視点を入れることも検討されます。
医療機関の責務の明確化
医療機関の責務は、医療法と健保法の両面で明確化されます。
医療法上の責務については、病院又は診療所の管理者が業務効率化に取り組むよう努める旨が明確化されます。現在、管理者は医療従事者の勤務環境の改善その他の医療従事者の確保に取り組む措置を講ずるよう努めることとなっていますが、今後はこれらに業務効率化が加わります。
健保法上の責務については、保険医療機関の責務として業務効率化・勤務環境改善に取り組むよう努める旨が明確化されます。ただし、第121回医療部会では、医療機関の管理者に業務効率化の責務を付すことで医療機関に負担がかかるようなことは避けるべきとの意見も出されています。
タスク・シフト/シェアの推進と養成体制確保
厚生労働省は、タスク・シフト/シェアの推進、養成体制の確保、養成課程を含めた環境整備の3つの施策を進めます。
タスク・シフト/シェアの推進
タスク・シフト/シェアは、DX化と連動して推進されます。医療機関が業務のDX化に取り組む際には、併せてタスク・シフト/シェアの実施や業務プロセス自体の見直しを進めることが求められます。第121回医療部会では、タスク・シフト/シェアにより本来業務ではない部分で業務が停滞することのないよう、AIやロボット等によるDX化があることを明確にすべきとの意見も出されています。
養成体制の確保
養成体制の確保は、地域の実情に応じた対応が進められます。医療関係職種の養成校の定員充足率は近年低下傾向にあり、地域差も大きい状況です。今後は、各地域の人口減少の推移や今後の地域医療構想等を踏まえた各医療関係職種の需給状況を見通しつつ、遠隔授業の実施やサテライト化の活用などをはじめとした検討が進められます。
養成課程を含めた環境整備
養成課程を含めた環境整備は、3つの観点から進められます。
第1の観点は、参入しやすい養成課程の整備です。医療関係職種の各資格間において現在でも可能となっている既修単位の履修免除の活用や、養成に係る修業年限の柔軟化などが検討されます。まずは課題等を把握し、各職種の状況に応じた支援の在り方が検討されます。
第2の観点は、キャリア支援と環境整備です。意欲・能力やライフコースに合わせて、更なるキャリア・スキルの向上を目指す者や、育児・介護等の事情を抱えて働く者への支援が検討されます。セカンドキャリアとして働く上でのマネジメントに関す
Duration: 00:04:52令和8年度診療報酬改定の基本方針を解説|4つの視点と重点課題
Dec 10, 2025令和7年12月8日、第122回社会保障審議会医療部会において、令和8年度診療報酬改定の基本方針(案)が示されました。今回の改定は、持続的な物価高騰と賃金上昇が続く経済環境のもと、医療機関の経営安定と医療従事者の処遇改善が喫緊の課題となっています。本稿では、この基本方針の全体像と4つの改定視点について解説します。
今回の基本方針の要点は次の4点です。第一に、物価・賃金・人手不足への対応が「重点課題」に位置づけられました。第二に、2040年頃を見据えた医療機関の機能分化・連携と地域包括ケアシステムの推進が掲げられています。第三に、医療DXやイノベーションによる安心・安全で質の高い医療の実現が示されました。第四に、効率化・適正化を通じた医療保険制度の持続可能性向上が求められています。
改定に当たっての基本認識
今回の基本方針では、改定の前提となる4つの基本認識が示されています。これらの認識は、日本の医療制度が直面する構造的課題を反映しています。
第一の認識は、物価・賃金上昇と人材確保の課題です。日本経済は30年続いたコストカット型経済から脱却し、新たなステージに移行しつつあります。しかし医療分野は公定価格によるサービス提供が大宗を占めるため、経済情勢の変化に機動的な対応が難しい状況にあります。この結果、医療機関では全産業の賃上げ水準から乖離が生じ、人材確保が困難になっています。
第二の認識は、2040年頃を見据えた医療提供体制の構築です。2040年頃に向けては、生産年齢人口が減少する一方、85歳以上人口は増加していきます。この人口構造の変化に対応するため、限りある医療資源を最適化しながら、「治す医療」と「治し、支える医療」を担う医療機関の役割分担を明確化する必要があります。
第三の認識は、安心・安全で質の高い医療の実現です。医療技術の進歩や高度化を国民に還元するとともに、ドラッグ/デバイス・ラグ/ロスへの対応が求められています。デジタル化された医療情報の利活用やAI・ICT等の活用による医療DXの推進も重要な課題です。
第四の認識は、社会保障制度の安定性・持続可能性の確保です。国民皆保険を堅持し次世代に継承するためには、経済・財政との調和を図りつつ、現役世代の保険料負担の抑制努力が必要です。
重点課題:物価・賃金・人手不足への対応
今回の改定では、「物価や賃金、人手不足等の医療機関等を取りまく環境の変化への対応」が重点課題に位置づけられました。この重点課題は、医療機関の経営安定と人材確保という2つの柱で構成されています。
医療機関の経営状況は厳しさを増しています。持続的な物価高騰により、人件費や、医療材料費、食材料費、光熱水費、委託費等といった物件費が増加しています。この結果、事業収益の増加以上に事業費用が増加し、収益が悪化している状況にあります。
人材確保も深刻な課題となっています。2年連続で5%を上回る賃上げ率となった春闘等により、全産業の賃上げ水準が高まる中、医療分野では収益悪化を背景に賃上げが進んでいません。この賃上げ水準の乖離が、医療従事者の確保を一層困難にしています。
具体的方向性として、次の5つが示されています。第一に、物件費高騰を踏まえた対応です。第二に、医療従事者の処遇改善です。第三に、ICT・AI・IoT等の利活用による業務効率化です。第四に、タスク・シェアリング/タスク・シフティング、チーム医療の推進です。第五に、医師の働き方改革の推進と診療報酬上の基準の柔軟化です。
2040年を見据えた医療機関の機能分化・連携
第二の視点は、2040年頃を見据えた医療機関の機能分化・連携と地域における医療の確保です。この視点では、地域医療構想に基づく医療提供体制の構築が中心的なテーマとなっています。
入院医療については、患者の状態と必要な医療機能に応じた評価が求められています。患者のニーズ、病院の機能・特性、地域医療構想を踏まえた医療提供体制の整備が必要です。人口の少ない地域の実情を踏まえた評価も重要な課題です。
「治し、支える医療」の実現に向けた取組も示されています。在宅療養患者や介護保険施設等入所者の後方支援機能を担う医療機関の評価、円滑な入退院の実現、リハビリテーション・栄養管理・口腔管理等の高齢者の生活を支えるケアの推進が具体的方向性として挙げられています。
外来・在宅医療に関しては、かかりつけ医機能、かかりつけ歯科医機能、かかりつけ薬剤師機能の評価が求められています。大病院と地域のかかりつけ医機能を担う医療機関との連携による外来患者の逆紹介の推進も重要です。質の高い在宅医療・訪問看護の確保、人口・医療資源の少ない地域への支援、医師の地域偏在対策の推進も具体的方向性に含まれています。
安心・安全で質の高い医療の推進
第三の視点は、安心・安全で質の高い医療の推進です。この視点では、患者の安心・安全を確保しつつ、イノベーションを推進し、新たなニーズに対応できる医療の実現を目指しています。
患者の安全確保に関しては、身体的拘束の最小化や医療安全対策の推進が示されています。アウトカムに着目した評価として、データを活用した診療実績による評価の推進も求められています。
医療DXの推進も重要な方向性です。電子処方箋システムによる重複投薬等チェックの利活用の推進、外来・在宅医療等におけるオンライン診療の推進が具体的に挙げられています。
質の高いリハビリテーションの推進も求められています。発症早期からのリハビリテーション介入の推進、土日祝日のリハビリテーション実施体制の充実が具体的方向性として示されています。
重点的な対応が求められる分野として、救急医療、小児・周産期医療、がん医療・緩和ケア、精神医療、難病患者への医療が示されています。感染症対策や薬剤耐性対策の推進、歯科医療の充実、薬局・薬剤師業務の対人業務の充実化、イノベーションの評価や医薬品の安定供給確保も具体的方向性に含まれています。
効率化・適正化による制度の持続可能性向上
第四の視点は、効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上です。高齢化や技術進歩、高額な医薬品の開発等により医療費の増大が見込まれる中、医療資源の効率的・重点的な配分が求められています。
医薬品に関する取組として、後発医薬品・バイオ後続品の使用促進、OTC類似薬を含む薬剤自己負担の在り方の見直しが示されています。費用対効果評価制度の活用、市場実勢価格を踏まえた適正な評価も重要な方向性です。
医薬品の適正使用に向けては、電子処方箋の活用や医師・病院薬剤師と薬局薬剤師の協働が求めら
Duration: 00:05:54【令和8年度改定】人口減少地域の医療確保と救急体制強化の方向性|中医協第631回総会
Dec 09, 2025令和7年11月28日に中央社会保険医療協議会総会(第631回)が開催され、令和8年度診療報酬改定に向けた個別事項(その10)として「人口・医療資源の少ない地域」「救急医療」「業務の簡素化」の3テーマが議論されました。人口減少と医師の高齢化が進む地域での医療提供体制の維持が喫緊の課題となる中、オンライン診療の活用や医療機関間の連携強化が検討されています。
今回の議論では、主に3つの方向性が示されました。第一に、医療資源の少ない地域の対象範囲を見直すとともに、小規模二次医療圏における外来診療確保のための新たな評価の検討です。第二に、救急外来における体制評価の充実と救急患者連携搬送料の運用改善です。第三に、施設基準届出のオンライン化推進と計画書等の署名省略による業務負担軽減です。
人口・医療資源の少ない地域における医療提供体制
人口・医療資源の少ない地域では、診療所数の減少と医師の高齢化が深刻化しています。中医協では、対象地域の見直しと小規模二次医療圏への支援強化を軸に検討が進められています。
人口規模が小さい二次医療圏においては、2012年から2022年にかけて診療所数が減少傾向にあり、従事する医師の高齢化も進んでいます。全二次医療圏の人口平均値は約28.2万人、中央値は約22.3万人であり、人口密度が全国平均以下の二次医療圏は194医療圏に上ります。
医療資源の少ない地域の要件については、令和5年医療施設静態調査等を用いた見直しシミュレーションが行われました。その結果、現在該当する37医療圏のうち32医療圏が引き続き該当し、7医療圏が新たに該当する一方、5医療圏が除外となります。これにより、令和8年度改定では対象が39医療圏となる見込みです。除外される医療圏の医療機関については、運営の安定性を担保する観点から、経過措置期間の延長が検討されています。
小規模な二次医療圏における外来診療体制の確保に向けて、3層構造の支援イメージが示されました。第1層は過疎地域等に所在する「へき地診療所等」で、巡回診療や医師派遣、D to P with N・D to P with Dを含むオンライン診療を活用して基礎的な医療を提供します。第2層は「へき地診療所等への支援を実施する病院」で、地域の救急患者や入院患者を受け入れながら、オンライン診療を含む巡回診療や医師派遣を行います。第3層は「拠点的機能を有する病院」で、急性期の拠点機能を担いながら地域全体への医師派遣を調整します。
オンライン診療の活用については、へき地医療拠点病院358施設のうち83施設が情報通信機器を用いた診療の届出を行っています。オンライン診療による巡回診療を実施した医療機関は7施設にとどまりますが、実施した巡回診療のほとんどをオンライン診療で行っている先進事例も存在します。D to P with Nは看護師の同席により検査・処置の実施や患者状況の把握が可能となる利点があり、今後の評価のあり方について議論が求められています。
救急医療体制の充実と連携強化
救急医療については、過去最多となった救急搬送件数への対応と、救急外来における体制評価の充実が主な検討課題となっています。
令和6年中の救急自動車による救急出動件数と搬送人員は、昭和38年の集計開始以降で最多となりました。年齢区分別では高齢者の搬送が増加しており、現場到着所要時間および病院収容所要時間は新型コロナウイルス感染症発生以降大幅に延長し、令和5年においても以前の水準には戻っていません。
救急患者連携搬送料については、令和6年度改定で新設されたものの、課題が指摘されています。算定患者が多い医療機関がある一方で、ほとんどの医療機関では実際に搬送・受入を行った患者数は少数にとどまっています。また、急性疾患に対する治療を終了し、必ずしも緊急自動車等による搬送が必要でない可能性のある患者が一定程度含まれていることも判明しました。総務省消防庁では、病院救急車や患者等搬送事業者の活用による転院搬送体制の整備が検討されています。
救急外来応需体制に対する評価として、夜間休日救急搬送医学管理料と院内トリアージ実施料があります。夜間休日救急搬送医学管理料の算定回数は令和2年以降増加傾向にあり、令和6年には月間約15.6万回に達しています。高次の救急医療機関ほど、地域の救急医療に関する取組への参加割合や24時間検査体制を有する割合が高い傾向にあります。
救急外来における体制については、専用の区画を有し、救急患者に対応できる医師・看護師・薬剤師等を配置し、24時間検体検査・画像検査・処方等を実施できる体制の評価が検討されています。現行では、救急外来従事者の配置や地域救急医療への取組参加について直接的な評価がないことから、体制の充実に向けた議論が進められています。
業務の簡素化による負担軽減
業務の簡素化については、診療に係る業務と届出に係る業務の2つの観点から検討が進められています。医療機関の事務負担軽減と医療従事者の働き方改革を推進する観点から、様式の見直しや電子化が主要な論点となっています。
診療に係る業務で簡素化の必要性があるものについて調査を行ったところ、施設として最も多かったのは「計画書作成」(44.2%)で、次いで「DPCデータ(様式1)の作成」(38.2%)でした。病棟では「計画書作成」に次いで「患者や家族等による署名・記名押印」が多く挙げられました。
入院診療計画書については、法令上は短期間で退院が見込まれる場合は作成不要とされていますが、診療報酬上は全患者に作成を求めています。規制改革推進に関する答申では、医療機関等の負担軽減の観点から、診療報酬上の書面について署名または記名・押印を不要とすることの可否検討が求められており、代替方法で担保できるものは廃止する方向で議論されています。
届出に係る業務については、施設基準等届出のオンライン化が段階的に進められています。令和4年4月から開始され、令和7年度中に326件の届出についてオンライン化が実施予定であり、令和10年度の全届出オンライン化を目指して改修が進んでいます。
様式9については、記載にあたって参考にすべき注意事項が多く、看護要員等の算出における小数点以下の処理方法が項目によって異なるなど、作成が煩雑であるとの指摘があります。注意事項の記載整理や小数点以下の処理の統一等の見直しが検討されています。
毎年の報告様式についても、他に代替方法がないものや次期改定に必要なものに限定し、添付書類を省略するなどの簡素化が検討されています。妥結率等にかかる報告書では大部な添付書類が必要とされており、医療機関等の負担軽減が求められています。
まとめ:
Duration: 00:05:51【令和8年度改定】薬局の無菌製剤処理加算とポイント付与規制の2つの論点を解説
Dec 08, 2025中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第631回)において、令和8年度診療報酬改定に向けた調剤に関する議論が行われました。今回の資料では、薬剤調製料の無菌製剤処理加算と、患者誘引につながるポイント付与・配送料無料の問題が取り上げられています。
この資料では、2つの論点が示されました。第一の論点は、無菌製剤処理加算の対象年齢を6歳未満から15歳未満へ拡大するかどうかです。第二の論点は、ポイント付与や配送料無料の広告による患者誘引への対策をどう講じるかです。いずれも令和8年度改定に向けて、今後の議論が注目されます。
無菌製剤処理加算の対象年齢拡大が論点に
無菌製剤処理加算について、現行では6歳未満の乳幼児のみが加点対象ですが、6歳以上15歳未満の小児への拡大が検討されています。この背景には、小児に対する注射薬の調製において、年齢や体重に応じた投与量調整が必要となる実態があります。
現行の無菌製剤処理加算は、乳幼児への無菌調製を評価する仕組みです。乳幼児では、乳幼児用の製剤がないことや体内動態が成人と異なることから、個々の患者に応じた無菌調製が必要となります。この調製を評価するため、通常は中心静脈栄養法用輸液で1日につき69点、抗悪性腫瘍剤で79点、麻薬で69点が加算されます。6歳未満の乳幼児の場合は、それぞれ137点、147点、137点と約2倍の点数が設定されています。
しかし、医薬品の添付文書では「小児」は7歳以上15歳未満の児を指すとされています。15歳未満の患者に対する注射薬の調製においても、体重ごとに投与量調整が必要となることが多いのが実態です。たとえば、静脈経腸栄養ガイドラインによると、7〜12歳では60〜75kcal/kg/day、12〜15歳では40〜60kcal/kg/dayと、成人とは異なるエネルギー投与量が必要となります。
こうした状況を踏まえ、中医協では「6歳以上の小児の薬剤調製の実情に鑑み、無菌製剤処理加算に加点する患者対象年齢の範囲について、どのように考えるか」という論点が示されました。
ポイント付与と配送料無料による患者誘引が問題視
患者誘引につながるポイント付与や配送料無料の問題について、中医協で対策が議論されています。調剤報酬は中医協での議論を経て公定されており、ポイントのような付加価値を付与することは医療保険制度上ふさわしくないとされています。
ポイント付与については、平成29年の事務連絡で指導対象となる行為が明確化されています。指導対象となるのは、ポイントを用いて調剤一部負担金を減額すること、調剤一部負担金の1%を超えてポイントを付与すること、ポイント付与について建物外の看板やテレビCMなどで大々的に宣伝することの3つです。
また、処方箋ネット受付を利用した「トンネルを通じた経済的利益の提供」も問題視されています。具体的には、処方箋受付サイトを通じて調剤を求めた患者にアンケート回答後の謝礼としてギフトカードを提供するケースです。アンケート謝礼という名目であっても、薬局が支払う手数料が原資となっている以上、患者への経済上の利益の提供にあたるおそれがあります。
配送料無料の問題も同様の観点から指摘されています。令和7年度の薬局業務実態調査によると、1,133薬局のうち58薬局が患者希望により配送料無料で薬剤を配送しています。このうち22.4%がHP等で配送料無料であることを周知していました。HP等で宣伝した上で患者希望により薬剤を配送した場合、患者への経済上の利益の提供にあたるおそれがあります。
薬担規則に基づく規制の枠組み
これらの患者誘引行為は、保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則(薬担規則)で禁止されています。薬担規則第二条の三の二では、健康保険事業の健全な運営を損なうおそれのある経済上の利益を提供することにより、患者が自己の保険薬局において調剤を受けるように誘引してはならないと定められています。
中医協委員からは、郵送料無料などの取扱いについて令和8年度改定の議論で取り上げるよう要望が出されました。患者が保険薬局を選択する際には、薬局が親切丁寧に調剤を担当し、薬剤師が調剤・薬学的管理・服薬指導の質を高めることが本旨であるべきとの考えが示されています。
一方で、欠品等の薬局都合による配送については患者誘引に該当しないと考えられています。調査では、薬局都合で配送料無料としている薬局が720件あり、これはHP等での宣伝を伴っていないため問題とはされていません。
まとめ
令和8年度診療報酬改定に向けて、無菌製剤処理加算の対象年齢拡大と患者誘引対策の2つが論点として示されました。無菌製剤処理加算については、15歳未満の小児への投与量調整の実態を踏まえた対象年齢の見直しが検討されます。患者誘引対策については、ポイント付与や配送料無料の広告に対する規制強化の方向性が議論されています。薬局経営者は、今後の中医協での議論の動向に注視する必要があります。
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【令和8年度改定】調剤報酬の対人業務見直し3つの論点|調剤管理料・吸入指導・かかりつけ薬剤師
Dec 07, 2025中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第631回)において、調剤報酬における対人業務の見直しが議論されました。令和8年度診療報酬改定に向け、薬局薬剤師の対人業務を適正に評価する観点から、調剤管理料関係、服薬管理指導関係、かかりつけ薬剤師関係の3分野で論点が提示されています。
今回の議論では、調剤管理料の日数による点数区分の見直し、インフルエンザ等急性疾患に対する吸入薬指導の評価、かかりつけ薬剤師指導料のノルマ問題への対応が主要な検討事項となりました。本記事では、これら3つの論点について、現状の課題と今後の方向性を解説します。
調剤管理料関係:日数区分と加算の見直し
調剤管理料関係では、処方日数に応じた点数区分の妥当性、調剤管理加算のポリファーマシー対策との整合性、重複投薬・相互作用等防止加算の再評価という3つの論点が示されました。
調剤管理料の日数区分については、令和4年度改定で調剤料が廃止された際、対人業務を評価する薬学管理料として新設されました。現行の点数は、7日分以下が4点、8日分以上14日分以下が28点、15日分以上28日分以下が50点、29日分以上が60点と設定されています。この日数区分は、旧調剤料の激変緩和措置として引き継がれたものですが、支払側からは「基本は一律点数が望ましい」との意見が出されています。
調剤管理加算については、ポリファーマシー対策に逆行する可能性が指摘されています。この加算は、複数の医療機関から6種類以上の内服薬が処方された患者に対する薬学的分析を評価するものです。令和4年度改定時にも同様の懸念が示され、初めて薬局に来た患者や処方変更の患者に限定する措置が取られました。今後、さらなる見直しが検討される見込みです。
重複投薬・相互作用等防止加算については、医療DXの進展に伴う再評価が求められています。オンライン資格確認の普及により、重複投薬や禁忌薬剤の使用が機械的にチェックできる環境が整いつつあります。その一方で、検出された問題について薬学的に判断し、医師に疑義照会を行う業務は依然として薬剤師の専門的判断を要します。単なる情報収集ではなく、疑義照会の要否判断や処方変更に至った専門的業務をどう評価するかが論点となっています。
服薬管理指導関係:吸入指導とフォローアップの評価
服薬管理指導関係では、吸入薬指導加算の対象拡大と、調剤後フォローアップ業務の評価が論点となりました。
吸入管理指導加算の対象拡大については、インフルエンザ等の急性疾患への適用が検討されています。現行の吸入管理指導加算は、喘息やCOPDなどの慢性疾患に対する吸入薬指導を評価するものです。しかし、インフルエンザ吸入薬の指導にも同程度の時間を要することが調査で明らかになりました。さらに、感染症対策として個室を整備すること、患者の目の前で実際に吸入させて服用を確認すること、薬剤師自身の曝露リスクへの対応など、急性疾患特有の負担があります。これらの労力に対する評価が現状では存在しないため、見直しが求められています。
調剤後フォローアップ業務については、副作用検出率の向上効果を踏まえた評価が検討されています。調査によると、患者フォローアップ未実施の場合の副作用検出率は3.36%であるのに対し、フォローアップ実施群では5.37〜6.95%と有意に上昇しています。患者側の評価も、フォローアップを受けた患者の97.8%が「よかった」と回答しています。その理由として「服薬後の症状や体調の経過に問題ないことを確認してもらい安心できた」が最も多く挙げられました。こうしたエビデンスを踏まえ、フォローアップ業務に対する調剤報酬上の評価のあり方が議論されています。
かかりつけ薬剤師関係:患者選択の確保とノルマ問題
かかりつけ薬剤師関係では、かかりつけ薬剤師指導料の算定に関するノルマ問題と、患者が主体的に選択できる仕組みへの転換が論点となりました。
かかりつけ薬剤師指導料のノルマ問題については、深刻な実態が明らかになっています。調査によると、業務ノルマを課している薬局の約半数で、かかりつけ薬剤師指導料の算定回数や同意件数にノルマが設けられていました。患者からは「初めて会ったような薬剤師から同意を求められた」「薬局に行くたびに同意を求められるので苦痛」といった声が寄せられています。かかりつけ薬剤師は本来、患者の意思により選択されるべきものであり、現行の仕組みが患者本位の制度設計になっていない点が問題視されています。
かかりつけ薬剤師機能の推進については、「患者のための薬局ビジョン」の目標達成状況も議論されました。2025年を目標年次として全ての薬局がかかりつけ薬局となることが掲げられていましたが、「かかりつけ機能が実際に発揮されているか、対物業務から対人業務へのシフトが進んだかについては、十分に達成されたとは感じられない」との厳しい評価が示されています。
かかりつけ薬剤師指導料を算定していない理由についても調査が行われました。かかりつけ薬剤師業務を実施しているにもかかわらず算定していない薬剤師のうち、「従来よりかかりつけ薬剤師指導を実施しており、患者に上乗せの料金を請求できないため」との回答が一定数ありました。制度創設前から同様の業務を行っていた薬剤師にとって、追加料金を患者に請求することへの抵抗感があることがうかがえます。
まとめ:対人業務の適正評価に向けて
今回の中医協総会では、薬局薬剤師の対人業務を適正に評価するための論点が整理されました。調剤管理料の日数区分の見直し、急性疾患に対する吸入薬指導の評価、フォローアップ業務の評価充実、かかりつけ薬剤師制度の患者本位への転換という4つの方向性が示されています。
令和8年度診療報酬改定に向け、これらの論点について引き続き議論が進められる見込みです。薬局経営者および薬剤師の皆様におかれては、今後の議論の動向を注視しつつ、対人業務の質的向上に取り組まれることをお勧めいたします。
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【令和8年度改定】薬局の評価体系が大きく変わる|調剤基本料・地域支援体制加算の見直し4つのポイント
Dec 06, 2025中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第631回)において、調剤報酬の見直しに関する議論が行われました。「患者のための薬局ビジョン」策定から10年が経過したものの、処方箋集中率85%以上の薬局割合はむしろ増加しており、門前薬局から地域薬局への移行が進んでいません。この現状を踏まえ、医薬品提供拠点としての薬局の評価体系の見直しが検討されています。
今回の議論では、調剤報酬簡素化、調剤基本料関係、地域支援体制加算関係、在宅薬学総合体制加算関係の4つの領域で論点が示されました。調剤基本料については収益状況を踏まえた見直しが、地域支援体制加算・在宅薬学総合体制加算については都市部とそれ以外の地域における届出状況の差を踏まえた実績要件の見直しが、それぞれ検討されています。
調剤報酬簡素化|複雑化した体系の整理
調剤報酬体系の複雑化が課題として指摘されており、簡素化の検討が求められています。
令和6年度改定の答申書附帯意見では、診療報酬体系が複雑化していること、医療DXの推進において簡素化が求められていることを踏まえ、患者をはじめとする関係者にとって分かりやすい診療報酬体系となるよう検討することとされました。現行の調剤報酬では、服薬管理指導料と在宅患者訪問薬剤管理指導料で類似の加算が設けられているなど、体系が複雑になっています。例えば、重複投薬・相互作用等防止加算は調剤管理料に、在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料は在宅薬剤管理に、それぞれ別の項目として設定されています。
このような複雑な体系は、患者にとって分かりにくいだけでなく、薬局の事務負担増加にもつながっています。今後の改定では、類似の評価項目の整理・統合が議論される可能性があります。
調剤基本料関係|門前薬局・医療モールの適正化と敷地内薬局の取り扱い
調剤基本料については、収益状況を踏まえた評価の見直しと、処方箋集中率の算出方法の適正化が主な論点です。
医療経済実態調査の結果によると、調剤基本料2を算定する薬局と医療モール内の薬局の損益率が他の分類より高いことが明らかになりました。特に、処方箋集中率85%以上かつ月当たり処方箋受付回数2,000回以下で調剤基本料1を算定している薬局は、備蓄品目数が少ないにもかかわらず、令和6年度改定後も損益率が微増しています。特別区の薬局では改定後に損益率・損益差額がいずれも増加しており、地域による収益格差が生じています。
処方箋集中率の計算方法についても問題が指摘されています。門前薬局であるにもかかわらず、意図的に遠方の高齢者施設等の入居者の処方箋を受け入れることで処方箋集中率を下げ、より点数の高い調剤基本料を算定するケースが存在します。また、医療機関が3つ以上存在する医療モールでは、上位3医療機関の合計集中率70%という基準を下回りやすく、現行の算定要件では適切に評価できていません。
一方、敷地内薬局(特別調剤基本料A)については、令和6年度改定後に損益率・損益差額がマイナスに転じました。ただし、へき地等における自治体開設診療所の敷地内薬局については、地域医療を維持するために必要な存在であるケースもあり、一律の適用が適切かどうか検討が必要とされています。
地域支援体制加算関係|都市部とそれ以外の届出格差への対応
地域支援体制加算については、都市部とそれ以外の地域における届出状況の差を踏まえた実績要件の見直しが論点です。
特別区や政令指定都市以外の地域では、地域支援体制加算の届出割合が低い傾向にあります。特に医療資源の少ない地域では、患者数が少ないため、実績要件の基準が高い地域支援体制加算3・4の届出割合が特に低くなっています。現行の実績要件は処方箋1万枚当たりの年間回数で設定されているため、処方箋受付回数が少ない薬局では要件を満たすことが困難です。
地域支援につながる施設基準として、薬局の面積要件やセルフメディケーション関連機器の設置も検討されています。備蓄品目数は平成22年度の500品目から現在は1,200品目に引き上げられており、備蓄のために必要なスペースは約2.4倍になりました。在宅患者への医薬品提供のための無菌調製設備(クリーンベンチ等)やバイオ後続品の保管に用いる保冷庫を設置する場合には、より大きな面積が求められます。
在宅薬学総合体制加算関係|地域の実情に応じた実績要件の検討
在宅薬学総合体制加算についても、都市部とそれ以外の地域における届出状況の差が課題です。
特別区・政令指定都市と比較して、それ以外の地域にある薬局では在宅薬学総合体制加算の届出が少ない傾向があります。在宅薬学総合体制加算1では在宅薬剤管理の実績24回以上/年、加算2ではさらにかかりつけ薬剤師指導料等の算定回数24回以上/年が求められます。患者数が少ない地域では、これらの実績要件を満たすことが難しい状況です。
常勤薬剤師数と在宅関連業務の実施状況にも関連があることが示されています。夜間・休日の処方箋応需や小児特定加算を算定する調剤の実施など、在宅に関連するレセプト対応は、常勤薬剤師数が多いほど取り組まれている傾向があります。しかし、現在の在宅薬学総合体制加算には常勤薬剤師数に係る要件がなく、地域の実情を踏まえた要件設定が検討されています。
まとめ
中医協では、医薬品提供拠点としての薬局の評価体系について、4つの領域で見直しの議論が進められています。調剤報酬簡素化では複雑な体系の整理が、調剤基本料関係では門前薬局・医療モールの適正化と敷地内薬局の取り扱いが、地域支援体制加算・在宅薬学総合体制加算関係では都市部とそれ以外の地域における届出格差への対応が、それぞれ主な論点です。
薬局ビジョンが目指す「門前からかかりつけ、そして地域へ」という方向性を実現するため、立地に依存した経営から地域医療に貢献する薬局への転換を促す評価体系への見直しが検討されています。薬局経営者は、これらの議論の動向を注視しながら、地域支援体制や在宅業務の充実に向けた準備を進めることが重要です。
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薬局ビジョン10年の現実|門前薬局はなぜ増え続けるのか
Dec 05, 20252015年に策定された「患者のための薬局ビジョン」は、すべての薬局がかかりつけ薬局としての機能を持つことを目指しました。しかし、ビジョン策定から10年が経過した現在、門前薬局や医療モール型薬局の設立が続いています。中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第631回)では、薬局のあり方について議論が行われました。
中医協の資料によると、処方箋集中率が高い薬局の割合はむしろ増加しています。85%以上の集中率を持つ薬局は2015年の32.5%から2024年には39.3%へと上昇しました。また、薬局・薬剤師の偏在により、地方での医薬品提供体制の脆弱化と、都市部での小規模薬局の乱立という二極化が進んでいます。
薬局ビジョンが掲げた目標と現状のギャップ
2015年10月に公表された「患者のための薬局ビジョン」は、「門前」から「かかりつけ」、そして「地域」への転換を掲げました。このビジョンでは、2025年までにすべての薬局がかかりつけ薬局の機能を持つこと、2035年までに立地も地域へ移行することを目標としています。
かかりつけ薬剤師・薬局に求められる基本機能は3つあります。第一に、ICTを活用した服薬情報の一元的・継続的把握とそれに基づく薬学的管理・指導です。第二に、24時間対応・在宅対応の体制整備です。第三に、医療機関をはじめとする関係機関との連携です。これらの基本機能に加えて、健康サポート薬局として健康サポート機能を発揮すること、専門機関と連携した高度薬学管理機能を持つことも期待されています。
しかし、ビジョン策定後の10年間で、目標に向けた進展は限定的でした。2016年の診療報酬改定で「かかりつけ薬剤師指導料」が新設され、その後の改定でも対物業務から対人業務への転換が図られてきました。それにもかかわらず、多くの薬局は依然として立地に依存した経営を続けています。
処方箋集中率の推移が示す課題
処方箋集中率が高い薬局、いわゆる門前薬局の割合は増加傾向にあります。厚生局届出データによると、処方箋集中率95%以上の薬局は2015年の14.0%から2024年には17.3%へと増加しました。同様に、85%以上の薬局も32.5%から39.3%へと上昇しています。
この増加傾向は、診療報酬改定による政策誘導が十分に機能していないことを示しています。対物業務から対人業務への切り替えを進めてきたにもかかわらず、特定の医療機関からの処方箋を集中的に受け付ける薬局のビジネスモデルは変わっていません。さらに、薬局が医療モールを経営する事例も出てきており、立地依存型の経営がむしろ強化されている面があります。
薬局・薬剤師の偏在がもたらす問題
薬局・薬剤師の地域偏在は、地方と都市部の双方で異なる課題を生じさせています。地方・過疎地域では薬局・薬剤師の不足が深刻です。都市部では小規模薬局の乱立が問題となっています。
地方・過疎地域における課題は、医薬品提供体制の維持困難です。服薬指導や在宅サービスへのニーズに応えることが難しくなっています。薬剤師1人または薬局1つが欠けるだけでも地域全体に及ぼす影響が大きく、医療提供体制が脆弱化しています。
都市部における課題は、小規模乱立による非効率化です。十分な機能を有さない薬局の設置が増え、薬局1つあたりの処方箋枚数が減少しています。医薬品の配送効率も低下し、流通に負荷をかけています。過剰な流通在庫は、供給不安発生時に医薬品不足を助長する要因にもなります。患者が薬局を近さのみで選ぶ傾向が強まり、薬歴の一元化が成立しにくい状況も生まれています。
まとめ
薬局ビジョン策定から10年が経過しましたが、「立地から機能へ」の転換は進んでいません。処方箋集中率が高い薬局の割合はむしろ増加し、薬局・薬剤師の偏在による課題も顕在化しています。令和6年改定後の中医協における付帯意見では、地域の医薬品供給拠点としての役割を担い、かかりつけ機能を発揮して地域医療に貢献する薬局の整備を進めるため、調剤報酬のあり方について引き続き検討することが示されています。
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【中医協報告】令和7年度消費税補てん状況|診療所・歯科で補てん不足が継続
Dec 04, 2025令和7年11月28日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第631回)において、「医療機関等における消費税負担に関する分科会」から消費税補てん状況の報告がありました。この報告は、令和8年度診療報酬改定に向けた重要な基礎資料となります。本記事では、報告内容のポイントを医療機関種別ごとに解説します。
今回の調査結果では、病院全体の補てん率が104.9%と100%を超過した一方、一般診療所は93.5%、歯科診療所は90.1%と補てん不足が継続しています。開設者別でみると、一般診療所の医療法人・その他が87.4%と最も低い補てん率となっています。物価上昇による課税経費の増加が医療機関経営に影響を与えていることが明らかになりました。
補てん状況把握の目的と方法
今回の調査は、令和元年10月に実施された消費税率10%引き上げに伴う診療報酬による補てん(5%→10%部分)の状況を把握するために実施されました。調査の目的は、消費税負担と診療報酬による補てんのバランスを確認し、令和8年度改定における対応を検討することです。
調査対象は、第25回医療経済実態調査に回答した医療機関等です。収入面では、NDB(レセプト情報・特定健診等情報データベース)から抽出した消費税上乗せ項目の算定回数に上乗せ点数を乗じて算出しています。支出面では、医療経済実態調査の課税経費データを使用しています。
補てん率の算出方法は、収入のうち診療報酬本体へ上乗せされた消費税分(A)を、支出のうち課税経費の消費税相当額(B)で除した値(A/B)です。補てん率が100%を超えていれば補てん過剰、100%未満であれば補てん不足となります。
医療機関種別ごとの補てん状況
令和6年度の全体結果をみると、医科全体の補てん率は101.5%でした。この数値は医療機関種別によって大きく異なります。
病院全体の補てん率は104.9%であり、消費税負担を上回る補てんがなされています。病院種別では、精神科病院が109.7%と最も高く、一般病院が105.5%、特定機能病院が101.2%と続きます。一方、こども病院は90.3%と100%を大きく下回っており、病院種別中で最も補てん不足の状態にあります。
一般診療所の補てん率は93.5%であり、前年度の96.8%から低下しました。開設者別にみると、個人開設は115.9%と補てん過剰ですが、医療法人・その他は87.4%と大幅な補てん不足となっています。この87.4%という数値は、今回調査した全区分の中で最も低い補てん率です。
歯科診療所の補てん率は90.1%で、医療機関種別全体でみると最も低い水準です。前年度の96.6%から大きく低下しており、物価上昇の影響を強く受けていることがうかがえます。開設者別では、個人が93.6%、医療法人・その他が85.3%となっています。
保険薬局の補てん率は103.7%であり、100%を超過しています。ただし、前年度の107.5%からは低下傾向にあります。
DPC病院と非DPC病院の違い
病院の補てん状況は、DPC対象病院か否かによっても異なります。
DPC病院(一般病院)の補てん率は99.2%であり、ほぼ100%に近い水準です。特定機能病院(DPC)は101.2%と若干の補てん過剰ですが、こども病院(DPC)は90.3%と補てん不足が顕著です。こども病院は高度な専門医療を提供するため、課税経費が高くなる傾向にあることが要因と考えられます。
非DPC病院では、一般病院が111.9%、精神科病院が109.7%と、いずれも補てん過剰の状態にあります。非DPC病院は規模が小さい傾向にあり、初・再診料や入院基本料の算定比率が高いことが、補てん過剰の要因となっています。
令和5年度と比較すると、DPC病院(一般病院)は100.3%から99.2%へ、こども病院は98.2%から90.3%へと、いずれも補てん率が低下しています。これは物価上昇により課税経費が増加したことを反映しています。
令和8年度改定に向けた論点
今回の報告では、令和8年度診療報酬改定に向けたいくつかの論点が示されています。
第一に、消費税率は令和元年10月以降変わっていない一方、診療報酬改定を重ねてきていることです。令和元年以降、令和2年度に+0.55%、令和4年度に+0.43%、令和6年度に+0.88%のプラス改定が行われており、消費税上乗せ項目の一部も改定されています。
第二に、物価上昇により課税経費が増加していることです。特に医療材料費、食材料費、光熱水費等の高騰が医療機関経営に大きな影響を与えています。補てん率の低下は、この物価上昇を反映したものと考えられます。
第三に、医療機関種別や開設者別によって補てん状況に大きな差があることです。一般診療所の医療法人・その他は87.4%、歯科診療所の医療法人・その他は85.3%、こども病院は90.3%と、補てん不足の医療機関への対応が課題となっています。
まとめ
令和7年度の消費税補てん状況把握結果は、病院全体では補てん過剰である一方、一般診療所・歯科診療所・こども病院では補てん不足が継続していることを示しました。特に法人開設の医療機関で補てん不足が顕著であり、一般診療所の医療法人・その他(87.4%)、歯科診療所の医療法人・その他(85.3%)は深刻な状況にあります。物価上昇により課税経費が増加する中、令和8年度診療報酬改定においては、補てん状況の医療機関種別間・開設者別のバラつきをどのように評価し対応するかが重要な論点となります。今後の中医協での議論の動向に注目が必要です。
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医療機関のDX化推進へ新たな支援枠組みを検討|厚労省が方向性案を提示
Dec 03, 2025令和7年11月27日に開催された第205回社会保障審議会医療保険部会において、厚生労働省医政局から「業務効率化・職場環境改善の更なる推進に関する方向性について(案)」が示されました。2040年に向けて医療従事者の確保がますます困難となる中、医療界全体での業務効率化を実効あるものとするため、国は制度的対応を含む新たな施策の方向性を検討しています。なお、本資料は同年11月25日の第121回社会保障審議会医療部会でも提示されたものです。
今回示された方向性案は、大きく2つの柱で構成されています。第1の柱は「医療機関の業務のDX化の推進」です。この柱では、国・自治体による支援等として6項目、医療機関の責務の明確化として1項目が検討事項として挙げられています。第2の柱は「タスク・シフト/シェアの推進等、医療従事者の養成体制の確保、医療従事者確保に資する環境整備等」です。以下、各項目の内容を解説します。
医療機関の業務DX化推進に向けた国・自治体による支援等(6項目)
厚生労働省は、業務DX化に取り組む医療機関の裾野を広げるため、6つの支援策の方向性を提案しています。いずれも「〜してはどうか」という検討段階の提案です。
第1に、多くの医療機関を支援する新たな枠組みの創設が提案されています。従来の試行的・先進的な取組への支援だけでなく、業務のDX化に取り組む多くの医療機関を対象とした支援体制を構築することが検討されています。DX化の効果発現には一定期間を要するため、継続的な支援の在り方も論点となっています。
第2に、統一的な基準によるデータ収集の実施が提案されています。DX化を推進するにあたり、効果等のエビデンスを蓄積することが重要とされています。具体的には、労働時間の変化、医療の質や安全の確保、経営状況に与える影響等に関する必要なデータを収集することが検討されています。
第3に、診療報酬上求める基準の柔軟化が提案されています。上記のエビデンスの蓄積を行いながら、業務の効率化を図る場合における基準の見直しを検討するとされています。
第4に、適正価格での機器・サービス導入を支援する仕組みの構築が提案されています。医療機関が製品やサービスの価格・機能・効果を客観的に把握できる環境を整備することが検討されています。
第5に、都道府県の医療勤務環境改善支援センターの体制拡充・機能強化が提案されています。業務効率化や職場環境改善に取り組む医療機関への伴走支援を強化することが検討されています。
第6に、計画的に取り組む病院の公的認定制度の創設が提案されています。業務効率化・職場環境改善に積極的に取り組むことが、医療従事者の職場定着にプラスとなり、労働市場における医療従事者の確保の面でより有利になるよう、対外的にも発信できる仕組みを整えることが検討されています。
医療機関の責務の明確化
国・自治体による支援等に加え、医療機関の責務についても見直しが検討されています。現行制度では、病院又は診療所の管理者は、医療従事者の勤務環境の改善その他の医療従事者の確保に取り組む措置を講ずるよう努めることとなっています。今後は、これらに加え「業務効率化」にも取り組むよう努めることとしてはどうか、と提案されています。
タスク・シフト/シェアの推進と医療従事者養成体制の確保
第2の柱として、タスク・シフト/シェアの推進と医療従事者の養成体制確保に関する方向性が示されています。
タスク・シフト/シェアについては、医療機関における取組がさらに定着するよう、国等の支援を受けて業務のDX化に取り組む際には、併せてタスク・シフト/シェアの実施や業務プロセス自体の見直しを進めることとしてはどうか、と提案されています。
医療従事者の養成体制については、地域において医療関係職種を安定的に確保できるよう検討を進めることが提案されています。具体的には、各地域の人口減少の推移や今後の地域医療構想等を踏まえた各医療関係職種の需給状況を見通しつつ、遠隔授業の実施やサテライト化の活用などをはじめ、地域における安定的な養成体制を確保するため国・都道府県等が取り組むべき事項について検討を進めることとされています。
医療関係職種の魅力向上に向けた3つの対応
医療水準を維持しつつ、より少ない人員でも必要な医療が提供できる体制、また医療関係職種が意欲・能力やライフコースに合わせた働き方・キャリアの選択が可能となる体制を構築するため、3つの対応が提案されています。これらは、若者・社会人にとって医療関係職種がより魅力あるものとなることを目指しています。
第1に、養成課程への参入しやすさの向上が挙げられています。医療関係職種の各資格間において現在でも可能となっている既修単位の履修免除の活用や、養成に係る修業年限の柔軟化など、若者・社会人にとっても参入しやすい養成課程となるよう、まずは課題等を把握し、各職種の状況に応じた支援の在り方を検討することとされています。
第2に、キャリア・スキル向上等への支援が挙げられています。意欲・能力やライフコースに合わせて、更なるキャリア・スキルの向上を目指す者や、育児・介護等の事情を抱えて働く者への支援、そうした者が地域や職場でより能力を発揮できる環境整備やセカンドキャリアとして働く上でのマネジメントに関するリカレント教育等の在り方について、具体的に検討を進めることとされています。
第3に、歯科衛生士・歯科技工士の業務範囲等の見直しが挙げられています。歯科衛生士・歯科技工士の業務範囲や、歯科技工の場所の在り方については、現在進めているそれぞれの業務のあり方等に関する検討会において具体的に検討を進めることとされています。
まとめ
今回示された方向性案は、「医療機関の業務のDX化の推進」と「タスク・シフト/シェアの推進等、医療従事者の養成体制の確保、医療従事者確保に資する環境整備等」という2つの柱で構成されています。DX化については、新たな支援枠組みの創設、エビデンス蓄積のためのデータ収集、診療報酬基準の柔軟化、適正価格での導入支援、伴走支援の強化、公的認定制度の創設という6項目の支援策が検討されています。また、医療機関の責務として業務効率化を追加することも提案されています。これらはいずれも検討段階の提案であり、今後の審議会等での議論を経て具体化される見込みです。
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【令和8年度】国民健康保険料の賦課限度額1万円引き上げを提案|110万円へ
Dec 02, 2025令和7年11月27日に開催された第205回社会保障審議会医療保険部会において、令和8年度の国民健康保険料(税)の賦課限度額の見直しが議論されました。高齢化に伴う医療費増加を背景に、中間所得層の負担に配慮しながら、高所得層により多くの負担を求める方向性が提案されています。この記事では、賦課限度額引き上げの仕組みと令和8年度の改定案を解説します。
令和8年度の賦課限度額については、医療分(基礎賦課分)で1万円引き上げ、合計110万円とする案が示されました。この引き上げにより、賦課限度額超過世帯割合の増加を抑制できます。また、中間所得層の保険料負担の伸びを軽減する効果が期待されます。
賦課限度額とは何か
賦課限度額とは、国民健康保険料(税)の年間上限額のことです。この制度は、保険料負担の公平性と被保険者の納付意欲のバランスを取るために設けられています。
国民健康保険制度では、保険料負担は負担能力に応じた公平なものである必要があります。しかし、受益との関連において、被保険者の納付意欲に与える影響や、制度の円滑な運営を確保する観点から、保険料負担に一定の上限を設けています。令和7年度の賦課限度額は合計109万円で、内訳は医療分92万円(基礎賦課額66万円+後期高齢者支援金賦課額26万円)と介護分17万円です。
賦課限度額の引き上げは、中間所得層の負担軽減に直結します。医療給付費等が増加する中で、保険料率の引き上げのみで必要な保険料収入を確保した場合、高所得層の負担は変わらず、中間所得層の負担が重くなります。一方、賦課限度額を引き上げれば、高所得層により多く負担していただくことで、中間所得層に配慮した保険料設定が可能となります。
賦課限度額引き上げの基本方針
賦課限度額の引き上げは、法律に基づき毎年度検討されています。被用者保険とのバランスを考慮しながら、段階的な引き上げが行われてきました。
この引き上げの根拠は、社会保障改革プログラム法(平成25年法律第112号)と社会保障制度改革国民会議報告書(平成25年8月)にあります。これらを踏まえ、毎年度、事務レベルワーキンググループや医療保険部会での議論を経て、国保保険料(税)の賦課限度額の引き上げが行われています。
引き上げの際には、3つの観点が考慮されます。第一に、被用者保険におけるルールとのバランスです。被用者保険では、最高等級の標準報酬月額に該当する被保険者の割合が0.5%から1.5%の間となるよう法定されています。このため、国保においても将来的に賦課限度額超過世帯割合が1.5%に近づくように段階的に引き上げる方針が取られています。第二に、医療の基礎賦課分、後期高齢者支援金分、介護納付金分の超過世帯割合が前年と比較して増加しているか、それぞれにばらつきが見られるかを基準として引き上げ幅が設定されます。第三に、過去の実績として、過去20年間で最大の引き上げ幅は4万円となっています。
令和8年度の改定案
令和8年度は、医療分の基礎賦課分を1万円引き上げ、合計110万円とする案が提示されました。介護納付金分は据え置きとなります。
具体的な改定内容は以下のとおりです。医療分(計)は92万円から93万円へ1万円引き上げられます。このうち、基礎賦課分は66万円から67万円へ1万円引き上げ、後期高齢者支援金等賦課分は26万円で据え置きです。介護納付金賦課分も17万円で据え置きとなり、合計は109万円から110万円へ1万円引き上げられます。
この改定の背景には、限度額超過世帯割合のバランス調整があります。令和8年度においては、限度額(合計額)の超過世帯割合が引き上げ前で1.45%となる一方、基礎賦課分の超過世帯割合が1.7%を超えています。令和7年度と比較した超過世帯割合の増加をできるだけ抑えるとともに、区分間のバランスを整える観点から、基礎賦課分の1万円引き上げが提案されました。
なお、子ども・子育て支援納付金分については、令和8年度から新設される予定です。この納付金分の限度額は、令和8年度予算編成過程で決定される納付金総額を踏まえた上で、被用者保険におけるルールとのバランスを考慮し、超過世帯割合が概ね0.5から1.5%の間となるように決定されます。
収入別の保険料への影響
令和8年度の改定は、中間所得層と高所得層で異なる影響をもたらします。中間所得層では保険料上昇を抑制し、高所得層では限度額到達により負担増となります。
年収400万円世帯の保険料への影響は次のとおりです。賦課限度額を引き上げた場合、合計保険料は33万8千円となり、前年度比で5.7%の増加です。一方、据え置きの場合は33万9千円で5.9%の増加となります。この差は、引き上げにより中間所得層の保険料の伸びが抑えられることを示しています。
限度額該当世帯(高所得世帯)への影響も確認します。引き上げ後の合計保険料は110万円となり、前年度比で0.9%の増加です。据え置きの場合は109万円で増減なしとなります。高所得世帯が追加で1万円を負担することで、中間所得層の負担軽減が実現します。
賦課限度額に達する収入水準についても把握しておく必要があります。令和8年度に医療分(93万円)に達する収入は、給与収入・年金収入ともに約1,170万円、所得換算で約980万円です。この水準を超える世帯が限度額の適用を受けることになります。
まとめ
令和8年度の国民健康保険料の賦課限度額については、医療分(基礎賦課分)で1万円引き上げ、合計110万円とする案が医療保険部会で議論されました。この改定案は、中間所得層の保険料負担の伸びを抑制しながら、高所得層に応分の負担を求めるものです。賦課限度額超過世帯割合のバランス調整も図られています。今後、子ども・子育て支援納付金分の限度額設定も含め、令和8年度予算編成過程で最終決定される予定です。
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【速報】医療費適正化計画に腰痛症への鎮痛薬処方が追加|プレガバリンの適正使用とは
Dec 01, 20252025年11月27日に開催された第205回社会保障審議会医療保険部会において、第4期医療費適正化計画における医療資源の効果的・効率的な活用が議論されました。本稿では、新たに「効果が乏しいというエビデンスがあることが指摘されている医療」に追加される腰痛症へのプレガバリン処方と、今後の対応方針について解説します。
今回の議論では、神経障害性疼痛を除く腰痛症に対するプレガバリン処方が、抗菌薬処方に続いて適正化の対象に追加される方針が示されました。この追加により、都道府県ごとの医療費見込みの推計式にプレガバリンの薬剤費が組み込まれます。また、厚生労働省は研究班と連携して「効果が乏しい医療」の探索を継続し、医療技術評価分科会で学会等からの提案募集を行う方針です。
第4期医療費適正化計画における医療資源活用の枠組み
第4期医療費適正化計画(2024〜2029年度)では、医療資源の効果的・効率的な活用が重要な柱として位置づけられています。この枠組みでは、2種類の医療が適正化の対象となっています。
1つ目は「効果が乏しいというエビデンスがあることが指摘されている医療」です。この代表例として、急性気道感染症・急性下痢症に対する抗菌薬処方があります。
2つ目は「医療資源の投入量に地域差がある医療」です。白内障手術や化学療法の外来での実施状況、リフィル処方箋がこれに該当します。白内障手術については、OECDにより多くの国で90%以上が外来で実施されている一方、日本での外来実施割合は全国平均54%にとどまり、都道府県ごとに実施状況が様々であることが指摘されています(第165回医療保険部会資料より)。
腰痛症に対するプレガバリン処方の追加
今回新たに追加されるのは、腰痛症(神経障害性疼痛を除く)に対するプレガバリン(商品名:リリカ錠)の処方です。プレガバリンは本来、神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛を適応とする薬剤であり、薬理作用はカルシウムチャネルα2δ遮断薬です。神経障害性疼痛では有効なケースもありますが、非神経障害性腰痛では効果が限定的であることが先行研究で指摘されています。
この追加は、国内の診療ガイドラインとも整合しています。腰痛診療ガイドライン2019では、急性腰痛および慢性腰痛に対するCaチャネルα2δリガンドについて質の高い論文は存在しなかったとされています。また、有害事象に対するメタアナリシスでは、Caチャネルα2δリガンドはプラセボと比較して有意に頻度が高いことが示されています。
プレガバリンの添付文書においても、効能・効果は神経障害性疼痛と線維筋痛症に伴う疼痛に限定されています。重要な基本的注意として、めまいや傾眠、意識消失等があらわれる可能性があり、自動車事故に至った例もあることから、自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意することが記載されています。
適正化計画基本方針への具体的な追記内容
今回の見直しにより、医療費適正化計画の基本方針には以下の内容が追記されます。急性気道感染症・急性下痢症に対する抗菌薬処方に加えて、神経障害性疼痛を除く腰痛症患者に対するプレガバリン処方が「効果が乏しいというエビデンスがあることが指摘されている医療」として明記されます。
医療費見込みの推計式にも変更が加わります。従来の抗菌薬処方や白内障手術・化学療法の外来実施に関する推計式に、腰痛に対するプレガバリン処方の薬剤費が追加されます。具体的な推計式は、都道府県ごとに「当該県の令和元年度の腰痛に対するプレガバリン処方の薬剤費÷当該県の令和元年度の入院外医療費(÷2)×当該県の令和11年度の入院外医療費(推計)」となっています。
基本方針では留意点も示されています。個別の診療行為としては医師の判断に基づき必要な場合があることに留意しつつ、地域ごとに関係者が実情を把握し、医療資源の効果的・効率的な活用に向けた検討を進めることが重要とされています。
今後の対応方針と診療報酬への影響
厚生労働省は、研究班等と連携して「効果が乏しい医療」の探索を継続する方針を示しています。厚労科研「レセプト情報・特定健診等情報を用いた医療保健事業・施策等のエビデンス構築等に資する研究」等において、先行研究の調査やNDBを活用した実態分析が進められています。
先行研究の収集に加えて、医療技術評価分科会での取り組みも予定されています。令和8年度診療報酬改定の次の改定に向けた対応として、医療技術の評価の一環で学会等から提案を広く募集することになりました。国内の関連学会に取り扱いを照会し、診療報酬上の留意事項通知や疑義解釈との整合を確認した上で、整合性等があることを確認できたものは医療費適正化計画へ記載され、関係学会調整後に中央社会保険医療協議会で診療報酬上の取扱について個別に議論される見込みです。
医療保険部会(2025年9月18日、9月26日、10月2日開催分)では、低価値・無価値医療への対応についてさまざまな意見が出されています。費用対効果や経済性を考慮した医薬品の使用促進や、治療や薬剤の臨床上の有効性を適切に評価する制度設計の重要性が指摘されています。
まとめ
第4期医療費適正化計画において、神経障害性疼痛を除く腰痛症に対するプレガバリン処方が「効果が乏しいというエビデンスがあることが指摘されている医療」に追加される方針が示されました。この追加は、国内の腰痛診療ガイドライン2019やプレガバリン添付文書との整合性を確認した上で行われるものです。厚生労働省は来年度以降も研究班と連携して適正化対象の探索を継続し、医療技術評価分科会での学会からの提案募集も進める方針です。医療現場においては、エビデンスに基づく処方の重要性が改めて求められることになります。
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【2026年度実施】OTC類似薬の自己負担見直しと国保改革の3つの柱を解説
Nov 30, 2025令和7年11月27日、第205回社会保障審議会医療保険部会が開催されました。本部会では、骨太方針2025および三党合意を踏まえ、医療保険制度の持続可能性確保に向けた具体的な制度設計が議論されています。本稿では、OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直しと国民健康保険制度の取組強化という2つの重要テーマについて解説します。
今回の議論では、OTC類似薬について保険給付を維持しつつ別途負担を求める方向での検討が進められています。国民健康保険制度については、子どもの均等割保険料軽減を高校生年代まで拡充することや、保険料水準統一の加速化、保険者努力支援制度へのマイナス指標導入が提案されています。これらの改革は令和8年度からの実施を目指しており、医療機関経営や患者負担に大きな影響を与える可能性があります。
OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直し
OTC類似薬の保険給付見直しは、現役世代の保険料負担軽減と医療保険制度の持続可能性確保を目的としています。骨太方針2025では、2025年末までの予算編成過程で十分な検討を行い、早期に実現可能なものについて2026年度から実行するとされました。本節では、費用負担の在り方、配慮が必要な者の範囲、対象となるOTC類似薬の範囲という3つの論点について整理します。
費用負担の在り方については、薬剤そのものを保険給付の対象外とはしない前提で検討が進められています。医療保険部会での議論では、OTC医薬品への変更や保険適用除外とした場合、患者の自己負担がかなり増えるケースがあるとの指摘がありました。このため、保険の枠内に置きつつ、選定療養のような形で別途負担を求める仕組みが検討されています。患者団体からも、OTC類似薬については保険適用とした上で患者負担を変更する方法が弊害が少ないとの意見が出されました。
配慮が必要な者の範囲については、新たな負担を求めない対象として複数の類型が論点として提示されています。子どもについては、成人年齢が18歳以上であることやこども医療費助成制度の普及を踏まえ、18歳以下の者を配慮対象とすることが検討されています。また、医療費に着目して公的な支援を受けている方、長期にOTC類似薬の利用を必要とする方、入院患者についても配慮が必要とされています。患者団体ヒアリングでは、がん患者や難病患者、アレルギー疾患患者など、OTC類似薬を日常的・長期的に使用する方への経済的負担増大への懸念が示されました。
OTC類似薬の範囲については、医療用医薬品とOTC医薬品の同等性をどう判断するかが課題となっています。成分が一致していても、用法・用量、効能・効果、対象年齢、投与経路、剤形など様々な違いがあり、単純に保険適用から外すことは難しいとの意見があります。一方で、OTC医薬品を購入する方との公平性や医療保険制度の持続可能性の観点から、OTCで代替可能なものはできるだけ広い範囲を対象として検討を進めるべきとの意見も出されました。
国民健康保険制度の取組強化
国民健康保険制度は、被保険者の高齢化や所得水準の低さ、小規模保険者の多さなど構造的な課題を抱えています。人口減少・少子高齢化に伴い地方公共団体の人材不足も深刻化しており、保険者事務の持続可能性確保が急務となっています。本節では、医療費適正化のインセンティブ強化、子育て世帯の保険料負担軽減、持続的な国保運営のための取組強化、国保組合に係る見直しについて解説します。
医療費適正化のインセンティブ強化については、保険者努力支援制度(都道府県取組評価分)の見直しが決定されました。現行の普通調整交付金は、理由にかかわらず医療費に応じて配分額が増減される仕組みとなっており、医療費適正化のインセンティブが働かないとの指摘がありました。地方団体からは、普通調整交付金が担う所得調整機能は重要であり、政策誘導に使われるべきではないとの意見が出されています。このため、保険者努力支援制度の医療費適正化のアウトカム評価指標において、令和8年度分からマイナス指標を導入し、医療費適正化のインセンティブがより働くようメリハリを強化することとされました。
子育て世帯の保険料負担軽減については、均等割保険料の軽減対象を高校生年代まで拡充することが提案されました。現行制度では令和4年4月から、未就学児に係る均等割保険料について5割を公費(国1/2、都道府県1/4、市町村1/4)により軽減する措置が講じられています。全国知事会、全国市長会、全国町村会からは、対象年齢の18歳までの引上げや軽減割合の拡充を求める要望が出されており、今回の拡充はこれらの要望に応えるものです。
持続的な国保運営のための取組強化は、保険料水準の統一と事務負担軽減の2つの柱で構成されています。保険料水準統一については、令和8年度の国保運営方針中間見直しに向けて、納付金ベースの統一や完全統一に係る目標年度の設定・前倒しの検討を含め、議論を加速化することとされました。納付金ベースの統一は令和12年度保険料算定までの達成が目標とされ、完全統一は令和15年度までの移行を目指しつつ、遅くとも令和17年度までの移行が目標とされています。財政安定化基金についても、保険料水準統一や制度改正により納付金が著しく上昇する場合等に取崩しを認め、従来の3年間よりも長い期間での積戻しを可能とする見直しが提案されています。
市町村の事務負担軽減については、都道府県国保連合会の役割強化が検討されています。また、国民健康保険の資格喪失日を1日前倒しし、資格喪失の原因たる事実が発生した日を資格喪失日とする運用見直しも提案されました。これは令和7年度地方分権提案で報告された支障事例を踏まえたもので、保険者間の資格重複による軽減判定への影響を解消することが目的です。
国保組合に係る見直しでは、負担能力に応じた負担を進める観点から定率補助の見直しが提案されています。現行の補助率下限13%を原則としつつ、以下の3要件すべてに該当する国保組合には、例外的に12%(平均所得270万円以上)または10%(平均所得280万円以上)の補助率を適用することとされました。3要件とは、①保険料負担率(被保険者一人当たり保険料÷国保組合の平均所得)が低いこと、②積立金が多いこと(かつ被保険者数3,000人以上)、③医療費適正化等の取組の実施状況が低調であることです。併せて、健康保険適用除外に係る手続の簡素化や、補助率判定に用いる所得上限額を1,200万円から2,200万円に見直すことも行われます。
まとめ
第205回医療保険部会では、医療保険制度の持続可能性確保に向けた重要な改革の方向性が示されました。OTC類似薬については、保険給付を維持しつつ別途負担を求める制度設計が進められ、子どもや慢性疾患患者、低所
Duration: 00:04:39医療費2.4〜8.3兆円削減の可能性:健康を守りながら実現する5つの改革案
Nov 29, 2025日本では社会保障費の負担増が社会問題化しており、医療費の適正化をどのように達成するかが重要な論点となっています。高額療養費の自己負担上限引き上げが議論されていますが、重症患者に負担を強いる前に、軽症患者の不要不急な医療利用を抑制する方策を検討すべきではないでしょうか。このような問題意識のもと、日本医療政策学会は2025年11月23日、「医療費適正化の実現に必要なエビデンスに関するレポート」を発表しました。
本レポートでは、国民の健康に悪影響を与えることなく、2.4〜8.3兆円(総医療費の5〜17%)の医療費削減が可能であると提言しています。具体的には、70歳以上の自己負担割合3割への引き上げで1.3〜6.7兆円、OTC類似薬の保険除外で3,300億〜6,500億円、無価値・低価値医療の削減で7,800〜9,000億円の削減効果が見込まれます。これらに加え、外来への包括支払制度導入とエビデンスのある予防医療の保険収載という5つの改革が提案されています。
70歳以上の自己負担割合引き上げ:1.3〜6.7兆円の削減効果
本レポートで最も大きな削減効果が見込まれるのは、70歳以上の自己負担割合を一律3割に引き上げる施策です。
医療サービスの価格が上がれば需要が減るという経済学の原則は、医療分野でも確認されています。東京大学の重岡仁氏の研究によると、医療サービスの窓口での自己負担額が10%増加すると、需要は約2%減少します。この需要の変化を「価格弾力性」と呼び、日本のデータでは外来医療で-0.34〜-0.15、入院医療で-0.166〜-0.057、高齢者では-0.26〜-0.048と報告されています。
自己負担割合を引き上げても、健康への悪影響はないか、あっても小さいことが複数の研究で示されています。この背景には、自己負担割合の増加で影響を受けるのが主に軽症患者であるという点があります。手術や抗がん剤などの重症医療は高額療養費制度でカバーされるため受診控えは起こりにくく、風邪での外来受診など軽医療サービスが抑制されると考えられます。
厚生労働省のデータを用いた試算では、価格弾力性を-0.2と仮定した場合に約6.7兆円、-0.04と仮定した場合でも約1.3兆円の医療費削減効果が期待できます。ただし、この試算が有効なのは高額療養費制度が適切に機能している前提であり、同制度が弱体化すれば重症患者の受診控えによる健康被害が生じる可能性があります。
OTC類似薬の保険除外:3,300億〜6,500億円の削減効果
2番目の改革案は、OTC類似薬の全てまたは一部を保険収載から外すことです。
OTC類似薬とは、風邪薬・湿布・胃腸薬・ビタミン剤など、薬局で処方箋なしに購入できるOTC医薬品と効果やリスクが似ているにもかかわらず、健康保険でカバーされている医薬品を指します。これらに支出されている医療費は3,200億円〜1兆円規模と報告されており、五十嵐らの推計では、狭い定義で3,278億円、広い定義で6,513億円に達します。
OTC類似薬が保険から外されても、患者はドラッグストアで比較的安価に購入できます。OTC医薬品は一般的に軽症患者が使う薬であるため、受診控えが起きても健康被害はないか小さいと考えられます。さらに、OTC類似薬にはそもそも効果がないものも含まれています。例えば風邪はウイルス感染であり、総合感冒薬には回復を早める効果がありません。また、湿布は年間54億枚も処方されていますが、12週間以上の長期使用に関しては有効性のエビデンスが不十分です。
無価値・低価値医療の削減:7,800〜9,000億円の削減効果
3番目の改革案は、効果がないことが証明されている医療サービスの保険収載を見直すことです。
日本では新しい薬や医療機器が承認されると多くの場合自動的に保険適用となり、その後の研究で効果がないと判明しても保険から除外されることは稀です。この硬直的な制度が、効果の低い医療の積み重ねと医療費増加を招いています。
研究チームの調査では、52種類の無価値医療に年間2,100億〜3,300億円の医療費が使われていると推計されました。具体的には、湿布(特にサリチル酸使用や長期使用)に456億円、深刻な兆候のない腰痛への早期画像検査に316〜369億円、安定冠動脈疾患への経皮的カテーテル治療に103〜640億円などが挙げられています。
これに加え、後発品が存在する先発品の使用も低価値とみなされます。ジェネリック医薬品への完全置換で約4,400億円、バイオシミラーへの完全置換で約1,300億円の削減が可能です。これらを合計すると、7,800〜9,000億円程度の削減が患者の健康を悪化させることなく実現可能であり、総医療費の約1.6〜1.9%に相当します。
外来への包括支払制度導入
4番目の改革案は、外来医療に包括支払制度を導入することです。
日本の外来は出来高払いを採用しており、医療サービスの提供量を多くするほど医療機関の利益が増える仕組みになっています。この制度では過剰医療のインセンティブが働き、外来受診回数や入院日数が欧米の2〜3倍となっています。日本で「医師不足」が叫ばれる背景には、医師数自体の不足ではなく、業務量が多すぎる「相対的医師不足」があります。
包括支払制度では、かかりつけ患者の総数に対して月額定額が支払われるサブスクリプションモデルとなります。例えば、安定した糖尿病患者の推奨されるHbA1c測定頻度は6ヵ月に1回ですが、日本ではより頻回に行われています。包括支払いになれば、受診頻度もHbA1c測定頻度も欧米と同水準の3〜6ヵ月に1回に変わると考えられます。医療機関の売り上げが減少しても、人件費・光熱費・検査機材コストが下がるため、収益を維持しながら医療費を削減できる可能性があります。
ただし、包括支払制度には過小医療のリスクがあります。この問題を解決するため、ペイ・フォー・パフォーマンス(P4P)の併用が必要です。P4Pは医療の質や患者アウトカムを測定し、質の高い医療が行われていない場合に経済的ペナルティーを与える制度であり、「量」ではなく「価値」に対して報酬を支払う仕組みを実現します。
エビデンスに基づく予防医療の保険収載
5番目の改革案は、エビデンスのある予防医療を保険収載することです。
日本では歴史的背景から、健康保険がカバーするのは治療的な医療サービスのみ
Duration: 00:05:59【2040年に向けて】介護人材確保の新戦略|福祉人材確保専門委員会が示す4つの柱
Nov 28, 20252040年には65歳以上の高齢者数がピークを迎え、介護と医療の複合ニーズを抱える85歳以上人口が増加します。一方で生産年齢人口は減少し、介護の担い手確保は喫緊の課題となっています。このような状況を踏まえ、社会保障審議会福祉部会の福祉人材確保専門委員会は、令和7年11月11日に「議論の整理」をとりまとめ、第31回福祉部会に報告しました。
この報告書は、地域差を踏まえたプラットフォーム機能の充実、多様な人材の確保・育成、中核的介護人材の確保・育成、外国人介護人材の確保・定着という4つの柱で構成されています。介護関係職種の有効求人倍率は令和7年9月時点で4.02倍と、全職業の有効求人倍率(1.10倍)と比較しても非常に高い水準にあり、都道府県によっては8倍台となる地域もあります。本稿では、この報告書の主要なポイントを解説します。
地域差を踏まえたプラットフォーム機能の充実
都道府県が設置主体となり、介護人材確保に関するプラットフォームを制度として構築する方針が示されました。このプラットフォームは、地域の関係者が情報を収集・共有・分析し、協働して課題解決に取り組むための仕組みです。
プラットフォームの構造は重層的な設計となっています。第1層は都道府県単位で関係者が人材確保の課題を認識・共有する場として機能します。第2層は市町村単位や複数市町村の圏域単位など、より狭い地域で設置され、「人材確保・定着」「職場環境の改善、生産性向上・経営支援」「介護のイメージ改善・理解促進」などの個別課題に応じたプロジェクトチームとして活動します。
このプラットフォームには、市町村、ハローワーク、福祉人材センター、介護労働安定センター、介護事業者、介護福祉士養成施設、職能団体などの関係者が参画します。福祉人材センターがコーディネーター的な中核的役割を担い、関係者の取組を連携させることが想定されています。これにより、情報の収集・共有・分析から課題の発見、取組の実施、効果検証、改善までのPDCAサイクルを回すことが可能となります。
多様な人材の確保・育成・定着のための取組
若者・高齢者・未経験者などの多様な人材を確保・育成するため、情報発信・広報戦略の強化と、テクノロジー活用による業務改善の2つのアプローチが提案されています。
情報発信については、テクノロジー導入や社会的課題への対応など、介護現場における最新の取組を積極的に発信することが重要です。テクノロジーの導入により、介護職員の負担軽減と利用者と関わる時間の確保が両立できている事例があります。また、職場体験やインターンシップを通じて、地域の関係者に福祉現場を理解してもらう取組も重要とされています。
人材の定着支援については、テクノロジーの活用による介護の質の向上と業務負担軽減に加え、いわゆる「介護助手」の活用が提案されています。業務の整理・切り出しにより介護の直接業務とその他業務を明確化し、周辺業務を介護助手が担うことで、タスクシフト/シェアを進め、業務改善・生産性向上を図ります。この取組は人手不足解決だけでなく、介護の専門性の明確化にもつながるものと位置づけられています。
中核的介護人材の確保・育成と資格制度の見直し
中核的介護人材の確保・育成については、山脈型キャリアモデルの深化、介護福祉士の届出制度拡充、複数資格取得の促進という3つの方策が示されています。
山脈型キャリアモデルとは、サービスや経営のマネジメントを行う役割に加え、認知症ケア・看取りケア等の特定のスキルを極めることや、地域全体の介護力向上を進めることなど、介護人材が目指す複数のキャリアパスを示すものです。中核的介護人材が担うべき具体的役割・機能や必要な資質・能力の整理と、これを身につけるための研修体系の整備が必要とされています。
介護福祉士の届出制度については、現行の潜在介護福祉士への復職支援に加え、現任の介護福祉士にも届出の努力義務を課すことが提案されています。これにより、地域における介護人材の実態把握や必要なキャリア支援を行う仕組みへと発展させることが目指されています。
介護福祉士養成施設卒業者の国家試験義務付けの経過措置については、令和8年度卒業者までとされている現行の経過措置の取扱いが議論されました。資格の質の担保・専門性の向上等の観点から終了すべきとの意見と、養成施設の入学者確保・介護人材確保等の観点から延長すべきとの意見の両方が示されています。今後、介護福祉士養成施設の役割も勘案しながら、必要な対応が講じられる見込みです。
外国人介護人材の確保・定着策と准介護福祉士の在り方
外国人介護人材の確保・定着については、プラットフォーム機能を活用した地域ごとの支援策が提案されています。特に小規模法人における外国人介護人材の受入れが課題となっており、海外現地での働きかけなどの確保策や、日本語教育、文化の違いへの対応、生活環境整備などの定着策を地域ごとに検討することが必要です。
令和7年4月からは、一定の要件のもとで技能実習生と特定技能外国人が訪問系サービスに従事することが可能となりました。緊急時の対応やトラブルの未然防止に向けたリスク管理、利用者・家族からの同意取得、ハラスメント対策としてのマニュアル整備等が重要とされています。
准介護福祉士については、国家試験に合格していない者に付与される資格であり、フィリピンとのEPA(経済連携協定)締結時の経緯から創設されたものです。本専門委員会では、資格に対する社会的評価・資質の担保や、介護福祉士の専門職としての地位の向上・確立の観点から廃止すべきとの意見が示されました。フィリピン国政府との関係等も考慮しながら、適切な対応が検討される予定です。
まとめ
福祉人材確保専門委員会の議論の整理は、2040年に向けた介護人材確保の方向性を示す重要な報告書です。都道府県主導のプラットフォーム構築による地域連携の強化、多様な人材の確保とテクノロジー活用による業務改善、中核的介護人材の育成と資格制度の見直し、外国人介護人材の支援体制整備という4つの柱が提示されました。
今後、この報告書の内容は社会保障審議会福祉部会でさらに議論を深めるとともに、介護保険部会その他関係審議会等においても議論が進められます。処遇改善なしに人材確保はなしえないとの意見が多くの委員から示されており、福祉・介護分野の処遇改善や専門性の評価も重要な課題として引き続き検討されることになります。
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【2025年最新】介護保険部会が示す3つの重点施策|身寄りのない高齢者支援・介護予防・過疎地域対策
Nov 27, 2025令和7年11月17日に開催された第31回社会保障審議会福祉部会において、介護保険部会における議論の状況が報告されました。この報告は、第126回(令和7年10月9日)、第127回、第128回(令和7年11月10日)の介護保険部会での議論をまとめたものです。2050年頃には全世帯の5世帯に1世帯が高齢者単身世帯になると想定される中、身寄りのない高齢者等への対応が喫緊の課題となっています。
介護保険部会では主に2つの論点が議論されています。第一に、身寄りのない高齢者等への支援に向けた地域ケア会議の活用推進と相談体制の充実です。第二に、介護予防の推進として通いの場の機能強化と多機能拠点の整備が検討されています。なお、過疎地域等における包括的な支援体制については、福祉部会での議論が介護保険部会に報告され、委員からの意見が出されています。
身寄りのない高齢者等への支援体制の整備
身寄りのない高齢者等への支援は、介護保険部会における最重要課題のひとつです。高齢者単身世帯の増加に伴い、生活支援、財産管理、身元保証、死後事務といった課題への対応が急務となっています。現状では、これらの課題に対してケアマネジャーが法定外業務(シャドウワーク)として対応せざるを得ないケースが増加しており、ケアマネジャーの専門性発揮を阻害する要因となっています。
この課題への対応として、地域ケア会議の活用推進が検討されています。ただし、現状では地域ケア個別会議と地域ケア推進会議を連携できていない、または地域ケア個別会議での議論がそもそも十分ではないと回答した市町村が合わせて半数程度あります。地域包括支援センターが主導して地域ケア会議を開催し、身寄りのない高齢者等の生活課題を地域全体で協議する体制の構築が目指されています。
先進的な取組事例として、3つの自治体が紹介されています。兵庫県朝来市では、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所が中核となって地域ケア会議の中にワーキングを設置し、主任ケアマネジャー、司法書士、医師、薬剤師、医療ソーシャルワーカー等の多分野の関係者による議論を経て「身寄りのない人を支える資源マップ」を作成しています。島根県出雲市では、市が住民主体の互助団体の連絡会と地域ケア会議を連動させる体系を整備し、生活支援コーディネーターを中心とした個別課題解決の場づくりを推進しています。愛知県岡崎市では、金融機関をコアメンバーとする「岡崎市SDGs公民連携プラットフォーム」を活用し、「終活応援事業」を創設しています。
相談体制の充実に向けては、地域包括支援センターの総合相談支援事業において身寄りのない高齢者等への相談対応を明確化することが検討されています。介護保険部会の委員からは、地域包括支援センターの業務量過多や人材不足への対応として、国による財政支援と人材確保の強化を求める意見が出されました。
介護予防の推進と多機能拠点の整備
介護予防の推進は、高齢者の健康寿命延伸と地域の支え合い強化の両面から重要な施策です。「通いの場」は、住民主体の介護予防の取組を推進する場として、高齢者の社会参加を促すとともに、地域共生社会の実現に貢献してきました。2040年を見据えると、高齢化や人口減少のスピードは地域によって大きな差が生じることが想定されており、より効果的な介護予防の仕組みが必要とされています。
この課題に対応するため、「介護予防・地域ささえあいサポート拠点」の整備に向けたモデル事業が実施されています。令和6年度補正予算(令和7年度繰越実施)で措置されたこのモデル事業では、介護予防を主軸としながら、障害、子育て、生活困窮分野の支援機能も併せ持つ多機能拠点の整備が検証されています。この拠点は、住民主体の通いの場の機能に加え、地域ささえあいネットワークとの連携により、地域の多様なニーズに対応することが期待されています。
介護保険部会では、こうした多機能拠点の整備・運営を総合事業に位置づけることが検討されています。委員からは、老人保健施設を介護予防の活動拠点として活用する提案や、専門職の関与を確保するための具体的方策を求める意見が出されました。財源については、介護保険で対応する部分は介護予防に限定すべきとの意見や、地域支援事業の上限額廃止と必要な予算確保を求める意見が出されています。
過疎地域等における包括的な支援体制
過疎地域等における包括的な支援体制の整備については、福祉部会で詳細な検討が行われており、その議論の状況が介護保険部会にも報告されています。これらの地域では、担い手不足により地域の支え合い機能が脆弱化する一方、福祉ニーズの多様化・複雑化が進んでいます。現行の重層的支援体制整備事業は、各分野の配置基準を満たした上で追加的に事業を実施する必要があり、小規模自治体では実施率が低い状況にあります。
令和7年6月13日閣議決定の「地方創生の基本構想」では、中山間・人口減少地域において介護・障害・こども・生活困窮分野の相談支援・地域づくり事業を一本化し、機能強化を図る制度改正の実施が盛り込まれました。福祉部会における議論では、相談支援と地域づくりを分野別の縦割りではなく機能別に構造化し、包括的な実施を可能とする仕組みの検討が進められています。
介護保険部会の委員からは、この方向性について合理的であるとの評価がある一方、相談支援に当たる専門職が多領域にわたる相談支援に対応できるよう人材育成が大きな課題との指摘がありました。また、各市町村の実情を踏まえた体制構築の必要性も指摘されています。
まとめ
介護保険部会では、2040年を見据えた介護保険制度の見直しに向けた議論が進められています。身寄りのない高齢者等への支援については、地域ケア会議の活用推進と相談体制の充実により、地域全体で課題に対応する体制の構築が目指されています。介護予防の推進については、通いの場の機能強化と多機能拠点の整備がモデル事業として検証されています。過疎地域等における包括的な支援体制については、福祉部会での議論を踏まえ、相談支援・地域づくり事業の機能別構造化による対応が検討されています。今後も介護保険部会および福祉部会における議論の動向に注目が必要です。
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【2025年福祉制度改革】第31回福祉部会が示す5つの論点と検討の方向性
Nov 26, 2025令和7年11月17日、第31回社会保障審議会福祉部会が開催されました。本部会では、地域共生社会の在り方検討会議や2040年に向けたサービス提供体制等のあり方検討会の議論を踏まえ、福祉制度改革の具体的な方向性が示されました。本稿では、これまでのご意見を踏まえた論点に関する議論の状況について解説します。
福祉部会で示された論点は5つの柱で構成されています。第1に、地域共生社会の更なる展開として、包括的な支援体制整備の推進と過疎地域向けの新たな仕組みの創設が検討されています。第2に、身寄りのない高齢者等への対応として、日常生活自立支援事業を拡充・発展させた新たな第二種社会福祉事業の創設が提案されています。第3に、社会福祉連携推進法人制度の見直しとして、一定の要件下での社会福祉事業の実施が可能となる方向性が示されました。第4に、災害福祉支援体制の強化として、DWAT(災害派遣福祉チーム)の法制化が検討されています。第5に、共同募金事業について、寄附募集禁止規定の撤廃と準備金使途の拡大が提案されています。
地域共生社会の更なる展開について
地域共生社会の実現に向けた取組として、包括的な支援体制整備の推進と過疎地域等における新たな仕組みの創設が検討されています。2040年に向けて人口減少と単身世帯の増加が進む中、地域で支え合う社会の実現がより一層重要となっています。
包括的な支援体制整備については、重層的支援体制整備事業の質の向上が課題となっています。現状では、事業実施に向けた検討プロセスや事業評価が十分に行われていない状況が見られます。検討の方向性として、事業実施にあたって地域資源の把握や関係者との対話等の検討プロセスを経ることを要件とすべきとされています。重層的支援体制整備事業実施計画についても、必須記載事項として目標・評価等に関する事項を追加し、計画の定期的な見直しを行うことが求められています。
市町村における体制整備の推進も重要な論点です。重層的支援体制整備事業を実施していない市町村においても支援会議の活用を可能とする等により、体制整備を促進すべきとされています。地域住民等と支援関係機関の連携・協働を図るため、市町村が協力団体を委嘱できる仕組みの創設等も検討されています。
過疎地域等における新たな仕組みについては、介護・障害・こども・生活困窮分野の相談支援・地域づくり事業を一本化する方向性が示されています。過疎地域等では担い手不足が深刻化しており、現行の重層的支援体制整備事業の実施が困難な状況にあります。新たな仕組みでは、分野横断的な配置基準を設け、一次相談対応と専門的相談対応を構造化することで、小規模自治体でも実施可能な体制を構築することが目指されています。
身寄りのない高齢者等への対応・成年後見制度の見直しへの対応について
身寄りのない高齢者等が地域で安心して自立した生活を続けられるよう、新たな第二種社会福祉事業の創設が検討されています。頼れる身寄りがいないことにより、入院・入所の手続等支援や死後事務支援などが必要とされる高齢者等への対応が課題となっています。
新たな事業の概要として、日常生活自立支援事業を拡充・発展させた事業が提案されています。判断能力が不十分な人や頼れる身寄りがいない高齢者等に対して、日常生活支援、円滑な入院・入所の手続支援、死後事務支援などを提供することが想定されています。この事業は、資力が十分でなくても利用できるよう、利用者のうち一定割合以上が無料又は低額の料金で利用できる事業とする方向性が示されています。
自治体の役割についても明確化が検討されています。身寄りのない高齢者等への支援は社会福祉法第106条の3に基づく「地域生活課題」に含まれることを明確化し、大臣指針や市町村地域福祉計画の計画策定ガイドラインにおいて、支援に係る事項を明記する方向性が示されています。事業者に対するチェック体制として、運営適正化委員会による助言・勧告の実施や、適正な事業運営の確保策を盛り込んだガイドライン等の策定も検討されています。
社会福祉法人制度・社会福祉連携推進法人制度の在り方について
社会福祉連携推進法人制度の活用を一層促進するため、制度の見直しが検討されています。人口減少が進む過疎地域等では、法人単独では事業を実施することが困難な状況にあり、複数の法人間での連携・協働による経営基盤の強化が求められています。
社会福祉連携推進法人による社会福祉事業の実施について、一定の要件を満たす場合には可能とする方向性が示されています。現行制度では社会福祉連携推進法人は社会福祉事業を行うことができませんが、地域住民に必要不可欠な事業を維持し、利用者を保護する観点から、第二種社会福祉事業及び社会福祉事業以外の社会福祉を目的とする福祉サービスの実施を可能とすることが検討されています。その際、当該地域において福祉ニーズを充足できていないこと、他のサービス事業主体の参入が期待できないこと、連携推進業務を行う体制が確保されていることが要件として示されています。
既存施設の土地・建物の有効活用についても検討が進められています。社会福祉連携推進法人が社員法人間の土地・建物の貸付に関する支援業務を行うことや、社会福祉法人の解散時における残余財産の帰属先の拡大が議論されています。解散した社会福祉法人の土地・建物について、社会福祉事業を現に行っていない地方公共団体であっても、地域に不可欠な事業の維持のために有効活用する場合には帰属を受けることができるようにする方向性が示されています。
災害に備えた福祉的支援体制について
令和6年能登半島地震の教訓を踏まえ、平時からの災害福祉支援体制の整備とDWATの法制化が検討されています。災害救助法の改正により災害時の福祉支援は法定化されましたが、平時からの体制整備については未だ法制化されていない状況にあります。
平時からの連携体制の構築について、包括的な支援体制の整備において「防災」との連携を加えることが提案されています。地域福祉計画の記載事項に災害福祉に関する事項を追加し、市町村地域福祉計画においては防災関連施策や災害ボランティア活動との連携・協力内容、福祉サービス提供体制の維持方策等を記載することが求められる方向性が示されています。都道府県地域福祉支援計画においては、DWATの整備状況や災害時における役割・実施内容について記載することが検討されています。
DWATの法制化については、災害時における福祉従事者の確保を可能とするため、登録制度の整備と研修・訓練の実施に関する規定を設けることが提案されています。国が登録名簿の管理や研修を実施するとともに、都道府県においても研修・訓練の機会提供等を行うよう努める
Duration: 00:06:27【速報】令和8年度診療報酬改定の基本方針|4つの視点と重点課題を徹底解説
Nov 25, 2025令和7年11月20日、第204回社会保障審議会医療保険部会において、令和8年度診療報酬改定の基本方針(骨子案)が示されました。本稿では、この骨子案の内容を解説します。
今回の骨子案は、4つの基本認識と4つの基本的視点で構成されています。基本認識では、物価・賃金上昇への対応、2040年を見据えた医療提供体制の構築、医療DXの推進、制度の持続可能性確保が掲げられました。基本的視点では、物価・賃金・人手不足への対応を「重点課題」に位置付け、医療機関の機能分化・連携、安心・安全で質の高い医療の推進、効率化・適正化の4つの方向性が示されています。
改定に当たっての4つの基本認識
骨子案では、令和8年度改定の前提となる4つの基本認識が示されています。第一に物価・賃金上昇への対応、第二に2040年を見据えた医療提供体制の構築、第三に医療DXとイノベーションの推進、第四に制度の安定性・持続可能性の確保です。
第一の基本認識は、日本経済が新たなステージに移行しつつある中での物価・賃金上昇、人口構造の変化や人口減少の中での人材確保、現役世代の負担抑制努力の必要性です。医療分野は公定価格によるサービス提供が太宗を占めるため、経済社会情勢の変化に機動的な対応を行うことが難しい状況にあります。このため、医療機関等の経営の安定や現場で働く幅広い職種の賃上げに確実につながる的確な対応が必要とされています。
第二の基本認識は、2040年頃を見据えた医療提供体制の構築です。85歳以上人口が増加し、高齢者人口には地域差が生じることが見込まれます。こうした変化に対応するため、「治す医療」と「治し、支える医療」を担う医療機関の役割分担を明確化し、地域完結型の医療提供体制を構築する必要があります。
第三の基本認識は、医療の高度化や医療DX、イノベーションの推進による安心・安全で質の高い医療の実現です。デジタル化された医療情報の利活用促進や、AI・ICT等の活用による医療DXの推進が、効果的・効率的かつ安心・安全で質の高い医療の実現に重要とされています。
第四の基本認識は、社会保障制度の安定性・持続可能性の確保と経済・財政との調和です。国民皆保険を堅持し次世代に継承するため、経済・財政との調和を図りつつ、効率的・効果的な医療政策を実現することが不可欠とされています。
【重点課題】物価・賃金・人手不足への対応
4つの基本的視点のうち、「物価や賃金、人手不足等の医療機関等を取りまく環境の変化への対応」が重点課題に位置付けられました。医療機関等の経営悪化と人材確保の困難さを踏まえ、物価高騰への対応と医療従事者の処遇改善が急務とされています。
医療機関等が直面する課題として、人件費、医療材料費、食材料費、光熱水費及び委託費等の物件費の高騰が挙げられています。2年連続で5%を上回る賃上げ率となった春闘等により全産業において賃上げ率が高水準となる中、医療分野では事業収益の悪化を背景に全産業の賃上げ水準から乖離し、人材確保も難しい状況にあります。
この視点における具体的方向性は、物件費高騰への対応と医療従事者の人材確保に向けた取組の2つです。物件費高騰については、医療機関等が直面する人件費や物件費の高騰を踏まえた対応が求められています。人材確保については、医療従事者の処遇改善、ICT・AI・IoT等の利活用による業務効率化、タスク・シェアリング/タスク・シフティングの推進、医師の働き方改革の推進・診療科偏在対策、診療報酬上求める基準の柔軟化が具体的方向性として示されました。
2040年を見据えた医療機関の機能分化・連携と地域包括ケアシステムの推進
第二の視点は、中長期的な人口構造や地域の医療ニーズの変化を見据えた医療提供体制の構築です。入院医療を始めとして、外来医療・在宅医療、介護との連携を図ることが重要とされています。
この視点では8つの具体的方向性が示されています。第一に、患者の状態及び必要と考えられる医療機能に応じた入院医療の評価です。患者のニーズ、病院の機能・特性、地域医療構想を踏まえた医療提供体制の整備と、人口の少ない地域の実情を踏まえた評価が含まれます。
第二に、「治し、支える医療」の実現です。在宅療養患者や介護保険施設等入所者の後方支援機能を担う医療機関の評価、円滑な入退院の実現、リハビリテーション・栄養管理・口腔管理等の高齢者の生活を支えるケアの推進が具体的内容として挙げられています。
第三から第八は、かかりつけ医機能・かかりつけ歯科医機能・かかりつけ薬剤師機能の評価、外来医療の機能分化と連携、質の高い在宅医療・訪問看護の確保、人口・医療資源の少ない地域への支援、医療従事者確保の制約が増す中で必要な医療機能を確保するための取組、医師の地域偏在対策の推進です。
安心・安全で質の高い医療の推進
第三の視点は、患者の安心・安全を確保しつつ、イノベーションを推進し、新たなニーズにも対応できる医療の実現です。第三者による評価やアウトカム評価等の客観的な評価を進めることが求められています。
この視点における具体的方向性は9つあります。第一に、患者にとって安心・安全に医療を受けられるための体制の評価として、身体的拘束の最小化の推進と医療安全対策の推進が挙げられています。第二に、アウトカムにも着目した評価の推進として、データを活用した診療実績による評価の推進が示されました。
第三に、医療DXやICT連携を活用する医療機関・薬局の体制の評価、第四に質の高いリハビリテーションの推進が挙げられています。第五に、重点的な対応が求められる分野として、救急医療、小児・周産期医療、がん医療及び緩和ケア、精神医療、難病患者への医療への適切な評価が示されました。
第六から第九は、感染症対策や薬剤耐性対策の推進、口腔疾患の重症化予防等の歯科医療の推進、地域の医薬品供給拠点としての薬局機能の評価、イノベーションの適切な評価や医薬品の安定供給の確保等です。
効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上
第四の視点は、医療費増大が見込まれる中、国民皆保険を維持するための制度の安定性・持続可能性を高める取組です。医療資源を効率的・重点的に配分する観点が重要とされています。
この視点における具体的方向性は7つあります。第一に後発医薬品・バイオ後続品の使用促進、第二にOTC類似薬を含む薬剤自己負担の在り方の見直し、第三に費用対効果評価制度の活用、第四に市場実勢価格を踏まえた適正な評価です。
第五に、電子処方箋の活用や医師・病院薬剤師と薬局薬剤師の協働の取組による医薬品の適正使用等の推進です。重複投薬、ポリファー
Duration: 00:05:02入院時の食費・光熱水費見直しへ|物価高騰で18年ぶりの大改定検討中
Nov 24, 2025令和7年11月20日、第204回社会保障審議会医療保険部会が開催されました。この部会では、食材費や光熱水費の継続的な高騰を受けて、入院時の食費と光熱水費の標準負担額の見直しについて議論されました。入院時の食費については、令和6年6月と令和7年4月に計50円の引上げを実施したにもかかわらず、令和7年4月以降も物価高騰が続いています。入院時の光熱水費については、平成18年の制度創設時から基準額(総額)が据え置かれており、昨今の光熱水費の大幅な高騰により病院経営に影響を及ぼしています。
この見直しは、患者の負担と病院経営の両立という観点から進められています。入院時の食費では、令和7年4月以降も食材費等の高騰が続いており、更なる標準負担額の見直しが検討されています。入院時の光熱水費では、令和6年度介護報酬改定で多床室の居住費が60円引き上げられたことにより、介護保険の居住費と医療保険の光熱水費の間で負担額に差が生じています。中央社会保険医療協議会でも、基準額(総額)の観点から並行して議論が進められており、患者負担への影響を慎重に検討する必要があります。
入院時の食費をめぐる現状と課題
入院時の食費は、令和6年6月に1食当たり30円、令和7年4月に1食当たり20円の計50円が引き上げられました。この見直しは、食材費等の高騰に対応するために実施されたものです。しかし、令和7年4月以降も食材費等の高騰は続いており、医療機関の経営を圧迫している状況が明らかになっています。
この見直しに伴い、医療機関は給食提供体制の変更を余儀なくされました。全面委託を行っている医療機関では、約5割が「給食委託費を増額した」と回答しています。一部委託や完全直営の医療機関では、約5割が「給食の内容を変えて経費の削減を行った(食材料を安価なものに変更等)」と回答しています。
さらに、令和6年6月以降、全面委託の約7割、一部委託の約5割の医療機関では、委託事業者から値上げの申し出がありました。これらの医療機関は、委託事業者との契約変更に対応しています。完全直営の医療機関では3.6%(22施設)が、給食運営を委託から完全直営に切り替える対応を取っています。
これらの状況を踏まえ、社会保障審議会医療保険部会では、更なる入院時の食費の標準負担額の見直しについて検討が進められています。中央社会保険医療協議会においても、食費の基準額(総額)の観点から並行して議論されています。
入院時の光熱水費をめぐる現状と課題
入院時の光熱水費は、平成18年に入院時生活療養費制度が創設されて以来、基準額(総額)が据え置かれています。この基準額は398円(1日当たり)で設定されており、18年以上変更されていません。一方で、昨今の光熱・水道費は特に足下で大きく高騰しており、病院経営に少なからず影響を及ぼしている状況です。
入院時の光熱水費は、療養病床に入院する65歳以上の者について入院時生活療養費の光熱水費として評価されています。一般所得者の場合、1日当たりの総額398円のうち、自己負担額は370円、保険給付額は28円です。一般病床、精神病床、療養病床に入院する65歳未満の者については、入院料の中で評価されています。
平成29年10月と平成30年4月には、介護保険の居住費に係る基準費用額を勘案して、自己負担額の段階的な引上げが行われました。この見直しでは、基準額(総額)を維持した上で、医療区分Ⅰの者の自己負担額を320円から370円に引き上げました。医療区分ⅡⅢの者の自己負担額も、0円から200円、その後370円へと段階的に引き上げられました。
しかし、これらの見直し後も光熱水費の高騰は続いており、基準額(総額)の据え置きが病院経営を圧迫する要因となっています。中央社会保険医療協議会においても、基準額(総額)の観点から議論が進められています。
介護保険との負担格差と均衡の必要性
介護保険では、令和6年度介護報酬改定において、多床室の居住費の基準費用額・負担限度額が60円引き上げられました。この見直しは、令和4年の家計調査によれば高齢者世帯の光熱・水道費が令和元年家計調査に比べて上昇していることを踏まえたものです。在宅で生活する者との負担の均衡を図る観点や、令和5年度介護経営実態調査の費用の状況等を総合的に勘案して実施されました。
この見直しにより、介護保険の居住費と医療保険の光熱水費の間で負担額に差が生じています。介護保険では、全ての居室類型で1日当たり60円分が増額されました。従来から補足給付の仕組みにおける負担限度額を0円としている利用者負担第1段階の多床室利用者については、負担限度額を据え置き、利用者負担が増えないように配慮されています。
健康保険法第85条の2では、入院時生活療養費の額を定める際、介護保険法第51条の3第2項第2号に規定する居住費の基準費用額に相当する費用の額を勘案することが規定されています。介護保険法第51条の3第3項では、厚生労働大臣は居住費の基準費用額を定めた後に、施設における居住等に要する費用の状況その他の事情が著しく変動したときは、速やかにそれらの額を改定しなければならないとされています。
こうした法的な枠組みを踏まえ、社会保障審議会医療保険部会では、近年の光熱・水道費の高騰を踏まえた対応を行う観点から、入院時の光熱水費の標準負担額の見直しについて議論が進められています。家計における光熱・水道支出を勘案して行われた令和6年度介護報酬改定による多床室の居住費の基準費用額の引上げを踏まえた対応が検討されています。
今後の議論の方向性と患者負担への影響
入院時の食費と光熱水費の見直しは、社会保障審議会医療保険部会と中央社会保険医療協議会の両方で並行して議論が進められています。社会保障審議会医療保険部会では、標準負担額(患者の自己負担額)の見直しが論点となっています。中央社会保険医療協議会では、基準額(総額)の観点から技術的な検討が行われています。
入院時の食費については、令和6年6月と令和7年4月の2回の見直し後も、引き続き食材費等の高騰が続いている状況を踏まえた更なる見直しが検討されています。医療機関では、委託事業者からの値上げ申し出への対応や、給食内容の変更による経費削減など、様々な対応が取られています。患者の栄養管理の質を維持しながら、持続可能な給食提供体制を構築することが課題となっています。
入院時の光熱水費については、近年の光熱・水道費の高騰を踏まえた対応が検討されています。家計における光熱・水道支出を勘案して行われた令和6年度介護報酬改定により、介護保険では居住費が60円引き上げられました。この引上げを踏まえ、医療保険における光
Duration: 00:04:47標準的な出産費用の自己負担無償化へ:医療保険部会が示す給付体系見直しの方向性
Nov 23, 2025令和7年11月20日に開催された第204回社会保障審議会医療保険部会において、医療保険制度における出産に対する支援強化の議論が本格化しました。この部会では、令和8年度を目途とした標準的な出産費用の自己負担無償化に向け、給付体系の骨格を令和7年冬頃までにとりまとめる方針が示されました。議論の焦点は、現在の出産育児一時金という現金給付から、妊婦の自己負担が発生しない給付方式への転換、そして地域差・施設差がある出産費用への対応という2つの論点です。
本稿では、部会で提示された給付体系見直しの方向性、産科医療機関の経営実態を踏まえた制度設計の課題、令和7年冬のとりまとめに向けた今後のスケジュールの3点を解説します。この制度改革は、妊婦の経済的負担軽減と周産期医療提供体制の維持という2つの政策目的を同時に実現する必要があり、特に経営困難に直面する一次施設への配慮が重要な検討事項となっています。制度設計では、出産費用の見える化を進め、妊婦が十分な情報に基づいて意思決定できる環境整備も求められています。
出産支援強化の背景と制度見直しの必要性
令和7年5月に公表された「妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策等に関する検討会」の議論の整理において、令和8年度を目途に標準的な出産費用の自己負担無償化に向けた具体的な制度設計を進めることが示されました。この方針を受けて、社会保障審議会医療保険部会で給付体系の見直しについての検討が開始されています。
制度見直しの背景には、現行の出産育児一時金制度に対する当事者からの指摘があります。部会の議論では、出産育児一時金の引き上げが行われるたびに、医療機関側も出産費用を値上げする傾向があり、結果として妊婦の負担軽減につながっていないという意見が示されました。この構造的な課題を解決するため、給付方式の抜本的な見直しが必要とされています。
見直しの目的は、妊婦が経済的負担を心配せずに安心して出産できる環境を整備することです。具体的には、標準的なケースで妊婦の自己負担が発生しない仕組みへの転換を目指しています。この転換により、出産費用の高額化に伴う不安を解消し、子供を産みたいと考える人々への支援を強化します。
給付体系見直しの2つの主要論点
部会では、給付体系見直しに関する2つの主要論点が提示されました。第一の論点は、給付方式の在り方についてです。現在の出産育児一時金は現金給付の仕組みですが、これを標準的なケースで妊婦の自己負担が発生しないような給付方式に転換することが検討されています。
給付方式の転換では、現物給付化が一つの選択肢として議論されています。部会での意見では、現金給付から現物給付への移行により、出産費用の直接的な支援が可能になるという指摘がありました。現物給付化により、医療機関への支払いを医療保険制度が直接行う仕組みとなり、妊婦の経済的負担が軽減されます。
第二の論点は、給付の内容についてです。出産費用には地域差や施設差が存在する現状があり、これらの差異に配慮した給付内容の設計が求められています。また、産科医療機関の経営状況も踏まえた検討が必要とされています。給付内容の検討では、標準的な出産費用の範囲をどう定めるか、その後の検証をどのように行うかという点も議論の対象となっています。
標準的な出産費用の範囲設定における課題
標準的な出産費用の範囲設定は、給付体系見直しにおける最も重要な検討課題の一つです。部会での議論では、負担とのバランスを考慮しながら、今後報告される出産費用に関するさらなるデータを踏まえて検討を進める必要性が指摘されました。
範囲設定では、妊婦が十分な情報に基づいて出産に関する自己決定を行える環境整備が前提となります。部会では、出産にかかる費用とサービスの関係が不明確であるという妊産婦からの声が紹介されました。この課題に対応するため、出産費用の見える化をより一層進めることが求められています。見える化により、妊婦は提供されるサービスの内容とその費用を明確に理解でき、納得感のある選択が可能になります。
標準的な出産費用には、地域差と施設間格差への対応という2つの論点があります。地域による医療資源の違いや、施設ごとの設備・人員体制の差異が出産費用に影響を与えています。また、無痛分娩などの妊婦のニーズが高いサービスを標準の範囲に含めるかどうかも議論の対象です。無痛分娩については、リスクやデメリットもあるため、まず安全に提供できる体制整備が必要であり、慎重な検討が求められるという意見が示されました。
産科医療機関の経営実態と周産期医療体制の維持
給付体系の見直しにおいて、産科医療機関の経営実態への配慮は極めて重要な検討事項です。日本医師会総合政策研究機構の調査によれば、2022年度の産科医療機関の経常利益では赤字施設が全体の41.9%を占め、2023年度には42.4%へと拡大しています。この経営悪化の背景には、少子化の進行と物価高騰があります。
地域の周産期医療を支えているのは一次施設です。一次施設は、正常分娩を取り扱う診療所や病院を指します。部会での議論では、一次施設が機能しなくなれば、お産難民が今以上に増加するという懸念が示されました。そのため、制度設計では一次施設を守るという観点が最優先されるべきとの意見が複数の委員から出されています。
現在、分娩を取り扱う一次施設の減少により、三次施設にローリスクの妊産婦が集中する状況が生じています。三次施設とは、ハイリスク妊娠や重症新生児に対応する総合周産期母子医療センターです。この集中により、三次施設では人員確保や病床確保が困難になっています。制度設計では、地域の一次施設を守り、拙速な集約化を招かないよう、特に丁寧な検討を進める必要があります。
妊産婦の多様なニーズへの対応と選択の保障
新たな給付体系では、妊産婦の多様なニーズに対応し、選択を制限しない仕組みが求められています。部会での議論では、出産に関しては医療的な安全確保とともに、助産師による助産ケアを通じて妊産婦の不安を軽減することが重要であるという指摘がありました。
妊産婦の選択を保障するためには、出産費用とサービス内容の関係を明確にする必要があります。検討会のヒアリングでは、何のために費用を払っているのか、なぜ病院ごとに費用が違うのかが当事者には分からないという声が上がっていました。この情報の非対称性を解消するため、出産費用の見える化を前提とした制度設計が求められています。
妊産婦の多様なニーズには、助産所における出産や無痛分娩など、様々な出産スタイルへの希望が含まれます。部会では、助産所における出産を含め、全ての出産の場が新たな枠組みの中に適切に
Duration: 00:04:26OTC類似薬の保険給付除外に9つの患者団体が反対表明【第204回医療保険部会】
Nov 22, 20252025年11月20日に開催された第204回社会保障審議会医療保険部会において、OTC類似薬の保険給付の在り方について患者団体からのヒアリングが実施されました。厚生労働省がOTC類似薬を保険給付の対象から外すことを検討している背景には、医療費の適正化があります。この提案に対し、患者の立場から具体的な懸念と問題点を提示する必要性が生じました。
3つの患者団体グループ(合計9団体)がOTC類似薬の保険給付除外に反対する意見を表明しました。全国がん患者団体連合会は、がんや難病患者がOTC類似薬を長期継続使用している実態と、保険適用除外による数十倍の負担増を指摘しました。7つのアレルギー関連団体(一般社団法人アレルギー及び呼吸器疾患患者の声を届ける会、認定NPO法人日本アレルギー友の会など)は連名で、難治・重症アレルギー患者への影響と国民皆保険制度の理念との矛盾を提起しました。ささえあい医療人権センターCOMLは、OTC類似薬の範囲設定の困難さと医療用医薬品とOTC医薬品の違いを明らかにしました。
全国がん患者団体連合会が指摘する4つの影響と代替案の提示
全国がん患者団体連合会は、OTC類似薬を保険給付の対象から外すことによる4つの重大な影響を指摘しました。同団体は、がんや難病患者がアセトアミノフェン、ロキソニンテープ、酸化マグネシウムなどのOTC類似薬を日常的に、あるいは長期にわたり継続して使用している実態を示しました。
第一の影響は、患者負担の大幅な増加です。保険給付から外れると、メーカー希望小売価格と比較した場合には数十倍の負担増となります。市場価格の最安値と比較した場合でも、過重な負担増となる可能性があります。
第二の影響は、各種医療費助成制度の対象外になることです。保険給付から外れると、高額療養費、指定難病患者への医療費助成、こども医療費助成、小児慢性特定疾病児童等への医療費助成など、各種の医療費助成の対象とならなくなります。
第三の影響は、医療機関への受診機会の喪失です。負担増により、医療機関への受診機会の喪失、あるいは遅延が生じ、健康被害が生じる可能性があります。
第四の影響は、処方シフトの問題です。患者負担割合はより安価であるが、薬価がより高い薬剤が処方されるようになる可能性があります。
代替案として、同団体は具体的な提案を行いました。どうしても見直しが必要な場合には、公的な保険給付の対象から外すのではなく、患者の自己負担割合を変更する対応を検討すべきであると提案しました。この方法であれば、公的な薬価が維持され、患者の負担増は一定程度抑えられ、高額療養費や各種の医療費助成の対象であることも維持され、医療機関への受診機会も確保される可能性があります。ただし、患者の自己負担割合の変更でも、患者の負担増となることは避けられず、処方シフトなどの問題が生じる可能性も依然として残ります。
7つのアレルギー関連団体が連名で懸念を表明
7つのアレルギー関連団体は連名で、OTC類似薬の保険適用除外が国民皆保険制度の理念に反する可能性を指摘しました。提出団体は、一般社団法人アレルギー及び呼吸器疾患患者の声を届ける会、認定NPO法人日本アレルギー友の会、NPO法人環境汚染等から呼吸器病患者を守る会、NPO法人アレルギーを考える母の会、NPOアレルギー児を支える全国ネット「アラジーポット」、NPO法人ピアサポートF.A.cafe、NPO法人アレルギーの正しい理解をサポートするみんなの会です。これらの団体は、国民皆保険制度は社会全体で医療費を分担する仕組みであり、経済的な理由で医療を受けられない人を減らすという理念のもとに成り立っていることを強調しました。
難治・重症アレルギー患者への深刻な影響が予想されます。喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患は、標準治療のもとで多くの患者が症状をコントロールできるようになっています。しかし、一部の難治・重症患者は高額な生物学的製剤などを長期にわたって使う必要があり、医療費の増加は治療継続を困難にし、生活や就業に深刻な影響を及ぼします。
子どものアレルギー治療における家計負担の増加も重大な問題です。OTC類似薬の保険適用除外は、特に子どものアレルギー治療において家計に大きな負担を強いることになります。この負担増は、子どもの健全な成長や家庭生活に悪影響を及ぼす可能性があります。
具体的な懸念として、ステロイド外用薬の問題があります。アトピー性皮膚炎治療の標準治療であるステロイド外用薬は、効果の強度により5段階に分類されています。現在は医師が症状の重症度を判定し、適切な薬を処方していますが、薬局で購入する場合、強度を認識せずに使用して副作用が出たり、症状に対して弱すぎるために効果が出ず、炎症が持続して重症化してしまう可能性があります。
これらの団体は3つの要望を提出しました。高額療養費制度の自己負担限度額引き上げは、家計への影響を考慮し、治療継続が可能となるよう見直すことです。OTC類似薬の保険適用除外は、アレルギー疾患の標準治療に使われる薬剤・保湿剤には適用しないことです。制度改正にあたっては、患者の声を適切に反映することです。
ささえあい医療人権センターCOMLが提起する制度設計上の課題
ささえあい医療人権センターCOMLは、OTC類似薬の範囲を病名や病状で線引きすることの困難さを指摘しました。同団体は、医療用医薬品とOTC医薬品では効能・効果のみならず、成分や用量が異なるなかで「OTC類似薬」と一括りに判断できないこと、しかも患者にはその違いや判断ができないことを明らかにしました。
医師の診療上の判断への影響も懸念されます。他の疾患との関連で使用している医薬品の場合、一部が保険外になることで医師の診療上の判断が適切にできない場合も生じかねません。医師の管理下を離れることで、患者が自己判断で量や服用頻度などを変える可能性もあります。
配慮すべき対象の範囲の問題もあります。「こどもや慢性疾患、低所得者に配慮」すれば対象は激減し、特に慢性疾患患者が多いことから本来の目的を果たせない改革になる可能性があります。「近隣に薬局がない」「インターネットで購入できない高齢者」など、購入の利便性の地域差・個人差もあります。
同団体は、混在している議論を整理する提案をしました。医療用医薬品の代わりにOTCを患者に購入してもらう案では、患者が使用するのはOTCであり、医師の管理下を離れ、成分や用量
Duration: 00:05:13マイナ保険証の利用率が37%超に|12月の経過措置終了に向けた対応を解説
Nov 21, 2025令和7年11月13日に開催された第203回社会保障審議会医療保険部会において、マイナ保険証の利用促進等に関する報告が行われました。本報告では、マイナ保険証の利用状況、12月1日の経過措置終了に向けた対応、国民と医療機関への周知活動の3点が示されました。
マイナ保険証の利用率は令和7年10月時点で37.14%に達し、レセプト件数ベースでは44.40%を記録しました。12月1日には全保険者で発行済みの健康保険証が利用できる経過措置が終了するため、国民への登録促進と医療機関への運用体制整備が急務となっています。厚生労働省は多様な媒体を通じた周知活動を展開し、円滑な移行を目指しています。
マイナ保険証の利用状況と直近の実績
マイナ保険証の利用状況は着実な増加傾向を示しています。令和7年10月のオンライン資格確認の利用件数は総計2億7,460万件に達し、このうちマイナ保険証による利用は1億199万件でした。利用率は37.14%となり、前月から1.52ポイント上昇しました。
オンライン資格確認の利用件数を施設類型別に見ると、医科診療所が最も多く1億1,572万件を記録しました。薬局は1億1,151万件、病院は2,334万件、歯科診療所は2,401万件と続いています。マイナ保険証の利用率は施設類型により差があり、病院では57.00%と高い水準に達する一方、医科診療所は36.17%、薬局は31.22%となっています。
レセプト件数ベースの利用率は、実際に医療機関を受診した人数に基づく指標として重要です。令和7年9月時点でのレセプト件数ベース利用率は44.40%に達し、前月から1.23ポイント上昇しました。レセプトの枚数は受診月から2か月遅れの数字となるため、10月分の実績は12月に判明する予定です。この利用率は令和6年1月の3.99%から継続的に上昇しており、マイナ保険証が着実に浸透していることが確認できます。
診療情報等の閲覧状況も活用が進んでいます。令和7年10月には、特定健診等情報が3,070万件、薬剤情報が2,292万件、診療情報が5,936万件閲覧されました。医療機関や薬局が患者の過去の診療情報を活用することで、より質の高い医療提供が可能になっています。
12月の経過措置終了に向けた対応
令和7年12月1日をもって、全保険者で発行済みの健康保険証が利用できる経過措置が終了します。経過措置終了後は、マイナ保険証が医療機関での資格確認の基本となるため、国民と医療機関の双方に準備が求められています。
経過措置終了後の資格確認方法には3つの選択肢があります。第一に、資格確認書による確認です。資格確認書は保険者から発行される書面で、マイナ保険証を持参できない場合に利用できます。第二に、マイナ保険証と「資格情報のお知らせ」の組み合わせによる確認です。第三に、マイナ保険証とマイナポータルの資格情報画面の組み合わせによる確認です。医療機関はこれらの方法で適切に資格確認を行う必要があります。
被用者保険の加入者約7,700万人については、12月1日に健康保険証の有効期限が切れます。厚生労働省は、被用者保険の保険者が活用できるリーフレットを作成し、マイナ保険証のメリットや健康保険証の有効期限、利用登録状況の確認方法、電子証明書の有効期限等について周知しています。保険者を通じた周知活動により、加入者への情報伝達を強化しています。
医療機関と薬局には、マイナ保険証を基本とした運用への移行準備が求められています。受付窓口における患者の動線や職員体制の確認、顔認証付きカードリーダーの不具合対応、マイナ保険証で資格確認ができない場合の請求方法など、具体的な運用面での準備が必要です。厚生労働省は、医療機関と薬局向けに詳細なガイドラインを提供し、円滑な移行を支援しています。
周知広報の取り組みと今後の展開
厚生労働省は、マイナ保険証への円滑な移行を目的として、多様な媒体を通じた周知活動を展開しています。周知活動は、継続的に実施しているもの、現在実施中のもの、今後実施予定のものの3段階に分類されています。
継続的に実施している周知活動には、医療機関と薬局向けの取り組みと国民向けの取り組みがあります。医療機関と薬局向けには、支払基金から各施設への周知メールの配信、毎月のオンライン請求時のポップアップ画面表示、受診方法や電子証明書の有効期限に関するリーフレットの作成と周知を行っています。国民向けには、自治体への周知広報物の配布、厚生労働省ホームページでのリーフレットとポスターの掲載、SNSによる周知を継続しています。
現在実施中の周知活動では、より幅広い層への情報伝達を目指しています。厚生労働省作成の12月の切替えに関するリーフレットを保険者を介して周知依頼し、各種縦型動画をYouTubeでショート動画として配信しています。LINE広告での周知も実施しており、多くの国民にリーチする体制を整えています。健康保険組合連合会による広報として、「私たちをもっと守る、マイナ保険証」のテレビCMやデジタル広告も展開されています。
今後実施予定の周知活動として、11月中旬には医療機関と薬局向けに今後の資格確認方法などに関するオンラインセミナーを実施します。11月下旬には、国民向けに12月以降の資格確認方法等に関する記者勉強会を開催します。12月初旬にはYahoo!バナー広告を展開し、12月中旬には医療機関と薬局向けに資格確認方法に関するポスターなどを郵送します。段階的な周知活動により、移行期における混乱を最小限に抑える方針です。
まとめ
マイナ保険証の利用率は37.14%に達し、レセプト件数ベースでは44.40%を記録しました。12月1日には全保険者で発行済みの健康保険証が利用できる経過措置が終了するため、国民への登録促進と医療機関への運用体制整備が急務となっています。厚生労働省は継続的な周知活動、現在実施中の施策、今後実施予定の取り組みを通じて、マイナ保険証への円滑な移行を支援しています。医療機関と国民の双方が適切な準備を行うことで、デジタル化された効率的な医療提供体制の実現が期待されます。
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医療機関の業務効率化・職場環境改善:2040年に向けた4つの論点
Nov 20, 2025令和7年11月13日に開催された第203回社会保障審議会医療保険部会において、医療機関の業務効率化・職場環境改善の推進に関する論点が議論されました。2040年に向けて高齢者人口がピークを迎える一方、15歳~64歳人口が減少する中、医療従事者の確保はますます困難となることが見込まれます。厚生労働省は2019年に「医療・福祉サービス改革プラン」をとりまとめており、2040年時点で単位時間当たりのサービス提供を5%(医師は7%)以上改善することとしています。この状況を踏まえ、医療界全体での実効ある取組を進めるための制度的枠組みが検討されています。
本稿では、業務のDX化推進、タスク・シフト/シェアの推進、医療従事者の養成体制確保、環境整備という4つの論点について、現状認識、具体的な取組、今後の方向性を説明します。DX化については、省力化投資促進プランに基づく先進的医療機関の事例と支援策の必要性を示します。タスク・シフト/シェアについては、看護師の特定行為研修制度とオンライン診療の活用を取り上げます。養成体制については、遠隔授業やサテライト化の活用を紹介します。環境整備については、医師の時間外労働削減目標と看護職員の超過勤務時間削減目標に基づく賃上げの実施と多様な働き方の推進を述べます。
業務のDX化推進:省力化投資促進プランに基づく取組
業務のDX化については、2025年6月に策定された「省力化投資促進プラン(医療分野)」に基づき、医療界全体での取組が求められています。現状では、物価や賃金の上昇等の影響で投資を行う余力がない医療機関がある一方、先進的な医療機関が成果を上げています。先進的医療機関では、ICT機器の導入や生成AIサービスの活用によって、文書や記録作成等の業務を効率化し、超過勤務時間の減少や職場満足度の向上といった結果につなげています。
省力化投資促進プランでは、看護業務の効率化に資する機器等の導入支援、医師の労働時間短縮に資する機器等の導入支援、医療DXの推進のための情報基盤の整備を多面的な促進策として掲げています。目標として、省力化機器を導入している医療機関数の増加、AMED事業による医療機器等の研究開発支援における採択課題数の増加、電子カルテ情報共有サービスの普及が設定されています。サポート体制の整備として、省力化投資を通じた看護業務効率化のためのサポート体制、看護師養成におけるDX促進のための支援、省力化投資を通じた勤務環境改善のためのサポート体制が用意されています。
先進的医療機関の取組をさらに加速化させるとともに、業務効率化に取り組む医療機関の裾野を広げるために、支援や制度的枠組みの整備が必要です。医療部会では、業務効率化を実現した場合の人員配置基準の緩和を検討すべきとの指摘がありました。人員配置基準が医療従事者確保の足かせになっているならば、見直しや緩和を検討すべきとの意見が示されています。医療機関が適正な価格でICT機器等を導入できるような環境整備も重要であり、医療機関の経営を圧迫することなく、現場で使いこなしていけるように、国や自治体による支援体制のさらなる構築が求められています。
タスク・シフト/シェアと人材確保:時間外労働削減の数値目標
タスク・シフト/シェアについては、医師の働き方改革に関する具体的な数値目標が設定されています。2024年4月から医師の時間外労働に関する上限規制が施行されており、地域医療確保暫定特例水準適用医師の時間外労働の目標時間数は、現状の上限1,860時間から2029年度までに上限1,410時間へと削減することが目標とされています。看護職員の月平均超過勤務時間については、現状5.1時間から2029年度までに2027年度比で月平均超過勤務時間の減少を目指すこととされています。
看護師の特定行為研修制度については、本年9月に「看護師の特定行為研修制度見直しに係るワーキンググループ」が設置され、見直しに向けた議論が開始されました。特定行為研修を修了した看護師の活躍促進に向けて、どのような取組が必要かが検討されています。医師の働き方改革の推進に伴い、タスク・シフト/シェアの取組を進めてきていますが、これまでの取組の定着化が必要です。医療職一人一人が専門性を十分に発揮できるよう、タスク・シフト/シェアやチーム医療に加えて、多職種連携も促進する必要があります。
医療の質や安全の確保を前提に、医療従事者の業務効率化という観点から、オンライン診療などを適切に普及・推進することも重要です。いわゆる「D to P with N」等によるオンライン診療を推進するためにどのような対応が考えられるかが議論されています。医療従事者でなければできない患者への直接的なケアやコミュニケーションに時間を割くためにも、AIやICTの活用、DXを積極的に進めるべきとの意見が示されています。限られた人材で安全かつ効率的な医療を提供するためには、タスク・シフト/シェア、ICTの活用、多職種連携等が不可欠です。
医療従事者の養成体制確保:地域の実情に応じた環境整備
地域における医療従事者の養成体制の確保については、養成校の定員充足率の低下傾向と18歳以下人口の減少が課題です。多くの医療関係職種の養成校の定員充足率は低下傾向にあり、今後、地域によっては18歳以下人口の減少が急激に進むところもあります。医療関係職を目指す若者が地域において必要な教育を受けられる体制を安定的に確保することが必要です。
養成体制の安定的確保のために、多様な学び手のニーズを踏まえた学習環境の整備が求められています。養成校における遠隔授業の活用、地域や養成校の実情に応じたサテライト化の活用など、柔軟な対応が必要です。実際に、沖縄県名護市の北部看護学校では、学校設置者変更により2026年4月に公立大学法人名桜大学附属北部看護学校として公立化される予定であり、学費の負担軽減、教育環境の充実、地域への貢献などが期待されています。
医療従事者の需給の状況を見通しつつ、都道府県等が養成体制の確保のために講ずることが考えられる施策のメニューを整理していくことも重要です。地域の実情に応じた多様な施策を用意することで、医療従事者の安定的な供給を図ることができます。看護師養成におけるDX促進のための支援など、時代に即した取組も進められており、省力化投資促進プランのサポート体制の一環として位置づけられています。
環境整備と支援体制:賃上げと多様な働き方の推進
医療従事者の確保に資する環境整備について
Duration: 00:04:44医療保険の不公平を是正!金融所得勘案の制度改革が2026年度から実行へ
Nov 19, 2025令和7年11月13日、第203回社会保障審議会医療保険部会が開催されました。議題は「医療保険における金融所得の勘案について」です。現在の医療保険制度では、株式の配当や譲渡益などの金融所得について、確定申告の有無で保険料や窓口負担が変わる不公平が生じています。2040年頃の高齢者人口ピークを見据え、全世代が安心できる社会保障制度を構築するため、この不公平を是正する制度改革が進められています。
本制度改革の概要は以下の3点です。第一に、確定申告を行わない金融所得についても、保険料や窓口負担の算定に反映させることで、応能負担を徹底します。第二に、法定調書を活用した情報把握の仕組みを構築し、マイナンバーの付番やオンライン提出の義務化などの課題に取り組みます。第三に、2026年度からの実施を目指し、税制改正や関係者との調整を含めた具体的な制度設計を進めます。
現行制度における不公平の実態
現行制度では、同じ収入でも確定申告の有無により保険料負担が大きく異なる問題があります。株式等の配当や譲渡益などの金融所得は、源泉徴収で課税関係を終了させ確定申告を行わない場合、市町村民税の課税所得に含まれません。このため、保険料や窓口負担等の算定においても勘案されず、不公平な取扱いとなっています。
この不公平の具体例として、70代後半で配偶者がおり、収入280万円の方のケースがあります。パターン①は年金230万円に加えて金融資産2500万円からの配当50万円があるケースです。パターン②は金融所得がなく年金のみ280万円のケースです。確定申告を行わない場合、パターン①の窓口負担割合は1割ですが、パターン②は2割となります。保険料額も、パターン①は年118,928円(月9,911円)ですが、パターン②は年169,978円(月14,165円)と年間約5万円の差が生じます。同じ収入でも、金融所得の確定申告の有無により、窓口負担割合や保険料額が変わるこの状況は、負担の公平性の観点から問題です。
制度改革の背景と政策的位置づけ
制度改革の必要性は、複数の政策文書で明確に示されています。令和7年6月11日に署名された自由民主党・公明党・日本維新の会の三党合意では、「現役世代に偏りがちな構造の見直しによる応能負担の徹底」が掲げられました。三党合意では、税制における確定申告の有無により負担等が変わる不公平な取扱いを是正する必要性が指摘されています。
三党合意を踏まえ、令和7年6月13日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2025」(骨太方針2025)でも、同様の改革方針が示されました。骨太方針2025では、「OTC類似薬」を含む薬剤自己負担の見直しとともに、金融所得の反映などの応能負担の徹底が明記されています。さらに、令和7年10月20日に署名された自由民主党・日本維新の会の連立政権合意書においても、社会保障全体の改革の一環として金融所得の反映が位置づけられています。
これらの政策文書では、税制における金融所得に係る法定調書の現状を踏まえつつ、マイナンバーの記載や情報提出のオンライン化等の課題、負担の公平性、関係者の事務負担等に留意しながら、具体的な制度設計を進めることとされています。令和5年12月22日に閣議決定された「全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)」では、「加速化プラン」の実施が完了する2028年度までに実施について検討する取組として位置づけられており、2026年度からの早期実現が目指されています。
金融所得勘案の具体的方法
金融所得を保険料や窓口負担の算定に反映させる方法として、法定調書を活用する仕組みが検討されています。法定調書とは、税制上、金融機関等が税務署に提出する支払調書のことです。この法定調書の情報を活用し、確定申告されていない金融所得についても、保険者が把握できる仕組みを構築します。
法定調書方式のイメージでは、金融機関等が法定調書を提出し、その情報を法定調書データベース(仮称)に集約します。保険者は、市町村民税の課税所得に加えて、法定調書データベースから計算された金融所得の情報を取得します。両者を合算した所得に基づいて、保険料の算定や窓口負担区分の決定を行います。この方式により、確定申告の有無にかかわらず、金融所得を適切に勘案できるようになります。
この実現には、いくつかの実務面の課題があります。第一に、法定調書のオンライン提出義務化を進める必要があります。第二に、法定調書へのマイナンバーの付番と正確性の確保が必要です。第三に、法定調書データベースや保険者のシステム整備が必要です。第四に、金融機関、税務当局、保険者など関係者との調整が必要です。特に国民健康保険制度については、地方公共団体の基幹業務システムの統一・標準化のスケジュールに留意する必要があります。これらの課題について、コストとスケジュールを含めた検討が進められています。
制度改革の論点と今後の方向性
制度改革における主要な論点は3点あります。第一に、高齢者人口がピークを迎える2040年頃を見据え、全世代が安心できる社会保障制度を構築する必要があります。制度の持続可能性を高める観点から、負担能力に応じた負担と給付内容の不断の見直しが必要です。後期高齢者の金融所得が増加している中、確定申告を行わない場合に課税所得に含まれない不公平な取扱いの是正に取り組む必要があります。
第二に、金融所得を勘案する方式として、税制における法定調書を活用し、社会保険における保険料や窓口負担等の算定に活用することが考えられます。実務面では、法定調書のオンライン提出義務化、法定調書へのマイナンバーの付番・正確性確保、システムの整備、関係者との調整など、コストとスケジュールの検討が必要です。
第三に、制度間のバランスへの配慮が必要です。後期高齢者医療制度は一律に75歳以上の高齢者が対象となります。一方、国民健康保険制度は後期高齢者医療制度と同じく市町村の税情報をベースに賦課しますが、賃金をベースに保険料等を賦課する被用者保険とのバランスについても検討が必要です。年齢に関わらず負担能力に応じた負担を目指す観点から、現役世代から後期高齢者への支援金負担の軽減にも配慮します。
まとめ
医療保険における金融所得の勘案は、全世代型社会保障の構築に向けた重要な改革です。確定申告の有無により保険料や窓口負担が変わる不公平を是正し、応能負担を徹底することで、制度の公平性と持続可能性を高めます。法定調書を活用した具体的な仕組みの構築が進められており、2026年度からの実施が目指されています。
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2025年医療制度改革の焦点:高齢者の「現役並み所得」基準見直しで変わる負担構造
Nov 18, 20252025年11月13日に開催された第203回社会保障審議会医療保険部会において、高齢者医療における負担の在り方が議論されました。現役世代の負担増が加速する中、世代内・世代間の公平性を確保する全世代型社会保障の構築が喫緊の課題となっています。本稿では、19年ぶりの見直しが検討されている「現役並み所得」の判断基準について、その背景、現状の課題、見直しの方向性を解説します。
医療保険部会では、平成18年以降見直されていない「現役並み所得」の判断基準を抜本的に見直す方向性が示されました。現在の基準では課税所得145万円以上かつ世帯収入520万円以上(単身383万円以上)が「現役並み所得」とされ、該当者は窓口負担3割となります。この基準は現役世代の平均所得を基に設定されましたが、給与所得控除と公的年金等控除の両方が積み上げられており、現役世代との公平性に課題があります。さらに現役並み所得者の医療給付費には公費負担がなく、全額が現役世代の支援金で賄われるいびつな財源構造となっています。今回の見直しでは、賃金・物価上昇の反映に加え、基準設定の在り方自体を問い直す議論が求められています。
「現役並み所得」判断基準の現状と課題
「現役並み所得」の判断基準は、平成18年に設定されて以降19年間見直されていません。現在の基準は、課税所得145万円以上かつ世帯収入520万円以上(単身383万円以上)という2つの要件で構成されています。課税所得要件は平成16年度の政管健保の平均標準報酬月額に基づく平均収入額から、夫婦2人世帯をモデルとした諸控除を差し引いて算出されました。収入要件は課税所得を元に高齢者の総収入に換算して設定されています。
この基準には3つの構造的な問題があります。第一に、給与所得控除と公的年金等控除の両方が積み上げられており、年金収入と給与収入の両方を有する高齢者世帯では高い控除額が反映されています。第二に、賃金や物価が上昇している局面でも基準額が更新されていないため、実質的な基準が低下しています。第三に、現役並み所得者に該当する高齢者は全体の約7%にすぎず、現役世代との公平性の観点から課題があるとの指摘があります。
基準の硬直性により、高齢者の所得状況が変化しても制度が対応できていません。全体に占める所得が低い層や年金受給額が低い層の割合は低下傾向にあり、高齢者全体でみると所得は増加・多様化しています。年齢階級別の一人当たり医療費は高齢になるにつれ高くなりますが、一人当たり自己負担額は60代後半をピークに70代以降は低く抑えられており、医療費と自己負担額の逆転が生じています。
現役世代への過重な負担構造
「現役並み所得」の判断基準を見直す際の最大の課題は、現役世代の負担構造にあります。現役並み所得を有する後期高齢者の医療給付費には公費負担がなく、その分は現役世代の支援金による負担となっています。このため、「現役並み所得」の対象拡大のみを行う場合、現役世代の支援金の負担が増加することとなります。
後期高齢者の医療給付費の財源構成をみると、一般の後期高齢者の給付費は公費約5割、現役世代の支援金約4割、後期高齢者の保険料約1割で構成されています。一方、現役並み所得者の給付費は公費負担がなく、現役世代の支援金約9割と後期高齢者の保険料約1割で賄われています。この財源構造は平成14年の旧老人保健制度における公費負担割合引き上げの際に設けられたものです。
現役世代の負担は加速度的に増加しています。後期高齢者医療制度の創設以降、高齢者世代と現役世代の人口バランスが大きく変化し、制度の支え手である現役世代に対する負担が増大しています。令和7年度中に具体的な骨子について合意し、令和8年度中に具体的な制度設計を行うことが、自由民主党・日本維新の会の連立政権合意書において示されています。
新たに「現役並み所得」に該当する場合の影響
判断基準の見直しにより新たに「現役並み所得」に該当することとなる高齢者には、2つの影響が生じます。第一に、窓口負担割合が1割または2割から3割に引き上げられます。第二に、高額療養費制度の区分も1つ上の区分が適用されることとなり、月額上限が引き上がるとともに、外来特例の対象から外れることとなります。
高額療養費制度における現役並み所得者の自己負担上限額は、収入に応じて80,100円から252,600円に、医療費から一定額(267,000円から842,000円)を控除した金額の1%を加算した額となっています。多数回該当の場合は44,400円から140,100円となります。一方、一般区分(課税所得28万円未満で1割負担)の場合、外来のみの上限は月18,000円(年間14.4万円)、外来及び入院を合わせた上限は57,600円(多数回該当44,400円)となっており、両者の差は大きいものとなっています。
このため、判断基準の見直しを検討する際には、窓口負担割合の見直しの施行状況等を注視する必要があります。令和4年10月に施行された一定以上所得のある方への2割負担の導入の影響を確認しながら、慎重に進めることが求められています。窓口負担は受益に応じて負担する仕組みであり、高額療養費は高額な医療や長期の療養が必要な場合のセーフティネットとして、それぞれの制度の役割分担を考慮した検討が必要です。
見直しに向けた論点と今後の方向性
医療保険部会では、「現役並み所得」の判断基準の見直しに関する複数の論点が示されています。第一に、賃金や物価上昇、税制等を踏まえた時点更新のみではなく、基準設定の在り方自体を見直す必要があるという点です。財政制度等審議会からは、課税要件の撤廃とともに、世帯収入要件については「年金収入プラスその他合計所得金額」へと変更することを軸に検討すべきとの指摘がありました。
第二に、現役世代の支援金と公費の取扱いの在り方に係る課題への対応です。現役並み所得者の給付費に公費負担がないいびつな負担構造を是正する方策が求められています。公費の投入を行うべきとの意見がある一方、財政的制約の中でどのように実現するかが課題となっています。
第三に、高齢者の受診の状況等は様々であり、経済状況も多様であることを踏まえた見直しが必要という点です。高齢者は一般的に所得が低い一方で医療費が高い傾向にあります。所得が低い層や年金受給額が低い層も一定数存在し、これらの方々への配慮が必要です。一方で、高齢者の受診状況等は改善傾向にあり、全体でみると所得は増加・多様化しています。医療保険部会では、低所得者に配慮した自己負担の設定を前提としながら、負担能力に応じたきめ細かい制度設計を進める方向性が示されています。
まとめ
第203回社会保障審議会医
Duration: 00:04:55医療DXと病院DXの違いとは?成功の鍵となる3つのRを解説
Nov 17, 2025国はマイナンバーカードと健康保険証の一体化や全国医療情報プラットフォームの構築など、データヘルス改革として医療DXを推進しています。この医療DXは、患者にもメリットがありますが、それ以上に行政や財政の効率化を目的としています。一方で、病院が取り組むべきDXは、医療の質向上と組織の効率化という異なる目的を持ちます。全日本病院協会の会長である神野正博氏は、この違いと病院DXを成功させるための本質を解説しています。
病院DXの本質は、医療の質向上と病院組織の効率化にあります。国が推進する医療DXは、マイナンバーカードと健康保険証の一体化、診療報酬改定DXなど、行政・財政の効率化が中心です。病院DXを成功させるには、リデザイン(業務の仕組みをゼロから見直す)、リダクション(不要な業務の削減)、リスキリング(スキルの見直しとキャリアチェンジ)という三つのRが必要です。外部からDX人材を募集することはもちろん重要ですが、それだけでなく、既存のスタッフに学習の機会を提供し、キャリアチェンジを促すことが重要です。
医療DXと病院DXの目的の違い
国が推進する医療DXは、患者にもメリットがありますが、それ以上に行政や財政の効率化を目的としています。マイナンバーカードと健康保険証の一体化が進められています。全国医療情報プラットフォームの構築では、いくつかの文章や情報を、どこの病院・医療機関にかかっても見えるようにすることが目指されています。診療報酬改定DXでは、2年に1回の改定の度に発生する膨大な作業に対し、非常に負担がかかるという課題に対応するため、国がシステムを作っていく流れです。
これらの医療DXに対し、病院の現場では、それ以上に病院DXに注力する時代になりつつあります。病院DXの主戦場は、医療の質を良くすること、患者の安全のため、チームや地域の連携のため、業務効率・生産性アップのため、働き方改革のためにあります。医療の質向上と病院組織の効率化が本質です。
病院にとってのDXのゴールは、技術ではなく、信頼と安心の再構築です。医療DXには対応しつつも、病院は病院DXに注力することが求められています。
病院DXを成功させる三つのR
病院DXを成功させるには、リデザイン、リダクション、リスキリングという三つのRが重要です。これらは医療分野だけでなく、他の業界でも共通して重要な要素です。
第一のRであるリデザインは、仕事のやり方そのもの、仕組みそのものを変えることを意味します。DXは業務のやり方や仕組みをゼロから見直し、業務組織を改革することが必要です。単に既存の業務をデジタル化するだけでなく、業務そのものを変革することが求められます。
第二のRであるリダクションは、やめること、削減すること、減らすことを指します。現在の医療は、質の向上と高回転(短い日数で治さなければならない)が求められています。働き方改革も進み、質をよくしなければならないという課題もあります。これらすべてをやろうと思っても、もう回っていかない状況です。捨てる覚悟、業務削減、仕事の棚卸は必須です。
第三のRであるリスキリングは、スキルの見直しを意味します。業務を見直し、キャリアを変えることも必要になります。DXを進めるには、このようなスキルの見直しとキャリアチェンジの視点が不可欠です。
DX人材の育成とキャリアチェンジの可能性
DX人材はすべての業界で不足しています。外部に向かってDX人材を募集することは、もちろんとても大事です。しかし、それだけではなく、今いる人の中で、パソコンが得意な方に学習の機会を与えることによって、キャリアを変えていただくことも有効です。
医療の場合、看護師でパソコンが得意な人がいるならば、その看護の技術や医療の知識をもとにして、DX人材になっていただくことが考えられます。これがまさにキャリアチェンジです。このような人材育成の視点を持ちながらDXを進めていくことが重要です。
看護の技術や医療の知識を持つ人材がDX人材になることで、現場のニーズを理解したシステムやツールの導入が可能になります。外部からの採用と内部からの育成を組み合わせることで、病院DXを効果的に推進できます。
まとめ
病院DXの本質は、医療の質向上と組織の効率化にあります。国の医療DXは行政・財政の効率化が中心ですが、病院は医療DXに対応しつつも、それ以上に病院DXに注力する時代になりつつあります。リデザイン、リダクション、リスキリングという三つのRを実践し、外部からのDX人材募集だけでなく、今いるスタッフに学習の機会を提供してキャリアチェンジを促すことが重要です。DXのゴールは技術ではなく、信頼と安心の再構築です。
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医療DXと働き方改革の本質|労働時間削減と生産性向上を両立する5つの方法
Nov 16, 2025労働基準法の厳格化とワークライフバランスの推進により、医療現場では労働時間の削減が求められています。労働時間を減らしながら業績を維持するには、仕事のやり方を変える必要があります。全日本病院協会の神野正博会長が解説する動画「医療のトリセツ 第6回『医療DXと働き方改革』」では、この課題に対する具体的な解決策が示されています。
神野会長は、働き方改革を生産性向上改革と定義し、5つの具体的方法を提示しています。ミッションの明確化により本来業務を特定します。タスクシフティングとタスクシェアリングにより業務を適切に分配します。効率化活動により無駄を排除します。最善の標準治療工程表により最短時間で最高の質を実現します。DXによりICT、AI、ロボットを活用します。
労働時間と生産性の関係が医療機関の業績を決定する
労働時間と生産性の関係は、医療機関の業績に直結します。神野会長は「労働時間×労働生産性=業績」という関係式を提示し、この方程式が働き方改革の本質を表していると説明しています。
労働時間を減らすだけでは業績は低下します。労働基準法が厳格化され、ワークライフバランスの推進により労働時間の削減が求められている現状では、従来と同じ仕事のやり方を続けていては医療機関の業績は必ず下がります。
労働時間の削減を補うには、生産性の向上が不可欠です。労働時間を少なくする代わりに、仕事のやり方を変えることで、業績を維持または向上させることが可能になります。この認識が、働き方改革を成功させる出発点となります。
生産性を向上させる5つの具体的方法が医療現場を変革する
生産性向上には、体系的なアプローチが必要です。神野会長は、医療現場で実践可能な5つの方法を提示し、働き方改革を生産性向上改革として位置づけています。
第一の方法はミッションの明確化です。本来業務が何であるかを明確に定義し、本当に自分がやらなければならない仕事を特定します。
第二の方法はタスクシフティングとタスクシェアリングです。本来業務でない仕事を他者に移管し、複数の担当者で業務を分担します。
第三の方法は効率化活動です。TQC(トータルクオリティコントロール)、TQM(トータルクオリティマネジメント)、改善活動により、業務プロセスの無駄を排除します。
第四の方法は最善の標準治療工程表の作成です。クリティカルパスと呼ばれるこの手法により、最短時間、最小資源で最高の質を目指します。
第五の方法はDXの活用です。ICT、AI、ロボットといった技術を導入し、業務の自動化と効率化を推進します。
タスクシフティングをカスケード構造で理解すると業務分担の本質が見える
タスクシフティングの成功には、業務の適切な流れが重要です。神野会長は、この概念を「カスケード(小さな滝)」という比喩で説明し、業務分担の理想的な形を示しています。
医師の仕事を看護師に移管します。看護師の仕事を次の担当者に移管します。この流れを継続的に下位に展開することで、小さな滝のように業務が段階的に流れていきます。
一か所に仕事が集中すると危険です。誰かが業務を抱え込んで次に渡さない状態は、ダムのように業務を堰き止めることになります。このダムが決壊すると、下流に大洪水が発生し、医療現場に深刻な影響を及ぼします。
DXが最終的な受け皿となります。業務を下位に流し続けた結果、最終的に人間が受け取れなくなった段階で、デジタル技術が業務を引き受けます。この構造により、働き方改革とDXの関係が明確になります。
まとめ|働き方改革の成功は生産性向上にかかっている
働き方改革を成功させるには、労働時間削減と生産性向上を同時に実現する必要があります。神野会長が提示した5つの方法を体系的に実践することで、医療機関は業績を維持しながら労働環境を改善できます。タスクシフティングをカスケード構造で理解し、DXを最終的な受け皿として活用することが、持続可能な医療提供体制の構築につながります。
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なぜ今、医療DXが必要なのか?全日本病院協会会長が語る医療の未来
Nov 15, 2025社会の文化が急速に変化する中で、医療の分野でもデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進が求められています。このメールマガジンでは、全日本病院協会会長の神野正博氏による解説動画「医療のトリセツ 第5回『なぜ医療DXが必要なのか』」をご紹介します。神野氏は、動画の中で医療DXの必要性と、医療の未来を想像することの重要性について語っています。
神野氏は、医療DXを理解するために、デジタル化の進化を3つの段階に分けて解説しています。第一段階のデジタイゼーションは、紙カルテを電子カルテに変えるデータ化の段階です。第二段階のデジタライゼーションは、電子カルテのデータを業務効率化に活用する段階です。第三段階のデジタルトランスフォーメーションは、AIの診療支援や遠隔医療を通じて医療提供の仕組み自体を再構築する段階です。神野氏は、変化する社会に応じて医療の文化を変革していく必要性を強調しています。
デジタル化進化の3段階を理解する
デジタル化の進化は、一般社会でも医療現場でも、3つの段階を経て発展します。神野氏は、カメラの進化を例に挙げてこの3段階を分かりやすく説明しています。
第一段階は「デジタイゼーション」です。デジタイゼーションは、フィルムカメラがデジタルカメラになるような、アナログからデジタルへのデータ化を指します。情報をデジタル形式で保存できるようになる段階です。
第二段階は「デジタライゼーション」です。デジタライゼーションは、デジタルカメラで撮影したデータをクラウドに保存したり、SNSで共有したりする段階です。デジタル化されたデータを活用して、業務や生活を効率化します。
第三段階は「デジタルトランスフォーメーション(DX)」です。デジタルトランスフォーメーションは、画像とAIやIoTが融合して新たな価値を共創する段階です。医療では画像診断への応用や、自動車では自動運転技術などがこの段階に該当します。
医療現場におけるデジタル化の3段階を知る
医療現場では、3段階のデジタル化がそれぞれ異なる形で展開されています。神野氏は、一般論で説明した3段階を医療現場に当てはめて具体的に解説しています。
第一段階の医療現場におけるデジタイゼーションは、紙カルテを電子カルテに変換する取り組みです。紙で管理していた情報を電子的に保存することで、情報の検索性や保管性が向上します。データ化そのものが目的となる段階です。
第二段階のデジタライゼーションは、電子カルテのデータを診療・検査・看護などの各業務と連携させる段階です。電子カルテに蓄積されたデータを活用することで、ミスの防止や時間短縮が実現します。業務の効率化・自動化を通じて、働き方改革にもつながる生産性向上のフェーズです。
第三段階のデジタルトランスフォーメーション(DX)は、AIの診療支援や遠隔医療、地域連携などを通じて、医療提供のあり方や文化そのものを変革する段階です。医療の仕組みを根本から再構築することで、より質の高い医療提供体制を目指します。
医療文化の変革に向けた展望を描く
神野氏は、医療DXの推進において、医療の未来を想像することの重要性を強調しています。社会の文化が急速に変化する中で、医療の分野も変革が求められています。
医療の未来を想像することが極めて重要になっています。神野氏は、私たちの身の回りの文化がどんどん変わってきていることを指摘しています。デジタル技術の進化により、日常生活のあらゆる場面で変化が起きています。
医療提供者は、変化する社会に応じて、医療の文化を変えていく必要があります。神野氏は、医療DXが単なる技術導入ではなく、医療提供のあり方そのものを見直す契機になると述べています。社会の変化に対応することで、これからの時代に求められる医療を実現できます。
まとめ
医療DXは、デジタイゼーション、デジタライゼーション、デジタルトランスフォーメーションという3つの段階を経て、医療の仕組みそのものを変革する取り組みです。全日本病院協会会長の神野正博氏による解説動画「医療のトリセツ 第5回」では、なぜ医療DXが必要なのかを分かりやすく学べます。社会の文化が変化する中で、医療の文化も変革していく必要性を理解する機会として、ぜひご覧ください。
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【2025年医療保険改革】長期収載品・バイオ医薬品・OTC類似薬の保険給付見直しで何が変わる?
Nov 14, 2025令和7年11月6日に開催された第202回社会保障審議会医療保険部会において、薬剤給付の在り方に関する重要な議論が行われました。医療保険制度の持続可能性を確保するため、長期収載品の選定療養の更なる活用、先行バイオ医薬品の保険給付の在り方、OTC類似薬の保険給付範囲の見直しという3つの重要なテーマが検討されています。
今回の議論では、令和6年10月から施行された長期収載品の選定療養制度の効果検証が示されました。後発医薬品の使用割合は数量ベースで90%以上に上昇し、一定の効果が確認されています。この成果を踏まえ、患者負担額の引き上げや対象範囲の拡大が論点となりました。先行バイオ医薬品については、バイオ後続品への置き換え率が金額ベースで33.7%と低いことから、使用促進に向けた選定療養の導入が検討されています。OTC類似薬については、医療機関における必要な受診の確保、子どもや慢性疾患を抱える方への配慮、低所得者の負担増加への対応という3つの重要な配慮事項が示されました。
長期収載品の選定療養制度の効果と今後の方向性
長期収載品の選定療養制度は、令和6年10月に施行されました。この制度は、患者が後発医薬品ではなく長期収載品を希望する場合に、両者の価格差の4分の1を患者が追加負担する仕組みです。施行後約5ヶ月が経過した令和7年3月時点で、後発医薬品の使用割合は数量ベースで90.6%に達しており、後発医薬品の使用促進に一定の効果を示しています。
制度の運用状況を見ると、長期収載品の銘柄名で処方された医薬品のうち73.6%が後発医薬品へ変更されています。残りの25.4%で長期収載品が調剤された理由は、医療上の必要性による変更不可が23.3%、患者希望が17.8%、後発医薬品の在庫不足が43.9%でした。この結果から、供給不安が依然として医療現場の課題となっていることがわかります。
一方で、薬局からは患者への説明負担が大きいという指摘があります。長期収載品の選定療養制度導入による影響を尋ねた調査では、78.9%の薬局が患者への説明や質問対応に係る負担が大きいと回答しました。制度そのものや特別料金の計算がわかりづらいという意見も寄せられており、現場への配慮が求められます。
医療保険部会では、後発医薬品使用促進をさらに進めるため、選定療養の更なる活用が議論されました。具体的には、現在の価格差4分の1という患者負担を、2分の1、4分の3、全額へと段階的に引き上げる案が示されています。複数の委員から価格差全額を患者負担とすべきという意見が出された一方、後発医薬品の供給不安定が解消されていない現状への配慮を求める意見もありました。
先行バイオ医薬品への選定療養導入に向けた課題
先行バイオ医薬品のバイオ後続品への置き換えは、低分子医薬品の後発医薬品への置き換えと比較して大幅に遅れています。令和6年の薬価調査によると、バイオ後続品への置き換え率は金額ベースで33.7%にとどまります。政府目標では、2029年度までにバイオ後続品が80%以上を占める成分数を全体の60%以上とすることを掲げていますが、現状では22.2%と大きく乖離しています。
バイオ医薬品が後発医薬品と異なる特性を持つことが、置き換えの障壁となっています。バイオ医薬品は製造工程が複雑で、細胞株由来のばらつきが生じる可能性があります。先行品と後続品は同質・同等性が確認されていますが、完全な同一性は認められていません。このため、低分子医薬品のように処方変更や変更調剤で対応することが困難です。
さらに、バイオ医薬品には先行品と後続品に共通の一般名が存在せず、一般名処方加算の仕組みが適用できません。後発医薬品調剤体制加算に相当する評価も存在しないため、医療機関や薬局がバイオ後続品を積極的に使用するインセンティブが限られています。保存や運搬にも特別な配慮が必要で、安定供給の確保が課題です。
医療保険部会では、バイオ後続品への置き換えが一定程度進んでいる先行バイオ医薬品について選定療養の対象とすべきという意見が複数示されました。高額療養費制度の持続可能性確保の観点からも検討が必要という指摘があります。ただし、急性期で一時的に使用する薬と、自己注射のように患者が継続使用する薬では対応が異なるため、デバイスの使用方法の違いなども考慮した丁寧な制度設計が求められます。
OTC類似薬の保険給付見直しにおける3つの配慮事項
OTC類似薬の保険給付の在り方見直しは、骨太方針2025および三党合意で示された重要課題です。医療保険制度の持続可能性確保と現役世代の保険料負担軽減を実現するため、令和7年末までに十分な検討を行い、令和8年度からの実施を目指しています。検討に当たっては、医療機関における必要な受診の確保、子どもや慢性疾患を抱える方・低所得者の患者負担への配慮、成分や用量がOTC医薬品と同等のOTC類似薬の扱いという3つの視点が示されました。
医療機関における必要な受診の確保については、複数の懸念が指摘されています。OTC類似薬を保険適用から外した場合、受診遅延による健康被害が生じる可能性があります。医療の基本は早期発見・早期治療であり、軽症段階での対応を困難にすれば、結果として重症化により多額の医療費を要することになりかねません。薬の過剰摂取や飲み合わせリスクも考慮が必要です。
へき地では医療機関にアクセスできても薬局がない地域があり、OTC医薬品の入手自体が困難な場合があります。スイッチOTC化された医薬品についても、単に保険給付の対象から外すだけではセルフメディケーションの適切な実施は難しく、かかりつけ医やかかりつけ薬剤師と相談しながら薬歴管理を行う体制が望ましいという意見が出されました。
子どもや慢性疾患を抱える方、低所得者への配慮も重要な論点です。過度な負担や急激な変化が生じないよう十分な配慮が必要です。難病や心身障害のある方にとっては、一般用医薬品が医療用医薬品の10倍以上の価格になることもあり、負担が非常に重くなる可能性があります。医療保険部会では、こうした方々への配慮が必須という認識が共有されました。
OTC医薬品と医療用医薬品の違いにも留意が必要です。有効成分が一致していても、用法・用量、効能・効果、対象年齢、投与経路・剤形などに違いがあります。配合剤で包装単位が決まっている大多数のOTC医薬品は、医療用医薬品のように患者個々の量に対応して提供できません。OTC医薬品の安定供給も十分ではなく、全薬局で一律な対応ができない状況も指摘されています。
まとめ:医療保険制度の持続可能性確保に向けた取組の方向性
薬剤給付の在り方見直しは、医療保険制度の持続可能性確保と現役世代の負担軽減という
Duration: 00:04:33高額療養費制度の見直し議論が本格化―3つの論点と患者負担への影響を徹底解説
Nov 13, 2025令和7年11月6日に開催された第202回社会保障審議会医療保険部会では、高額療養費制度の在り方について重要な議論が行われました。高齢化の進展と医療の高度化により医療費が増大する中、制度を将来にわたって維持するための改革が求められています。医療保険部会では、高額療養費制度の在り方に関する専門委員会での議論を踏まえ、自己負担限度額の見直し、70歳以上の外来特例の在り方、所得区分の細分化という3つの論点を中心に検討を進めています。
議論の焦点は、制度の持続可能性と現役世代の保険料負担軽減の必要性、年齢によらない負担能力に応じた負担の実現、長期療養患者や低所得者への配慮というセーフティネット機能の維持という3点にあります。専門委員会では患者団体や保険者からのヒアリングを丁寧に実施し、具体的な患者の医療費負担の実態を踏まえた検討が行われました。本制度の見直しは、全世代型社会保障の構築に向けた医療保険制度改革全体の中で位置づけられており、今後の改革の方向性が注目されています。
高齢化と医療高度化により増大する医療費への対応
医療費は高齢化の進展と医療の高度化により今後も増大が見込まれます。専門委員会では、人口構造の変化や医療費の高騰という状況を踏まえると、高額療養費制度を現行のままで維持していくことは困難という認識が示されました。医療の高度化や高額薬剤の普及により高額療養費制度の重要性が増している一方で、制度を支える加入者の保険料負担も増加しています。
専門委員会での議論では、現役世代の保険料負担を軽減していくことが非常に重要という意見が出されました。この観点から、医療保険制度全体の改革を進めていくことが不可欠であり、高額療養費制度についても改革項目の一つとして一定程度の見直しを行うべきとされています。ただし、見直しに当たっては、利用者の家計の破綻につながらないよう十分配慮することが求められています。
一方で、患者団体からは切実な声も寄せられています。患者やその家族、医療者からは、自己負担限度額を上げられたらもう治療を受けられなくなるという意見が出されました。特に希少疾患患者にとって、病気の責任は自身になく必要に迫られて医療を利用しているのであり、過度な負担は公的保険制度の公平性を損なうおそれがあるという指摘もありました。
現行制度においても医療費負担が極めて厳しい状況にある患者がいる一方で、制度を将来にわたって維持する必要性も認識されています。制度を見直す際は、仮のモデルを設定した負担のイメージやデータを踏まえる必要があるという意見が出されており、丁寧な検討が求められています。具体的には、年収約200万円未満の乳がん患者の事例では、総医療費約658.2万円に対して高額療養費制度により自己負担は約44.7万円となっていますが、年間収入に占める割合は決して軽くない負担となっています。
年齢によらない負担能力に応じた負担の実現
全世代型社会保障を目指す中で、年齢ではなく負担能力に応じた負担という考え方が重要視されています。専門委員会では、70歳以上の高齢者のみに設けられている外来特例の在り方が主要な論点となりました。外来特例は、高齢者の外来受診時の自己負担限度額を引き下げる仕組みですが、世代間の公平性の観点から見直しが必要という意見が出されています。
外来特例の見直しについては、複数の視点から議論されています。医療者からは、抗がん剤治療において高齢者は外来特例により一定の負担で治療を受けられる一方で、現役世代、特に子育て世代は厳しい経済環境の中でその治療を受けることができないという公平性の問題が指摘されました。年齢階級別のデータでは、一人当たり医療費が年齢とともに増えている一方で、一人当たり自己負担額は70歳を境に大きく減っており、この点について世代間の公平性の議論が求められています。
一方で、外来特例の必要性を主張する意見もあります。一定の年齢になると疾病数が増え医療機関にかかる回数が多くなるという高齢者の特性を踏まえた仕組みは必要ではないかという指摘です。高齢者は若い世代と違って失った所得を回復させることが難しく、また病気になる確率が高いという事情があり、これらを考慮する必要があるとされています。
所得区分の在り方も重要な論点となっています。負担能力に応じたきめ細かい制度設計をしていく観点から、現行制度において大括りとなっている所得区分について、低所得者に配慮した自己負担の設定を前提としながらも細分化が必要ではないかという意見が出されました。所得区分を細分化する方向は合理的と考えられていますが、細分化しすぎたり複雑なものにしすぎると国民にも分かりにくく、市町村窓口などの現場で混乱が生じることにもなりかねないため、制度設計に当たっては留意が必要とされています。
他方で、一定の所得を有する方は応分の保険料を負担している中において、給付面の応能負担をこれ以上強めることは制度への納得性を損なうのではないかという意見もありました。負担能力という観点では、所得のみならず資産も勘案する必要があるという指摘もなされています。
セーフティネット機能を維持した制度設計の在り方
高額療養費制度はセーフティネット機能として患者にとってなくてはならない制度であり、今後もこの制度を堅持していく必要性については認識が一致しています。専門委員会では、制度を将来にわたり維持していく観点から、仮に自己負担限度額の見直しを行っていく場合であっても、特に長期にわたって継続して治療を受けられる方や所得が低い方の負担が過重なものとならないよう配慮すべきという意見が多く出されました。
長期療養患者への配慮は特に重要視されています。難病やがんなどの慢性疾患を有する方で長期間療養を必要とする方への配慮が、現行の多数回該当制度だけでは弱いのではないかという指摘がなされました。多数回該当制度は、直近12か月以内に3回以上高額療養費の支給を受けた場合に4回目から自己負担限度額が引き下げられる仕組みですが、年間上限を設けてはどうかといった追加的な配慮の必要性が議論されています。
既に現行制度においてもWHOが定義する「破滅的医療支出」を大きく超えている患者が存在するという実態も示されました。今後の持続可能性の観点だけではなく、患者の過重な負担にならないという観点からは、こうした患者が既に存在していることに十分配慮しながら制度の検討を行う必要があるとされています。具体的な事例として、年収約200万円未満の20歳代女性の白血病患者では、多数回該当により自己負担は約14.5万円となっていますが、年間収入に占める割合は依然として重い負担となっています。
制度設計に当たっては、医療の質を落とさずに患者が治療を継
Duration: 00:07:42短期滞在手術の外来移行促進:中医協が示す診療報酬見直しの3つのポイント【2026年改定】
Nov 12, 2025令和7年11月7日に開催された中央社会保険医療協議会総会(第625回)で、入院から外来への移行に関する診療報酬の見直しが議論されました。2026年度診療報酬改定に向けて、短期滞在手術における入院と外来の評価体系を見直し、医療の効率化を図ることが目的です。本稿では、この見直しの背景、具体的な検討内容、医療機関への影響を解説します。
中医協では短期滞在手術等基本料の見直しが3つの視点から検討されています。第一に、主として外来で実施される手術について入院と外来の点数差を縮小します。第二に、複数の算定方法が混在している現状を統一します。第三に、短期滞在手術等基本料1の包括評価を診療実態に合わせて調整します。これらの見直しにより、特に内視鏡的大腸ポリープ切除術と白内障に対する水晶体再建術の外来実施率向上が期待されます。
短期滞在手術等基本料3の見直し:入院・外来の点数差縮小
短期滞在手術等基本料3の対象手術のうち、主として外来で実施される手術について、入院と外来の点数差を縮小する方向で見直しが検討されています。現状では、内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術(長径2センチメートル未満)と水晶体再建術(眼内レンズを挿入する場合、その他のもの)について、入院で実施した場合の総請求点数が病院の外来で実施した場合より高くなっています。
この点数差が、臨床的に入院で実施する必要性が乏しい症例でも入院を選択する要因となっています。医療機関ごとの分析では、外来実施率が0パーセントの医療機関が一定数存在します。特に白内障に対する水晶体再建術については、第165回社会保障審議会医療保険部会において、OECD諸外国と比較して日本の外来実施率が低いことが指摘されました。
点数差を縮小することで、医療機関が臨床的必要性に基づいて入院・外来を選択しやすい環境を整備します。これにより、患者の利便性向上と医療資源の効率的活用が両立します。
短期滞在手術等基本料の算定方法統一化
短期滞在手術等の算定方法については、短期滞在手術等基本料をはじめ、複数の算定方法が混在しています。病院がDPC対象病院であるかどうかにより算定方法が異なり、医療機関の事務負担が増大しています。
中医協では、病院がDPC対象病院であるかどうかにかかわらず、短期滞在手術等基本料3を算定するよう見直すことが検討されています。算定方法を統一することで、医療機関の事務処理が簡素化されます。患者にとっても、医療機関の種別によらず同じ評価体系で診療を受けられるため、わかりやすい制度になります。
この統一化により、医療機関は診療報酬の算定業務に要する時間を削減できます。削減された時間を患者ケアの質向上に振り向けることが可能になります。
短期滞在手術等基本料1の評価適正化
短期滞在手術等基本料1については、令和4年度診療報酬改定において施設基準等の見直しを行った結果、特に診療所での算定回数が著しく増加しました。短期滞在手術等基本料1は検査料等を包括した点数として設定されています。
短期滞在手術等基本料1を算定する場合と算定しない場合の手術実施月の総請求点数の差は、短期滞在手術等基本料1の点数と同程度でした。短期滞在手術等基本料1が一部検査料等を包括して評価している一方で、包括評価による効率化の効果は限定的でした。
中医協では、手術実施月の点数の差等を踏まえ、診療の実態に見合った評価とすることが検討されています。評価を適正化することで、包括評価の本来の目的である医療の効率化を実現します。医療機関にとっては、適切な診療報酬を得ながら質の高い医療を提供できる環境が整います。
入院実施の臨床的背景と今後の課題
内視鏡的大腸ポリープ切除術と水晶体再建術を原則外来で実施している医療機関が入院で実施する理由として、「臨床上、入院での周術期管理を行う必要性が高いため」が最多でした。具体的には、前者については出血リスクの高い症例等が、後者については全身麻酔を行う必要性が高い症例等が挙げられました。
水晶体再建術を全身麻酔で実施する理由としては、「臨床上、局所麻酔での実施が困難であるため」が最多でした。具体的な理由としては「認知症により安静を保つことが困難」といった回答が多くみられました。
今回の見直しは、こうした臨床的必要性を否定するものではありません。臨床的必要性が高い症例では引き続き入院での対応が可能です。一方、臨床的必要性が乏しいにもかかわらず点数差により入院を選択している症例については、外来への移行を促します。医療機関は、個々の患者の状態を適切に評価し、最適な診療形態を選択することが求められます。
まとめ
中医協が提案する短期滞在手術の外来移行促進策は、入院・外来の点数差縮小、算定方法の統一化、評価の適正化という3つの柱で構成されています。これらの見直しにより、医療資源の効率的活用と患者の利便性向上が期待されます。医療機関は臨床的必要性に基づいて入院・外来を適切に選択し、質の高い医療を提供することが求められます。
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入院時の光熱水費398円、18年ぶりの見直し検討へ【中医協総会速報】
Nov 11, 2025令和7年11月7日に開催された中央社会保険医療協議会総会(第625回)において、入院時の光熱水費の見直しが議論されました。現行の基準額398円は平成18年の制度創設時から据え置かれています。近年の光熱・水道費の高騰により病院経営が圧迫されている状況があります。令和6年8月施行の介護報酬改定で介護保険の居住費が引き上げられ、医療保険との間に自己負担の差が生じています。今回の議論は、基準額の見直しの必要性を検討することを目的としています。
今回の議論では4つの重要なポイントが示されました。第一に、現行制度では療養病床に入院する65歳以上の者について1日当たり総額398円(自己負担370円、保険給付28円)が設定されています。第二に、平成18年以降、基準額が一度も改定されていない中で光熱・水道費が大きく高騰しています。第三に、令和6年8月施行の介護報酬改定では多床室の居住費が60円引き上げられ、医療保険との間に自己負担の差が生じています。第四に、家計における光熱・水道支出を勘案した基準額の見直しが論点となっています。
入院時の光熱水費制度の現状
入院時の光熱水費は、療養病床に入院する患者と一般病床に入院する患者で評価方法が異なります。療養病床に入院する65歳以上の者については、入院時生活療養費として1日当たりの総額と自己負担を国が定めています。一般所得者の場合、総額398円のうち自己負担が370円、保険給付が28円です。一般病床、精神病床、療養病床に入院する65歳未満の者については、光熱水費を入院料中で評価しています。
この制度は、介護保険との均衡を図る観点から平成18年10月に創設されました。介護保険では平成17年10月より、介護病床を含む介護保険3施設における食費および居住費が原則として保険給付外とされました。この改定に伴い、同じ「住まい」としての機能を有する介護病床(介護保険)と療養病床(医療保険)の患者負担の均衡を図るため、入院時生活療養費が創設されました。制度創設時の基準額は総額398円(自己負担320円)でした。平成29年10月には、介護保険の居住費に係る基準費用額を勘案し、基準額(総額)を維持した上で自己負担額を50円引き上げ、370円としました。
光熱水費を巡る現在の課題
現行制度には3つの課題が指摘されています。第一の課題は、基準額の長期据え置きです。入院時生活療養費の光熱水費の基準額(総額)398円は、平成18年の創設時から据え置かれています。この間、光熱・水道費は大きく高騰しました。基準額が据え置かれていることが、病院経営に少なからず影響を及ぼしている状況です。
第二の課題は、介護保険との負担差の拡大です。介護保険では、令和6年8月施行の介護報酬改定において対応が行われました。家計調査によると、高齢者世帯の光熱・水道費は令和元年調査に比べて上昇しています。この状況を踏まえ、介護保険では在宅で生活する者との負担の均衡を図る観点から、基準費用額(居住費)を60円引き上げました。この結果、介護保険の居住費の自己負担(430円)と医療保険の光熱水費の自己負担(370円)の間で、60円の差が存在しています。
第三の課題は、医療機関の経営環境の悪化です。昨今の光熱・水道費は特に足下で大きく高騰しています。基準額が据え置かれている中での費用増加は、医療機関の経営を圧迫する要因となっています。療養病床を有する病院にとって、光熱水費の実費と基準額との乖離が経営課題となっています。
今後の検討の方向性
今回の中医協総会では、基準額見直しに向けた論点が示されました。論点は、近年の光熱・水道費の高騰を踏まえた対応を行う観点から、基準額の見直しについてどのように考えるかというものです。具体的には、家計における光熱・水道支出を勘案して行われた令和6年8月施行の介護報酬改定による多床室の居住費の基準費用額の引上げを踏まえた検討が求められています。
検討にあたっては、複数の要素を総合的に勘案することが必要です。第一に、家計調査における高齢者世帯の光熱・水道費の動向です。令和4年の家計調査によれば、高齢者世帯の光熱・水道費は令和元年調査に比べて上昇しています。第二に、介護保険との整合性です。医療保険と介護保険は同じ社会保障制度の中で、患者・利用者の負担の均衡を図る必要があります。第三に、病院経営への影響です。療養病床を有する医療機関の経営実態を踏まえた検討が求められています。
今後の診療報酬改定に向けて、これらの論点について議論が深められることが予想されます。基準額の見直しは、患者負担と病院経営の両面に影響を与える重要な課題です。中医協での議論を注視していく必要があります。
まとめ
中央社会保険医療協議会総会において、入院時の光熱水費の基準額見直しが議論されました。平成18年の制度創設以来据え置かれてきた基準額398円について、近年の光熱・水道費の高騰と令和6年8月施行の介護報酬改定を踏まえた対応が検討されています。家計における光熱・水道支出、介護保険との整合性、病院経営への影響を総合的に勘案した見直しが論点となっており、今後の診療報酬改定に向けた議論の動向が注目されます。
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令和8年度診療報酬改定に向けた議論:入院時の食費制度の現状と課題を中医協資料から読み解く
Nov 10, 2025令和7年11月7日に開催された中央社会保険医療協議会総会第625回では、入院時の食費・光熱水費について議論されました。令和7年4月に実施された食費基準額の引き上げを振り返るとともに、令和8年度診療報酬改定に向けた検討が行われています。食材費の高騰が続く中、医療機関が提供する食事の質を確保する観点から、1食あたり20円の引き上げが実施され、基準額は690円となりました。
入院時の食費は医療の一環として提供されるものです。令和7年4月改定により、一般所得者の患者負担は1食510円、住民税非課税世帯は240円、低所得高齢者は110円に据え置かれました。医療機関は入院時食事療養(Ⅰ)または(Ⅱ)を選択でき、(Ⅰ)を届け出た場合は特別食加算や食堂加算を算定できます。特別食加算は1食76円で腎臓食や糖尿食などの疾病治療に必要な食事に適用され、現在32.5%の算定率となっています。
入院時の食費制度の基本的な仕組み
入院時に必要な食費は国が定めた仕組みで運用されています。この仕組みは、1食あたりの総額を「食事療養基準額」として設定し、患者が負担する「標準負担額」との差額を保険給付として支給するものです。入院時食事療養費は、保険給付額が食事療養基準額から標準負担額を差し引いた金額として計算されます。
この制度は入院患者の年齢と病床の種類により区分されています。一般病床、精神病床、療養病床に入院する65歳未満の患者には入院時食事療養費が適用されます。一方、療養病床に入院する65歳以上の患者には、入院時生活療養費の食費部分として評価されます。療養病床の入院患者は食費に加えて居住費も負担することが特徴です。
入院患者に提供される食事は医療の一環として位置づけられています。各患者の病状に応じて必要な栄養量が提供され、食事の質の向上と患者サービスの改善が求められます。管理栄養士や栄養士による専門的な栄養管理のもとで、医師との連携により個別的な医学的・栄養学的管理が行われています。
令和7年4月に実施された食費基準額引き上げの内容
食材費の継続的な高騰を受けて、令和7年4月に入院時の食費基準額が1食あたり20円引き上げられました。この引き上げは、令和6年6月に実施された30円の引き上げに続くもので、医療機関が質の高い食事を提供し続けるための措置です。基準額は670円から690円へと引き上げられ、医療機関の経営安定化が図られました。
患者負担額は所得区分に応じて異なる設定となりました。一般所得者の自己負担は490円から510円へと20円引き上げられました。住民税非課税世帯の患者負担は230円から240円へと10円の引き上げにとどめられ、所得への配慮がなされました。住民税非課税世帯かつ所得が一定基準に満たない70歳以上の患者については、110円に据え置かれ、低所得高齢者への負担増加が回避されました。
保険給付額は基準額と患者負担額の差額として自動的に調整されます。一般所得者の保険給付は180円、住民税非課税世帯では450円、低所得高齢者では580円となります。この仕組みにより、所得が低い患者ほど保険給付の割合が高くなり、医療へのアクセスが確保されています。
入院時食事療養(Ⅰ)と(Ⅱ)の評価体系
入院時食事療養には(Ⅰ)と(Ⅱ)の2つの区分があります。入院時食事療養(Ⅰ)は1食690円で評価され、届出を行った医療機関が算定できます。この区分では流動食のみを提供する場合は625円となります。入院時食事療養(Ⅱ)は届出が不要で、1食556円で算定されます。流動食のみの場合は510円です。
入院時食事療養(Ⅰ)を届け出るには一定の要件を満たす必要があります。常勤の管理栄養士または栄養士が食事療養の責任者となることが求められます。医師、管理栄養士または栄養士による検食が毎食行われることも必須要件です。食事療養関係の各種帳簿の整備、病状により特別食を必要とする患者への特別食の提供、適時の食事提供、保温食器等を用いた適温の食事提供などが義務づけられています。
令和6年時点で7,761施設が入院時食事療養(Ⅰ)を届け出ています。これらの医療機関では、質の高い食事療養を提供する体制が整備されています。多くの病院がこの基準を満たすことで、入院患者に適切な栄養管理と食事サービスが提供されています。
特別食加算と食堂加算の算定要件
特別食加算は疾病治療の直接手段として提供される食事に対する評価です。この加算は1食につき76円で、1日3食を限度として算定できます。医師が発行する食事箋に基づき、腎臓食、肝臓食、糖尿食、胃潰瘍食、貧血食、膵臓食、脂質異常症食、痛風食などの特別食が提供された場合に適用されます。令和6年の社会医療診療行為別統計では、入院時食事療養(Ⅰ)において32.5%の算定率となっています。
特別食加算が適用される食事は厚生労働大臣が定めた基準を満たす必要があります。てんかん食、フェニールケトン尿症食、楓糖尿症食、ホモシスチン尿症食、ガラクトース血症食、治療乳、無菌食、特別な場合の検査食も対象です。単なる流動食や軟食は対象外となります。流動食のみを提供する患者には特別食加算を算定できません。
食堂加算は入院患者の食事環境を評価する加算です。一定基準を満たす食堂を備えた病棟または診療所において、入院患者に食事が提供された場合に1日につき50円を算定できます。この加算は療養病棟に入院している患者を除くすべての入院患者が対象となります。食堂の設置や食器への配慮など、食事の提供を行う環境の整備が求められています。
特別メニューの食事提供と患者負担
入院患者に提供される食事に関する多様なニーズに対応するため、特別メニューの食事を提供することができます。患者から特別の料金の支払を受ける特別メニューの食事を別に用意し、一定の要件を満たした場合に妥当な範囲内の患者負担を求めることが認められています。複数メニューの選択では、1食あたり17円を標準とした社会的に妥当な額の支払を受けることができます。
特別メニューの食事提供では患者への十分な情報提供が必須です。患者の自由な選択と同意に基づいて提供する必要があり、患者の意に反した提供は禁止されています。患者の同意がない場合は標準食を提供しなければなりません。各病棟内等の見やすい場所に特別メニューの食事のメニューおよび料金を掲示し、文書を交付してわかりやすく説明することが求められます。
特別メニューの食事は通常の入院時食事療養の費用では提供が困難な内容でなければなりません。高価な材料を使用し特別な調理を行う場合や、標準食の材料と同程度の価格でも異なる材料を用いるため別途費用がかかる場合が該当します。当該
Duration: 00:06:28中医協第625回で議論されたオンライン診療の評価見直し:3つの診療形態と個別課題を解説
Nov 09, 2025令和7年11月7日に開催された中央社会保険医療協議会総会第625回において、情報通信機器を用いた診療についての議論が行われました。本議論では、オンライン診療の適正な推進と評価拡大を目的として、3つの診療形態における現状課題と今後の方向性が示されました。
今回の議論の要点は、第一にD to P(医師対患者)における適正推進のための評価のあり方、第二にD to P with D(患者が医師といる場合)の対象拡大と評価見直し、第三にD to P with N(患者が看護師等といる場合)の評価明確化、第四に外来栄養食事指導料等の個別事項についての制度改善です。
D to P:オンライン診療の適正推進に向けた課題と対応
D to Pは医師と患者が情報通信機器を用いて直接診療を行う形態です。この形態では、患者側に医療従事者が同席せず、医師が初診料・再診料・外来診療料、各種医学管理料を算定できます。
情報通信機器を用いた診療に係る報告書によると、「自身では対応困難な疾患・病態の患者や緊急性がある場合」として他の医療機関へ紹介を実施した割合は、患者の所在が医療機関と同一の場合で0.49%、患者の所在が医療機関と異なる場合で0.59%でした。この結果から、緊急時や対応困難な症例における他医療機関との連携体制に課題があることが明らかになりました。具体的には、事前合意なく患者に他医療機関への受診を指示していた事例や、医師が国外から診療を実施した事例が報告されています。
オンライン診療の適切な実施に関する指針や医療広告ガイドラインを遵守していない事例も確認されました。これらの課題を踏まえ、中医協では直接の対面診療を行える体制の整備状況について、施設基準の更なる明確化を検討する方針が示されました。
D to P with D:遠隔連携診療の対象拡大と評価見直し
D to P with Dは患者が医師といる場合にオンライン診療を行う形態です。現在の診療報酬では、遠隔連携診療料として、難病患者及びてんかん患者に対する専門医との連携が評価されています。
遠隔連携診療料は令和2年度に新設されて以降、算定回数は限られています。令和6年度入院・外来医療等における実態調査によると、過去1年間にD to P with Dによるオンライン診療を実施した医療機関は1.0%(3,546施設中37施設)でした。遠隔連携診療料を算定できる状況以外でも、医療的ケア児との連携が26.9%、訪問診療における眼科・皮膚科・耳鼻科等の専門医との連携が15.4%の施設で実施されていました。
D to P with D型やD to D型の遠隔医療については、緊急性が高い状況や専門の医師による対面診療が困難な状況下において、有用性が高いことが考えられます。オンライン診療その他の遠隔医療の推進に向けた基本方針における遠隔医療に期待される役割を踏まえ、中医協ではD to P with D型及びD to D型の遠隔医療の診療報酬上の評価を一定の考え方を踏まえて検討する方針が示されました。
皮膚科領域における活用事例として、日本臨床皮膚科医会及び日本看護協会が実施した調査結果が示されました。この調査では、訪問看護を利用する566名の在宅療養者のうち399名(70.5%)が何らかの皮膚疾患を有していました。そのうち114名(28.1%)が未治療であり、理由として「近くに往診する皮膚科医がいない」「皮膚科は往診しないと思っていた」等が挙げられています。このような地域における皮膚科医療へのニーズに対応するため、オンライン診療の活用により皮膚科の専門的医療へのアクセスを改善することが有益であると考えられます。
D to P with N:看護師等遠隔診療補助の評価明確化
D to P with Nは患者が看護師等といる場合にオンライン診療を行う形態です。令和6年度診療報酬改定では、へき地診療所及びへき地医療拠点病院において、適切な研修を修了した医師がD to P with Nを実施できる体制を確保している場合の評価として、看護師等遠隔診療補助加算(50点)が新設されました。
規制改革実行計画(令和7年6月13日閣議決定)において、D to P with Nにおける診療報酬の算定方法に不明確な部分があるとの指摘がありました。D to P with Nとして想定される診療形態には、看護師等の所属や定期的な訪問の有無等の違いがあります。訪問看護については介護保険との整理に留意が必要です。
令和7年度厚生労働科学特別研究事業の調査によると、D to P with Nで実際に実施している診療の補助行為として、検査では採血、咽頭拭い液を用いた検査、尿検査、心電図等が挙げられました。処置・注射としては点滴注射、創傷処置、皮膚科軟膏処置等が挙げられました。中医協では、看護師等の所属や定期的な訪問時に行われるか等の看護の提供形態の違いを踏まえて、看護師の訪問に係る評価を明確化する方針が示されました。
個別事項:外来栄養食事指導料の評価明確化
外来栄養食事指導料については、令和2年度から初回の情報通信機器等の活用が評価され、令和4年度からは2回目以降も算定可能となっています。しかし、算定回数は極めて少なく、規制改革実施計画において、オンライン診療の特性を十分に活かした活用が進まない算定要件となっていると指摘されています。
外来栄養食事指導料は、管理栄養士が医師の指示に基づき、初回は概ね30分以上、2回目以降は概ね20分以上の栄養指導を行った場合に算定できます。情報通信機器等を用いる場合の要件として、事前に対面による指導と情報通信機器等による指導を組み合わせた指導計画を作成することが求められています。
中医協では、情報通信機器を活用した外来栄養食事指導料の推進の観点から、オンラインのみでの実施も可能であることの明確化や、電話と情報通信機器を同様としている取扱いについて検討する方針が示されました。この見直しにより、栄養指導におけるオンライン診療の活用が進むことが期待されます。
まとめ:遠隔医療の推進に向けた評価見直しの方向性
中医協第625回総会では、情報通信機器を用いた診療について、D to P、D to P with D、D to P with Nの3つの診療形態と個別事項における現状課題と今後の方向性が議論されました。今後の診療報酬改定では、オンライン診療の適正推進と評価拡大により、地域医療における専門医へのアクセス改善や、へき地医療における医療提供体制の充実が期待されます。
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療養・就労両立支援指導料の見直し:算定率0%の現状から考える制度改善の方向性
Nov 08, 2025令和7年11月7日に開催された中央社会保険医療協議会総会において、療養・就労両立支援指導料の見直しが議論されました。この指導料は平成30年度に新設されましたが、算定回数が極めて低調な状況が続いています。中医協は、がん診療連携拠点病院等における算定率が0%という実態調査結果を踏まえ、制度の抜本的な見直しを論点として提示しました。
今回の議論では、対象疾患の限定撤廃と算定期間の延長という2つの主要論点が示されました。対象疾患については、現在は悪性新生物、脳梗塞や脳出血などの急性発症した脳血管疾患、慢性肝疾患、心疾患、糖尿病、若年性認知症、指定難病その他これに準ずる疾患に限定されていることが、両立支援を必要とする多くの患者を排除している問題があります。算定期間については、初回から3月以内という制限が実態と乖離しており、実際の平均指導期間は6.8ヶ月となっています。これらの課題解決に向けた制度改善が、次期診療報酬改定での重要な検討事項となります。
療養・就労両立支援指導料の制度概要と算定実績
療養・就労両立支援指導料は、就労中の患者の療養と就労の両立を支援するため、平成30年度診療報酬改定で新設された評価項目です。この指導料の算定要件は、患者と事業者が共同作成した勤務情報を踏まえた療養指導の実施、患者の事業場の産業医等への情報提供、情報提供後の勤務環境変化を踏まえた継続的な療養指導という3つの要素から構成されています。初回算定で800点、2回目以降は初回算定月またはその翌月から起算して3月を限度として400点を算定できます。
この指導料の算定回数は、新設以降増加傾向にあるものの極めて低調な水準です。令和6年8月審査分のデータによると、初回算定が116回、2回目以降の算定が89回にとどまっています。相談支援加算の届出医療機関数は965施設(病院457施設、診療所508施設)まで増加しましたが、算定回数は月31回と、届出施設数に対して著しく少ない状況が続いています。この乖離は、制度を整備しても実際の運用段階で多くの課題が存在することを示しています。
がん診療連携拠点病院等を対象とした実態調査では、令和6年8月から10月の期間に療養・就労両立支援指導料を算定した施設は0%でした。算定しない理由として、専門職員の確保困難が52.6%で最も多く、就労上の留意点指導が困難が28.9%、患者から勤務情報を受け取ることが困難が26.3%と続きました。これらの結果は、制度設計と現場の実態が大きく乖離していることを明確に示しています。
対象疾患の限定がもたらす課題
現行制度における対象疾患は、悪性新生物、脳梗塞や脳出血などの急性発症した脳血管疾患、慢性肝疾患、心疾患、糖尿病、若年性認知症、指定難病その他これに準ずる疾患に限定されています。この限定は平成30年の制度新設時から段階的に拡大されてきましたが、就労の状況を考慮した療養指導を必要とする患者はこれらの疾患に限られていません。両立支援コーディネーター基礎研修修了者へのフォローアップ調査によると、実際に両立支援に携わった疾患は、がんが24%で最も多いものの、うつ病などのこころの病気が21%と高い割合を占めています。
この調査結果は、現行の対象疾患では精神疾患が含まれていないという重要な課題を浮き彫りにしています。脳卒中が12%、指定難病が11%、糖尿病が9%、心疾患が9%、骨折などの外傷が7%という結果を見ると、対象疾患に含まれない疾患でも相当数の両立支援ニーズが存在することがわかります。特に精神疾患については、厚生労働省が令和7年3月に「メンタルヘルス不調者の主治医向け支援マニュアル」を作成しており、両立支援の枠組みが整備されつつあります。
厚生労働省は「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」の参考資料として、主な疾患の留意事項を作成しています。がん、難病、肝疾患、脳血管疾患、心疾患、糖尿病については既に留意事項が整備されており、令和7年10月には慢性腎臓病の手引きも作成されました。これらの疾患別ガイドラインの整備状況を考慮すると、対象疾患の限定を見直し、より幅広い疾患を対象とすることが妥当と考えられます。
算定期間の制限と実態の乖離
現行制度では、2回目以降の指導について初回算定日の属する月またはその翌月から起算して3月を限度としています。この期間制限は、令和2年度診療報酬改定で2回目以降の評価が新設された際に設定されたものです。制度新設当初は初回のみの評価でしたが、診療情報提供後の勤務環境変化を踏まえた継続的な指導の重要性が認識され、2回目以降の評価が追加されました。
入院・外来医療等における実態調査によると、算定期間の要件を満たさなかったため算定できなかった事例の平均指導期間は6.8ヶ月でした。この結果は、実際の両立支援では3月を超える継続的な指導が必要とされていることを示しています。疾患の治療経過や職場復帰のプロセスを考慮すると、3月という期間は実態に合っていない可能性があります。特に、治療の副作用が長期にわたる場合や、段階的な職場復帰を支援する場合には、より長期の指導期間が必要となります。
両立支援の実務においては、初回の勤務情報提供と主治医意見書の作成だけでなく、その後の勤務環境の調整状況の確認、治療計画の変更に伴う就労上の配慮事項の見直し、患者の心理的支援など、多岐にわたる継続的なサポートが求められています。厚生労働省の両立支援ガイドラインでも、企業、労働者、主治医、産業医等の連携による継続的な支援プロセスが示されており、3月という期間制限はこの支援プロセスの実態と整合していません。
専門職員確保の困難性と施設基準の課題
療養・就労両立支援指導料の算定には、就労上の留意点に係る指導を医師または医師の指示を受けた看護師、社会福祉士、精神保健福祉士、公認心理師が行う必要があります。相談支援加算を算定する場合には、これらの専門職を専任で配置し、かつ厚生労働省の定める両立支援コーディネーター養成研修を修了していることが求められます。がん診療連携拠点病院等の実態調査では、専門職員の確保困難が算定しない理由の52.6%を占め、最大の課題となっています。
この専門職員確保の困難性には、複数の要因が存在します。両立支援コーディネーター養成研修の受講機会が限られていること、専任配置の要件が厳しいこと、そもそも看護師や社会福祉士等の専門職が不足していることなどが挙げられます。特に、患者サポート体制充実加算との兼任が認められているとはいえ、実際には両立支援業務に専念できる職員を確保することが困難な医療機関が多くあります。
就労上の留意点に係る指導が困難という回答が28.9%を占めたことも、重要な課
Duration: 00:06:11令和6年度診療報酬改定の総括:外来診療評価の5つの重要改定ポイント
Nov 07, 2025令和7年7月16日に開催された中央社会保険医療協議会総会第612回では、外来診療に係る診療報酬上の評価について重要な議論が行われました。高齢化の進展と生産年齢人口の減少を背景に、外来医療提供体制の再構築が急務となっています。
今回の議論では5つの重点テーマが設定されました。初・再診料等の基本診療料の評価、令和7年4月施行のかかりつけ医機能報告制度を踏まえた評価体系、令和6年度改定で大幅に見直された生活習慣病管理の評価、特定機能病院等における外来機能分化の推進、そして情報通信機器を用いた診療の適切な推進です。本稿では、これら5つのテーマについて診療報酬上の評価の現状と今後の方向性を詳しく解説します。
初・再診料等の評価:病診機能分化を促進する基本診療料体系
初・再診料は外来診療の基本となる診療報酬であり、医療機関の機能分化を促進する重要な役割を担っています。
令和6年度現在、初診料は診療所291点、病院216点と設定されています。この評価は、診療所が地域における日常的な医療を担い、病院が専門的・入院医療を担うという機能分化を反映したものです。平成24年度改定以降、病院と診療所で異なる評価体系が維持され、外来医療における役割分担が明確化されてきました。
再診料と外来管理加算の評価体系も同様の考え方に基づいています。再診料は診療所75点、病院76点となっており、外来管理加算は73点です。外来管理加算は、処置やリハビリテーションを行わずに計画的な医学管理を行った場合に算定できる評価です。
特定機能病院や大規模病院においては、紹介割合・逆紹介割合による減算規定が設けられています。令和4年度改定では紹介受診重点医療機関が追加され、一般病床200床以上の医療機関が対象となりました。この仕組みにより、高度専門医療を担う医療機関への患者集中を防ぎ、地域の診療所との連携を促進しています。令和6年度の調査では、対象病院における紹介割合・逆紹介割合は令和5年度と比較して不変またはやや増加しており、制度が一定の効果を上げていることが確認されています。
かかりつけ医機能の評価:報告制度施行を見据えた体制整備の推進
かかりつけ医機能の評価は、地域包括ケアシステムの構築において中核的な役割を果たしています。
令和7年4月から医療法に基づく「かかりつけ医機能報告制度」が施行されます。この制度は、各医療機関が担うかかりつけ医機能の内容を都道府県に報告し、国民・患者への情報提供を強化するものです。診療報酬においても、この制度整備を踏まえた評価体系の見直しが議論されています。
現行の診療報酬では、機能強化加算と地域包括診療料・加算がかかりつけ医機能を評価する中心的な項目です。機能強化加算は初診時に80点を算定でき、地域包括診療料・加算、小児かかりつけ診療料、在宅時医学総合管理料等の届出を要件としています。この加算は、服薬管理、専門医療機関への紹介、健康管理に係る相談、時間外診療に関する情報提供等を評価するものです。令和3年までは届出医療機関数が増加傾向でしたが、近年は横ばいとなっています。
地域包括診療料・加算は、複数の慢性疾患を有する患者に対して継続的かつ全人的な医療を提供することを評価します。対象疾患は高血圧症、糖尿病、脂質異常症、慢性心不全、慢性腎臓病、認知症の6疾病のうち2つ以上です。地域包括診療料1は1,660点、地域包括診療料2は1,600点で月1回算定できます。地域包括診療加算1は28点、加算2は21点で1回につき算定可能です。これらの評価には、24時間対応体制の整備、在宅医療の提供、介護保険制度との連携など、包括的な要件が設定されています。
小児かかりつけ診療料は、継続的に受診する未就学児に対して包括的な小児医療を提供する体制を評価するものです。処方箋を交付する場合の初診時652点、再診時458点など、小児の特性に配慮した評価体系が設けられています。
生活習慣病管理の評価:検査包括型と非包括型の二本立て体系
令和6年度診療報酬改定では、生活習慣病管理の評価が大幅に見直されました。
最も重要な変更は、生活習慣病管理料が生活習慣病管理料(Ⅰ)と生活習慣病管理料(Ⅱ)の二本立てとなったことです。生活習慣病管理料(Ⅰ)は検査等を包括する従来型の評価で、脂質異常症610点、高血圧症660点、糖尿病760点となっています。新設された生活習慣病管理料(Ⅱ)は検査等を包括せず333点で、医療機関が患者の状態に応じて柔軟に選択できる仕組みです。
この改定に伴い、特定疾患療養管理料の対象疾患から糖尿病、脂質異常症、高血圧が除外されました。その結果、特定疾患療養管理料の算定回数は令和4年の約2,632万回から令和6年には約1,021万回へと大幅に減少しました。一方、生活習慣病管理料の算定回数は約31万回から約1,392万回へと大幅に増加しています。算定医療機関数も、生活習慣病管理料では約3,550施設から約6万351施設へと大幅に増加しました。
主傷病名が糖尿病、高血圧症、脂質異常症である外来患者の算定状況を見ると、令和4年では外来管理加算が最も多く算定されていましたが、令和6年では生活習慣病管理料(Ⅱ)が最多となっています。この変化は、新たな評価体系が医療現場に浸透していることを示しています。
生活習慣病管理料の要件も簡素化されました。療養計画書の記載項目が整理され、令和7年から運用開始される電子カルテ情報共有サービスを活用する場合は血液検査項目の記載が不要となりました。また、月1回以上の総合的な治療管理を行う要件が廃止され、医療機関の負担軽減が図られています。一方で、多職種との連携が望ましい要件として追加され、糖尿病患者への歯科受診推奨が明確化されるなど、包括的な疾病管理の重要性が強調されています。
外来機能分化の推進:紹介・逆紹介による医療連携の強化
外来機能の分化は、医療資源の効率的配分と患者の適切な医療機関選択を実現するための重要な政策です。
病院の1日平均外来患者数は長期的に減少傾向にあります。紹介なしで外来受診した患者の割合も減少しており、令和5年は特定機能病院で34.1%、地域医療支援病院で58.5%となっています。これらのデータは、医療機関間の機能分化と連携が徐々に進展していることを示しています。
紹介割合・逆紹介割合による初診料・外来診療料の減算規定は、外来機能分化を推進する主要な仕組みです。対象となる医療機関は、特定機能病院、地域医療支援病院(一般病床200床以上)、紹介受診重点医療機関(一般病床200床以上)、許可病床400床以上の病院(一般病床200床以上)です。令和6年度の調査では、これらの
Duration: 00:08:15中医協が明らかにした外来診療の最新動向|診療報酬構成と医療費の変化を徹底解説
Nov 06, 2025令和7年7月16日に開催された中央社会保険医療協議会(中医協)総会第612回において、外来診療の診療内容と医療費に関する重要なデータが報告されました。この報告は、外来医療の実態を把握し、今後の診療報酬改定の基礎資料とする目的で作成されました。社会医療診療行為別統計と医療費の動向調査を基に、病院と診療所における外来診療の診療報酬構成の変化、診療科別の医療費動向、令和6年度診療報酬改定後の影響が明らかになりました。
報告の要点は3つあります。第一に、病院の外来診療では診療報酬点数が平成30年の1,516点から令和6年には1,891点へと大きく増加した一方、診療所では898点から932点へとわずかな増加にとどまり、ほぼ横ばいで推移しています。第二に、診療科別では整形外科の1施設あたり月額医療費が約1,000万円と最も高く、令和6年度改定後にさらに増加しました。第三に、診療報酬構成では病院で注射が約225点増加するなど大幅に増加し、診療所では検査と在宅医療が増加する一方で注射は大きく減少しています。
外来診療における診療報酬点数の推移と病院・診療所の違い
外来診療の診療報酬点数は、病院と診療所で異なる推移を示しています。病院の入院外1日あたりの診療報酬点数は、平成30年の1,516点から令和6年には1,891点へと約375点増加しました。この増加は、主に注射が291点から516点へと約225点増加、在宅医療が103点から141点へ約38点増加、検査が293点から349点へ約56点増加したことによります。
診療所の診療報酬点数は、平成30年の898点から令和6年には932点へと約34点増加し、ほぼ横ばいで推移しています。診療所では、検査が116点から142点へ約26点増加、在宅医療が46点から66点へ約20点増加、医学管理等が80点から98点へ約18点増加した一方で、投薬が210点から182点へ約28点減少、注射が72点から31点へ約41点減少しました。
この違いは、病院と診療所の機能分化を反映しています。病院では高度な医療技術を要する注射や在宅医療が大きく増加し、診療所では日常的な検査と在宅医療の提供が強化される一方、投薬や注射は減少しています。
診療科別にみる1施設あたり月額医療費の動向
診療科別の1施設あたり月額医療費では、整形外科が最も高い水準を示しました。令和6年6月から令和7年2月までのデータによると、整形外科は約1,000万円、内科は約500万円、眼科は約500万円でした。
令和6年度診療報酬改定後の変化では、診療科による違いが明確になりました。整形外科、皮膚科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科では医療費が増加し、内科、小児科、外科、その他では減少しました。
整形外科の医療費が高い理由は、1施設あたり月間受診延日数が約2,500日と最も多く、リハビリテーションや処置などの診療報酬点数が高いためです。内科は受診延日数が約1,000日と整形外科の半分以下ですが、投薬や検査が診療報酬の主要な構成要素となっています。
診療所における診療科別の診療報酬構成の特徴
診療所の診療科別診療報酬構成は、各診療科の特性を反映した特徴的なパターンを示しています。令和6年のデータでは、内科の1日あたり診療報酬は約730点で、投薬が約180点、検査が約140点、医学管理等が約100点を占めました。
精神科は約880点と診療所全体の平均より高く、精神科専門療法が約280点、投薬が約180点と特徴的な構成です。小児科は約610点で、医学管理等が約170点と他の診療科より高い割合を占め、小児かかりつけ診療料などが含まれています。
泌尿器科は約1,050点と高い水準で、処置が約420点と診療報酬の約4割を占めます。この処置には人工腎臓及び特定保険医療材料等が含まれており、透析医療を反映した特徴的な構成となっています。整形外科は約940点で、リハビリテーションが約270点、処置が約140点と、機能回復を重視した診療内容が示されています。
診療所の入院外受診延日数の診療科別分布
診療所の入院外受診延日数を診療科別に分析すると、外来医療需要の構造が明らかになります。令和5年度のデータでは、総受診延日数約12億日のうち、内科が38%、整形外科が17%、眼科が8%、皮膚科と耳鼻咽喉科がそれぞれ7%、小児科が6%でした。
内科の受診延日数が最も多い理由は、高血圧症や糖尿病などの慢性疾患患者が継続的に受診するためです。整形外科は腰部脊柱管狭窄症や変形性膝関節症などの患者が定期的なリハビリテーションや処置のために受診します。
令和6年度診療報酬改定後、小児科、産婦人科、耳鼻咽喉科では受診延日数が増加し、その他の診療科では横ばいから微減となりました。この変化は、改定による評価の見直しが診療行動に影響を与えたことを示唆しています。
まとめ
中医協第612回総会で報告された外来診療の診療内容と医療費のデータから、3つの重要な動向が明らかになりました。病院では診療報酬点数が平成30年の1,516点から令和6年には1,891点へと約375点増加し、特に注射が約225点増加するなど大幅な伸びを示しました。診療所では898点から932点へとわずか34点の増加にとどまり、ほぼ横ばいで推移しています。診療科別では整形外科の1施設あたり月額医療費が約1,000万円と最も高く、令和6年度改定後も増加を続けました。診療報酬構成では病院で注射と在宅医療が大きく増加し、診療所では検査と在宅医療が増加する一方で注射は大幅に減少しています。これらのデータは、外来医療における病院と診療所の機能分化の進展と、各診療科の特性に応じた診療内容の変化を示しており、今後の診療報酬改定における重要な基礎資料となります。
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2025年外来医療改革の全貌|かかりつけ医機能報告制度が変える地域医療
Nov 05, 2025令和7年7月16日に開催された中央社会保険医療協議会総会(第612回)で、外来医療をとりまく環境について議論されました。日本の外来医療は2025年をピークに患者数が減少局面に入り、既に224の医療圏では2020年までにピークを迎えています。この現状に対応するため、令和7年4月から「かかりつけ医機能報告制度」が施行されます。医療機関は都道府県知事にかかりつけ医機能を報告し、地域の協議の場で不足する機能を確保する方策を検討します。
本記事では、外来医療改革の3つの柱を説明します。第一は、かかりつけ医機能報告制度の創設です。第二は、医師偏在対策の強化です。第三は、医療資源の少ない地域への配慮です。各医療機関が自らの機能を報告し、地域で連携しながら必要な医療を提供する体制が構築されます。
かかりつけ医機能報告制度が構築する新たな外来医療体制
かかりつけ医機能報告制度は、令和7年4月から施行される外来医療改革の中核となる制度です。慢性疾患を有する高齢者等を地域で支えるために必要なかかりつけ医機能について、医療機関から都道府県知事に報告を求めます。報告を受けた都道府県知事は、医療機関がかかりつけ医機能の確保に係る体制を有することを確認し、外来医療に関する地域の関係者との協議の場に報告するとともに公表します。
報告を求めるかかりつけ医機能の内容は、大きく3つに分類されます。第一は「日常的な診療を総合的かつ継続的に行う機能」です。継続的な医療を要する者に対する発生頻度が高い疾患に係る診療を総合的に実施します。第二は「通常の診療時間外の診療、入退院時の支援、在宅医療の提供、介護等と連携した医療提供」です。時間外診療や入退院支援などの機能を担います。第三は「健診、予防接種、地域活動、教育活動、今後担う意向等」です。地域全体での医療提供体制の充実に貢献します。
都道府県知事による確認を受けた医療機関は、慢性疾患を有する高齢者に在宅医療を提供する場合など外来医療で説明が特に必要な場合であって、患者が希望する場合に、かかりつけ医機能として提供する医療の内容について電磁的方法又は書面交付により説明するよう努めます。説明内容は、疾患名や治療計画、当該医療機関の連絡先等に加えて、当該患者に対する機能の内容、連携医療機関等を含みます。患者は自らのニーズに応じてかかりつけ医機能を有する医療機関を適切に選択できるようになります。
医師偏在対策が推進する地域医療の最適化
医師偏在対策は、地域偏在と診療科偏在の両面から総合的に実施されます。令和6年12月25日に厚生労働省が公表した「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」では、医師養成過程を通じた取組、医師確保計画の実効性の確保、地域偏在対策における経済的インセンティブ等、診療科偏在の是正に向けた取組が示されています。
重点医師偏在対策支援区域の設定により、優先的・重点的に対策を進めます。今後も定住人口が見込まれるが人口減少より医療機関の減少スピードが速い地域等を「重点医師偏在対策支援区域」と設定します。重点区域は、厚生労働省の示す候補区域を参考としつつ、都道府県が可住地面積あたり医師数、アクセス、人口動態等を考慮し、地域医療対策協議会・保険者協議会で協議の上で選定します。医師確保計画の中で「医師偏在是正プラン」を策定し、重点区域、支援対象医療機関、必要な医師数、取組等を定めます。
経済的インセンティブの導入も検討されています。令和8年度予算編成過程で重点区域における支援について検討し、診療所の承継・開業・地域定着支援、派遣医師・従事医師への手当増額、医師の勤務・生活環境改善、派遣元医療機関へ支援などが含まれます。診療科偏在の是正に向けては、必要とされる分野が若手医師から選ばれるための環境づくり等、処遇改善に向けた必要な支援を実施します。外科医師が比較的長時間の労働に従事している等の業務負担への配慮・支援等の観点での手厚い評価について必要な議論を行います。
医療資源の少ない地域における診療報酬上の配慮
医療資源の少ない地域に配慮した診療報酬上の評価は、平成24年度改定から段階的に拡充されてきました。平成28年度改定では、対象地域に関する要件を見直し、患者の流出率についての要件を緩和するとともに、医療従事者が少ないこと自体を要件化しました。令和2年度改定では、医師に係る要件を緩和し、「人口当たり医師数が下位3分の1」から「人口当たり医師数が下位2分の1」に変更しました。
令和6年度改定では、回復期リハビリテーション病棟に相当する機能を有する病室について、届出を病室単位で可能な区分を新設しました。地域包括ケア病棟入院料2及び4の施設基準における、「自院の一般病棟からの転棟患者の割合」に関する要件を緩和しました。在宅療養支援病院・診療所に係る24時間の往診体制の要件について、D to P with N(医師と看護師が連携して患者に対応する体制)の実施体制を整備することで要件を満たすこととする緩和を実施しました。
二次医療圏の人口規模は多様であり、中央値は約22万人です。人口規模が20万人未満の二次医療圏は157、100万人以上の二次医療圏は25あります。2040年には、人口規模が20万人未満の二次医療圏は182、10万人未満の二次医療圏は109となると推計されます。人口の少ない二次医療圏では、総合入院体制加算や急性期充実体制加算の件数要件の達成が困難な場合があるため、地域の実情を踏まえた基準緩和や代替的な評価の検討が必要です。
まとめ
令和7年4月施行のかかりつけ医機能報告制度は、外来医療改革の中核となる制度です。医師偏在対策の強化により、重点医師偏在対策支援区域への優先的な支援が実施されます。医療資源の少ない地域への診療報酬上の配慮は、段階的に拡充されてきました。各医療機関が自らの機能を報告し、地域で連携しながら必要な医療を提供する体制が構築され、複数の慢性疾患や医療・介護の複合ニーズを有する高齢者が増加する中で、地域の医療機関等や多職種が機能や専門性に応じて連携して、効率的に質の高い医療を提供する体制が確保されます。
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令和8年度診療報酬改定の基本方針を解説│医療機関の賃上げと持続可能性を両立する4つの視点
Nov 04, 2025令和7年10月27日に開催された第120回社会保障審議会医療部会で、令和8年度診療報酬改定の基本方針に関する議論が行われました。この基本方針は、医療機関等が直面する厳しい経営環境に対応しながら、2040年頃を見据えた持続可能な医療提供体制を構築するための方向性を示すものです。本稿では、基本認識、基本的視点、具体的方向性について解説します。
基本方針は4つの基本認識と4つの基本的視点で構成され、特に物価高騰・賃金上昇への対応を重点課題としています。基本認識では、日本経済がコストカット型から脱却し新たなステージに移行する中で、医療機関の経営安定と医療従事者の賃上げが急務であることを明確にしました。基本的視点では、視点1として「物価や賃金、人手不足などの医療機関等を取りまく環境の変化への対応」を重点課題に位置づけ、医療従事者の処遇改善と人材確保を最優先としています。視点2では2040年頃を見据えた医療機関の機能分化と地域包括ケアシステムの推進、視点3では医療DXやイノベーションによる質の高い医療の実現、視点4では後発医薬品の使用促進など効率化・適正化による制度の持続可能性向上を掲げています。
基本認識:医療を取り巻く4つの環境変化
基本認識は、令和8年度診療報酬改定を検討する上で前提となる医療を取り巻く環境変化を整理したものです。この基本認識に基づいて、基本的視点と具体的方向性が展開されます。
第一の基本認識は、日本経済が新たなステージに移行する中での物価・賃金の上昇と人材確保の課題です。現下の日本経済は持続的な物価高騰・賃金上昇の中にあり、30年続いたコストカット型経済から脱却しつつあります。医療分野は公定価格であるために経済社会情勢の変化に機動的な対応が難しく、サービス提供や人材確保に大きな影響を受けています。経済財政運営と改革の基本方針2025では、高齢化による増加分に経済・物価動向等を踏まえた対応に相当する増加分を加算することが示されており、医療機関等の経営安定と現場で働く幅広い職種の賃上げに確実につながる対応が必要です。
第二の基本認識は、2040年頃を見据えた医療提供体制の構築です。2040年頃に向けては、全国的に生産年齢人口は減少する一方で、医療・介護の複合ニーズを有する85歳以上人口が増加します。65歳以上の高齢者人口については、増加する地域と減少する地域で地域差が生じることが見込まれます。こうした人口構造や地域ごとの状況変化に対応するため、限りある医療資源を最適化・効率化しながら、「治す医療」と「治し、支える医療」を担う医療機関の役割分担を明確化し、地域完結型の医療提供体制を構築する必要があります。
第三の基本認識は、医療の高度化や医療DX、イノベーションの推進です。安心・安全で質の高い医療を実現するため、医療技術の進歩や高度化を国民に還元するとともに、ドラッグ/デバイス・ラグ/ロスへの対応が求められています。デジタル化された医療情報の積極的な利活用を促進し、医療現場においてAI・ICT等を活用して医療DXを進めることが、個人の健康増進に寄与するとともに、より効果的・効率的かつ安心・安全で質の高い医療を実現するために重要です。
第四の基本認識は、社会保障制度の安定性・持続可能性の確保です。制度の安定性・持続可能性を確保しつつ国民皆保険を堅持し次世代に継承するためには、経済・財政との調和を図りつつ、限られた人材の中でより効率的・効果的な医療政策を実現するとともに、国民の制度に対する納得感を高めることが不可欠です。経済財政運営と改革の基本方針2025や新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版等を踏まえ、適正化、医療資源の効率的・重点的な配分、医療分野におけるイノベーションの評価等を通じた経済成長への貢献を図る必要があります。
基本的視点:改定を方向づける4つの柱
基本的視点は、基本認識を踏まえて令和8年度診療報酬改定の方向性を示す4つの柱です。この4つの視点に基づいて、具体的方向性が検討されます。
視点1は「物価や賃金、人手不足などの医療機関等を取りまく環境の変化への対応」で、今回の改定の重点課題です。医療機関等は現下の持続的な物価高騰により、事業収益の増加以上に人件費、委託費や医療材料費等の物件費が増加し、事業利益が悪化しています。2年連続5%を上回る賃上げ率であった春闘などにより全産業において賃上げ率が高水準となる中、医療分野はこれに届いておらず人材確保も難しい状況です。医療機関等が資金繰り悪化等により必要な医療サービスが継続できない事態は避けなければならないことから、物価高騰による諸経費の増加を踏まえた対応や、必要な処遇改善等を通じた医療従事者の賃上げ・人材確保のための取組を進めることが急務です。
視点2は「2040年頃を見据えた医療機関の機能の分化・連携と地域における医療の確保、地域包括ケアシステムの推進」です。中長期的な人口構造や地域の医療ニーズの質・量の変化を見据えた上で医療提供体制を構築していく必要があります。医療機関の機能に着目した分化・連携、病床の機能分化・連携等の入院医療を始めとして、外来医療・在宅医療、介護との連携を図ることが重要です。更なる生産年齢人口の減少に伴って医療従事者確保の制約が増す中で、ICT・AI・IoT等の利活用の推進等により業務効率化・負担軽減を行うこと、タスク・シェアリング/タスク・シフティング、チーム医療の推進等により多職種が連携して医療現場を支えることが必要です。
視点3は「安心・安全で質の高い医療の推進」です。患者の安心・安全を確保しつつ、医療技術の進展や疾病構造の変化等を踏まえ、第三者による評価やアウトカム評価など客観的な評価を進めながら、イノベーションを推進し、新たなニーズにも対応できる医療の実現に資する取組の評価を進めます。患者にとって安心・安全に医療を受けられるための体制評価、医療DXやICT連携を活用する医療機関・薬局の体制評価、救急医療・小児・周産期医療・がん医療・精神医療の充実など、重点的な対応が求められる分野への適切な評価が必要です。
視点4は「効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上」です。高齢化や技術進歩、高額な医薬品の開発等により医療費が増大していくことが見込まれる中、国民皆保険を維持するため、医療資源を効率的・重点的に配分するという観点も含め、制度の安定性・持続可能性を高める不断の取組が必要です。医療関係者が協働して医療サービスの維持・向上を図るとともに、効率化・適正化を図ることが求められます。
具体的方向性:視点を実現する取組の例示
具体的方向性は、4つの基本的視点をそれぞれ実現するための取組を例示したものです。この具体的方向性に基づい
Duration: 00:07:33医療法人の経営状況が深刻化:令和6年度は病院の6割が医業赤字に
Nov 03, 2025令和7年10月27日に開催された第120回社会保障審議会医療部会で、医療法人経営情報データベースシステム(MCDB)に基づく最新の経営状況が報告されました(資料2-1:令和7年7月末時点、資料2-2:令和7年8月末時点速報版)。医療法人の経営悪化は医療提供体制の持続可能性に直結する重要課題です。本報告では、最新データから明らかになった医療法人の深刻な経営実態を分析します。
令和6年度決算では、医療法人の経営状況が全施設種別で悪化しました。病院の医業赤字割合は59.7%に達し、約6割の病院が本業で赤字を計上しています。無床診療所の医業赤字割合は40.8%に上昇し、令和5年度の32.1%から8.7ポイント悪化しました。有床診療所も医業赤字割合が50.6%となり、半数以上が赤字です。経常収支でも病院の赤字割合が49.4%に達し、経常利益率は病院の中央値が0.0%まで低下しました。病院類型別では精神科病院の医業赤字割合が65.9%と最も深刻です。
医業収支の悪化が顕著:病院・診療所の赤字割合が軒並み上昇
令和6年度決算における医業収支は、全施設種別で赤字割合が上昇しました。医業収支は医療機関の本業である診療活動から得られる収益と費用の差を示す指標です。
病院の医業赤字割合は令和5年度の55.4%から令和6年度には59.7%へと4.3ポイント悪化しました。この数値は、医療法人立病院の約6割が診療活動だけでは収支を維持できない状況を示しています。病院の医業利益額は中央値で▲13,724千円となり、赤字幅が拡大しました。
無床診療所の経営悪化はさらに深刻です。無床診療所の医業赤字割合は令和5年度の32.1%から令和6年度には40.8%へと8.7ポイント上昇しました。令和5年度時点では約3分の2の無床診療所が医業黒字を維持していましたが、令和6年度には黒字施設が6割を下回る事態となりました。無床診療所の医業利益額は中央値で2,713千円に減少し、令和5年度の5,249千円から半減しています。
有床診療所も経営環境が厳しくなっています。有床診療所の医業赤字割合は令和5年度の49.9%から令和6年度には50.6%へと0.7ポイント上昇し、半数を超えました。有床診療所は入院機能と外来機能を併せ持つため、両方の収支悪化の影響を受けやすい構造にあります。
病院類型別分析:精神科病院の経営が最も厳しい状況に
病院を一般病院、療養型病院、精神科病院の3類型に分けて分析すると、経営状況に差異が見られます。病院類型の定義は、療養病床比率60%未満を一般病院、60%以上を療養型病院、精神病床比率100%を精神科病院としています。
精神科病院の経営悪化が最も顕著です。精神科病院の医業赤字割合は令和5年度の55.8%から令和6年度には65.9%へと10.1ポイント悪化しました。精神科病院の約3分の2が医業赤字を計上している計算になります。精神科病院の医業利益額は中央値で▲28,375千円となり、3類型の中で最も大きな赤字幅です。
一般病院も経営環境が厳しくなっています。一般病院の医業赤字割合は令和5年度の58.2%から令和6年度には60.6%へと2.4ポイント悪化しました。一般病院は急性期医療を中心に担っており、診療報酬の影響を受けやすい特性があります。一般病院の医業赤字割合は3類型の中で2番目に高い水準です。
療養型病院の医業赤字割合は令和5年度の49.6%から令和6年度には53.7%へと4.1ポイント上昇しました。療養型病院は3類型の中では相対的に赤字割合が低いものの、それでも半数以上が医業赤字を計上しています。療養型病院は長期入院患者を中心に診療しており、診療報酬の安定性が比較的高い特性がありますが、人件費や物価上昇の影響は避けられません。
経常収支も全面的に悪化:経常利益率の大幅低下が示す経営圧迫
経常収支は医業収支に医業外収益と医業外費用を加えた総合的な経営指標です。経常収支の悪化は、医療機関が補助金などの医業外収益でも赤字をカバーできない状況を示します。
病院の経常赤字割合は令和5年度の41.5%から令和6年度には49.4%へと7.9ポイント悪化しました。病院の約半数が経常ベースでも赤字を計上しています。病院の経常赤字割合が5割に迫る水準は、医療提供体制の持続可能性への警鐘です。
無床診療所の経常赤字割合は令和5年度の25.4%から令和6年度には34.4%へと9.0ポイント上昇しました。無床診療所は医業外収益が相対的に少ないため、医業収支の悪化が経常収支に直結しやすい構造です。無床診療所の約3分の1が経常赤字を計上する事態は、地域医療の最前線を担う診療所の経営基盤の脆弱化を示しています。
有床診療所の経常赤字割合は令和5年度の38.9%から令和6年度には40.8%へと1.9ポイント上昇しました。有床診療所は無床診療所より経常赤字割合が高く、入院機能を維持するコストの重さが経営を圧迫しています。
経常利益率の推移は経営悪化の深刻さを端的に示します。令和5年度から令和6年度にかけて二期連続で決算を提出した医療法人のデータ(資料2-1、令和7年7月末時点)によると、病院の経常利益率は平均値が2.0%から0.3%へ、中央値が1.7%から0.0%へと大幅に低下しました。病院の経常利益率の中央値が0.0%という数値は、半数の病院が経常収支でも利益を出せていないことを意味します。無床診療所の経常利益率も平均値が9.6%から5.7%へ、中央値が6.8%から2.9%へと大幅に低下しました。有床診療所の経常利益率は平均値が5.6%から4.2%へ、中央値が2.8%から1.3%へと低下しました。
医療法人経営悪化の要因と今後の課題
医療法人の経営悪化には複合的な要因が作用しています。人件費の上昇、物価高騰、光熱費の増加などのコスト増が医療機関を直撃しています。
人件費の上昇圧力が継続しています。医療・介護分野では人材確保が喫緊の課題となっており、賃上げは避けられない状況です。令和7年6月に閣議決定された経済財政運営と改革の基本方針2025では、医療・介護等の現場で働く幅広い職種の賃上げに確実につながる対応が明記されました。人件費は医業費用の大部分を占めるため、賃上げは医療機関の経営に直接影響します。
物価上昇の影響も深刻です。医療材料費、医薬品費、光熱費などが上昇しており、医療機関の費用構造を圧迫しています。診療報酬は公定価格であるため、市場価格の上昇を即座に転嫁できない構造的な問題があります。控除対象外消費税等負担額比率のデータからも、税負担が医療機関の経営を圧迫していることが読み取れます。
診療報酬改定の影響を検証する必
Duration: 00:07:33医療機関の業務効率化・職場環境改善の推進策と具体的論点【2025年最新】
Nov 02, 2025令和7年10月27日に開催された第120回社会保障審議会医療部会では、医療機関の業務効率化・職場環境改善の推進に関する重要な論点が示されました。2040年に向けて医療従事者不足が深刻化する中、医療機関が持続可能な体制を構築するための具体的な方策が議論されています。本稿では、社会保障審議会が提示した現状認識と課題、業務DX化の推進策、タスク・シフト/シェアの促進策について、医療機関の経営者や医療政策に関心をお持ちの方に向けて詳しく解説します。
社会保障審議会医療部会は、医療機関における2つの重要な論点を提示しました。第1の論点は、業務のDX化推進に関するもので、先進的医療機関の成功事例を医療界全体に広げるための支援策や制度的枠組みの必要性が指摘されています。第2の論点は、タスク・シフト/シェアの推進等に関するもので、看護師の特定行為研修制度の見直しやオンライン診療の適切な普及が検討されています。これらの施策により、超過勤務時間の減少や職場満足度の向上といった効果が期待されており、医療機関勤務環境改善支援センターなどの支援体制も活用可能です。
2040年問題と医療従事者不足の深刻化
2040年に向けて高齢者人口がピークを迎える一方、15歳から64歳の生産年齢人口は減少していきます。この人口構造の変化により、医療従事者の確保は現在よりもさらに困難となることが見込まれています。特に、人口減少のスピードは地域によって大きく異なるため、早晩、これまでと同じ医療提供が難しくなる地域も出てきます。
この人口減少の影響は地域差が顕著です。現在の人口規模が15万から20万人の二次医療圏であっても、2040年に向けた人口減少率は地域によって大きく異なります。約30%減少する地域から、数%の減少にとどまる地域まで様々であり、地域の実情に応じた対応が必要です。
我が国では、十分な省力化投資やデジタル化が進んでおらず、他の先進国と比べて医療福祉業の実質労働生産性の上昇率が低水準であるとの分析があります。現在の医療機関には、物価や建築単価の上昇等により、医療従事者の賃上げや省力化投資を行うだけの余力がないとの指摘も多くあります。
ただし、先行投資を行い業務のDX化やタスク・シフト/シェア等を積極的に実施している医療機関では、超過勤務時間の減少や職場満足度の向上といった結果につながっている事例があります。厚生労働省では、2040年時点で単位時間当たりのサービス提供を5%以上改善することを目標としており、医師については7%以上の改善を目指しています。
業務のDX化推進に関する具体的論点と支援策
業務のDX化については、物価や賃金の上昇等の影響でDX化投資を行う余力がない医療機関もあると考えられ、医療界全体での取組とはなっていません。一方で、積極的な投資を行い、ICT機器の導入や生成AIサービスの活用等によって、文書や記録作成等の業務のDX化を進めている医療機関が出てきています。
これらの先進的な医療機関では、超過勤務時間の減少や経費の節減等につなげている実績があります。業務効率化を実現した場合の人員配置基準の緩和の検討が必要ではないかとの指摘や、医療機関が適正な価格でICT機器等を導入できるような環境整備が必要との指摘もあります。
既に業務効率化を実施してきた医療機関がその取組をさらに加速化させるとともに、業務効率化に取り組む医療機関の裾野を広げ、医療界全体での実効ある取組とするためには、どのような支援や制度的枠組みが必要かが論点となっています。国や自治体による更なる支援体制の構築も必要との指摘があります。
医療DXの推進は医療の質の向上や効率化、働き方改革に大いに貢献するものと考えられます。医療部会では、ICTやAIを活用した医療DXの推進が重要であるとの意見が多く出されました。ただし、これらを導入するには多大なコストがかかり、現状の病院の経営状況では多くの病院が導入できないという課題があります。十分な財政支援、あるいは診療報酬での評価が必須との指摘がありました。
タスク・シフト/シェア推進と特定行為研修制度の見直し
看護師の特定行為研修制度については、令和7年9月に「看護師の特定行為研修制度見直しに係るワーキンググループ」が設置され、見直しに向けた議論が開始されました。特定行為研修を修了した看護師の活躍促進に向けて、どのような取組が必要かが検討されています。
医師の働き方改革の推進に伴い、タスク・シフト/シェアの取組を進めてきています。これまでの取組の定着化が必要ではないかとの指摘があります。医療部会では、業務負担の軽減に向けて、医療職一人一人が専門性を十分に発揮できるよう、タスク・シフト/シェアや、チーム医療に加えて、多職種連携も促進することが必要との意見が出されました。
医療の質や安全の確保を前提に、医療従事者の業務効率化という観点から、いわゆる「D to P with N」等によるオンライン診療などを適切に普及・推進するためにどのような対応が考えられるかも論点となっています。限られた人材で安全かつ効率的な医療を提供するにあたっては、タスク・シフト/シェア、ICTの活用、多職種連携等が必要です。
医療機関における配置基準について、引き続き合理的に見直しを図っていくことも検討されています。人員配置基準が足かせになっているならば、人員配置基準の見直し、緩和ということを検討すべきとの意見もありました。省力化・DXへの投資は、持続性を高める上では必要であり、エビデンスを重ねて、さらにルールの見直しなども今後視野に入れていくべきではないかとの指摘があります。
医療勤務環境改善支援センターの活用と省力化投資促進プラン
医療勤務環境改善支援センターは、医療従事者の勤務環境改善を促進するための拠点として、各都道府県が設置しています。平成29年3月までに全都道府県に設置され、都道府県の直接運営や県医師会、病院協会等の団体への委託により運営されています。
同センターには、医療労務管理アドバイザーや医業経営アドバイザーが配置され、医療機関からの相談に応じて、医療機関の勤務環境改善や医師の働き方改革の取組を支援しています。相談に基づく助言や支援に加えて、医療機関の状況に応じたプッシュ型の助言や支援も実施しています。
省力化投資促進プラン(医療分野)では、多面的な促進策が示されています。看護業務の効率化の推進に資する機器等の導入支援、医師の労働時間
Duration: 00:06:58令和8年度診療報酬改定に向けた中長期的検討課題3選:持参薬・重症度評価・包括医療の見直しポイント
Nov 01, 2025令和7年度第13回入院・外来医療等の調査・評価分科会では、次期診療報酬改定に向けた評価・分析を進める中で、データ解析の技術的限界や委員間の見解相違により即座に結論を出せない課題が明らかになりました。中央社会保険医療協議会の診療報酬調査専門組織である同分科会は、これらの課題について中長期的な検討が必要と判断しました。本稿では、来年度以降に実施される実態調査や厚生労働科学研究等での検討が求められる3つの重要課題の内容を説明します。
中長期的検討が必要な課題は、持参薬ルールの明確化、重症度・医療・看護必要度の在り方の整理、包括期入院医療における患者別評価の実現の3つです。持参薬ルールについては、DPC/PDPSでの公平な支払いを実現するため、医療機関間で大きなばらつきがある持参薬使用割合の統一的運用に向けた検討が必要です。重症度・医療・看護必要度については、平成20年度の導入から約20年が経過し、入院患者の高齢化や医療環境の変化に伴う指標の妥当性検証が求められています。包括期入院医療における患者別評価については、地域包括医療病棟や地域包括ケア病棟において、疾患・ADL・診療行為等に応じた適切な評価の実現が課題となっています。
持参薬ルールの明確化が求められる背景
持参薬ルールの明確化が必要となった背景には、DPC/PDPSにおける公平な支払いの実現という課題があります。DPCデータによると、入院中の持参薬使用割合は医療機関間で大きなばらつきが認められており、統一的な運用が行われていない実態が明らかになりました。
統一的な運用を推進するための持参薬ルールの明確化には、医療安全を確保する観点、病棟における持参薬の確認業務の負担の観点、患者が薬剤を持参する負担の観点など、多角的な検討が必要です。具体的には、当該持参薬の処方元が自院であるか他院であるかの別、予定入院と緊急入院の別、入院中の診療内容と当該持参薬の関係性の別、薬剤の特性別など、具体的な場面を想定した妥当性の検討が求められます。併せて、DPC/PDPS以外で薬剤費が包括される入院料を算定する病棟における持参薬の取扱いについても、検討を進めることが望ましいとされています。
重症度・医療・看護必要度の在り方の整理
重症度・医療・看護必要度の在り方の整理が必要となった理由は、指標導入から約20年の経過における医療環境の変化です。重症度・看護必要度は平成20年度改定で、病棟のタイムスタディ調査等の研究成果をもとに「入院患者へ提供されるべき看護の必要量」を予測する指標として導入されました。平成26年度改定では「重症度・医療・看護必要度」に名称変更され、急性期患者の医学的特性を測る目的が重視されました。平成28年度改定では医学的状況を測るC項目が加わり、平成30年度改定では病棟の看護職員の測定負担を軽減する観点から、A項目及びC項目をレセプト電算コードにより評価する「重症度・医療・看護必要度Ⅱ」が選択可能とされました。
このような経緯を踏まえると、よりよい入院医療の診療報酬評価を実現するための重症度・医療・看護必要度の在り方を検討する前提として、2つの考え方の整理が必要です。「入院患者へ提供されるべき看護の必要量を予測すること」と「急性期患者の医学的な特性を測ること」という2つの考え方をどのように勘案すべきかについて、整理する必要があります。入院患者の高齢化や、電子カルテ等のICT技術の進展、インフォームド・コンセント等患者本位の医療の普及等による病棟看護業務の変化に伴って、現在の指標が実際の病棟の看護の必要量を適切に推測できているのか、検証する必要があります。
最新の病棟のタイムスタディ調査によると、病棟看護業務の約25%を「診療・治療」が占め、約25%を「患者のケア」が占めている実態が明らかとなりました。このうち「診療・治療」の定量的評価は、診療行為のレセプト電算コードを用いて表現可能であり、A項目・C項目、医療資源投入量はレセプト電算コードを活用した評価方法となっています。「患者のケア」については、要介護度、ADL、B項目などで測定されうるが、これらの評価項目は重複があり、一定の類似性があるという分析結果となっています。特にB項目については、患者の高齢化に伴う近年の看護業務の増加を証明することに有用ではないかという意見がありますが、B項目のこうした観点での有用性の検証は、レセプトデータや診療行為情報が主体のDPCデータでは限界があることに留意する必要があります。
重症度・医療・看護必要度に関するこうした検討は、あくまで適切な診療報酬の支払いを実現する観点で行われるべきものです。しかし、測定した結果を、医療現場において入退院時の医療・介護連携の推進、病棟内の多職種連携の推進、病棟の人員マネジメントの向上等に用いることが有用である可能性もあることから、こうした観点も含め検討することが考えられます。
包括期入院医療における患者別評価の実現
包括期入院医療における患者別評価の実現が求められる理由は、患者選別による病棟機能低下の懸念です。患者ごとに医療・看護ケアの必要量に応じた適切な費用が償還されない仕組みの場合、入棟させる患者の選別を引き起こし、結果として病棟の機能の低下につながる懸念があります。
現在、地域包括医療病棟や地域包括ケア病棟などの主として高齢者を受け入れる機能を担う病棟には、急性期病棟のDPC/PDPSのような仕組みはありません。DPC/PDPSでは、疾患・ADL・診療行為等に応じて患者別に包括評価の支払額及び標準的な在院日数を変化させる仕組みですが、地域包括医療病棟等では基本的にすべての患者が一律の支払額及び標準的な在院日数により算定する仕組みとなっています。
こうした機能を担う病棟の、より適切な患者別の評価の実現に向けて検討を行った結果、特に地域包括医療病棟においては、緊急入院や手術の有無等による「医療資源投入量(包括範囲出来高実績点数)」に一定の違いがあることが明らかとなりました。一方で、「医療資源投入量(包括範囲出来高実績点数)」が同程度でも、高齢者のADLや要介護度は様々であり、これらに要する看護ケアの必要度は「医療資源投入量」という考え方のみでは推し量れない部分がある、という意見があることに留意する必要があります。
高齢者は、複数疾患を併存している場合が多いこと、症状が非典型的に表れやすいことから、DPC/PDPSのように「医療資源を最も投入した傷病名」を一意に定めて区分を決める支払い方式はなじみにくく、予定入院と緊急入院の別や手術実施等の客観的事実に着目した評価がよいのではないか、という意見がありました。地域包括医療病棟と地域包括ケア病棟に期待される機能が連続的であることを踏まえた評価
Duration: 00:08:07診療報酬における業務簡素化の最新動向【2026年度改定に向けた検討内容】
Oct 31, 2025医療現場では、計画書作成や署名・押印といった診療報酬上の書類業務が大きな負担となっています。入院・外来医療等の調査・評価分科会の実態調査では、施設の44.2%が計画書作成の簡素化を求めており、病棟では61.8%がこの業務負担を感じています。規制改革推進に関する答申でも、医療機関の負担軽減の観点から署名・押印の不要化検討が求められる状況です。こうした現状を踏まえ、診療報酬上の書類や手続きを見直し、医療現場の業務効率化を図ることが急務となっています。
業務簡素化に向けた具体的な対策が、令和7年度の検討で明らかになりました。計画書作成と署名・押印の簡素化が最優先課題として位置づけられています。リハビリテーション計画書の様式統合やDPCデータ入力の見直しも検討されています。電子署名やIT機器を活用した効率化の推進も、導入費用への配慮とともに議論されています。
医療現場が求める簡素化の実態
実態調査が示す簡素化ニーズは、施設全体と病棟で異なる特徴を持ちます。
施設全体の調査では、「計画書作成」を簡素化すべきとする回答が44.2%で最多でした。入院診療計画書、退院支援計画書、リハビリテーション総合実施計画書などの作成業務が、医療機関全体の負担となっています。次いで「DPCデータ(様式1)の作成」が38.2%を占めており、データ入力の負荷が課題です。
病棟における簡素化ニーズは、より明確な傾向を示しています。「計画書作成」の簡素化を求める声が61.8%に達しました。病棟は患者と直接向き合う現場であり、計画書作成の実務負担が特に大きいことがわかります。「患者や家族等による署名・記名押印」の簡素化を求める回答も45.1%に上りました。入院時には患者が何度も署名を求められる実態があり、形式的な署名手続きが患者・医療者双方の負担となっています。
署名・押印見直しの背景と方向性
署名・押印の見直しは、規制改革の文脈で推進されています。
規制改革推進に関する答申では、医療機関等又は医師等の負担軽減の観点から具体的な要請がありました。診療報酬上の書面について、署名又は記名・押印を不要とすることの可否を検討すべきとされています。この答申を受けて、中央社会保険医療協議会の入院・外来医療等の調査・評価分科会で議論が進められました。
現在の様式では、医師・患者双方の署名が必要なものが多数存在します。入院診療計画書、リハビリテーション実施計画書、目標設定等支援・管理シート、職場復帰の可否等についての主治医意見書、短期滞在手術等同意書では、医師と患者・家族の双方の署名が求められています。医師のみの署名が必要なものとして、診療情報提供書、訪問看護指示書、介護職員等喀痰吸引等指示書があります。患者・家族のみの署名が必要なものには、緩和ケア実施計画書、生活習慣病療養計画書、認知症療養計画書、地域包括診療加算に関する同意書などがあります。
分科会での議論では、署名の必要性を慎重に検討する姿勢が示されました。入院すると患者は何度も署名を求められますが、形式的なものも多いため、患者負担軽減の観点から検討すべきとの意見がありました。ただし、訪問看護指示書のような医師の署名は入院診療計画書等とは性質が異なるため、各様式の趣旨を考慮しながら簡素化を検討する必要があるとの指摘もありました。
具体的な簡素化の対象と課題
簡素化の対象として、3つの重点項目が浮かび上がっています。
入院診療計画書は、入院後7日以内に患者に説明を行う文書です。病名、症状、治療計画、検査内容及び日程、手術内容及び日程、推定される入院期間等を記載する必要があります。入院診療計画書等の様式には署名欄が設けられており、主治医や患者又はその家族等の署名が必要です。また、入院支援計画書は全ての入院患者に作成し、説明に用いた文書は患者に交付するとともに、その写しを診療録に添付する必要があります。
リハビリテーション計画書は、様式の複雑さが課題となっています。リハビリテーションに関する計画書の様式は複数存在し、重複する項目が多いのが実態です。いずれの様式においても署名欄が設けられており、説明者や患者又はその家族等の署名が必要となっています。分科会では、リハ計画書の説明は重要であるものの、適時に医師が患者や家族に説明するのは難しい場合も多いとの意見がありました。医師の指示を受けた療法士等が説明して同意を得る仕組みも必要ではないかとの提案もなされています。
DPCデータの様式1は、入力負荷が特に大きい項目が存在します。DPCデータ等の様式1において入力を求めているデータのうち、主として診療報酬改定のために必要な情報には課題があります。入院全期間の評価が必要な項目や検査値等、入力の負荷が特に大きいと考えられるものが一定数存在しています。
今後の改善に向けた論点
業務簡素化の推進には、複数の視点からの検討が必要です。
分科会では、業務の簡素化を積極的に進めるべきとの基本方針が示されました。患者負担軽減の観点からも、形式的な署名の必要性は見直すべきとの認識が共有されています。
電子化・IT活用の推進は、効率化の重要な手段として位置づけられています。電子署名やIT機器を活用した業務の簡素化は重要ですが、導入費用がかかることも認識して検討する必要があるとの意見がありました。医療機関の規模や経営状況に応じた、実現可能な方策を検討することが求められます。
各様式の趣旨を考慮した段階的な見直しが、現実的なアプローチとなります。訪問看護指示書の医師の署名は入院診療計画書等とは性質が異なるため、各様式の趣旨を考慮しながら簡素化を検討する必要があるとの指摘は重要です。医療安全や患者の権利保護といった本来の目的を損なわない範囲で、実務負担を軽減する方策を探ることが求められています。
まとめ
診療報酬における業務簡素化は、医療現場の切実な要望を受けて具体的な検討段階に入りました。計画書作成と署名・押印の簡素化を最優先に、リハ計画書の様式統合やDPCデータ入力の見直しが進められています。電子署名やIT活用による効率化も、導入費用への配慮とともに推進されます。各様式の趣旨を踏まえた段階的な改善により、医療従事者と患者双方の負担軽減が期待されます。
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小児・周産期医療の転換点:MFICU届出減少と移行期医療の課題を分析【令和7年度分科会報告】
Oct 30, 2025令和7年度第13回入院・外来医療等の調査・評価分科会は、小児・周産期医療における重要な課題を明らかにしました。分科会は、出生数の減少が続く中で小児の受療率が増加している現状を報告しました。同時に、周産期医療体制では母体・胎児集中治療室管理料の届出施設数が令和6年に減少に転じたことを指摘しました。さらに、医療の進歩により長期経過をたどる小児患者が増加し、成人医療への移行を支える体制整備の必要性を強調しました。
分科会の分析により、小児・周産期医療では3つの重要課題が浮かび上がりました。第1に、周産期医療体制では母体・胎児集中治療室管理料の届出施設が減少しており、医師の配置要件を満たせないことが主な要因となっています。第2に、母体搬送受入件数や多胎妊娠分娩件数には地域差があり、一部の地域では実績が少ない施設が存在します。第3に、小児慢性特定疾病に該当するが指定難病に含まれない疾患では、成人医療への移行時に診療報酬上の評価がなく、適切な紹介先が見つからないケースがあります。
小児受療の増加と周産期医療を取り巻く環境変化
小児の受療動向は、成人と対照的な様相を示しています。15歳以上の受療率が横ばいから減少傾向である一方、0-14歳の受療率はやや増加傾向にあります。分科会は、医療の進歩により長期経過をたどる小児患者が増加していることを指摘しています。
周産期医療を取り巻く環境は、大きく変化しています。出生数は減少しており、分娩を取り扱う医療機関も減少しています。この減少傾向により、周産期医療体制の維持が課題となっています。さらに、妊婦の高齢化に伴い、合併症の頻度が増加しています。
母体・胎児集中治療室管理料の届出減少と医師配置要件の課題
母体・胎児集中治療室管理料の届出状況は、近年横ばいから減少に転じました。届出治療室数・病床数は近年横ばいで推移していましたが、令和6年に減少しました。この減少は、周産期医療体制の維持における課題を示す重要な変化です。
届出変更の背景には、医師の配置要件の課題があります。全国周産期医療(MFICU)連絡協議会のアンケート調査によると、令和6年度改定以降に届出変更を行った医療機関では、「医師の配置要件を満たせない」ことが主な理由となっています。この要件により、周産期医療を提供する意欲がある医療機関でも、人員体制の維持が困難になっています。
母体・胎児集中治療室管理料の届出施設における実績には、地域差が見られます。母体搬送受入件数が0件の施設は関東信越に所在しており、1-9件の施設はそれぞれ関東信越、東海北陸、近畿に1施設ずつ所在していました。多胎妊娠分娩件数が0件の施設は関東信越に所在しており、1-9件の施設はそれぞれ北海道、東北、九州に1施設ずつ所在していました。帝王切開実施件数が49件以下である施設はなく、50-99件である施設は北海道、東海北陸、近畿に1施設ずつ所在していました。分娩時週数33週以下の分娩件数が0件である施設はなく、1-9件である施設は北海道、東海北陸に1施設ずつ、近畿に2施設所在していました。これらの地域差は、周産期医療体制における地域の実情を反映しています。
移行期医療における診療報酬評価のギャップと受入体制の課題
成人医療への移行時における診療報酬評価には、重要なギャップが存在します。小児科を標榜する医療機関において、小児慢性特定疾病等の患者に対して必要な生活指導を継続して行った場合には小児科療養指導料を算定します。一方、指定難病等の患者に対して計画的な医学管理等を実施した場合は難病外来指導管理料を算定します。小児慢性特定疾病の指定疾病数と比較して、指定難病の指定疾病数は少ないため、小児科療養指導料の算定対象となる患者と比較して、難病外来指導管理料の算定対象となる患者は少なくなっています。
移行期医療における診療報酬上の課題は、具体的な形で現れています。小児科医療機関において小児科療養指導料を算定していた患者が、成人移行期となり小児科以外の医療機関に紹介された場合、その患者が難病外来指導管理料の算定対象でない限り、紹介先医療機関においては同様の管理料を算定することができません。この評価のギャップにより、受入医療機関における診療報酬上の評価がない状態が生じています。
小児科以外の医療機関における受入状況は、課題の深刻さを示しています。小児科以外の医療機関における、定期的に小児科に受診していた患者を紹介により受け入れた人数及び小児慢性特定疾病に罹患している患者数は、いずれの区分においても、その人数は少数でした。この少なさは、分科会が指摘する移行が困難となるケースの存在を裏付けています。
分科会では、移行期医療の体制整備の必要性が強調されました。医療の進歩により長期経過をたどる小児患者が増加しており、成人医療への円滑な移行を支える移行期医療の体制整備が求められています。特に、小児慢性特定疾病に該当するが指定難病に含まれない疾患については、適切な紹介先が見つからず、移行が困難となるケースがあるとの意見が出されました。成人移行期に相当する小児について、小児慢性特定疾病に該当するが、指定難病には含まれていない疾患については、受入医療機関における診療報酬上の評価がない等の課題があるとの意見も示されました。
まとめ
分科会の分析により、小児・周産期医療では周産期医療体制の維持と移行期医療の体制整備が急務であることが明らかになりました。母体・胎児集中治療室管理料の届出施設減少への対応、地域差の解消、移行期医療における診療報酬評価のギャップ解消が、今後の診療報酬改定における重要な検討課題となります。医療の進歩により長期経過をたどる小児患者の増加に対応し、成人医療への円滑な移行を支える制度設計が求められています。
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災害時の医療提供体制を守る3つの課題と解決策|入院・外来医療等調査分科会
Oct 29, 2025令和7年度第13回入院・外来医療等の調査・評価分科会で災害医療についての検討が行われました。この検討では、令和6年能登半島地震での医療支援における課題が明らかになりました。具体的には、派遣時の情報収集や交通手段確保の困難さ、労務管理の複雑さ、施設基準維持の問題が指摘されています。加えて、診療所における事業継続計画(BCP)の策定率が約30%にとどまっている現状も明らかになりました。分科会では、災害時の施設基準の取扱いを事前に明確化すべきとの意見や、BCPの義務化を含めた検討が必要との提言がなされています。
この検討結果から、災害時の医療提供体制を維持するための制度改善の方向性が見えてきました。本記事では、災害派遣における実態と課題、施設基準の柔軟運用の必要性、BCPの策定推進という3つの重要なポイントを詳しく解説します。さらに、医療機関における具体的な対応状況と、今後求められる制度整備についてお伝えします。医療機関の経営者や管理者の方々にとって、災害対応力を高めるための重要な情報となるでしょう。
災害派遣の現状と課題
災害派遣医療チームの設置状況は医療機関の種別によって大きく異なっています。分科会の調査によると、特定機能病院で90.7%と最も高い設置率を示し、次いで急性期一般入院料1算定病院で59.1%となっています。この設置率の差は、医療機関の規模や機能、人員体制の違いを反映したものです。
令和6年能登半島地震支援では、実際のスタッフ派遣において多くの課題が浮き彫りになりました。派遣を検討した医療機関が困難と感じた事項は、「現地の状況把握と情報収集」「派遣にあたっての交通手段の確保」「派遣中の労務管理」「派遣中に自施設のスタッフ配置基準が満たせなくなること」などでした。これらの課題は、急性期一般入院料1算定病院では、施設基準の維持が16.4%、情報収集が31.3%、交通手段確保が46.4%、労務管理が50.4%の医療機関で困難であったと報告されており、迅速な災害対応を困難にする要因となっています。
派遣された職種については、看護師、医師、事務職員、薬剤師が多くを占めました。これらの職種は医療提供の中核を担う人材であり、派遣による自施設への影響も大きいものです。新型コロナウイルス感染症対応での他施設への派遣においても、同様の課題が報告されており、災害時だけでなく感染症対応においても共通の構造的な問題が存在することが明らかになっています。
施設基準の柔軟運用の必要性
大規模災害発生時には、被災者の受け入れや被災地への職員派遣により、入院基本料等の施設基準を満たすことができなくなる場合があります。この事態に対して、厚生労働省は適宜、事務連絡を発出して対応しています。しかし、この事務連絡は発災から数日後に発出されることが多く、迅速な災害対応の妨げになる可能性が指摘されました。
分科会では、施設基準の緩和内容を事前に明確にしておくべきとの意見が出されました。この意見は、被災地支援には迅速かつ継続的な対応が求められるという認識に基づいています。災害の規模などの一定の要件を定めた上で、災害発生時に一時的に施設基準を満たせなくなる場合の対応について、事前に整理・提示しておくことが重要であるとの提言がなされています。
現行制度では、新型コロナウイルス感染症の影響により夜勤時間数や看護要員数に一時的な変動があった場合、最初の月から3か月以内に限り、施設基準の届出区分の変更を不要としています。この特例措置の考え方を、災害時にも適用できるよう制度化することが求められているのです。
事業継続計画(BCP)の策定推進
診療所における災害に備えた事業継続計画(BCP)の策定状況は、「策定している」と回答した割合が約30%にとどまっています。この低い策定率は、医療提供体制の継続性確保の観点から大きな課題です。災害拠点病院以外の医療機関においても、BCPの作成に努めることとされていますが、実際の策定は十分に進んでいない状況が明らかになりました。
BCPは、平常時の組織内の対応能力では応急対応できない事態を想定して、診療の継続や復旧を目指して行うための対応策です。医療機関のBCPは、震災などの災害によって損なわれる病院機能を、実行可能な事前準備と発災後のタイムラインに乗せた行動計画の遂行により維持・回復するとともに、発災によって生じた新たな医療ニーズにも対応するための計画とされています。
分科会では、診療所においてもBCPの策定を推進すべきであり、義務化を含めた対応が検討されるべきとの意見が出されました。この提言は、地域医療を支える診療所の災害対応力を高め、医療提供体制全体の強靭性を向上させることを目指しています。今後、BCPの策定を支援する施策や、策定を促進するインセンティブの設計が重要な政策課題となるでしょう。
まとめ
災害時の医療提供体制を維持するためには、3つの重要な取組が必要です。第一に、災害派遣における情報収集、交通手段確保、労務管理、施設基準維持などの課題を解決する具体的な仕組みづくりです。第二に、施設基準の柔軟運用を事前に明確化し、迅速な災害対応を可能にする制度整備です。第三に、診療所を含むすべての医療機関におけるBCPの策定を推進し、義務化も視野に入れた政策展開です。これらの取組により、医療機関の災害対応力が強化され、国民の生命と健康を守る医療提供体制の強靭性が向上することが期待されます。
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透析医療の質向上へ:患者QOL重視した制度見直しの方向性
Oct 28, 2025令和7年度第13回入院・外来医療等の調査・評価分科会において、透析医療に関する検討結果がとりまとめられました。慢性維持透析患者数は約34万人で2022年から減少傾向にあり、透析患者全体の高齢化が進んでいます。この患者動向の変化に対応し、災害対策の強化、シャントトラブルへの連携促進、腹膜透析の推進、情報提供の充実、緩和ケアの実施といった医療提供体制の課題が明らかになりました。分科会では、患者のQOLを考慮した質の高い透析医療を推進する観点から、人工腎臓の評価方法を見直すべきという意見が示されています。
分科会での検討により、透析医療における5つの重要課題が浮き彫りになりました。第一に、透析患者数は減少傾向にありながら新規導入患者の平均年齢は71.6歳と高齢化が進み、日本では諸外国に比べて血液透析患者の割合が高い状況が続いています。第二に、災害対策の取組状況にばらつきがあり、災害時情報ネットワークへの登録や自治体等との連携体制を確保している医療機関は76.1%にとどまっています。第三に、シャント閉塞等への対応として事前に連携していない医療機関に紹介している医療機関が5.9%存在し、患者への不利益が懸念されます。第四に、腹膜透析の導入や診療を実施している医療機関は19.5%にとどまり、全ての患者に腎代替療法の3つの選択肢を提示している医療機関は51.2%です。第五に、緩和ケアを実施している医療機関は17.6%にとどまり、患者の意思決定支援も十分とはいえない状況です。
透析患者の動向と治療選択の現状
慢性維持透析患者数は343,508人で、2021年まで緩徐に増加していましたが2022年から減少傾向に転じています。この患者数減少の背景には、新規導入患者数が年間約3.9万人で推移する一方、高齢化の進展により透析中止や死亡が増加していることがあります。新規導入患者の平均年齢は71.6歳、慢性透析患者全体の平均年齢は70.1歳となっており、透析患者の高齢化が顕著です。
この高齢化は治療選択にも影響を及ぼしています。腹膜透析患者数は10,585人で2021年より増加傾向ですが、新規導入患者数は2,350人で2019年のピーク(2,657人)から減少しています。腹膜透析は在宅で実施できる利点がありますが、導入には患者本人や家族の協力が必要なため、高齢化により導入が難しくなっている可能性があります。
日本の透析医療は諸外国と比較して特徴的な状況にあります。腎代替療法のうち血液透析患者の割合が諸外国に比べて高く、腹膜透析や腎移植の割合が低い状況が続いています。この状況は医療提供体制の課題とも関連しており、患者の治療選択肢を広げる取組が求められています。
医療提供体制における3つの課題
血液透析の提供体制には3つの重要な課題があります。第一に災害対策、第二にシャントトラブルへの対応、第三に腹膜透析の導入です。
災害対策については、国や地方自治体と日本透析医会が連携して取組を進めています。しかし各医療機関の災害対策の取組状況にはばらつきがみられ、災害時情報ネットワークへの登録や自治体等との連携体制を確保していると回答した医療機関は76.1%にとどまっています。透析患者は定期的な透析治療を必要とするため、災害時でも治療を継続できる体制整備が不可欠です。
シャントトラブルへの対応には連携体制の課題があります。シャント閉塞等は発生頻度が高く、透析患者の入院理由としても最も多い疾患です。自院で治療している医療機関が23.4%、事前に連携している医療機関に紹介している医療機関が70.2%である一方、事前に連携していない医療機関に紹介している医療機関が5.9%存在します。事前連携がない場合、患者は迅速な治療を受けられず大きな不利益を被る可能性があります。
腹膜透析の導入には大きな課題があります。血液透析を実施する医療機関のうち、腹膜透析の導入や診療を実施している医療機関は19.5%にとどまり、77.1%の医療機関は腹膜透析を自院で実施していません。実施していない理由として、対象となる患者がいないが59.5%と最も多く、次いで対応できる器具設備を備えていないためが38.6%でした。また、緊急時や入院時のバックアップ体制に不安があるという意見もあり、医療機関間の連携体制整備が必要です。
患者支援の充実に向けて
患者への情報提供と意思決定支援には改善の余地があります。全ての患者に対し、血液透析、腹膜透析、腎移植の3つの選択肢を提示している医療機関は51.2%にとどまり、情報提供の取組をしていない医療機関が35.6%存在します。患者が自身の状況に応じた最適な治療法を選択するには、十分な情報提供が不可欠です。
通院困難な患者への対応も課題です。対応方法として、透析医療を提供する療養病床への案内が77.1%、介護施設への案内が63.9%である一方、腹膜透析の導入を含めた在宅医療への案内は5.4%にとどまっています。腹膜透析は通院負担を軽減できる治療法ですが、十分に活用されていない状況です。
緩和ケアの実施も十分とはいえません。医療用麻薬を用いた疼痛緩和を実施している医療機関は32.2%、緩和ケアを実施している医療機関は17.6%にとどまっています。透析患者の高齢化が進む中、終末期や透析医療中止に関する意思決定支援を含めた緩和ケアの充実が求められます。
評価方法の見直しと今後の方向性
分科会では、患者のQOLを考慮した質の高い透析医療を推進する観点から、人工腎臓の評価方法を見直すべきという意見が示されました。慢性維持透析を行った場合2及び3の算定回数は減少傾向で、人工腎臓全体の2.1%であることから、透析用監視装置の台数や透析用監視装置一台当たりの患者数による評価方法の見直しが検討されています。
シャントトラブルへの対応では、治療施設と事前に連携していないと患者への不利益が大きいことから、事前に連携することを促す評価方法の検討が提案されました。この評価により、医療機関間の連携体制が強化され、患者が迅速に適切な治療を受けられる環境整備が期待されます。
腹膜透析を増やしていくためには、導入期だけでなく血液透析からの切り換えも促していくことが考えられます。腹膜透析は在宅で実施でき、通院負担を軽減できる利点があります。医療機関が腹膜透析を導入しやすい環境を整備し、患者に十分な情報提供を行うことで、患者の治療選択肢を広げることができます。
通院困難な患者への対応として、療養病床や介護施設を案内すると回答した割合が高い一方、地域によってはこのような対応が難しい地域もあります。分科会では、医療機関へのアクセス確保の対応も検討すべきという意見が示されてお
Duration: 00:07:53データ提出加算の外来拡大と医療の質評価|入力負担軽減への課題と展望
Oct 27, 2025令和7年度第13回入院・外来医療等の調査・評価分科会において、データ提出加算と退院患者調査に関する検討結果が示されました。この検討は、令和4年度診療報酬改定で外来・在宅・リハビリテーション医療に拡大されたデータ提出加算について、医療機関における運用実態と課題を明らかにすることを目的としています。現状では、外来データ提出加算を算定していない理由として、病院・診療所ともに「入力のための人員が確保できない」が最も多く挙げられています。特に外来様式1で求められる検査値等の入力については、負担が大きいという指摘があります。この文章では、データ提出加算の制度拡充の経緯から外来データ提出の課題、そしてデータ活用による医療の質評価の可能性まで、分科会での検討内容を詳しく解説します。
分科会の検討により、データ提出加算制度の拡充経緯と現状の課題が明らかになりました。外来データ提出では人員確保が最大の障壁となっており、病院・診療所の双方で深刻な問題として認識されています。一方、収集されたデータを活用した外来医療の質評価では、糖尿病や脂質異常症の検査実施割合に医療機関ごとのばらつきが確認されました。分科会では、調査項目の見直しによる医療機関負担の軽減とともに、収集されたデータの活用範囲拡大について、施設基準届出における負担軽減や医療機関のベンチマーク、医療の質評価への活用を含めて検討すべきとの意見が示されました。
データ提出加算制度の拡充経緯と評価の仕組み
データ提出加算は、診療データに基づく適切な評価を推進するために設けられた制度です。この加算は、入院医療について診療等のデータを継続的に厚生労働省に提出している医療機関を評価するものとして始まりました。制度開始当初は入院医療のみが対象でしたが、収集するデータの内容は段階的に拡充されてきました。
この拡充は、MDC(主要診断群)ごとの診断群分類見直し技術班での検討や、データ提出加算を要件とする入院料の範囲拡大に伴って進められました。診療報酬上の評価は、一部について医療機関で集計された診療実績データを基に行われていますが、DPCデータ等による評価が可能なものも存在することが指摘されています。令和4年度診療報酬改定では、データに基づく適切な評価をさらに推進する観点から、対象範囲が大きく拡大されました。
この改定により、外来医療、在宅医療、リハビリテーション医療についても、診療等のデータを継続的に厚生労働省に提出している場合の評価が新設されました。外来様式1では、検査値等を含む多様な項目の入力が求められるようになり、医療機関における業務負担の増加が懸念されています。この制度拡充により、入院から外来まで切れ目のないデータ収集が可能となった一方で、医療機関の運用体制整備が新たな課題として浮上しました。
外来データ提出の現状と医療機関が直面する課題
外来データ提出加算の運用実態を調査したところ、医療機関が直面する課題が明確になりました。外来データ提出加算を算定していない理由を尋ねた調査では、病院・診療所ともに「入力のための人員が確保できない」が最も多い回答でした。すでに算定している医療機関においても、同様に人員確保の困難さを感じているケースが多く見られました。
この人員確保の問題は、外来様式1で求められる入力項目の多様性と関連しています。外来様式1では、診療行為や処方内容に加えて、検査値等の詳細なデータ入力が必要とされています。検査値等の入力については、特に負担が大きいとの指摘が分科会でありました。医療機関では日常診療業務に加えて、これらのデータ入力業務を担当する専任スタッフの配置が求められますが、人材確保や人件費の面で制約があります。
この状況に対して、分科会では調査項目の見直しを求める意見が出されました。データ入力が医療機関の負担となっている現状を踏まえ、真に必要な項目に絞り込むことで、医療機関の参加を促進できる可能性があります。ただし、データの質と量のバランスをどのように取るかは、今後の検討課題として残されています。
データ活用による外来医療の質評価の可能性
収集された外来データを活用した医療の質評価について、具体的な分析結果が示されました。厚労科研「DPC制度の適切な運用及びDPCデータの活用に資する研究」研究班から提出された資料を基に、外来データによる集計が行われました。この分析では、外来医療の質を評価する指標として、「外来で糖尿病の治療管理をしている症例に対し、HbA1C検査を実施している割合」と「外来で脂質異常症の投薬治療管理をしている症例に対し、脂質異常症に関する検査を実施している割合」が用いられました。
この分析の結果、これらの指標について医療機関ごとに大きなばらつきがあることが明らかになりました。糖尿病や脂質異常症は、定期的な検査による適切な管理が重要な疾患です。検査実施割合のばらつきは、医療機関によって診療の質に差がある可能性を示唆しています。このようなデータを可視化することで、各医療機関が自施設の診療状況を客観的に把握し、改善につなげることができます。
この分析結果を受けて、分科会では外来データ提出加算の重要性を再確認する意見が出されました。医療の標準化において外来データは重要な役割を果たすため、積極的にデータを収集すべきとの指摘がありました。収集されたデータについては、医療機関のベンチマークや、データを用いた医療の質評価への活用も含めて検討すべきとの意見も示されました。
分科会で示された今後の方向性と期待される展開
分科会での議論を通じて、データ提出加算制度の今後の方向性が示されました。医療機関の負担軽減と、データ活用の推進という二つの課題について、バランスの取れた対応が求められています。調査項目の見直しについては、特に外来データ提出加算における検査値等の入力負担を軽減する方向での検討が必要との認識が共有されました。
データ活用の観点からは、提出されたデータを施設基準の届出等における医療機関の負担軽減に活用する可能性が指摘されました。現在、施設基準の届出では、医療機関が独自にデータを集計して提出する必要がありますが、データ提出加算で収集されたデータを活用できれば、この作業負担を大幅に削減できます。このような活用方法は、医療機関にとってデータ提出のメリットを実感しやすくする効果も期待できます。
医療の標準化とベンチマーク評価についても、積極的な意見が出されました。外来データ提出加算は、医療の標準化において重要な役割を果たすため、より多くの医療機関からデータを収集することが望ましいとの指摘がありました。収集されたデータを用いて、医療機関が自施設の診療状況を他施設と比較できる
Duration: 00:05:32外科医不足が深刻化、消化器外科は10年で15%減少―中医協分科会が示す集約化とインセンティブの方向性
Oct 26, 2025令和7年度第13回入院・外来医療等の調査・評価分科会において、診療科偏在対策が議論されました。外科医、特に若手の消化器外科医の減少が深刻化しており、過去10年間で若手消化器外科医は15%減少しています。この問題に対し、分科会では手術の集約化による安全性向上と勤務環境改善、外科医への実効性あるインセンティブ措置の強化が必要との方向性が示されました。
分科会では、外科医の約半数が1-2名の小規模施設に分散している現状が明らかになりました。高度な手術の集約化により手術成績が向上し、勤務環境が改善された山口大学医学部附属病院の事例が示されました。分科会の委員からは、小規模施設から大規模施設への紹介・連携を評価する仕組みの構築、若手外科医の処遇改善、女性医師のキャリア形成支援の必要性が指摘されました。今後の診療報酬改定では、自発的な偏在是正を促すインセンティブの強化が検討される見込みです。
外科医の減少と偏在が医療提供体制を脅かしている
外科医、特に消化器外科医の減少が深刻化しています。外科の医師数の推移を見ると、一般外科・消化器外科以外の診療科では増加傾向にある一方で、一般外科・消化器外科は一貫して減少しています。
若手医師の状況はさらに深刻です。40歳未満の若手医師全体では2012年と比較し8%増加している一方で、若手外科医は7%減少、若手消化器外科医に至っては15%減少しています。日本消化器外科学会は、現在約1.9万人いる消化器外科医が2040年には40%減少すると予測しており、医療提供体制の維持が困難になる可能性があります。
この減少の背景には、長時間労働の問題があります。時間外・休日労働時間が年1,860時間換算を超える医師の割合が高い診療科は、脳神経外科が9.9%、外科が7.1%、形成外科が6.8%、産婦人科が5.9%、救急科が5.1%でした。外科系診療科は専門性の維持や修得に時間がかかり、負担感も大きいことから、若手医師が処遇に見合わないと感じる要因になっています。
外科医の偏在も深刻な課題です。外科医が1名以上いる病院と医育機関3,246施設において、所属外科医師数が1-2名となる医療機関は全体の48.7%(1,581施設)を占めています。消化器外科医師数が6名以上の医療機関は21.6%(700施設)、10名以上と集約化されている医療機関は9.1%(294施設)にとどまっています。所属外科医師数が1-2名の医療機関の多くは、年間の手術件数が100件未満であり、3-5名の医療機関でも半数以上は年間手術件数が500件に満たない状況です。
手術の集約化により安全性と勤務環境が改善した山口大学の事例
高度な手術の集約化により、手術成績の向上と勤務環境の改善が実現できることが示されています。山口大学医学部附属病院消化器外科では、各連携病院と協議・連携することで、消化器外科症例の集約化と均てん化に向けた体制を徐々に構築しました。
この取組では、病院の機能に応じてType1からType3に分類しました。Type1病院は常勤消化器外科医師数が1-2名の病院で、がん治療のサポートとしての手術や虫垂炎、痔、ヘルニア、胆石などの手術は実施しますが、がん手術は実施せずに附属病院に紹介し、術後化学療法とフォローアップを大学病院から引き受けます。Type2病院は常勤消化器外科医師数が3-5名の病院で、胃がん、大腸がんの手術は実施しますが、難度の高い食道、肝胆膵の手術は附属病院に紹介します。Type3病院は常勤消化器外科医師数が6名以上の病院で、従前どおり独自にがん治療を実施します。
この集約化により、複数の成果が得られました。がんの症例数が少なかった病院が全てのがん症例を拠点的な病院に紹介することで、これまで手術で対応できなかった症例も拠点的な病院での高度な手術で対応することができるようになりました。化学療法も大学病院に通うことなく近隣の病院で実施できるようになり、がん手術を全て拠点的な病院に集約し、より多くの化学療法やフォローアップを実施することで、病院経営も改善しました。
消化器外科領域の高度な手術について、全国の多くの病院は年間50件未満である一方、大学病院本院の多くが200件/年以上実施しています。入院における臓器別手術件数の推移を見ると、食道・腹部の手術件数が最多であり、2020年に減少したものの、2015年以降増加傾向にあります。
分科会が示した偏在是正の方向性は集約化とインセンティブ強化
分科会では、診療科偏在対策について多角的な議論が行われ、今後の方向性が示されました。委員からは、高難度手術における集約化の必要性について、一定程度の手術の集約化により安全性が担保されることが指摘された一方で、小規模な手術とのバランスのとれた集約化の在り方が必要との意見がありました。
外科医が少人数で勤務する施設から大規模施設への紹介・連携についてはインセンティブがなく、そのような取組を評価する仕組みが必要との意見がありました。外科領域の集約化や偏在是正については、急性期医療機関機能の整理の中で位置付けて議論すべきとの意見もありました。
医師偏在の是正については、ペナルティとインセンティブの両方の考え方がありますが、自発的な偏在是正にはインセンティブの強化が有効との意見がありました。休日加算等の評価はあるものの、施設要件により届出医療機関や診療科が限られており、より実効性のあるインセンティブ措置が必要との意見がありました。
実際に、大学病院を含む一部の病院では、全国的に減少している消化器外科医など外科医の診療体制を維持するため、外科医等への処遇改善を実施しています。広島大学病院では、若手外科医を対象に「未来の外科医療支援手当」として月額10万円、年額120万円を増額する待遇改善を実施しました。津山中央病院では、時間外緊急手術や呼び出し等に対してインセンティブを付与する取組を実施しています。
消化器外科でも若手医師では女性比率があがっており、出産・育児に関する問題があるため、女性医師のキャリア形成や柔軟な働き方の保証も偏在是正の視点で必要との意見がありました。また、高度な手術をほとんど実施していない病院があり、こういった手術は集約化する必要があるため、山口大学病院の例も参考にしながら、役割分担と集約化を進めてはどうかとの意見がありました。
手術の休日・時間外・深夜加算1における「緊急呼び出し当番の翌日が休日」要件については、慎重な検討が必要との意見がありました。手術の休日・時間外・深夜加算1においてチーム制を採用している場合、診療があった緊急呼び出し当番の翌日は休日対応となりますが、緊急呼び出し当番における診療の有無は予見する
Duration: 00:08:12病院と診療所の違いとは?医療機関の機能分化を理解する【動画解説】
Oct 25, 2025全日本病院協会の神野会長が解説する動画「医療のトリセツ第4回」では、医療機関の仕組みと機能分化について説明しています。高齢化が進む日本では、複数の慢性疾患や医療介護の複合ニーズを抱える患者が増加する一方で、医療従事者のマンパワーには制約があります。こうした状況で質の高い医療を効率的に提供するには、医療機関の役割分担を理解し、適切な医療機関を選択することが重要です。本メールマガジンでは、この動画の内容をもとに、医療機関選択に役立つ情報をお届けします。
病院と診療所は医療法上で明確に区別されており、それぞれ異なる役割を担っています。医療の機能分化により、「治す病院」と「治し支える病院」という2つのタイプが存在し、相互に連携しながら地域医療を支えています。かかりつけ医機能を有する医療機関は、医療と介護をつなぐ重要な役割を果たし、地域包括ケアの中心となっています。これらの仕組みを理解することで、患者は自身の症状や状態に応じた最適な医療機関を選択できるようになります。
病院と診療所の違いを知る
病院と診療所の違いは、単なるベッド数の差だけではありません。病院はベッド数が20床以上あり、入院治療を主な役割としています。診療所はベッド数が19床以下または無床で、かかりつけ医機能、初期診療、慢性疾患の管理を担っています。
病院には夜間も医師が常駐する当直体制があります。診療所にはこの体制がない点が、両者の大きな違いです。夜間や休日に急変した患者に対応できる体制が、病院には整備されています。
病院では医師、看護師、薬剤師、リハビリテーション専門職、管理栄養士、MSW、事務職員など多職種によるチーム医療が実践されています。診療所では医師、看護師、事務スタッフという少人数体制で運営されています。このチーム医療の有無が、病院と診療所の提供できる医療の幅を決定しています。
病院の開設主体は医療法人、公立、大学などが多くなっています。診療所は個人や医療法人が開設している場合が多い傾向があります。この違いが、医療機関の規模や提供できる医療サービスの範囲に影響を与えています。
医療の機能分化と連携体制を理解する
医療機関は「治す病院」と「治し支える病院」に機能分化されています。治す病院には特定機能病院、大学病院、地域の基幹病院が該当します。治し支える病院には、かかりつけ機能を有する病院や診療所が該当します。
治す病院とかかりつけ機能を有する医療機関の間では、紹介と逆紹介という連携が行われています。紹介とは、かかりつけ医が専門的治療が必要と判断した患者を大きな病院に送ることです。逆紹介とは、大きな病院での専門的治療が終了した患者を、かかりつけ医に戻すことです。この双方向の流れにより、医療資源の効率的な活用が実現されています。
国は医療の機能分化を政策として推進しています。この背景には、限られた医療資源を最大限に活用し、必要な患者に必要な医療を提供するという考えがあります。機能分化により、専門的治療が必要な患者は大病院で、慢性疾患の管理は地域の診療所で行うという役割分担が明確になります。
診療報酬制度でも、この機能分化を支援する仕組みが整備されています。診療情報提供料や連携強化診療情報提供料などの点数設定により、医療機関間の連携が経済的にも評価されています。医療機関が適切に連携することで、診療報酬上のメリットも得られる仕組みが構築されているのです。
かかりつけ医機能の役割を把握する
かかりつけ医機能を有する医療機関は、医療と介護のつなぎ役として重要な位置を占めています。この機能は、単に医師個人の役割ではなく、医療機関全体で担うべき機能として位置づけられています。病院の場合、医師だけでなく看護師、薬剤師、MSWなど多職種が協力してかかりつけ機能を発揮します。
かかりつけ医機能報告制度では、継続的な医療を要する者に対する日常的な診療を総合的かつ継続的に行う機能が重視されています。この制度により、医療機関は自らが提供するかかりつけ医機能の内容を報告し、地域住民に情報提供することが求められています。報告内容には、一次診療の対応可能な診療領域、服薬の一元管理、通常の診療時間外の対応、在宅医療の提供、介護サービスとの連携などが含まれます。
地域包括ケアの実現において、かかりつけ医機能を有する医療機関は中心的な役割を果たします。介護サービス、生活支援、行政とをつなぎ、患者が住み慣れた地域で安心して生活を続けられるよう支援します。かかりつけ機能を有する医療機関を中心として、医療と介護が連携し、包括的なケアが提供される仕組みが構築されています。
機能強化加算や地域包括診療料などの診療報酬上の評価も、かかりつけ医機能を担う医療機関を支援する仕組みです。これらの点数を算定するには、研修の受講、24時間対応体制の整備、他職種との連携など、一定の要件を満たす必要があります。質の高いかかりつけ医機能を提供する医療機関が、適切に評価される仕組みとなっています。
まとめ
病院と診療所はそれぞれ異なる役割を持ち、医療法上も明確に区別されています。医療の機能分化により、「治す病院」と「治し支える病院」が連携しながら地域医療を支えています。かかりつけ医機能を有する医療機関は、医療と介護をつなぐ重要な役割を担い、地域包括ケアの中心となっています。これらの仕組みを理解し、症状や状態に応じて適切な医療機関を選択することが、効率的で質の高い医療を受けるための第一歩となります。
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人口減少時代の医療経営:2060年までの日本の課題と解決策を徹底解説
Oct 24, 2025全日本病院協会の神野正博会長が解説するYouTube動画「医療のトリセツ 第3回」では、日本の人口が2060年まで継続的に減少していく現実が示されています。この人口減少は国内産業の需要減少を引き起こし、医療分野においても患者数の減少という大きな変化をもたらします。従来のデフレ経済下で成功した「薄利多売」のビジネスモデルは、縮小する社会構造の中では通用しなくなります。本動画の目的は、社会保障・人口問題研究所のデータをもとに日本の将来推計を明らかにし、医療機関が直面する経営課題とその解決策を提示することです。
神野会長は2060年までの人口推移グラフから3つの重要なメッセージを導き出しています。日本の人口は今後継続的に減少し、国内向け産業の需要が縮小していきます。この縮小社会では統合・集約化、撤退、業態変更、新市場開拓といった新たな経営戦略が全ての業界で必要になります。課題解決策として、生産性向上、シニアや女性の活躍促進、外国人労働者やロボットの活用が提案され、最終的には「全員参加型社会」の実現が重要だと結論づけています。
日本の人口推移が示す医療需要の構造変化
日本の人口は2060年まで減少トレンドが続き、この変化は医療機関の経営に直接的な影響を与えます。社会保障・人口問題研究所が公表したデータによれば、日本の総人口は2060年まで継続的に減少し、国内向け産業の需要が縮小していきます。
人口減少は医療分野において患者数の減少という形で現れます。これまで人口増加を前提に構築されてきた医療提供体制は、根本的な見直しを迫られています。神野会長は「国内向けの産業の需要が減ってくる。我々医療にとりましても患者さんが減ってくる」と指摘し、医療機関の経営戦略を大きく転換する必要性を強調しています。
神野会長が示すグラフでは、生産年齢人口の減少が明らかになっています。この生産年齢人口の減少は医療従事者の確保を困難にします。この構造変化に対応するため、医療機関は従来とは異なる視点での経営判断が求められます。
縮小社会における医療経営戦略の転換点
縮小する社会構造の中では、過去の成功モデルにとらわれない新たな経営戦略が必要です。神野会長は「これから薄利多売という以前はデフレの中でそういった経済がありました。人口増加の中で薄利多売というものがあったわけですけれども、これからはどうもそれも難しくなるのではないのかな」と述べ、従来のビジネスモデルの限界を指摘しています。
神野会長は医療機関が検討すべき経営戦略として、統合・集約化、撤退、業態変更、新市場開拓の4つを挙げています。統合・集約化により、限られた医療資源をより効率的に活用することが考えられます。撤退という選択肢は、経営資源を重点分野に集中させる戦略として位置づけられます。
業態変更と新市場開拓も重要な選択肢として提示されています。神野会長は「社会の構造は縮みつつあるということを私たちは認識する必要があります。イコール過去の成功モデルにとらわれない経営というものが必要なのではないでしょうか」と述べ、柔軟な経営判断の重要性を強調しています。
人口減少社会を乗り越える5つの実践的解決策
生産性向上は人口減少社会における最優先課題です。神野会長は「生産年齢人口と呼ばれている若者の方々が減る。だけど少ない人数で多い時と同じことができる。これを生産性の向上というわけであります」と説明し、少ない人数で従来と同等以上の成果を出す必要性を強調しています。
シニア層の活用は労働力確保の重要な解決策として位置づけられています。神野会長は「例えばこのグラフの中で65歳から75歳といった方々が下の生産年齢に入るならば、まだまだ労働力はいるわけであります」と指摘し、シニア層が労働力として重要な役割を果たすことを示しています。
女性活躍の推進は医療介護分野で特に重要な課題です。神野会長は「今たくさんの女性が活躍しております。特に医療介護の現場ではたくさんの女性が活躍しているわけであります」と現状を説明した上で、出産・子育て期間中の就業継続の課題を提起しています。
パートタイム労働者の生産性向上について、神野会長は「例えば出産、子育てで少し仕事を制限しなきゃいけないといった時期でも、例えばパートタイムだけどフルタイムと同じ仕事ができるように生産性を上げたらいいかがでしょうか」と提案しています。パートタイムでもフルタイムと同等の成果を出せる仕組みを構築することで、女性が働き続けやすい環境が実現します。
パートタイム労働者を効果的に組み合わせる「モザイク型」の働き方も解決策として提示されています。神野会長は「あるいはパートタイムの方をモザイクのように組み合わせることで、フルタイムの方と同じ仕事をしていただくということもあるのかなというふうに思います」と述べ、複数のパートタイム労働者を組み合わせてフルタイム労働者と同じ業務をカバーする働き方を提案しています。
外国人労働者とロボットの活用は、労働力不足を補完する解決策として挙げられています。神野会長は「そして外国人、ロボットにお願いするということがあるのかなと思います」と述べ、これらを労働力確保の選択肢として示しています。
全員参加型社会の実現に向けて
神野会長は人口減少社会を乗り越える鍵として「必要なのは全員参加全員社会参加であります」と強調しています。シニア、女性、外国人、そしてロボットも含めた全ての労働力を最大限に活用することで、縮小する社会でも持続可能な医療提供体制を維持できます。医療機関は今こそ、従来の経営モデルから脱却し、新たな戦略に基づく改革を実行する時期に来ています。
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総合病院精神科の役割拡大と精神科リエゾンチーム活用の最新動向【令和8年度診療報酬改定に向けて】
Oct 23, 2025令和7年度第13回入院・外来医療等の調査・評価分科会において、令和8年度診療報酬改定に向けた総合病院精神科の現状と課題が報告されました。総合病院精神科には、身体管理が必要な精神科専門治療、自殺企図関連の合併症治療、精神疾患に身体疾患が合併した患者の治療という重要な役割が期待されています。しかし、精神病床数の減少や地域偏在といった課題も明らかになりました。
本稿では、総合病院精神科が直面する3つの課題、診療報酬上の評価の動向、精神科リエゾンチームの活躍という観点から、今後の精神科医療提供体制を展望します。総合病院精神科の現状は、精神病床の減少が一般病院で顕著に進んでいます。診療報酬上の評価では、総合入院体制加算の届出が減少する一方、精神科急性期医師配置加算の届出は増加傾向にあります。精神科リエゾンチームは、せん妄、抑うつ、自殺企図、認知症など多様な精神疾患への介入で成果を上げており、届出医療機関数と算定回数がともに増加しています。
総合病院精神科が直面する3つの課題
総合病院精神科の医療提供体制には、精神病床の減少、救急搬送の遅延、地域偏在という3つの課題が存在します。
精神病床数は減少傾向にあり、特に一般病院での減少が顕著です。この減少は精神科病院よりも一般病院で大きく、総合的な入院医療を提供する体制に影響を及ぼしています。全病床数が400床以上かつ精神病床の割合が15%未満という、入院医療における総合性を兼ね備えた医療機関が存在しない二次医療圏が多く存在します。この地域偏在は、精神疾患と身体疾患の両方に対応できる医療機関へのアクセスを困難にしています。
救急搬送に係る時間を傷病別に見ると、精神系は他疾患と比較して長い傾向にあります。この遅延は、精神科医の対応が必要な救急患者の受け入れ先確保の困難さを示しています。精神病床を有している医療機関は精神科医の対応が必要な救急搬送患者を受け入れていましたが、こうした医療機関の減少が救急医療体制全体に影響を与えています。
地域における精神科医療の偏在も深刻な課題です。前述の総合性を兼ね備えた医療機関の不在は、患者が適切な医療を受けるために長距離移動を強いられる可能性を意味します。精神症状の重症度と身体症状の重症度・病期に応じた適切な医療機関への振り分けが困難になっており、医療提供体制の整備が求められています。
診療報酬上の評価と精神病床を有する病院の優位性
診療報酬上の評価では、総合入院体制加算の減少と精神科急性期医師配置加算の増加という対照的な動きが見られます。
総合入院体制加算の届出病院数は、急性期充実体制加算が新設された令和4年以降減少傾向にあります。この減少は、医療機関が新しい加算体系への移行を選択していることを示しています。精神科充実体制加算または小児・周産期・精神科充実体制加算の届出医療機関数は、令和5年以降横ばいで推移しています。この横ばい状態は、新規の届出が限定的であることを意味します。
精神科急性期医師配置加算の届出医療機関数は増加傾向にあります。この加算は、精神症状とともに身体疾患または外傷を有する患者の入院医療体制を確保している医療機関を評価するものです。精神科急性期医師配置加算2イの算定回数は横ばいで推移していますが、届出医療機関の増加は、総合病院における精神科医療体制の整備が進んでいることを示唆しています。
精神病床を有する病院は、それ以外の病院よりも急性期の一般病床において精神疾患への対応が可能である割合が多いという優位性を持っています。この優位性は、総合病院精神科を評価する加算の算定医療機関において、手術等を伴う統合失調症患者の入院件数が多いという結果にも表れています。精神病床を有することで、身体合併症を持つ精神疾患患者への対応力が向上し、一般病床での精神科医療提供も円滑になるのです。
精神科リエゾンチームの活躍と認知症ケアとの連携
精神科リエゾンチーム加算の届出医療機関数及び算定回数は増加傾向にあり、一般病床における精神科医療の充実を示しています。
精神科リエゾンチームは、急性期の一般病床において多様な精神疾患に介入しています。このチームは、せん妄や抑うつを有する患者、自殺企図で入院した患者、認知症患者等に対して専門的な支援を提供しています。せん妄は急性期病棟で頻繁に見られる症状であり、早期発見と適切な介入が重要です。自殺企図で入院した患者への対応では、身体的治療と並行して精神科的評価と継続的支援が必要になります。認知症患者への介入では、認知機能の評価や行動・心理症状への対応が求められます。
精神科リエゾンチーム加算を届け出ている医療機関は、それ以外の医療機関と比べて多様な精神疾患に対応可能でした。この対応力の高さは、専門的なチーム体制の構築と多職種連携の成果を示しています。精神科医、看護師、薬剤師、精神保健福祉士など多職種が協働することで、複雑な精神医学的問題に対応できる体制が整っています。
精神科リエゾンチーム加算の届出医療機関の60.2%が認知症ケア加算1を届け出ていました。この高い併存率は、精神科リエゾンチームと認知症ケアの親和性を示しています。認知症ケア加算やせん妄ハイリスクケア加算を届け出ている医療機関においても、認知症やせん妄に対応できるとした医療機関が多く、加算を通じた体制整備が精神科医療の質向上に寄与しています。
まとめ
総合病院精神科の現状は、精神病床の減少と地域偏在、救急搬送の遅延という課題に直面しています。診療報酬上の評価では、総合入院体制加算の減少と精神科急性期医師配置加算の増加という変化が見られます。精神科リエゾンチームは、多様な精神疾患への介入で成果を上げており、認知症ケアとの連携も進んでいます。今後、精神症状と身体症状を一元的に対応できる医療機関の整備が重要であり、令和8年度診療報酬改定における評価の在り方が注目されます。
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ポリファーマシー対策の診療報酬評価、算定率16.7%の課題と改善方向を解説
Oct 22, 2025令和7年度第13回入院・外来医療等の調査・評価分科会において、ポリファーマシー対策と薬剤情報連携に関する検討結果が報告されました。この報告では、退院時の薬剤情報連携における評価の不均衡、ポリファーマシー対策の診療報酬評価の低活用、今後の制度改善の方向性という3つの重要な課題が明らかになりました。
退院時の薬剤情報連携では、保険薬局への情報提供は診療報酬で評価されているものの、医療機関への情報提供は評価対象外となっています。ポリファーマシー対策の評価では、薬剤総合評価調整加算の算定医療機関が全体の16.7%にとどまり、薬剤調整加算の算定回数は令和5年時点で全国で月当たり約2,680件、薬剤適正使用連携加算の算定回数は令和6年8月でわずか13件という極めて低い水準です。分科会では、回復期での対応強化、外来患者への評価拡大、質重視の評価への転換が提言されました。
退院時の薬剤情報連携における評価の課題
退院時の薬剤情報連携において、薬剤師の関与は質の高い指導につながるものの、連携先による評価の格差が課題となっています。
薬剤師が退院時の薬剤指導に関与する施設では、退院処方薬のみならず入院時持参薬なども含めた質の高い説明・指導を実施した割合が高くなります。この関与により、患者は退院後の薬剤管理について適切な情報を得ることができます。
しかし、この情報連携の評価には大きな格差があります。保険薬局への薬剤情報連携は、退院時薬剤情報連携加算として診療報酬上の評価対象となっています。一方、医療機関等に対して薬剤情報連携を実施しても、情報連携元である医療機関における退院時薬剤情報管理指導料等の評価の対象となっていません。
この評価格差は、実際の算定状況にも表れています。退院時薬剤情報管理指導料の算定回数は令和5年時点で月当たり約27万件であるのに対し、退院時薬剤情報連携加算の算定回数は令和4年時点で約1万件(10,386件)にとどまっており、大きな格差があります。退院時薬剤情報連携加算を実施していない施設は63.8%にのぼります。実施していない理由としては、他の業務負担が大きいこと、情報提供文書の作成にかかる労力が大きいことが上位を占めました。また、情報提供先の薬局がわからなかったこと、情報提供文書は医療機関宛に出すことが多いため対象外であることなども理由として挙げられました。
退院時薬剤関連情報連携における実施項目では、急性期・高度急性期病院から最も提供されていた項目は「退院処方一覧」でした。次いで「入院時持参薬や退院処方以外に継続服用が必要な薬剤に関する情報」、「入院中に変更となった処方に関する変更理由」が多く提供されています。連携先については、薬局の割合が最も高く62.1%であり、続いて医療機関が26.6%となっています。
ポリファーマシー対策の診療報酬評価の実態
ポリファーマシー対策の診療報酬評価は、算定医療機関・算定回数ともに極めて低い水準にとどまり、制度の実効性が課題となっています。
薬剤総合評価調整加算の算定医療機関は、病院全体の16.7%にすぎません。この加算は、患者の入院時に持参薬を確認し、関連ガイドライン等を踏まえて慎重な投与を要する薬剤等を確認するものです。その上で、医師、薬剤師、看護師等の多職種による連携の下で薬剤の総合的な評価を行い、処方内容の変更を実施します。
薬剤調整加算の算定回数は、令和5年時点で全国で月当たり約2,680件という低い水準です。この加算は、薬剤総合評価調整加算の算定要件を満たした上で、退院時に処方する内服薬が2種類以上減少した場合、または退院日までの間に抗精神病薬の種類数が2種類以上減少した場合などに算定できるものです。薬剤総合評価調整加算の算定回数が令和5年時点で月当たり約7,790件であることを考えると、実際に減薬まで至るケースは約3分の1にとどまっています。
薬剤適正使用連携加算の算定状況は、さらに深刻です。地域包括診療料・加算等の算定患者が入院・入所した場合に、入院・入所先の医療機関等と医薬品の適正使用に係る連携を行った場合の評価ですが、令和6年8月における算定回数はわずか13件でした。
算定が進まない理由は複数あります。薬剤適正使用連携加算を算定していない理由としては、「当該加算の存在を知らなかったため」が最も多く、次いで「内服薬の種類数を減らすことが困難である患者が多いため」が多い結果となりました。
薬剤総合評価調整加算を算定していない理由としては、「入院期間中に2種類以上の減薬を実施することが難しいため」が最も多くなっています。入院中に2種類以上の減薬を実施することが難しい理由として、「入院期間が短いこと」が43%、「処方の変更に対する反応を確認しながら1剤ずつ減量する必要があるため」が41%を占めました。
病院におけるポリファーマシー対策については、他職種から病院薬剤師に対する期待が大きい反面、実施が困難な状況があります。急性期では在院日数が短く十分な介入ができないこと、また人手不足で対象患者の抽出や検討する時間を確保できないことなどから、病院薬剤師が十分に取り組めない場合が多くなっています。
今後の改善に向けた方向性
分科会では、回復期での対応強化、算定要件の見直し、質重視の評価への転換という3つの改善方向が提言されました。
回復期での対応強化については、急性期病棟での限界を踏まえた意見が出されました。急性期病棟では、在院中に減薬してその後の経過を確認することは困難であり、回復期以降の病棟で対応すべきであるとの意見がありました。また、回復期病棟等での薬剤情報連携の状況についても示してほしいとの意見があり、その評価を検討すべきではないかとの意見が出されました。
算定要件の見直しについては、現状の要件が厳しすぎるとの指摘がありました。薬剤適正使用連携加算の算定回数は極めて少なく、算定要件が厳しすぎるのではないかとの意見が出されました。現状では入院・入所患者を対象とした評価となっていますが、他院にも併せて通院する外来患者について、処方内容、薬歴等に基づく相談・提案を他院へ行った場合には、評価の対象としてはどうかとの意見がありました。
質重視の評
Duration: 00:07:58病院薬剤師の深刻な人手不足と診療報酬上の課題【2025年度入院・外来医療等分科会】
Oct 21, 2025令和7年度第13回入院・外来医療等の調査・評価分科会において、病院薬剤師の配置状況と診療報酬上の課題が明らかになりました。病院に勤務する薬剤師は5.66万人ですが、薬剤師偏在指標が全都道府県で1.0を下回り、全国的な不足状態にあります。この不足の背景には、病床機能による配置の偏在と、医師の処方に基づく調剤業務に対する院内処方と院外処方の診療報酬評価の格差という2つの構造的問題が存在します。
分科会の分析により、3つの重要な課題が浮き彫りになりました。第1に、病院薬剤師の77.1%が特定機能病院や高度急性期・急性期病棟に集中し、回復期・慢性期病棟には22.9%しか配置されていません。第2に、回復期・慢性期病棟の薬剤師は調剤室等における対物業務の割合が高く、病棟での対人業務が十分に実施できていません。第3に、調剤業務に対する診療報酬について、院内処方と院外処方を比較すると評価に差があり、この点数差が薬局薬剤師数の大幅な増加と病院薬剤師数の人手不足の一因となっている可能性があります。
全国的な病院薬剤師不足の実態
病院薬剤師の不足は、薬剤師偏在指標という客観的指標で明確に示されています。薬剤師偏在指標は、地域で必要な薬剤師サービスを提供するための業務量に対する、現在提供されている薬剤師の労働量の割合を示す指標です。この指標が1.0を超える都道府県が病院薬剤師ではゼロであるという事実は、全国どの地域でも病院薬剤師が不足していることを意味します。
病院薬剤師の偏在指標の全国値は0.80にとどまっています。一方、薬局薬剤師の偏在指標は全国値が1.08であり、18都道府県で1.0を超えています。この対照的な数値は、薬剤師という職種全体では一定数確保されているにもかかわらず、病院と薬局の間で人材の偏在が生じていることを示しています。
病院薬剤師の不足は、単なる人数の問題だけでなく、医療提供体制全体に影響を及ぼします。病院薬剤師は入院患者への薬学的管理、医師への処方提案、他職種との連携など、病院医療の質を支える重要な役割を担っています。この人材不足により、こうした機能が十分に発揮できない状況が全国的に広がっています。
病床機能による薬剤師配置の著しい偏在
病院薬剤師の配置状況を病床機能別に分析すると、著しい偏在が明らかになります。特定機能病院や高度急性期・急性期病棟には77.1%の薬剤師が配置されている一方、回復期・慢性期病棟には22.9%しか配置されていません。この配置の偏りは、病床機能ごとに求められる薬剤師業務の違いと、診療報酬上の評価の差によって生じています。
回復期・慢性期病棟に従事する薬剤師の業務内容には、特徴的な傾向があります。この病床機能の薬剤師は、中央業務と呼ばれる調剤室等における対物業務に従事する割合が、特定機能病院や高度急性期・急性期病棟に比較して高い状況です。対物業務とは、医師の処方に基づく医薬品の調剤業務を指します。
高度急性期・急性期病棟の薬剤師は、病棟での対人業務により多くの時間を割いています。対人業務には、患者への服薬指導、医師への処方提案、薬物療法のモニタリング、多職種カンファレンスへの参加などが含まれます。回復期・慢性期病棟でもこうした対人業務の重要性は高いにもかかわらず、人員配置の制約から対物業務中心にならざるを得ない実態があります。
病床機能による配置の偏在は、診療報酬上の評価の違いも影響しています。病棟業務実施加算は病棟での対人業務を評価する仕組みですが、対物業務である調剤業務については、後述するように院内処方と院外処方で評価に差があり、この構造が薬剤師の就業先選択に影響を与えている可能性があります。
病棟業務実施加算の届出増加と対人業務の推進
病院薬剤師が行う病棟業務、いわゆる対人業務に対する診療報酬上の評価として、病棟業務実施加算が設けられています。この加算の算定届出医療機関数は年々増加しており、病院薬剤師の対人業務を推進する効果を上げています。病棟業務実施加算の届出医療機関の増加は、薬剤師が病棟で患者に直接関わる業務の重要性が広く認識されてきたことを示しています。
病棟業務実施加算を算定している病棟では、薬剤師による医師の負担軽減効果が確認されています。医師の負担軽減策として最も効果が高いのは「薬剤師による投薬に係る患者への説明」であり、病棟薬剤業務実施加算1算定病棟で51.7%、同加算2算定病棟で48.1%、加算届出なし病棟でも43.3%の医師が負担軽減に寄与していると回答しています。
医師から薬剤師へのタスクシフト・シェアの実施状況としては、「医師への処方提案等の処方支援」が81.8%、「病棟等における薬学的管理等」が74.9%、「薬物療法に関する説明等」が70.9%と高い実施率を示しています。これらの取組は、医師の働き方改革と医療の質向上の両面で重要な役割を果たしています。
病棟薬剤業務実施加算による対人業務の評価は、病院薬剤師の役割を変化させつつあります。調剤室での対物業務中心から、病棟での患者への直接的な薬学的管理へと業務の比重が移行しています。この変化は医療の質の向上に寄与する一方で、対物業務である調剤業務の評価のあり方も改めて問われることになっています。
院内処方と院外処方の調剤業務に対する診療報酬評価の格差
病院薬剤師不足の構造的要因として、医師の処方に基づく医薬品の調剤業務、いわゆる対物業務について、院内処方と院外処方を比較すると診療報酬上の評価に差があることが指摘されています。調剤業務は院内処方でも院外処方でも同じ内容であるにもかかわらず、診療報酬上の評価には大きな差があります。この評価差が、薬剤師の就業先選択に影響を与え、病院薬剤師不足の一因となっている可能性があります。
具体的な点数差を外来処方の例で見ると、その格差は顕著です。服用時点が異なる内服薬が2種類、28日分処方されている患者の場合、外来院内処方では技術料の合計が32点(320円)です。一方、院外処方では一般的な薬局で調剤した場合、技術料の合計が238点(2,380円)となります。同じ調剤業務に対して、約7.4倍の評価差が存在することになります。
院外処方では、調剤基本料45点、調剤管理料100点、薬剤調製料48点、服薬管理指導料45点など、複数の項目で評価が設定されています。さらに、夜間・休日等加算として40点が追加される仕組みもあります。院内処方では、調剤料と調剤技術基本料のみで、剤数によらず1処方当たりの点数がほぼ固定されています。
分科会では、この評価差について2つの異なる意見が出されました。1つは、院内処方と院外処方との同一業務に対する報酬上の点数差が大き
Duration: 00:06:46入院時食事療養の実態:30年ぶりの値上げでも解決しない質と経営の両立
Oct 20, 2025令和7年度第13回入院・外来医療等の調査・評価分科会において、入院時の食事療養に関する現状分析と今後の課題が報告されました。食費基準額は約30年ぶりに引き上げられたものの、医療機関の給食経営は依然として厳しい状況が続いています。この報告書では、食費基準額の引き上げ効果の検証結果、嚥下調整食の評価の必要性、食堂加算の実態と課題が明らかにされました。
入院時食事療養の基準額は令和6年6月に1食当たり30円、令和7年4月に更に20円引き上げられました。しかし調査結果では、給食の質が向上したとの回答はわずかで、全面委託施設の約半数は給食委託費を増額し、直営施設の約半数は食材を安価なものに変更するなどの経費削減を行っていました。また嚥下調整食は特別食加算の対象外ですが、必要とする患者は一定数存在し、普通食より食材費が高いという課題があります。分科会では、患者負担増を含めた食費基準の更なる見直し、嚥下調整食の特別食加算への追加、食堂加算の要件見直しなどが提言されました。
食費基準額引き上げの効果と医療機関の対応
食費基準額は約30年ぶりに段階的な引き上げが実施されましたが、医療機関の給食運営に十分な改善をもたらしていません。令和6年6月の30円引き上げと令和7年4月の20円引き上げにより、1食当たりの総額は640円から690円となりました。この引き上げは食材費高騰への対応として実施されましたが、一般所得者の自己負担は460円から510円に増加し、低所得者には配慮した負担額が設定されています。
基準額引き上げ後の医療機関の対応を調査した結果、令和6年6月から令和7年3月の期間と令和7年4月以降で大きな変化は見られませんでした。全面委託施設では約46%が給食委託費を増額したと回答し、一部委託や完全直営施設では約47%が食材料を安価なものに変更するなどの経費削減を実施していました。給食の質が上がったと回答した施設は全面委託で4.2%、一部委託で1.6%、完全直営で3.1%に過ぎず、基準額の引き上げが直接的に給食の質向上につながっていない実態が明らかになりました。
委託事業者からの値上げ要請も相次いでおり、令和6年6月以降、全面委託の約7割、一部委託の約5割の医療機関が委託事業者から値上げの申し出を受け、契約変更に対応していました。完全直営の医療機関の3.6%(22施設)は、給食運営を委託から完全直営に切り替えるという選択をしていました。この対応は、委託費の上昇により直営化の方が経営的に有利と判断した結果と考えられます。
分科会では、米などの食材費や人件費が更に高騰している現状を踏まえ、財源確保が困難であれば患者負担増も含めた見直しの検討が必要との意見が出されました。また経営努力により食材の組合せを変えて対応する場合、食事の質への影響が懸念されるため、給食のコスト構造を踏まえた実態把握と対応の検討が必要との指摘もありました。病院給食が赤字で提供されている実態を患者や国民に理解してもらった上で、一部自己負担での引き上げを検討することも選択肢の一つとの意見も出されています。
嚥下調整食の課題と特別食加算への追加検討
嚥下調整食は現在特別食加算の対象ではありませんが、必要とする患者は一定数存在し、その評価の必要性が指摘されています。栄養摂取が経口摂取のみの患者のうち、急性期病棟では約1割、包括期病棟では約2割、慢性期病棟では約4割が嚥下調整食の必要性があることが調査で明らかになりました。特に急性期一般入院料1では経口摂取のみの患者の約8%、回復期リハビリテーション病棟入院料1では約18%、療養病棟入院料1では約38%が嚥下調整食を必要としています。
嚥下調整食は普通食より食材費が高いという課題があります。嚥下機能に配慮した食形態の調整や、見た目を改善した調理には特別な技術と手間が必要となり、それがコスト増につながっています。しかし見た目を改善し、適切な栄養量を確保した嚥下調整食の提供により、エネルギー摂取量の増加やADL(日常生活動作)の改善が認められたとの報告もあり、その医療的効果は明らかになっています。
分科会では、嚥下調整食が必要な患者は一定数いるにもかかわらず特別食加算の対象となっていない点について、検討すべきではないかとの意見が出されました。また見た目や栄養量に配慮した嚥下調整食の取組は進めるべきだがコストがかかるため、どう整理するか検討の余地があるとの意見もありました。現在の特別食加算は腎臓食、肝臓食、糖尿食など15種類の疾病治療食が対象となっていますが、嚥下調整食は含まれていません。
嚥下調整食を特別食加算の対象とすることで、医療機関は質の高い嚥下調整食を提供するインセンティブが働き、結果として患者の栄養状態改善とADL向上につながる可能性があります。ただし加算の追加には財源確保の課題もあるため、診療報酬改定での慎重な検討が求められます。
食堂加算の算定実態と要件見直しの必要性
食堂加算は一定基準を満たす食堂を備えた病棟の入院患者に食事を提供した場合、1日につき50円を算定できる制度です。算定率は約7割と高い水準にありますが、実際の食堂利用状況には課題があることが明らかになりました。食堂の有無を調査した結果、施設全体では65.0%が食堂を有していますが、急性期一般や特定機能病院では58.0%、地域包括ケアや回復期リハビリテーション病棟では77.0%、療養病棟では92.0%と、病棟機能により食堂の設置状況に差がありました。
食堂での食事の状況を詳しく見ると、「希望する患者のみ食堂で食事をしている」が最も多く、全体で32.5%を占めています。「自分で移動が可能な患者は食堂で食事をしている」は18.3%、「病室で食事を希望する患者以外は食堂で食事をしている」は15.1%でした。一方で「新型コロナウイルス感染症の流行以前は食堂を使用していたが、現在はしていない」が13.2%、「新型コロナウイルス感染症の流行以前から食堂はあるが、使用していない」が9.3%と、食堂を設置しているにもかかわらず使用していない医療機関も一定数存在しています。
病棟機能別に見ると、急性期一般や特定機能病院では「希望する患者のみ食堂で食事をしている」が34.0%と最も多く、次いで「新型コロナウイルス感染症の流行以前は食堂を使用していたが、現在はしていない」が14.2%でした。地域包括ケアや回復期リハビリテーション病棟では「希望する患者のみ食堂で食事をしている」が26.4%、療養病棟では「自分で移動が可能な患者は食堂で食事をしている」が33.0%と最も多くなっています。
分科会では、食堂加算を算定していても食堂を使用していない実態があるのであれば、加算の在り方について検討
Duration: 00:06:59入院リハビリテーションの課題と今後の検討方向―調査・評価分科会が示した5つの重要論点
Oct 19, 2025令和7年9月25日に開催された第13回入院・外来医療等の調査・評価分科会において、入院中のリハビリテーションに関する検討結果のとりまとめ案が示されました。この分科会は、中央社会保険医療協議会の診療報酬調査専門組織の一つで、診療報酬制度の見直しに係る技術的課題の調査・検討を行う組織です。今回のとりまとめでは、療法士の病棟業務への関与、早期リハビリテーションの推進、書類の簡素化という重要な論点が示されました。
とりまとめでは、入院中のリハビリテーションは身体機能の回復だけでなく、退院後の生活を見据えた生活機能の回復が求められるとの基本方針が示されました。現状の課題として、療法士の専従要件が病棟業務に従事することを妨げている可能性、早期介入の遅れ(14日以内に実施した症例の38%が3日以内に介入できていない)、土日祝日のリハビリテーション実施率の低さ、計画書の重複による事務負担の増加が指摘されています。これらの課題に対し、分科会委員からは、専従要件の明確化、早期介入の要件化、算定要件への土日実施の組み込み、書類の統合による簡素化などの意見が出されました。
療法士の専従要件と病棟業務の明確化
疾患別リハビリテーション料では、当該リハビリテーションを実施するために必要な療法士の数や専従要件が規定されています。この専従要件により、療法士は原則としてリハビリテーション室での訓練に専念することが求められてきました。しかし、現行の規定では、当該療法士が病棟業務に従事することに関する明確な規定がありません。
入院中のリハビリテーションには、身体機能の回復や廃用症候群の予防だけでなく、退院後の生活を見据えた生活機能の回復のための介入が求められます。実際、急性期病棟においてリハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算を算定している病棟では、算定していない病棟と比べて、療法士が生活機能の回復や栄養・口腔状態に係る項目へ関与している割合が高いことが調査で明らかになりました。具体的には、食事介助、更衣、排泄介助、体位交換などの生活機能の回復に向けた支援に、療法士が積極的に関与しています。
この状況を踏まえ、分科会では「リハビリテーション室で実施されるリハビリテーションそのものの質が落ちないように留意しつつ、病棟でのリハビリテーションができることを明確化する必要がある」との意見が出されました。専従要件の見直しにより、療法士が病棟業務に従事できることを明確にすることで、入院患者の生活機能の回復をより効果的に支援できる体制が整備されると期待されます。
早期リハビリテーション介入の推進
早期のリハビリテーション介入は、患者の機能回復と早期退院において極めて重要な要素です。現在、早期のリハビリテーションを評価する加算として、急性期リハビリテーション加算、初期加算、早期リハビリテーション加算が設けられています。しかし、いずれの加算も発症日からリハビリテーション開始までの日数についての要件はなく、どのタイミングからでも算定可能という状況です。
調査結果によると、14日以内に疾患別リハビリテーションを実施した症例のうち、3日以内に介入できていない割合は38%にのぼります。この遅れの背景には、土日祝日のリハビリテーション実施体制の問題があります。急性期一般入院料1〜6における土日祝日のリハビリテーション実施割合は、平日と比べて低い状況です。また、金曜日に入院した患者は、入院後3日以内にリハビリテーションを開始した患者割合が低いという結果も出ています。
これらのデータを受けて、分科会では複数の重要な意見が出されました。「急性期のリハビリテーションでは、入院直後からなるべく早くリハビリテーションを開始することが重要であるため、急性期リハビリテーション加算等の評価の在り方について検討していく必要がある」との指摘がありました。さらに踏み込んで、「より早期の在宅復帰につなげるためにも、入院直後からリハビリテーションを開始して、土日も含めて中断しないようにすることを急性期リハビリテーション加算等の算定要件として検討しても良いのではないか。その際には必要なマンパワーについても合わせて検討すべき」との意見も出されました。
施設外リハビリテーションの単位数上限の見直し
社会復帰を目指す患者にとって、屋外などの実際の生活環境でのリハビリテーションは極めて重要です。調査結果では、急性期病棟、回復期リハビリテーション病棟、地域包括ケア病棟において、屋外等での疾患別リハビリテーションを実施した患者のうち、3単位を超えて実施した症例が45%にのぼることが明らかになりました。
現行制度では、施設外でのリハビリテーションは1日3単位までという上限が設けられています。この上限により、社会復帰に向けた十分な訓練機会が制限されている可能性があります。実際、分科会では「社会復帰のための施設外でのリハビリテーションは重要であり、1日3単位までという単位数の上限は見直すべきではないか」との意見が出されました。
施設外リハビリテーションでは、公共交通機関の利用、買い物、階段昇降など、実際の生活場面での動作訓練が可能になります。このような実践的な訓練は、病院内での訓練だけでは得られない効果があり、患者の退院後の生活の質の向上に直結します。単位数上限の見直しにより、より充実した社会復帰支援が可能になると考えられます。
退院時リハビリテーション指導料の要件見直し
退院時リハビリテーション指導料は、患者の退院時に、退院後の生活におけるリハビリテーションの継続や注意点を指導することを評価する診療報酬です。しかし、調査結果では、退院時リハビリテーション指導料を算定した患者のうち、疾患別リハビリテーション料を算定していない患者が33%いることが明らかになりました。特に在院日数が短い患者ほど、リハビリテーションを実施せずに退院時指導料のみを算定している傾向が見られました。
この状況に対し、分科会では2つの異なる意見が出されました。一つは「退院時リハビリテーション指導料については、入院中にリハビリテーションを実施した患者の退院時に指導を行うという趣旨を徹底することと、早期のリハビリテーション開始に繋げるためにも入院中のリハビリテーションを要件化すべきではないか」という意見です。この意見は、退院時指導料の本来の趣旨である「入院中のリハビリテーションの継続」という観点を重視しています。
一方で、「退院時リハビリテーション指導料は、高齢者の入院において、退院後に向けたリハビリテーションを周知する良い機会であると考えるため、入院中にリハビリテーションを実施していない場合に算定出来ないようにするかは慎重な議論が必要」との意見もありま
Duration: 00:10:42国民医療費は増加するのに病院の7割が赤字―医療経営の構造的課題を解説
Oct 18, 2025全日本病院協会の神野正博会長が「医療のトリセツ」シリーズ第2回で、国民医療費の増加と病院経営の深刻な課題について解説しています。近年、病院の倒産や廃業、小規模病院のクリニック化が相次いでいますが、その背景には医療経済特有の構造的問題があります。本記事では、神野会長の解説をもとに、なぜ医療費が毎年1兆円ずつ増加しているにもかかわらず、多くの病院が赤字経営に陥っているのか、その理由を明らかにします。
国民医療費は高齢化と医療技術の進歩により毎年1兆円ずつ増加しています。医療をたくさん使う高齢者が増加し、お金のかかる先端医療も増えているためです。しかし、診療報酬という公定価格は上げることができない一方で、人件費や材料費などの経費は増加し続けています。この価格と経費の板挟み構造により、診療量が多くても赤字になる病院が増加しており、神野会長は全国の病院の約7割が赤字であると指摘しています。この状況は、医療提供体制の持続可能性を脅かす危機的状況です。
国民医療費の増加要因と日本経済の停滞
国民医療費は毎年1兆円ずつ増加しており、この増加ペースは他の業界には見られない特徴的な現象です。神野会長は、日本のGDPがほぼ横ばいで推移する中、国民医療費だけが右肩上がりで増加している現状を指摘しています。
この増加の主な要因は2つあります。第1に高齢化の進行です。高齢者は若年層と比較して医療サービスを多く利用するため、高齢者人口の増加に伴い医療費全体が膨らんでいます。第2に医学・医療技術の進歩です。先端医療技術の導入により、これまで治療が困難だった疾患への対応が可能になりましたが、高度な医療機器や新薬の使用には多額の費用がかかります。
この状況を見ると、「毎年1兆円も増えているのだから、病院は儲かっているのではないか」という疑問が生まれます。しかし実態は正反対です。多くの病院が赤字経営に陥っており、神野会長は全国の病院の約7割が赤字であると指摘しています。
市場経済と医療経済の決定的な違い
病院経営の困難を理解するには、一般的な市場経済と医療経済の違いを知る必要があります。神野会長は、この違いを利益の計算式を用いて明快に説明しています。
一般的な市場経済では、総売上は価格と量で決まり、利益は価格から経費を引いたものに量を掛けて算出されます。市場経済では、経費が増加して利益が減少した場合、企業は価格を引き上げることで対応できます。最近の物価高騰も、多くの企業がこの方法で経営を維持しようとしている結果です。
しかし医療の場合は状況が全く異なります。医療における価格とは診療報酬であり、これは国が定める公定価格です。病院は独自の判断で診療報酬を引き上げることができません。一方で、人件費、医療材料費、設備関係費などの経費は年々増加しています。価格を上げられない状況で経費だけが増加すれば、診療量をいくら増やしても赤字が拡大します。
この価格統制と経費増加の板挟み構造こそが、国民医療費が増加しているにもかかわらず病院経営が悪化する根本的な理由です。診療報酬改定は2年に1度実施されますが、物価上昇や人件費上昇を十分に反映した改定率となっていないため、病院の経営環境は年々厳しさを増しています。
病院経営の現状と持続可能性への警鐘
多くの病院が赤字経営に陥っている現状は、医療提供体制の持続可能性を脅かす重大な問題です。神野会長は全国の病院の約7割が赤字であると指摘し、この状況を将来の医療提供体制を考えたときに大きな問題であると警鐘を鳴らしています。
赤字経営が続けば、病院は経営を維持できなくなり、倒産や廃業、規模縮小を余儀なくされます。実際に、小規模病院がクリニックに転換するケースや、地域医療を支えてきた病院が閉院するケースが全国各地で報告されています。医療機関が減少すれば、地域住民が必要な医療を受けられなくなる医療過疎が深刻化します。
特に救急医療を担う病院では、救急搬送受入件数が多いほど医業費用が増加し、医業利益率が低下する傾向が明らかになっています。地域医療に不可欠な機能を担う病院ほど経営が厳しくなるという矛盾した構造が、医療提供体制全体の弱体化を招いています。
診療報酬という公定価格制度のもとでは、病院が経営努力だけで赤字を解消することには限界があります。持続可能な医療提供体制を確保するには、診療報酬制度の抜本的な見直しや、医療機関の経営を支える新たな財政措置が必要です。
まとめ
国民医療費は高齢化と医療技術の進歩により毎年1兆円ずつ増加していますが、診療報酬という公定価格を引き上げられない一方で経費が増加し続けるため、多くの病院が赤字経営に陥っています。神野会長は全国の病院の約7割が赤字であると指摘し、医療提供体制の持続可能性への危機感を表明しています。市場経済とは異なり、医療経済では価格を自由に設定できないという構造的問題が、病院経営を圧迫しています。この状況は医療提供体制の持続可能性を脅かす重大な課題であり、診療報酬制度の見直しを含めた対策が急務です。神野会長の解説は、私たちが普段意識することの少ない医療経済の特殊性と、病院経営が直面する深刻な現実を明らかにしています。
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日本の医療が抱える「トリレンマ」とは?全日病会長が解説する医療の未来
Oct 17, 2025全日本病院協会会長の神野正博氏がYouTube動画シリーズ「医療のトリセツ」第1回を公開しました。この動画では、日本の医療システムが直面する「トリレンマ」について解説しています。日本の医療は現在、医療従事者や病院の犠牲の上に「アクセス」「コスト」「質」という3つの要素を何とか満たしています。しかし、働き方改革や物価上昇により、この仕組みは限界を迎えつつあります。
日本の医療は、世界の常識である「オレゴンルール」を無視した形で3つの要素を満たしていますが、今後は2つを選択する必要に迫られています。オレゴンルールによれば、医療における3つの要素(アクセス、コスト、質)を同時に満たすことは不可能です。日本の医療システムは現在、医療従事者と病院の犠牲によって3つを何とか維持しています。しかし、働き方改革と物価上昇により、国民はどの2つを優先するかの選択を迫られています。
オレゴンルールが示す医療の本質
医療システムを構成する3つの要素は、同時に満たすことができないという原則があります。この原則は、アメリカのオレゴン州で確立された考え方で、「オレゴンルール」と呼ばれています。このルールは、医療における3つの要素、すなわち「アクセス(医療にかかりやすさ)」「コスト(費用)」「質」を同時に全て満たすことは不可能であるため、国民は2つを選ぶしかないという考え方です。
この原則は、世界の医療システムにおける常識とされています。医療資源は有限であるため、3つの要素すべてを高い水準で維持することは現実的ではありません。そのため、各国は自国の事情や国民の価値観に応じて、3つのうち2つを優先する選択をしています。この選択が、各国の医療システムの特徴を決定づけています。
世界各国の医療システムにおける選択
世界の主要国は、オレゴンルールに従って異なる選択をしています。それぞれの選択には、明確な利点と引き換えに犠牲にする要素があります。
「すぐに診てもらえて安い」という選択は、患者にとって魅力的に見えます。この組み合わせでは、医療へのアクセスが良好で、費用負担も軽くなります。しかし、資源が有限である以上、医療の質を犠牲にせざるを得ません。多くの患者を短時間で診察することになるため、一人ひとりへの丁寧な対応や高度な医療の提供が難しくなります。
「安くて質が高い」という選択は、費用を抑えながら良質な医療を提供します。イギリスの医療システムがこの典型例です。イギリスでは、国民は比較的安い費用で質の高い医療を受けられます。しかし、その代償として、手術や専門医の診察まで長期間待たされることがあります。医療へのアクセスが制限されることで、コストと質のバランスを保っているのです。
「すぐに診てもらえて質が高い」という選択は、最高水準の医療を提供します。アメリカの医療システムがこの例に該当します。アメリカでは、患者は迅速に専門医の診察や高度な治療を受けられます。ただし、この利便性と質の高さには高額な費用が伴います。高い保険料や自己負担を覚悟する必要があります。
日本の医療システムの現状と持続可能性の課題
日本の医療システムは、世界的に見て特異な状況にあります。日本では現在、「すぐに診てもらえて、費用もそこそこで、質も高い」という3つの要素が何とか成り立っています。これは、オレゴンルールを無視している状態です。
この一見理想的な状況は、医療従事者と病院の犠牲の上に成り立っています。医療従事者は長時間労働を強いられ、病院は厳しい経営環境の中で診療報酬の範囲内で質の高い医療を提供し続けています。この仕組みによって、国民は世界的に見ても恵まれた医療環境を享受してきました。
しかし、この仕組みは持続可能性の限界に達しつつあります。働き方改革により、これまでの長時間労働を前提とした医療提供体制を維持することが困難になっています。同時に、物価上昇や賃金上昇により、病院経営はさらに厳しさを増しています。
これらの変化により、日本国民は重要な選択を迫られています。医療の3つの要素のうち、どの2つを優先するのか。この選択は、今後の日本の医療システムの方向性を決定づける重大な決断となります。
まとめ
日本の医療システムは、医療従事者と病院の犠牲によって、世界的に稀な「3つの要素を満たす医療」を実現してきました。しかし、働き方改革と経済環境の変化により、この仕組みの維持は困難になっています。神野会長が提起した「トリレンマ」は、今後の日本の医療を考える上で避けて通れない課題です。国民一人ひとりが、医療の未来について真剣に考え、議論する時期に来ています。
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GLIM基準の活用状況が明らかに:病棟種別で最大約60ポイントの差、地域包括医療病棟100%達成の背景
Oct 16, 2025令和7年度第13回入院・外来医療等の調査・評価分科会は、令和6年度診療報酬改定で導入された栄養管理体制の基準明確化に関する調査結果を公表しました。この改定では、世界の主要栄養学会が策定したGLIM基準を活用した低栄養評価が推奨されました。調査の目的は、GLIM基準の活用状況と低栄養患者の実態を把握し、今後の栄養管理体制の充実に向けた課題を明らかにすることです。
調査結果は、病棟種別によってGLIM基準の活用状況に大きな差があることを示しました。GLIM基準の活用率は、地域包括医療病棟が100%と最も高く、特定機能病院が40.4%と最も低い状況です。低栄養リスクを有する患者の割合は、急性期一般入院料で約4割、地域包括医療病棟等で約8割に達しました。GLIM基準による低栄養(重度・中等度)に該当する患者は、地域包括医療病棟や回復期リハビリテーション病棟等で約3割を占めました。GLIM基準の導入により、多職種連携が進んだという回答が約5割ありました(回復期リハビリテーション病棟入院料1での調査)。分科会では、管理栄養士の病棟配置が的確な栄養スクリーニングを可能にしているとの評価がなされました。
GLIM基準の活用状況に見る病棟種別の特徴
GLIM基準の活用率は病棟種別で顕著な差を示しています。地域包括医療病棟入院料を算定している施設では100%がGLIM基準を栄養管理手順に位置づけていました。この高い活用率は、令和6年度改定で栄養管理体制の基準が明確化され、標準的な栄養スクリーニングを含む栄養状態の評価が求められたことに対応したものです。
地域包括医療病棟に続いて、回復期リハビリテーション病棟入院料1を算定している施設が98.0%、地域包括ケア病棟入院料を算定している施設が80.8%とGLIM基準を活用していました。これらの病棟では、退院後の生活を見据えた栄養管理が特に重視されています。
対照的に、特定機能病院入院基本料を算定している施設では40.4%にとどまりました。急性期一般入院料1を算定している施設でも73.6%と、地域包括系の病棟と比較して低い水準です。特定機能病院では高度急性期医療に重点が置かれており、栄養管理手順へのGLIM基準の組み込みが他の病棟種別と比べて進んでいない実態が明らかになりました。
低栄養リスク患者の分布から見える病棟機能の違い
低栄養リスクを有する患者の割合は、病棟の機能特性によって大きく異なります。急性期一般入院料を算定している病棟では、低栄養リスクを有する患者が約4割でした。急性期病棟では、手術や急性疾患の治療を目的とした入院が中心であり、比較的短期間の入院が想定されています。
地域包括医療病棟では、低栄養リスクを有する患者が約8割に達しました。地域包括ケア病棟入院料や回復期リハビリテーション病棟でも同様に高い割合を示しています。これらの病棟では、急性期治療を経た患者や在宅復帰を目指す患者を受け入れており、低栄養リスクの高い患者層が集中する傾向にあります。
療養病棟入院料を算定している病棟でも、低栄養リスクを有する患者の割合は高い水準です。療養病棟では長期療養を必要とする患者が多く、栄養状態の維持が重要な課題となっています。病棟種別による低栄養リスク患者の分布の違いは、各病棟が担う医療機能と患者特性を反映したものといえます。
GLIM基準による低栄養患者の実態と評価の精度
GLIM基準による低栄養(重度・中等度)に該当する患者は、地域包括医療病棟、地域包括ケア病棟、回復期リハビリテーション病棟等で約3割を占めました。この結果は、単なる低栄養リスクの評価を超えて、GLIM基準による具体的な低栄養診断が行われている実態を示しています。GLIM基準では、表現型基準(意図しない体重減少、低BMI、筋肉量減少)と病因基準(食事摂取量減少・消化吸収能低下、疾病負荷・炎症)の両方から評価し、重症度判定まで行います。
分科会では、地域包括医療病棟で低栄養リスク患者が多く検出されている要因について議論されました。管理栄養士が病棟配置されていることで、的確な栄養スクリーニングが実施できているという評価です。病棟配置された管理栄養士は、患者の日々の食事摂取状況を直接観察し、他職種と密接に連携して栄養状態を評価できます。
分科会からは、低栄養リスクだけでなくGLIM基準で低栄養と判定された患者の状況についても詳細に示すべきとの指摘がありました。今後は、低栄養と判定された患者に対する栄養管理計画の内容や、栄養状態の改善度合いなど、より詳細な分析が求められています。
GLIM基準導入がもたらした多職種連携の進展と課題
回復期リハビリテーション病棟入院料1を算定している病棟を対象とした調査では、GLIM基準の評価導入による影響が明らかになりました。「栄養評価に時間がかかるようになった」という回答が69.9%と最も多く、標準的な評価基準の導入に伴う業務負担の増加が示されています。GLIM基準では、体重減少率やBMI、筋肉量の測定など、複数の指標を総合的に評価する必要があります。
一方で、「多職種連携が進んだ」という回答が52.8%に達しました。この結果は、GLIM基準という共通の評価基準を用いることで、医師、看護師、管理栄養士、リハビリテーション職種などが、患者の栄養状態について同じ認識を持ち、協働して栄養管理に取り組めるようになったことを示唆しています。
「低栄養と判定される患者が増えた」という回答も39.2%ありました。これは、GLIM基準という標準的な評価基準の導入により、従来は見逃されていた低栄養患者が適切に抽出されるようになった可能性を示しています。栄養評価の精度向上は、適切な栄養介入の実施につながり、患者の予後改善に寄与することが期待されます。
栄養管理体制の充実に向けた今後の展望
令和6年度診療報酬改定では、栄養管理体制の基準が明確化され、標準的な栄養スクリーニングを含む栄養状態の評価が入院基本料等の施設基準に位置づけられました。各医療機関は、機能や患者特性等に応じた栄養管理手順を作成し、GLIM基準を活用することが望ましいとされています。今回の調査結果は、病棟種別によって取り組み状況に差があることを
Duration: 00:08:33医療機関の身体的拘束を最小化する取組:令和6年度診療報酬改定の効果と課題
Oct 15, 2025令和7年度第13回入院・外来医療等の調査・評価分科会は、医療機関における身体的拘束の実態を明らかにしました。高齢患者の増加に伴い、身体的拘束の実施率は施設によって大きな差があります。患者の尊厳を守る観点から、身体的拘束を最小化する組織的な取組が求められています。
分科会の調査結果によると、身体的拘束の実施率は急性期から慢性期まで幅広く、特に認知症患者において実施率が高いことが判明しました。令和6年度診療報酬改定では認知症ケア加算の見直しが行われ、身体的拘束を実施した日の算定割合は28.1%に減少しています。身体的拘束を最小化するための指針は9割の医療機関で策定されているものの、管理者から職員への方針発信や代替方策の検討といった具体的な取組は5割から7割程度にとどまっています。身体的拘束を減らすには、経営者や管理者のリーダーシップによる組織一丸となった取組が必要です。
身体的拘束の実施状況と実施理由
身体的拘束の実施状況は病棟の種類によって異なり、実施理由も多様です。急性期から慢性期までの多くの入院料で、身体的拘束の実施率は0%から10%未満の施設が最も多い状況です。一方、回復期リハビリテーション病棟では実施率20%以上の施設が約3割、療養病棟と障害者施設等入院基本料では約4割を占めています。
身体的拘束の実施理由として、治療室と療養病棟では「ライン・チューブ類の自己抜去防止」が5割を超えています。地域包括ケア病棟、回復期リハビリテーション病棟、障害者施設では「転倒・転落防止」が5割を超えています。身体的拘束が行われている患者のうち、「常時:手指・四肢・体幹抑制」の割合は、治療室、地域包括医療病棟、療養病棟で約4割に達しています。
身体的拘束の実施期間について、調査基準日から過去7日間において身体的拘束を実施した日数が「7日間」である割合を見ると、地域包括ケア病棟で70.7%、回復期リハビリテーション病棟で78.8%、療養病棟で89.3%、障害者施設等で86.7%となっています。この数値は、これらの病棟では身体的拘束が継続的に実施されている実態を示しています。
認知症患者と身体的拘束の関係
認知症患者における身体的拘束の実施率は、認知症のない患者と比較して顕著に高い状況です。患者の状態別の身体的拘束の実施状況では、「認知症あり」「BPSDあり」「せん妄あり」の患者において実施率が高くなっています。要支援よりも要介護の患者で実施率が高く、認知症高齢者の日常生活自立度が低いほど実施率が高い傾向があります。
いずれの入院料においても、「認知症あり」の場合は身体的拘束の実施率が高い結果となっています。「認知症なし」の場合における身体的拘束の実施率は、治療室で26.2%、療養病棟で11.7%、障害者施設等で25.1%ですが、それ以外の病棟では10%以下です。認知症の有無が身体的拘束の実施に大きく影響していることが明らかになっています。
認知症患者の適切な医療を評価する目的で、平成28年度診療報酬改定において認知症ケア加算が新設されました。令和6年度診療報酬改定では、身体的拘束を実施しなかった日と実施した日の点数についてそれぞれ見直しが行われています。「身体的拘束を実施した日」として算定した割合は、令和6年では28.1%と減少に転じています。特に認知症ケア加算1では、令和5年の29.8%から令和6年の25.8%へと4%減少しており、診療報酬改定の効果が表れています。
身体的拘束を最小化する組織的取組
身体的拘束を最小化するには、指針の策定と体制整備が重要です。令和6年11月1日時点において、身体的拘束を最小化するための指針を策定している医療機関は90.9%、身体的拘束の実施・解除基準を策定している医療機関は90.1%となっています。令和6年度診療報酬改定では、入院料の施設基準に身体的拘束を最小化する体制整備が規定されています。
身体的拘束廃止に向けた方針として、「介護施設・事業所等で働く方々への身体拘束廃止・防止の手引き(令和6年3月)」では、特に管理者等の責任者が「身体的拘束を原則しない」という決意を持つことが示されています。責任者は職員をバックアップする方針を徹底し、組織一丸となって考えを共有して取り組む必要があります。身体的拘束を必要としない環境の整備、患者本人や家族との対話や意思確認、やむを得ず身体的拘束を行った場合でも常に代替手段を検討することが求められています。
身体的拘束を予防・最小化するための具体的な取組として、「院長・看護師長が、身体的拘束を最小化する方針を自らの言葉で職員に伝え、発信している」医療機関は53.4%です。「身体的拘束が行われるたびに、代替方策がないかどうか複数人数で検討する仕組みがある」医療機関は71.0%となっています。身体的拘束最小化の指針の中に薬物の適正使用についての内容を定めている施設は40.9%です。職員向けのデータの可視化に取り組んでいる施設は47.2%ですが、対外的に公表している施設は10.7%にとどまっています。
令和6年度診療報酬改定において、DPC/PDPSの機能評価係数Ⅱにおける新たな評価として、医療の質に係るデータの提出や病院情報等の公開を評価するようになりました。この指標の1つとして身体的拘束の実施率が含まれており、医療機関の取組を促進する仕組みが整備されています。
分科会での議論と今後の方向性
分科会では、身体的拘束を最小化する取組の推進について活発な議論が行われました。委員からは、入院患者として高齢者が増えている中で、転倒防止のために行動を制限することは本末転倒であるとの意見が出されています。医療機関内で転倒しても大事に至らないような環境整備等を行うとともに、不要な医療処置は行わない、早期に慣れた環境に戻るなどの対応が進むように社会全体での議論を醸成していくべきとの指摘があります。
身体的拘束を最小化する取組は、患者の尊厳を守る観点からも重要であり、取組を推進する工夫が必要です。経営者や管理者のリーダーシップをはじめとして組織一丸となっての取組が求められています。指針の策定は進められている一方で、患者に医療処置を説明する掲示物の導入、緩衝マットの活用、管理者から職員への発信等の取組は比較的実施が少ないことが調査結果からも明らかになっています。
委員からは、身体的拘束を最小化する取組への努力は必要だが、転倒・転落のリスクは生じるとの指摘もあります。離床センサーマットの活用や段差の解消等は必要ですが、家族の理解も重要となります。病院にいたら転倒しないと思われるのは異なるため、風土を醸成する必要があります。組織が一丸となって取り組むことも重要であり、そのよ
Duration: 00:08:13意思決定支援の診療報酬要件化後の実態調査:医療機関の指針策定は8割達成も残る課題
Oct 14, 2025令和6年度診療報酬改定では、人生の最終段階における適切な意思決定支援を推進するため、厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容を踏まえた指針の策定が入院料の通則に規定され、原則としてすべての入院料の算定要件となりました。改定後の令和6年11月時点で、入院・外来医療等の調査・評価分科会は医療機関における実施状況の調査結果をまとめました。本稿では、この調査結果と分科会で示された今後の課題について報告します。
調査結果から、意思決定支援の指針策定は着実に進展しているものの、地域全体での情報共有と多職種連携に課題があることが明らかになりました。入院料の算定要件となった指針策定は80.3%の医療機関で完了し、定期的な見直しも70.5%の医療機関で実施されています。一方、地域包括診療料等の届出医療機関における指針策定率には病院と診療所で大きな格差があり、病院84.0%に対して診療所は19.6%にとどまりました。さらに、分科会では地域での情報共有プロセスの評価、患者本人の意思決定を尊重する評価の在り方、多職種間の認識一致という3つの重要な課題が提起されました。
入院料における意思決定支援の実施状況:8割の医療機関が指針策定を完了
入院料の算定要件となった意思決定支援の指針策定は、令和6年11月時点で8割の医療機関において完了しています。調査では、指針を作成している医療機関は80.3%でした。この指針は、厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容を踏まえ、患者本人の意思決定を支援するプロセスを定めたものです。
指針策定だけでなく、定期的な見直しも重要な要件となっています。調査では、定期的な見直しを行っている医療機関は70.5%でした。指針は一度作成すれば終わりではなく、医療現場の実態や患者ニーズの変化に応じて継続的に改善していく必要があります。定期的な見直しの実施率が策定率よりやや低い点は、今後の改善が求められる領域といえます。
令和6年度診療報酬改定では、意思決定支援の指針策定を原則としてすべての入院料の算定要件としました。この要件化の対象から除外されたのは、小児特定集中治療室管理料、総合周産期特定集中治療室管理料、新生児特定集中治療室管理料、新生児治療回復室入院医療管理料、小児入院医療管理料、児童・思春期精神科入院医療管理料を算定する病棟のみを有する医療機関です。これらの病棟では、患者の特性上、人生の最終段階における意思決定支援の在り方が成人とは異なるため、別途の配慮が必要と判断されました。
経過措置として、令和6年3月31日時点で入院基本料等の届出を行っていた病棟については、令和7年5月31日まで指針の作成基準を満たすものとみなされます。この経過措置により、医療機関は時間的余裕を持って指針の策定と院内体制の整備を進めることができます。
地域包括診療における意思決定支援の実施状況:病院と診療所で大きな格差
地域包括診療料・加算、認知症地域包括診療料・加算においても、令和6年度診療報酬改定で意思決定支援の指針策定が要件に追加されました。これらの診療報酬は、複数の慢性疾患を有する患者に対して、継続的かつ全人的な医療を提供することを評価するものです。患者の価値観や生活背景を踏まえた意思決定支援は、このような包括的な医療提供において不可欠な要素となります。
令和6年11月時点の調査では、指針を作成している病院は84.0%であった一方、診療所は19.6%にとどまりました。病院と診療所の間には64.4ポイントという大きな格差が存在しています。この格差の背景には、診療所における人的リソースや体制整備の困難さがあると考えられます。診療所では医師数が限られており、指針の策定や院内教育に割ける時間的余裕が少ないという実情があります。
定期的な見直しを行っている医療機関については、病院67.5%、診療所51.2%でした。指針策定率と同様に病院と診療所で差がありますが、策定率ほどの大きな格差ではありません。診療所において、一度指針を策定した医療機関では、比較的高い割合で見直しが実施されていることがわかります。
地域包括診療料と地域包括診療加算の届出医療機関に限定すると、指針策定率はそれぞれ70.1%、41.5%でした。地域包括診療料の届出医療機関では7割が指針を策定している一方、地域包括診療加算の届出医療機関では4割程度にとどまっています。地域包括診療加算は主に診療所が算定する加算であり、前述の診療所全体の傾向と一致しています。
分科会で示された今後の課題:地域連携と多職種連携の強化が鍵
入院・外来医療等の調査・評価分科会では、調査結果を踏まえて今後の課題について議論が行われました。分科会での評価・分析に関する意見からは、意思決定支援をさらに推進するための3つの重要な方向性が示されました。
第一の課題は、地域全体での切れ目ない情報共有の推進です。分科会では、入院時における自院以外の施設からの医療・ケアの方針についての情報提供の有無について、改定前と大きく変化がないことが指摘されました。この状況を改善するため、意思決定支援とアドバンス・ケア・プランニングの情報提供に係る一連のプロセスについて評価を行うべきとの意見が出されました。患者が医療機関や施設を移動する際に、それまでの意思決定支援の内容が適切に引き継がれることが重要です。
第二の課題は、患者本人の意思決定を尊重する評価の在り方です。分科会では、患者本人が意思決定の主体となることから、医療機関が個別にアドバンス・ケア・プランニングに係る指導を行うことを押し付けるような評価は行うべきではないとの指摘がありました。意思決定支援は、医療者が一方的に進めるものではなく、患者本人の意思や価値観を最大限尊重しながら、必要な情報提供と対話を通じて行うべきものです。診療報酬上の評価も、このような本質を踏まえた設計が求められます。
第三の課題は、多職種間の認識一致です。分科会では、アドバンス・ケア・プランニングに関して、多職種間での理解の不一致がある場合があるため、多職種間の認識一致を目指していくべきとの意見がありました。意思決定支援は、医師、看護師、薬剤師、リハビリテーション専門職、医療ソーシャルワーカーなど多様な職種が関わる取組です。各職種がアドバンス・ケア・プランニングの目的や方法について共通の理解を持ち、チームとして一貫した支援を提供することが求められます。
まとめ:指針策定の進展と残された課題への対応
令和6年度診療報酬改定により意思決定支援の指針策定が入院料の要件となり、令和6年11月時点で8割の医
Duration: 00:07:48人口・医療資源の少ない地域の医療提供体制|派遣元医療機関の評価と基準緩和の必要性
Oct 13, 2025令和7年度第13回入院・外来医療等の調査・評価分科会において、人口・医療資源の少ない地域における医療提供体制の在り方が検討されました。人口規模が小さい二次医療圏では、2012年から2022年にかけて診療所数が減少傾向にあり、従事する医師の高齢化も進んでいます。この現状は、地域医療提供体制の維持が困難になりつつあることを示しており、持続可能な体制構築に向けた評価の見直しが急務となっています。
分科会では、へき地医療拠点病院等による医師派遣が地域医療の継続に寄与していること、オンライン診療の活用が進んでいる一方で地域特有の課題も存在すること、そして地域の実情を踏まえた評価の在り方の見直しが必要であることが明らかになりました。特に、巡回診療、医師派遣、代診医派遣を実施する派遣元医療機関の機能に着目した評価、人口の少ない二次医療圏における総合入院体制加算等の件数要件達成の困難さへの対応、都市部とは性質が異なる人口・医療資源の少ない地域におけるオンライン診療の特性を考慮した評価が重要な論点として議論されました。
人口・医療資源の少ない地域の現状と課題
人口・医療資源の少ない地域では、診療所数の減少と医師の高齢化が同時進行しており、地域医療提供体制の維持が深刻な課題となっています。人口規模が小さい二次医療圏においては、2012年から2022年にかけて診療所数が減少傾向にあります。この減少傾向に加えて、従事する医師の高齢化も進んでいます。
二次医療圏の人口規模と医療資源には大きなばらつきがあります。全二次医療圏の人口平均値は約28.2万人であり、中央値は約22.3万人でした。全二次医療圏の平均値以下である二次医療圏は268医療圏に上り、全国の人口密度以下である二次医療圏は194医療圏でした。このような人口密度のばらつきは、地域ごとに異なる医療提供体制の課題を浮き彫りにしています。
ヒアリング調査では、地域医療の維持に関する具体的な課題が明らかになりました。地域の外来診療を近隣病院からの医師派遣に頼っている現状があります。へき地で高齢者を対象にオンライン診療を実施する場合には、機器の操作などを手助けするためのコストや時間がかかる現状も指摘されました。さらに、地域の外来診療を、へき地医療拠点病院ではない近隣病院からの医師派遣に頼っている実態も報告されました。
へき地医療拠点病院等による医師派遣の実態と役割
へき地医療拠点病院は、主要3事業を通じて地域医療提供体制の確保において重要な役割を担っています。主要3事業とは、巡回診療、医師派遣、代診医派遣を指します。これらの事業の実施状況について、総合入院体制加算や急性期充実体制加算の届出の有無と実施状況に大きな違いは見られませんでした。ただし、代診医派遣については、届出のない医療機関と比較して、届出のある医療機関の方が多く実施していました。
へき地医療拠点病院の約半数は、20万人未満二次医療圏に所在しています。人口20万人未満の小さな二次医療圏におけるへき地医療拠点病院では、20万人以上二次医療圏のへき地医療拠点病院と比較して、総合入院体制加算や急性期充実体制加算を届け出ている病院の割合が低い状況でした。このような拠点的な病院では、自院における救急搬送受入や手術等の診療に加えて、当該事業等を通じて地域医療提供体制の確保において重要な役割を担っている病院もあると考えられます。
急性期拠点機能を担う医療機関は、地域の医療資源の状況を踏まえた取り組みを行っています。地域医療構想調整会議での協議のうえ、地域の医療機関へ代診医などの医師を派遣することが想定されています。この医師派遣の仕組みは、へき地医療拠点病院に限らず、へき地医療拠点病院以外の医療機関においても実施されているとのヒアリング調査結果が得られました。
オンライン診療の活用状況と地域特有の課題
人口・医療資源の少ない地域におけるオンライン診療の活用は着実に進展しています。情報通信機器を用いた診療の届出を行っているへき地医療拠点病院は83施設、へき地診療所は134施設でした。へき地拠点病院において、オンライン診療による巡回診療を実施した医療機関は7施設であり、実施した巡回診療のうちほとんどをオンライン診療で実施している医療機関もみられました。
情報通信機器を用いた診療により算定可能な医学管理料の算定回数は増加傾向にあります。令和6年度改定前から算定可能な医学管理料の多くで増加が確認されました。都道府県別の情報通信機器を用いた診療による医学管理料の算定回数については、管理料ごとにそれぞれ地域差が見られます。この地域差は、各地域の医療提供体制や患者ニーズの違いを反映していると考えられます。
人口・医療資源の少ない地域におけるオンライン診療は、都市部とは異なる特性を有しています。外来医療について代替手段が乏しく、医療アクセスが困難である地域への補完という特性があります。都市部における利便性向上を目的としたオンライン診療とは性質が異なるとの意見が分科会で示されました。D to P with Nについては、看護師の同席により、オンライン診療では対応困難な検査・処置の実施や、患者の状況把握、生活に即した療養支援が可能となるなどの利点があります。これらの実態を踏まえて今後の評価の在り方を議論すべきではないかとの意見がありました。
診療報酬上の評価と今後の検討の方向性
医療資源の少ない地域については、平成24年度改定以降、継続的に配慮した評価が行われています。医療従事者が少ないことや、医療機関が少ないため機能分化が困難であることに着目し、施設基準の緩和等、その特性に配慮した評価が実施されてきました。急性期から回復期における機能分化が困難である観点から、一般病棟入院基本料や地域包括ケア病棟入院料について要件緩和や混合病棟を認める等の対応が行われています。
令和6年度改定では、新たな配慮措置が講じられました。回復期リハビリテーション病棟に相当する機能を有する病室について、届出を病室単位で可能な区分が新設されました。地域包括ケア病棟入院料2及び4の施設基準における、自院の一般病棟からの転棟患者の割合に関する要件が緩和されました。在宅療養支援病院・診療所に係る24時間の往診体制の要件について、D to P with Nの実施体制を整備することで要件を満たすこととする緩和が行われました。
分科会では、今後の評価の在り方について重要な意見が示されました。巡回診療、医師派遣、代診医派遣は、へき地医療拠点病院やへき地医療拠点病院以外の医療機関においても実施されているとのヒアリング調査を踏まえ、このような派遣元の医療機関が果たしている機能に着目した評価の在り方について検
Duration: 00:06:43医療従事者の賃上げ実態と課題:ベースアップ評価料の届出率9割でも残る3つの問題点
Oct 12, 2025令和7年6月13日に閣議決定された経済財政運営と改革の基本方針2025において、医療現場で働く幅広い職種の賃上げに確実につながる対応が求められています。この方針を受けて、医療機関では診療報酬のベースアップ評価料による賃上げが進められていますが、届出手続きの煩雑さが課題となっています。本稿では、入院・外来医療等の調査・評価分科会が取りまとめた賃上げ・処遇改善の実態を明らかにします。
ベースアップ評価料の届出状況は病院で約9割、診療所で約4割となっています。届出していない医療機関の最も多い理由は「届出内容が煩雑なため」でした。令和7年度の賃上げ計画は平均3.40%の引上げとなっていますが、政府目標の4.5%には届いていません。分科会では、届出書類の簡素化や看護職員処遇改善評価料との統合を求める意見が出されています。
ベースアップ評価料の届出状況:病院と診療所で大きな差
ベースアップ評価料の届出率は、医療機関の種別によって大きく異なります。病院では約9割が届出を行っている一方、診療所では約4割にとどまっています。
届出をしていない病院の特徴を見ると、公立病院、医療法人(社会医療法人を除く)、許可病床数100床未満の病院が多くなっています。特に小規模病院では、事務職員の不足により届出書類の作成に係る事務負担が大きいことが指摘されています。外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)を届け出ている医療機関は、評価料(Ⅰ)届出医療機関のうち約4%でした。
診療科別に見ると、小児科、皮膚科、耳鼻咽喉科において外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)の算定割合が低い傾向にあります。評価料(Ⅱ)について特徴的に併算定されている診療行為は、血液透析に関連したものが多くなっていました。
届出手続きの複雑さ:書類作成が医療機関の負担に
届出をしていない理由として最も多かったのは「届出内容が煩雑なため」でした。この煩雑さは、届出に必要な書類の多さと計算の複雑さに起因しています。
各医療機関は、ベースアップ評価料の算定にあたって複数の書類を作成する必要があります。具体的には、職員給与や診療報酬の算定回数等に基づく届出区分の計算、賃金改善計画書の作成、賃金改善実績報告書の作成などです。賃金改善計画書は新規届出時及び毎年6月に提出が必要であり、賃金改善実績報告書は毎年8月に提出することになっています。
看護職員処遇改善評価料と入院ベースアップ評価料は、それぞれ異なる要件と書類様式を持っています。看護職員処遇改善評価料は令和4年10月に新設され、看護職員の賃金を3%程度(月額平均12,000円相当)引き上げることを目的としています。入院ベースアップ評価料は令和6年6月に新設され、対象職員の令和5年度賃金を2.3%引き上げることを目的としています。この2つの評価料について、分科会では書類作成が非常に煩雑であり、統合することについて検討の余地があるとの意見が出されました。
賃上げの実施状況:目標との乖離と業態による差
ベースアップ評価料による賃上げは一定程度進んでいますが、政府目標との間には乖離があります。
賃金改善計画書において、令和5年度と比較した対象職員の賃上げ計画の平均値は、令和6年度で2.69%、令和7年度で3.40%の引上げとなっています。これは、2年間の累積で見ると一定の賃上げが計画されていることを示していますが、政府が掲げる4.5%という目標には届いていません。ただし、分科会では、この目標は賃上げ促進税制も含めた数値であるため、税制の活用状況も含めて分析する必要があるとの意見が出されました。
40歳未満医師及び事務職員の賃上げについては、初再診料、入院基本料等の引き上げ等により対応することとされています。令和5年度と比較した令和7年度の賃上げ計画の平均値は、40歳未満医師で2.89%、事務職員で3.18%の引上げとなっていました。
歯科技工所における従業員の基本給等総額は、令和6年4月と令和7年4月を比較すると6.1%上昇しており、比較的高い賃上げ率を実現しています。薬局においては、令和6年度に約5割が賃上げを実施しており、薬剤師では20~49店舗の薬局、事務職員では300店舗以上の薬局において賃上げ率が大きい傾向が見られました。
今後の制度改善の方向性:簡素化と統合の議論
分科会では、今後の制度改善に向けた様々な意見が出されました。
第一に、医療人材確保に繋がる賃上げが可能な報酬制度とすべきとの意見がありました。医療従事者の賃上げ率は他産業と比較して少ないため、職責に見合った賃上げが必須であるとの指摘です。
第二に、届出書類の簡素化を求める意見が複数出されました。病床規模の小さい医療機関におけるベースアップ評価料の届出が進んでいない背景として、事務職員が不足している中、届出書類の作成に係る事務負担が大きいことが挙げられています。
第三に、看護職員処遇改善評価料とベースアップ評価料の統合に関する意見がありました。両者の書類作成が非常に煩雑であることから、統合することについて検討の余地があるとの意見です。ただし、様々な影響を勘案して慎重に対応していくことが重要であるとの意見も出されました。さらに、賃上げの原資は入院基本料等の増分から賄われるべきであり、ベースアップ評価料を入院基本料等に統合すべきであるが、難しければ、届出書類の簡素化や対象職種の見直し等を講じるべきとの意見もありました。
まとめ
ベースアップ評価料により医療従事者の賃上げは一定程度進んでいますが、届出手続きの煩雑さが課題となっています。病院では約9割が届出している一方、診療所では約4割にとどまり、小規模医療機関では事務負担が特に大きくなっています。賃上げ計画は令和7年度で平均3.40%ですが、政府目標の4.5%には届いていません。今後は、届出書類の簡素化や看護職員処遇改善評価料との統合など、医療機関の負担を軽減しながら確実な賃上げを実現する制度設計が求められます。
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短期滞在手術の外来移行が進まない理由と2026年診療報酬改定の方向性
Oct 11, 2025入院・外来医療等の調査・評価分科会は、短期滞在手術等の外来移行が十分に進んでいない現状を指摘しました。令和4年度診療報酬改定で診療所での算定は著しく増加したものの、病院での外来実施率は依然として低調です。入院実施の方が外来実施より診療報酬が高く設定されており、医療費増加の要因となっています。分科会は、外来移行を進めるべきという意見で一致した一方、施設要因への配慮も必要だとしています。
短期滞在手術等の算定方法は医療機関の類型ごとに複雑に分かれており、制度の簡素化が課題です。白内障手術の外来実施率は全国平均54%ですが、OECD諸国では90%以上が外来で実施されており、国際的に見て日本の外来移行は大きく遅れています。水晶体再建術を入院で実施すると外来実施の約1.3倍から2倍の診療報酬となるため、医療費適正化の観点からも外来移行の推進が求められます。令和8年度診療報酬改定では、算定方法の統一化と施設基準の見直しが検討課題となっています。
短期滞在手術等の複雑な算定方法と制度の現状
短期滞在手術等の算定方法は、入院・外来の別と医療機関の類型により複数に分かれています。短期滞在手術等基本料1は日帰り手術を対象とし、届出が必要です。短期滞在手術等基本料3は4泊5日までの入院を対象とし、届出は不要ですが、DPC対象病院と診療所では算定できません。外来実施の場合、短期滞在手術等基本料1の届出の有無により、包括される検査等の範囲が異なります。
令和4年度診療報酬改定では、短期滞在手術等基本料1の評価引き上げと麻酔科医の配置要件の見直しを行いました。この改定により、診療所での算定回数が著しく増加しました。病院での算定は令和6年に1万5,447回だったのに対し、診療所では12万3,814回と約8倍の差がありました。対象手術のうち水晶体再建術が算定の大部分を占め、次いで内視鏡的大腸ポリープ切除術、経皮的シャント拡張術の順となっています。
算定方法が複雑であるため、医療機関にとって制度理解と適切な算定が困難な状況です。DPC対象病院では短期滞在手術等基本料3を算定できないため、4泊5日までの入院でもDPC算定または出来高算定となります。DPC対象病院以外の病院では原則として短期滞在手術等基本料3を算定する必要があるなど、医療機関の類型により算定ルールが大きく異なります。分科会では、算定方法を統一すべきという意見が出されました。
外来移行の進捗状況と医療機関間の大きな格差
短期滞在手術等基本料1の対象手術の外来実施率は、手術により大きく異なります。内視鏡的大腸ポリープ切除術は76.7%、水晶体再建術は62.5%、経皮的シャント拡張術は76.4%でした。水晶体再建術の外来実施率は平成28年以降上昇傾向にあり、約6割の手術が外来で実施されています。令和4年度改定での要件見直し後も、外来実施率の伸びに明らかな影響はみられませんでした。
病院における水晶体再建術の外来実施率は約2割にとどまり、低調に推移しています。医療機関別の分析では、水晶体再建術の外来実施率が0%の病院が一定数存在しました。内視鏡的大腸ポリープ切除術でも同様の傾向がみられ、医療機関間で外来実施率に大きなばらつきがありました。外来実施率100%の医療機関がある一方で、全く外来実施していない医療機関も存在するという二極化した状況です。
白内障手術の外来実施率は都道府県別でも大きな差があります。全国平均は54%ですが、最も高い県では約100%、最も低い県では約40%と、約2.5倍の開きがありました。OECD諸国では白内障手術の90%以上が外来で実施されており、日本の54%という水準は国際的に見て著しく低い状況です。第165回社会保障審議会医療保険部会でも、この国際比較における格差が指摘されました。
入院実施による診療報酬増加と医療経済への影響
短期滞在手術等を入院で実施する場合、外来で実施する場合と比較して診療報酬が総じて高くなります。水晶体再建術を病院で実施する場合、外来での短期滞在手術等基本料1なしでは1万4,186点、ありでは1万7,285点です。入院でDPC算定すると1万8,804点、短期滞在手術等基本料3では1万7,457点、地域包括ケア病棟での出来高算定では2万8,640点となります。外来実施と比較すると、入院実施では約1.3倍から2倍の診療報酬となっています。
内視鏡的大腸ポリープ切除術でも同様の傾向がみられます。外来での短期滞在手術等基本料1なしでは7,340点、ありでは9,970点です。入院でDPC算定すると1万4,210点、短期滞在手術等基本料3では1万2,580点、地域包括ケア病棟での出来高算定では1万6,755点となります。入院実施は外来実施の約1.3倍から2.3倍の診療報酬であり、医療費適正化の観点から外来移行の推進が求められています。
令和5年度特別調査では、入院実施の理由として病院の構造的理由と症例ごとの臨床的理由が挙げられました。構造的理由には、回復室の不足や24時間緊急対応体制の確保が困難といった施設要因があります。臨床的理由には、患者の併存疾患や術後管理の必要性が含まれます。DPC作業グループでは、DPC対象病院の中に短期滞在手術等の症例割合が高い医療機関が存在することが指摘され、また当分科会でも地域包括ケア病棟で短期滞在手術等基本料3の対象となる入院例が多いことが指摘されました。
短期滞在手術等基本料3は平成30年度以降も一定程度算定されています。対象となっている手術等は入院外での実施割合が増加しており、制度が継続的に活用されている状況です。対象手術等については平均在院日数が減少していました。多くの手術で令和4年度と比較して令和6年度に平均在院日数が短縮しており、例えば内視鏡的大腸ポリープ切除術2cm未満では2.397日から2.327日へ減少しました。在院日数の短縮は医療資源の効率的活用と医療費適正化に寄与しています。
令和8年度診療報酬改定に向けた今後の方向性
分科会では、水晶体再建術などの一部手術について外来移行を進めるべきという意見で一致しました。外来で実施可能な手術を入院で行うことは、医療資源の効率的活用の観点から見直しが必要です。OECD諸国と比較して外来実施率が著しく低い白内障手術については、特に外来移行の推進が求められます。患者の安全性を確保しつつ、在院期間の短縮によるCOVID-19などの院内感染リスクの低減も期待されます。
短期滞在手術等の算定方法については、統一化すべきという意見が出されました。算定する入院料等によって患者像が異なるとは考えがたいため、医療機関の類型にかかわらず同一の算定ルールを適用することが望ましいとされて
Duration: 00:07:22オンライン診療の現状と課題2025:4つの診療形態と評価の明確化に向けた検討
Oct 10, 2025令和7年度第13回入院・外来医療等の調査・評価分科会は、情報通信機器を用いた診療について検討結果をとりまとめました。令和4年度診療報酬改定における見直し以降、オンライン診療の届出医療機関数と算定回数は増加しています。精神科領域や皮膚科領域での増加が目立ち、向精神薬の不適切な処方のリスクが懸念されています。D to P with Nの診療報酬算定方法には不明確な部分があり、明確化が求められています。
オンライン診療は増加傾向にあるものの、診療内容の検証と評価の明確化が必要です。D to Pは精神疾患での利用が多く、対面診療との診療内容比較による実態検証が求められています。D to P with Dは算定が限定的ですが、医療的ケア児や訪問診療における専門医連携で評価の余地があります。D to P with Nは新設されましたが、看護師等による診療補助行為の評価について算定方法の明確化が必要です。へき地におけるオンライン診療は、医療アクセス確保という都市部とは異なる特性を持ちます。
D to Pの実態:精神疾患での利用増加と実態検証の必要性
情報通信機器を用いた診療のうち、医師と患者が直接やりとりするD to Pの利用実態が明らかになりました。初診料では呼吸器感染症、再診料等では精神疾患に類する傷病名が占める割合が大きくなっています。対面診療の割合が5割未満の医療機関においても同様の傾向でした。
この傾向について、令和6年のデータでは令和4年と比較して精神科領域や皮膚科領域の増加が目立っています。分科会では、オンライン診療と対面診療を比較した場合の診療内容の比較等により実態を検証してはどうかとの意見がありました。
精神科領域での利用増加に関連して、オンライン診療による向精神薬の不適切な処方のリスクが懸念されています。診療内容についてより詳細に実態を検証してはどうかという意見が出されました。
受診者の地域分布については、受診医療機関の所在都道府県が居住地と異なる割合が19.1%でした。この結果は、オンライン診療が地域を超えた医療アクセスを可能にしている実態を示しています。
D to P with Dの可能性:医療的ケア児と専門医連携での活用
患者が医師といる場合に他の医師がオンラインで参加するD to P with Dの実施状況が調査されました。遠隔連携診療料は令和2年度に新設されて以降、算定回数は限られています。過去1年間にD to P with Dによるオンライン診療を実施した医療機関は1.0%でした。
この形態の診療は、遠隔連携診療料を算定できる状況以外でも実施されています。医療的ケア児に対する診療や、訪問診療における眼科・皮膚科・耳鼻科等の専門医との連携等の事例が見られました。
分科会での評価では、D to P with Dについて新たな評価の可能性が議論されました。医療的ケア児に対する診療や訪問診療における耳鼻科等の疾患に対する評価が考えられるのではないかという意見があったためです。
現行の遠隔連携診療料の算定要件では評価されない診療形態であっても、医療の質向上や患者の利便性向上に寄与している事例があります。今後は、こうした実態を踏まえた評価のあり方について検討が必要です。
D to P with Nの課題:評価の明確化と患者ニーズへの対応
看護師等が患者のそばにいる状態で医師がオンライン診療を行うD to P with Nについて、新たな動きがありました。令和6年度診療報酬改定において再診料・外来診療料に係る看護師等遠隔診療補助加算が新設されました。届出医療機関数は令和7年4月1日時点で78施設となっています。研修受講者も合計約4,000名程度となりました。
患者の受診体験について、課題が明らかになっています。オンライン診療を受けた感想として、「対面診療であればすぐに受けられる検査や処置が受けられないと感じた」と回答した患者が45.3%でした。オンライン診療より対面診療を希望する理由として、「検査や処置がすぐに受けられるから」が83.2%で最多でした。
規制改革実行計画において、D to P with Nの課題が指摘されました。令和7年6月13日に閣議決定された規制改革実行計画では、D to P with Nにおける診療報酬の算定方法に不明確な部分があるとの指摘がありました。
分科会での議論では、評価の明確化が求められています。D to P with Nにおいては、看護師等による診療の補助等も行われていることから、その評価については明確化も含めて検討してはどうかという意見がありました。
へき地におけるオンライン診療:医療アクセス確保の補完的役割
へき地医療におけるオンライン診療の活用状況について、重要な実態が明らかになりました。第8次医療計画におけるへき地の医療提供体制において、主要3事業の評価のうち、オンライン診療を活用して行った巡回診療・代診医派遣についても、主要3事業の実績に含めることが明確化されたところです。
令和5年度実績によると、活用は限定的です。巡回診療を実施したへき地拠点病院のうち、オンライン診療による巡回診療を実施した医療機関数が7施設(7.1%)でした。へき地診療所において、へき地の住民に対するオンライン診療で活用したと回答した医療機関は75施設(6.7%)でした。受診者が患家にいるケースよりも受診者が診療所にいるケースの件数が多かったです。
地域差の実態について、二次医療圏別の分析結果が示されました。医療機関住所地ベースでは、東京都(23区内)での算定回数が多く、66の二次医療圏で算定回数が0回でした。患者住所地ベースでは、全ての二次医療圏で算定されていました。
分科会での議論では、へき地におけるオンライン診療の特性が強調されました。人口・医療資源の少ない地域におけるオンライン診療は、外来医療について代替手段が乏しく、医療アクセスが困難である地域への補完という特性を有しています。都市部における利便性向上を目的としたオンライン診療とは性質が異なるとの意見がありました。
まとめ
情報通信機器を用いた診療は増加傾向にありますが、健全な普及に向けた課題があります。D to Pでは精神科領域での利用増加に対する実態検証が必要です。D to P with Dでは医療的ケア児や専門医連携での新たな評価の可能性があります。D to P with Nでは看護師等による診療補助行為の評価の明確化が求められています。へき地におけるオンライン診療は、医療アクセス確保という都市部とは異なる特性を持つため、地域の実情を踏まえた評価のあり方につ
Duration: 00:07:22令和8年度外来医療改定の3つの焦点:生活習慣病管理料・かかりつけ医機能・外来機能分化を徹底解説
Oct 09, 2025令和7年度第13回入院・外来医療等の調査・評価分科会において、外来医療に関する検討結果のとりまとめが公表されました。この報告書は、生活習慣病管理料と地域包括診療料の運用実態、かかりつけ医機能の評価体制、特定機能病院等における外来機能分化の進捗状況という3つの重要テーマを扱っています。次期診療報酬改定に向けて、療養計画書の作成負担軽減、患者の継続受診を促す体制整備、医療機関間の連携強化が主要な検討課題として浮かび上がっています。
本報告書では、生活習慣病管理料(Ⅰ)(Ⅱ)の算定実態と継続受診率の医療機関間格差が明らかになりました。かかりつけ医機能については、機能強化加算の届出状況とかかりつけ医機能報告制度との関係性が議論されています。外来機能分化では、特定機能病院等における再診患者の長期通院実態と逆紹介推進の課題が示されました。
生活習慣病管理料の運用実態と課題
生活習慣病管理料の算定状況には、令和6年度改定を境に大きな変化が見られます。令和4年では外来管理加算が最も多く算定されていましたが、令和6年では生活習慣病管理料(Ⅱ)が最多となりました。この変化は、改定によって生活習慣病管理の評価体系が再編されたことを反映しています。
地域包括診療料の届出医療機関数は近年横ばいでしたが、算定回数は減少傾向にあります。一方、地域包括診療加算の届出医療機関数と算定回数は増加傾向を示しています。算定患者の主傷病名は、高血圧症、糖尿病、脂質異常症が多い傾向ですが、多岐にわたっています。
特定疾患療養管理料については、令和6年度改定以前は生活習慣病が多くを占めていました。改定後は気管支喘息や慢性胃炎の占める割合が増加し、算定回数は大幅に減少、算定医療機関数もやや減少しています。この変化は、生活習慣病管理が特定疾患療養管理料から生活習慣病管理料(Ⅱ)へシフトしたことを示唆しています。
生活習慣病管理料を算定していない理由として、対象患者が少ないこと以外に、療養計画書に記載する項目が多く業務負担が大きいことが14.4%の医療機関から挙げられています。過去に簡素化がなされたものの、依然として負担感が残っており、分科会では療養計画書のあり方について見直しの検討が必要との意見が出されました。
生活習慣病管理料を算定された患者の6か月ごとの継続算定率は、医療機関ごとにばらつきがあります。患者が治療から脱落せず継続的に受診を続けることが重要な観点であり、外来患者を対象とした調査では、定期的な受診を続ける上で必要な体制として「予約診療を行っていること」が最も多く、次いで「28日以上の長期処方に対応していること」が多く選択されています。
生活習慣病管理料(Ⅰ)と(Ⅱ)の使い分けについては、受診頻度が2か月に1回より少ない患者や検査頻度が2か月に1回より少ない患者については生活習慣病管理料(Ⅰ)の算定が多く、その他の患者については生活習慣病管理料(Ⅱ)の算定が多い傾向があります。生活習慣病管理料(Ⅱ)を算定した外来患者の6か月当たりの血液検査算定回数を調べたところ、平均して6か月に2回以下の頻度で算定している患者が全体の約7~9割以上でした。6か月に1回も算定がない患者も一定数を占めており、分科会では適切な医学管理が行われているか疑問があるとの意見が出されています。
高齢者の生活習慣病管理については、学会のガイドライン等において特有な状態への配慮が必要とされています。糖尿病の管理では、高齢者の患者とそれ以外の患者では治療目標の推奨が異なっています。分科会では、複数疾患への罹患やポリファーマシー、フレイルの進行などを包括的に診る役割を担うことが、かかりつけ医の重要な機能であるとの意見が出されました。
糖尿病患者に対する合併症予防の観点では、診療所又は200床未満の病院において、眼科受診を指導した患者数は平均で21.5人、中央値は0人であり、歯科受診を促した患者数は平均で14.1人、中央値は0人でした。分科会では、糖尿病患者に対する歯科受診は、オーラルフレイルの予防や口腔機能の低下への早期対応の観点から重要であり、歯科診療所への定期的な受診を促す体制がさらに必要ではないかとの意見がありました。
かかりつけ医機能の評価と今後の方向性
機能強化加算の届出医療機関数は、令和3年までは増加傾向でしたが、近年は横ばいです。算定回数は令和2年に大きく減少していましたが、令和5年には令和元年以前よりも増加しました。令和5年時点で、病院1,289施設、診療所13,518施設が届出を行っています。
外来受診した医療機関において「かかりつけ医機能に関する説明を受けたことがある」と回答した患者は38.9%、「かかりつけ医機能に関する院内掲示を見たことがある」と回答した患者は46.2%でした。機能強化加算の届出医療機関は、算定要件の一部となっている「処方薬の把握」「健診に関する相談」「予防接種」「学校医」等に関する機能を有している割合が大きくなっています。
かかりつけ医に関連した研修等については、「日本医師会のかかりつけ医機能研修」を修了又は一部受講した医師の在籍割合が最も高く43.5%でした。医学生の実習、臨床研修医の受入れを行っている診療所は約10%前後であり、専攻医の受入れを行っている診療所は約4.2%でした。
分科会では、現在の機能強化加算は地域包括診療料・加算、小児かかりつけ診療料、在宅時医学総合管理料等の届出をもってかかりつけ医機能が高いと評価する考え方となっていますが、かかりつけ医機能報告制度が開始されることを踏まえると、この制度に沿った形で再検討することが求められるのではないかとの意見がありました。一方で、かかりつけ医機能報告制度は医療機関の機能を認定する制度ではなく現状を把握するための報告制度であり、地域における専門性を有する医療機関が連携して面としてかかりつけ医機能を発揮することを目指すものであるため、かかりつけ医機能報告制度と診療報酬は関連させるものではないとの慎重な意見も出されました。
地域包括診療料・加算の算定診療所では、それ以外の診療所と比較して、介護との連携に関する取組を実施している割合が高くなっています。認知症地域包括診療料・加算を算定された患者に占める65歳以上の患者の割合は、認知症地域包括診療料では約93%、認知症地域包括診療加算では約77%でした。
診療所における検査体制については、いずれの検査項目も、機能強化加算の算定医療機関において、より早期に結果を出せる体制が確保されている傾向がありました。このことは、機能強化加算が一定の体制整備を促す効果を持っていることを示しています。
外来機能分化の進捗状況と医療機関連携の課題
Duration: 00:08:12病棟多職種連携の現状と課題|2026年診療報酬改定への示唆
Oct 08, 2025令和7年度第13回入院・外来医療等の調査・評価分科会において、病棟における多職種でのケアに関する検討結果がとりまとめられました。高齢化の進展により入院患者のADL維持・向上が重要課題となる中、リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算の届出率が9.0%にとどまるなど、多職種連携の推進に複数の障壁が存在することが明らかになりました。今回の分科会では、療法士、管理栄養士、薬剤師、看護職員等の病棟配置の実態と効果を詳細に分析し、次期診療報酬改定に向けた重要な示唆を提示しています。
分科会の検討結果は、病棟における多職種連携の重要性と具体的な課題を明確にしました。リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算は、ADL改善効果が高く休日リハ提供量も平日の86.5%を実現していますが、体制加算算定患者は要介護度が高い患者や高齢の患者が多く、ADL悪化率は算定なしと明らかな差はありませんでした。常勤専従の療法士2名以上配置などの人員要件が届出の障壁となっています。管理栄養士の病棟配置は進んでおらず、就業時間の2割未満しか病棟業務に従事していない病棟が約3割を占めています。病棟薬剤業務実施加算は年々増加しているものの、小規模病院では診療報酬によって薬剤師の人件費が確保できない現状があります。看護業務タイムスタディ調査により、多職種配置による効果的なタスクシェアの可能性が示されました。
リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算の効果と患者背景の検証
リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算は、ADL改善において効果を示していますが、算定患者の背景を考慮した評価が重要です。退院時にADL悪化した患者の割合は、算定ありで5.0%、算定なしで4.6%と明らかな違いはみられませんでした。一方、ADLが大きく改善した患者の割合は、算定ありで25.7%と、算定なしの14.1%と比べて顕著に高い結果でした。体制加算算定患者は、算定なしと比べて要介護度が高い患者や高齢の患者が多く、これらはもともと入院中にADLが低下しやすい患者の特徴と一致していました。
体制加算の届出施設においては、ADLが低下する患者の割合は3%未満という施設基準を満たしていました。算定していない施設においては、ADL低下割合4%以上5%未満に緩やかなピークが見られ、施設基準を満たせない医療機関が存在することが示されました。入院3日目までにリハビリテーションが開始された割合は、算定ありで約9割に達しています。体制加算算定ありの患者は、算定なしの患者と比べてリハビリテーションの実施割合が高く、早期介入が実現されていました。
患者1人当たりの1日平均リハビリテーション単位数は、算定なしの場合が平日2.3単位であるのに対し、算定ありの場合は3.1単位と多く、休日も平日と変わらない水準を維持しています。施設全体におけるリハビリテーション提供体制は、算定ありの場合、土日祝日全体での提供単位数が平日の86.5%に達し、土曜日は94.1%、日曜日は87.8%、祝日は65.1%となっています。一方、算定なし施設では休日全体で平日の34.1%にとどまり、土曜日50.1%、日曜日22.1%、祝日26.8%という結果でした。この差は、体制加算の施設基準が「土日祝日における1日あたりの疾患別リハビリテーション料の提供単位数が平日の提供単位数の8割以上」を求めていることに起因しています。
体制加算算定病棟では、多職種が病棟業務に積極的に関与しています。栄養状態のスクリーニング・定期的な評価において、管理栄養士が主として関わる割合は算定ありの病棟で59.70%、算定なしの病棟で44.67%でした。ADLのスクリーニング・定期的な評価において、理学療法士が主として関わる割合は算定ありの病棟で34.72%、算定なしの病棟で19.95%でした。口腔の状態のスクリーニング・定期的な評価において、言語聴覚士が主として関わる割合は算定ありの病棟で38.57%、算定なしの病棟で24.54%でした。
体制加算算定ありの患者のほうが、低栄養の入力割合と入院栄養食事指導料の算定患者割合が高い結果でした。算定ありの患者のほうが、入院時の低栄養の割合が高く、栄養管理を必要とする患者が多く含まれていました。体制加算の算定有無による退院後の歯科受診状況に大きな差はなく、歯科受診率は低い状況でした。病棟専従の療法士は、疾患別リハビリテーション以外の業務も担当しており、場面に応じたワンポイントのADL動作の指導や、看護職員の業務としても実施される体重測定や環境調整といった業務を、療法士としての観点から行っている事例があります。
体制加算の普及を阻む施設基準の課題
体制加算の届出率は9.0%にとどまっています。届出していない理由として最も多かったのは、「常勤専従の理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士を2名以上配置(うち1名は専任でも可)することが困難なため」で56.3%を占めました。次いで「土日祝日における1日あたりの疾患別リハビリテーション料の提供単位数が平日の提供単位数の8割以上を満たさないため」が53.9%でした。「当該保険医療機関において、リハビリテーション医療における経験を3年以上有し、適切な研修を受けた常勤医師を確保することが困難なため」も19.2%ありました。
分科会での評価・分析に関する意見では、土日祝日に提供するリハビリテーション単位数が平日の8割以上であることの要件が厳しすぎるのではないかとの指摘がありました。体制加算に取り組みたい医療機関は多いものの、人員配置等の施設基準が厳しいため、算定が伸び悩んでいるのではないかとの意見もありました。病棟配置によって、ADLの評価、維持や廃用予防といった観点から意義があるのではないかとの意見があった一方、入院中の患者のADLの維持や向上を趣旨とした体制加算や病棟の施設基準における多職種配置が進みつつあるが、生活機能を落とさないためには、より一層こうした病棟での多職種連携の推進が必要ではないかとの意見がありました。
生活機能の回復に向けた支援において、療法士が関与している割合は体制加算算定病棟で高く、食事支援で76.1%、排泄支援で41.2%、離床の促しで46.4%となっています。療法士が生活機能回復や栄養・口腔状態に係る項目へ関与している割合が高く、多職種連携による効果的なケアが実践されていました。体制加算における多職種配置により、医師や看護職員が主として関わる割合は低下し、各専門職が専門性を活かした業務に集中できる体制が構築されていました。
病棟における各専門職種の配置状況と役割
管理栄養士の病棟配置は、多くの病棟で十分に進んでいません。管理栄養士が病棟で従事する時間が就業時間のうち2割未満の病棟が約3割あり、そのよう
Duration: 00:07:02医療現場の働き方改革2025:医師・看護師の負担軽減と人材確保の最新動向
Oct 07, 2025令和6年4月から医師の時間外・休日労働の上限規制と健康確保措置が適用され、医療現場の働き方改革が本格化しました。令和6年12月時点で460施設が特定労務管理対象機関として指定されています。医師の47%が勤務状況の改善が必要と回答し、看護職員の約8割が施設基準を満たす配置に困難を感じています。入院・外来医療等の調査・評価分科会の検討結果から、医療従事者の働き方改革とタスクシフト/シェアの現状と課題を明らかにします。
医療現場では人材確保と処遇改善、ICT活用による業務効率化が喫緊の課題となっています。医師事務作業補助者の40%が必要数を確保できず、看護補助者も減少し続けています。夜勤手当は2010年代からほとんど変化せず、夜勤可能な職員の確保が困難になっています。ICT・AI・IoT活用が約7割の医療機関で進むものの、維持管理コストや使いこなせない職員の存在が課題となっています。
医師の働き方改革の現状と課題
医師の時間外労働規制が本格化する中、勤務環境の改善と人材確保が重要な課題となっています。地域医療体制確保加算を届け出ている医療機関では、届け出のない医療機関と比較して休日・時間外労働の平均値や最大値は長い傾向にあります。一方で、勤務環境の現状把握・分析を実施している割合やICTを活用した業務見直しの取組を実施している割合が高く、令和5年度と比較して令和6年度では休日・時間外労働の平均値や最大値が減少傾向にありました。
医師事務作業補助体制加算の届出医療機関数は年々増加傾向にあります。届出医療機関の約40%で必要数の医師事務作業補助者が確保できていません。医師事務作業補助者の定着に向けた効果のある取組として、評価・報酬に関する取組では「給与・賞与の見直し」「面談による評価フィードバックの実施」「人事評価制度の整備」が多く挙げられました。医師事務作業補助体制加算を算定している医療機関の57%において、医師事務作業補助者の人事考課が実施されています。
ICTを活用した医師事務業務の省力化の取組について、「作業効率の上昇」と「労働時間の短縮」が得られる効果の中で最も多く報告されました。労働時間の短縮の効果が得られるとの回答の割合が多い取組として「臨床データ集計等でのRPA活用」「退院サマリー等の作成補助を行う生成AI文書作成補助システム」「説明動画の活用」がありました。分科会では、医師の働き方改革を進める中で医師にかかる経費は増えており、地域医療確保体制加算はより評価されるべきとの意見や、ICT導入には多額の費用が必要であり支援を考慮すべきとの意見が出されています。
看護職員の確保と業務負担軽減の取組
看護職員就業者数は2023年(令和5年)に174.6万人となりました。看護職員の就業場所は病院・診療所が多いものの、訪問看護ステーション等において増加傾向となっています。新規の看護師資格取得者や看護師学校養成所(3年課程・大学を含む)の入学者数・卒業者数は減少に転じています。令和6年度には大学の定員充足率も100%を切っており、今後一層の少子化の進展を考えると、看護職員の確保と働き続けられる環境整備の取組が喫緊の課題となっています。
看護補助者の数は減少し続けており、正規雇用の割合は低下しています。許可病床100床当たりの看護補助者数も全体的に減少傾向にあります。看護補助者の定着に向けて、研修の実施、ラダーの活用、看護補助業務の細分化等の取組が進められています。看護補助者の定着を促進するための取組として、「看護補助者業務のマニュアルの整備」は77.2%、「看護補助者の研修の充実」は72.7%で実施されています。
入院料の施設基準を満たす看護職員の配置を行うにあたり、困難を感じることがあるか尋ねたところ、「大いに感じる」「感じる」は約8割でした。勤務シフトが組みにくくなったが3割を超え、看護職員の夜勤の回数(1人当たり)について「増えた」が2〜3割となっています。看護職員の負担の軽減及び処遇の改善に関わる具体的な取組としては、「妊娠・子育て中、介護中の看護職員に対する配慮」は最も多く実施されていました。子育てや介護を担う職員への配慮が進んでいる一方で、夜勤が可能な職員の確保や負担軽減が課題となっています。
病院勤務看護職員の夜勤手当(夜勤1回当たり)額は、2010年代に入ってほとんど変化がありません。看護職員の負担の軽減及び処遇の改善に関わる具体的な取組として「夜勤手当の見直し」は15.0%で実施、直近3年以内に実施した看護職員の夜勤者の確保策として、「夜勤者確保のための夜勤手当の増額(一律)」は12.4%、「夜勤回数に応じた夜勤手当以外の手当の支給」は8.7%で行われています。分科会では、夜勤手当は2010年代に入ってほとんど増加が見られず、割増賃金のみの支給にとどまる病院も4.4%存在する状況などがあるため、夜勤者の確保に向け夜勤手当の引き上げが必要ではないかとの意見が出されました。
ICT・AI活用による生産性向上の推進
ICT(情報通信技術)の活用は約7割で進められています。具体的な取組として「ビデオ通話(WEB形式)による会議の実施」「勤怠管理のICT化」「紹介状や診断書の入力支援ソフトの活用」が進められています。看護職員の記録に関する負担軽減の取組として、ICTを活用した取組としては、「電子カルテシステム等を活用したカルテ様式間の自動転記」「バイタルサイン等の測定機器からの自動入力」「文書作成補助システムの活用」が進められていました。
令和6年度診療報酬改定では、看護職員の更なる業務負担軽減の観点から、「夜間看護体制加算」等の夜間における看護業務の負担軽減に資する業務管理等のうち、「ICT、AI、IoT等の活用による業務負担軽減」に取り組むことが望ましいことと位置づけられました。令和6年度補正予算では、人口減少や医療機関の経営状況の急変に対応する緊急的な支援パッケージ(生産性向上・職場環境整備等事業)として、生産性向上に資する取組として、ICT機器の導入による業務の効率化、職員間の情報伝達の効率化(チーム医療の推進)等の対応がなされました。
ICT機器活用継続についての課題について、「ICTの維持・管理等のメンテナンスにコストがかかる」「ICTを使いこなせていない職員がいる又は多い」「ICTの導入にあたって教育や人材育成に時間がかかる」の順で多く挙げられました。分科会では、ICT、AI、IoTを導入して取り組みたい一方、機器活用には初期の導入
Duration: 00:07:32入退院支援加算の最新動向2025:算定回数増加と身寄りのない患者への対応課題
Oct 06, 2025令和7年度第13回入院・外来医療等の調査・評価分科会は、入退院支援の現状を分析し、今後の課題を明らかにしました。令和5年6月審査分において、入退院支援加算の算定回数は389,081件、入院時支援加算は82,205件に達しています。入院時支援加算の届出がある医療機関では、急性期一般入院基本料で平均0.6日、地域包括ケア病棟入院料で平均4.8日、在院日数が短縮されていました。退院調整に時間や人手を要する患者として、「身寄りがなく同居者が不明な者」が最も多く、現行の算定要件に含まれていないこの要因への対応が課題となっています。
今回の分科会では、入退院支援の効果が数値で示されるとともに、3つの重要な課題が浮き彫りになりました。第一に、入院時支援加算が平均在院日数の短縮に有効であることが実証されました。第二に、身寄りのない患者への退院調整に多大な時間と労力がかかっている実態が明らかになりました。第三に、協力医療機関との実効性のある連携体制の構築には、まだ改善の余地があることが判明しました。
入退院支援加算の算定状況と入院時支援の効果
入退院支援加算と入院時支援加算の届出施設数は微増を続けています。入退院支援加算の届出施設数は令和6年8月時点で4,895施設、入院時支援加算は2,689施設でした。算定回数は年々増加しており、入退院支援の重要性が医療現場で認識されている状況が読み取れます。
入院時支援加算の効果は明確に表れています。入院時支援加算は、入院を予定する患者に対し、入院前の外来で治療の説明、入院生活のオリエンテーション、服薬状況の確認、褥瘡・栄養スクリーニング等を実施する取り組みを評価する制度です。この加算の届出がある医療機関では、届出がない医療機関と比較して平均在院日数が短くなりました。予定入院の場合、退院困難な要因の有無を入院前に評価でき、入退院支援の準備を早期から進められることが、在院日数短縮につながっています。
入退院支援加算を算定した患者の「退院困難な要因」を見ると、病棟種別にかかわらず「緊急入院であること」が最も多い状況でした。地域包括医療病棟、地域包括ケア病棟、回復期リハビリテーション病棟では、「入院前に比べADLが低下し、退院後の生活様式の再編が必要であること」も多く見られます。退棟先については、急性期入院料では自宅から入棟し自宅へ退棟する割合が高い一方、地域包括医療病棟・地域包括ケア病棟・回復期リハビリテーション病棟では、転院や介護施設等への入所等、退棟先がより多様になっています。
退院調整の課題と連携機関数の増加
退院調整完了までに時間や人手を要する患者について尋ねたところ、「身寄りがなく同居者が不明な者」が最も多い結果となりました。この要因は現行の算定要件に明示されていませんが、実際の医療現場では大きな負担となっています。日本の世帯数の将来推計では独居の高齢者が増加しており、近親者のいない高齢者が急増すると見込まれています。
退院先の確保のために工夫している取組としては、3つのアプローチが実施されていました。「退院を見据えた調整を入院直後から開始する」こと、「入院後速やかに患者及び家族などに説明を行う」こと、「退院に向けた要介護認定の区分変更の必要性を判断する」ことです。これらの取組には、ケアマネジャーとの密接な連携が重要となります。
令和6年度診療報酬改定では、入退院支援における関係機関との連携強化が図られました。入退院支援加算1の施設基準で求める連携機関数について、急性期病棟を有する医療機関では病院・診療所との連携を、地域包括ケア病棟を有する医療機関では介護サービス事業所及び障害福祉サービス事業所等との連携を一定程度求める改定が行われました。連携機関の施設数は、前回調査と比較していずれの入院料も増加しており、介護保険サービス事業所との連携が最も多い状況でした。
協力医療機関との連携強化と今後の方向性
協力医療機関となっている施設数は、入院料や病棟の組合せによらず5件以下の医療機関が最多でした。急性期一般入院料2-6を算定するケアミックス型の医療機関や、地域包括医療病棟を有する医療機関で対象施設数が多い傾向が見られます。施設類型別では、特別養護老人ホームと介護老人保健施設の件数が多くなっていました。
協力医療機関としての実効性のある連携に資する3要件全てを満たす医療機関の割合は、半数程度にとどまっています。特に急性期一般入院料1を算定する急性期病棟のみの医療機関では、その割合が低い状況でした。協力医療機関ごとに10床当たりの協力対象施設入居者数を見ると、1人以下の医療機関も一定数存在する一方、一部の医療機関では50人以上となっており、取組には差が見られます。
在宅医療を提供している患者について、入院が必要になった場合の病床確保方法を見ると、診療所の59.8%が平時から連携体制を取っている他の医療機関を地域で確保していました。一方で、11.7%が基本的に救急搬送を依頼するため特定の医療機関とは連携していない状況でした。在宅療養支援病院、在宅療養後方支援病院、地域包括ケア病棟を有する病院のいずれかに該当する施設において、協力対象施設入所者入院加算を届け出ているのは約4割にとどまっています。届出していない理由として、ICTによる情報共有の体制整備や、カンファレンスの要件が困難と回答した施設が多く見られました。
令和6年度診療報酬改定で新設された精神科入退院支援加算については、330施設のうち「届出あり」が26.4%、「届出の予定はない」が66.4%でした。届出をしていない理由は「看護師等の配置が困難であるため」が最も多く、77.4%を占めています。精神病床に入院する患者に対して、入院早期から包括的支援マネジメントに基づく入退院支援を行う体制の整備が、今後の課題となっています。
ICT活用と面会制限の影響
病院において地域医療情報連携ネットワーク等のICTを活用している施設は約3割でした。ICTを活用した情報共有の体制整備は、協力医療機関との連携を円滑に進める上で重要な要素となっています。地域連携診療計画加算の届出施設は微増していますが、算定回数はほぼ横ばいとなっています。
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う一般病棟で
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